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資源開発環境調査 ロシア連邦 Russian Federation

目 次

第 1 部 資源開発環境調査 1. 一般事情 ········································································· 1 2. 政治・経済概要 ··································································· 2 3. 鉱業概要 ········································································· 3 4. 鉱業行政 ········································································ 12 5. 鉱業関係機関 ···································································· 13 6. 投資環境 ········································································ 14 7. 地質・鉱床概要 ·································································· 20 8. 鉱山概要 ········································································ 21 9. 新規鉱山開発状況 ································································ 30 10. 探査状況 ······································································· 32 11. 製錬所概要 ····································································· 32 12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 ·································· 46

第 2 部 地質解析 1. 地質・地質構造 ·································································· 47 2. 鉱床············································································ 70 3. 鉱床有望地域 ···································································· 73

資料(統計、法律、文献名、URL 等) ·················································· 75

第 1 部 資源開発環境調査 1. 一般事情 1-1. 面積 1,707 万㎢(日本の 45 倍) 1-2. 人口 1 億 4,550 万人(2002 年 10 月国勢調査) 1-3. 首都 モスクワ 1-4. 人種 ロシア人(総人口の 81.5%)、タタール人(3.8%)、ウクライナ人(2.9%)、 チュバシ人(1.2%)等 1-5. 公用語 ロシア語(その他にも 100 以上の言語がある) 1-6. 宗教 ロシア正教がもっとも優勢であるが、多民族国家を反映してイスラム教、仏教、 ユダヤ教等多数の宗教が混在している。 1-7. 地勢等 領土周辺部に山麓多く、他は概して平坦であり、エニセイ川を挟んで次のように東西に分けられる。 西部地域:だいたい平原と低地からなる。中央部にウラル山脈が1,200マイルにわたって南北を縦断 している。南西部から南部にかけてカルパチヤ、クリミヤ、コーカサス、パミール、天山、アルタイ などの高山脈が連なり、これらは東部地域山脈の根幹となる。 東部地域:エニセイ川から太平洋岸に至る東シベリアおよび極東地域を指す。エニセイ、レナの両 大河間の中部シベリア高原、サヤン、ヤブロービ、スタノボイ山系からなる南部山岳地域、それから 東および北東山岳地帯がある。 ロシア連邦は旧ソ連領土の76%、人口の51%を受け継いでおり、東のベーリング海峡から西のカリ ーニングラード(バルチック海)の距離は9,000キロに及ぶ。国境は57,972キロで世界一の長さである。

出典:ARC レポート 2003

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2. 政治・経済概要 2-1. 政体 共和制、連邦制(共和国うあ衆等 89 の構成主体からなる連邦国家) 2-2. 元首 プーチン、ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ(2000 年 5 月就任) (任期4年、2期まで) 2-3. 議会 二院制…連邦院(=上院)、(=下院)の2院からなるロシア連邦議会 (連邦院:定数 178 連邦構成主体の行政・立法機関の代表各 1 名) (国家院:定数 450・任期 4 年:小選挙区、比例代表選挙制により半数ずつ選出) 2-4. 政治概況 ロシア国家の起源は、9 世紀にノルマン人の首リューリックがノヴゴロドに来て「ルーシの国」を 建てたことに始まる。13 世紀にはモンゴルの支配を受けたが、やがてモスクワ大公国が台頭し、15 世 紀のイワン雷帝の時にモンゴル支配を克服した。雷帝死後、動乱の時代を経てロマノフ王朝が成立。 ピョートル大帝(1682 年 即位)の時代にロシア帝国の基礎が築かれる。この帝国は、1917 年 2 月の 革命により崩壊し、変わって同年 10 月の革命でレーニン率いるボリュシェビキがソヴィエト政権を樹 立。その後周辺諸国を加えて 1922 年にソヴィエト連邦(ソ連)が成立した。 ソ連は、共産党の一党支配を基盤とする社会主義国家として 1960~80 年代には米国と覇を競うまで になったが、経済・社会は停滞。このような状況を打開するべく、1980 年代後半に登場したゴルバチ ョフ書記長の指導の下に「ペレストロイカ(建て直し)」政策が進められたが、国内の混乱を招き、 共産党支配が揺らぎ始めた。そして、1991 年 8 月の政変を契機として一気に崩壊が始まり、同年 12 月に解体。このソ連を引きついたのは、エリツィン大統領が率いるロシア連邦で、同大統領は民主化 と市場経済化のための大胆な改革に着手したが、多くの困難を伴い、結局 1999 年末に任期を待たずに 辞任した。その後 2000 年 3 月の大統領選挙でプーチンが勝利し、同年 5 月に第二代大統領に就任した。 同大統領は、市場経済化の路線とともに、混乱した政治状況を収束させるべく縦の権力体制の構築を 進め、政治的安定を達成。またロシア経済の好調と個人的人気もあり、2004 年 3 月 14 日の大統領選 挙で 70%以上の圧倒的得票率で再選され、同年 5 月に 2 期目の任期に入った。 プーチン大統領は「強い国」の建設を政権目標に掲げて国家権力を強化するべく種々の政策を実施。 エリツィン大統領時代に政治的混乱の要因となっていた議会勢力、知事等の地方エリート、財閥等を 抑え、政治的安定を達成。 ロシア連邦から独立を求めるチェチェン共和国の問題は、プーチン大統領にとって内政上の最重要 課題の 1 つの同共和国内ではこれまで 2 度に渡り大規模な紛争が起こり、現在でも小規模ながら紛争 は続いている他、2002 年 10 月に起こった劇場占拠事件といった一般市民を巻き込むテロ行為も続い ている。当面は同共和国内での大統領選挙の行方が注目される。 2-5. 主要産業 鉄鋼業、機械工業、化学工業、繊維工業、鉱業 (石油、天然ガス、石炭、鉄鉱業、金、ダイヤモンド等) 2-6. GDP 4,517 億米ドル 一人当たり 3,157 米ドル (2003 年ロシア統計国家委員会) 2-7. 通貨 ロシア・ルーブル(RUB)

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2-8. 為替レート 1US$=27.975RUB(2005/02 現在) 年末 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 1US$= 27.0000 28.1600 30.1400 31.7844 29.4545 (International Financial Statistics 2004) 2-9. 貿易 (2003 年 ロシア中央銀行) 輸出 1,359 億米ドル 石油、天然ガス、鉄、非鉄金属、機械設備等 輸入 754 億米ドル 機械設備、食料品、農産物 対日貿易(2003 年 財務省資料) 輸出 4,902 億円 アルミ・同合金、魚介類、木材、原油、石炭、石油製品等 輸入 2,040 億円 乗用車、建設鉱山機械、バス・トラック、通信機、鉄鋼等 2-10. 経済概況 安定した原油高に支えられて 2003 年の GDP 成長率は 7.3%と、5 年連続でプラス高成長を達成した。 経済の好調さを背景に、懸念されていた対外債務返済も着実に進み、鉱工業生産は前年値(3.7%)を大 幅に改善する 7.0%増、非鉄金属部門の伸びも 6.2%を記録した。なお、GDP に占める金属セクターの比 率は 17%とされる。(出典:CIS 統計委員会他)

3. 鉱業概要 3-1. 鉱産品目別生産量(2003 年) 鉱 種 ロシア(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク 銅鉱石(千 t) 665.1 13,675.6 4.9 6 銅地金(千 t) 818.4 15,236.7 5.4 5 鉛鉱石(千 t) 13.0 2,850.5 0.5 22 鉛地金(千 t) 63.0 6,864.7 0.9 20 亜鉛鉱石(千 t) 162.7 9,167.6 1.8 11 亜鉛地金(千 t) 267.6 9,806.5 2.7 12 ニッケル鉱石(千 t) 300.7 1,284.2 23.4 1 ニッケル地金(千 t) 273.3 1,208.0 22.6 1 ボーキサイト(千 t) 5,441.8 147,819.2 3.7 7 アルミニウム地金(千 t) 3,477.7 28,001.3 12.4 2 金鉱石(t) 176.9 2,349.4 7.5 5 銀鉱石(t) 240.4 18,207.5 1.3 13 アンチモン鉱石(t) 12,000 154,538.0 7.8 2 カドミウム地金(t) 650.0 16,873.4 3.9 9 モリブデン鉱石(千 t) 4.8 127.4 3.8 6 錫鉱石(千 t) 7.2 257.7 2.8 6

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錫地金(千 t) 7.6 273.4 2.8 9 ビスマス鉱石(t) 10.1 4,472.6 0.2 9 クロム鉱石(千 t) 68.0 15,826.9 0.4 10 コバルト地金(t) 4,654 43,028.0 10.8 3 マグネシウム地金(千 t) 40.0 503.0 8.0 2 水銀鉱石(t) 1,100.0 3,410.5 32.3 1 白金鉱石(t) 29.6 195.7 15.1 2 セレン地金(t) 81.0 2,264.5 3.6 7 テルル地金(t) 19.0 255.8 7.4 7 チタン鉱石(千 t TiO2) 15.4 4,221.0 0.4 11 スポンジチタン(千 t) 15.4 78.5 19.6 2 タングステン鉱石(t) 3,000 50,007.0 6.0 2 ウラン鉱石(t) 3,400 35,372.0 9.6 3 バナジウム(t) 9,000 60,000 15 3 出典: World Statistics YeMetal arbook 2004 バナジウム:Mineral Commodity Summaries 2004

3-2. 埋蔵量 鉱 種 ロシア(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク 銅(千 t) 30,000 940,000 3.2 10 ニッケル(t) 9,200,000 140,000,000 6.6 7 ボーキサイト(千 t) 250,000 33,000,000 0.8 10 金(t) 3,500 89,000 3.9 5 アンチモン(t) 370,000 3,900,000 9.5 2 カドミウム(t) 30,000 1,800,000 1.7 7 コバルト(t) 350,000 13,000,000 2.7 7 インジウム(t) 300 6,000 5.0 4 マグネシウム(千 t) 730,000 3,600,000 20.3 3 モリブデン(t) 360 19,000 1.9 6 白金族金属(kg) 6,600,000 80,000,000 8.3 2 レニウム(kg) 400,000 10,000,000 4.0 5 錫(t) 350,000 11,000,000 3.2 7 タングステン(t) 420,000 6,200,000 6.8 3 バナジウム(t) 7,000,000 38,000,000 18.4 3

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鉄鉱石(百万 t) 31,000 150,000 20.7 1 出典:Mineral Commodity Summaries 2004 3-3. 日本の主たる輸入鉱石等 我が国のロシアからの主要輸入金属鉱産物は、白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム等)の輸 入比率が高く、第 2 位の取引相手国となっている。また、タングステン精鉱も同様に第 1 位となって いる。更に、フェロアロイ等 2 次製品原料の他、多岐にわたる鉱産物を輸入している。 2003 年の輸入を金額で見てみると、パラジウム 17,391 百万円、白金 10,016 百万円、ニッケル地金 9,367 百万円などが大きく、アルミニウムを含めた非鉄金属全体の輸入額では 165,357 百万円と、対ロ輸入総額の 33.7%を占める。 日本のロシア連邦からの主要非鉄金属輸入実績(2003 年) 鉱 種 ロシア(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク 銅鉱石(千 t) 4 4,106 0.1 15 鉛鉱石(千 t) 2 184 1.4 7 亜鉛鉱石(千 t) 34 1,060 3.2 7 亜鉛地金(t) 0 41,148 0.0 12 ニッケル地金(t) 9,369 61,344 15.3 1 アルミニウム地金(千 t) 451 2,042 22.1 2 金地金(kg) 495 49,405 1.0 13 銀地金(t) 15 1,303 1.2 9 コバルト地金(t) 258 12,312 2.1 9 タングステン鉱石(t) 638 758 84.2 1 フェロクロム(千 t) 24 914 2.7 6 フェロバナジウム(t) 60 4,251 1.4 7 マグネシウム地金(t) 370 47,239 0.8 4 モリブデン鉱石(t) 258 32,766 0.8 8 白金族金属(kg) 27,933 130,526 21.4 2 金属クロム(t) 8 2,930 0.3 7 フェロニッケル(t) 20 56,947 0.0 5 金属マンガン(t) 0 64,184 0.0 8 希土類原料・製品(t) 0 25,705 0.0 16 出典:通商白書 2004

3-4. 鉱種別鉱業概要 3-4-1. 金・銀 小規模な漂砂金の生産量がほぼ半分を占め、大規模なものが多い鉱山からの鉱石による生産(クラス

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ノヤルスク地方とウラル地域では鉱山からの生産比率が高い)は 84.8t であった。全土では世界 5 位の 生産量である。主な生産地は以下のとおり。 ・ 極東地域 小計 77.4 t マガダン州:26.3 t ( 銀:632 t ) サハ共和国(ヤクーチヤ):20.3 t ハバロフスク地方:17.7 t アムール州:13.1 t ・ チュコト自治管区:4.8 t ・ 東シベリア地域 小計 57.6 t クラスノヤルスク地方:30.0 t イルクーツク州:13.3 t ブリヤート共和国:8.1 t チタ州:6.2t ・ ウラル地域 小計 11.1 t スヴェルドロフスク州:7.4t チェリャビンスク州:3.7t 生産企業としては、金生産者を積極的に取得・買収して傘下に持つ Norilsk Nickel 社(ニッケル、 パラジウムの世界最大手)が圧倒的な生産量(2003 年実績:41.2t(対前年比 37.3%増))を誇る。同社は 2004 年 3 月、南ア Gold Fields 社の権益 20%を 11.6 億 US ドルで取得するなど、金の生産にも本格的 に乗り出している。ロシア国内金生産者に関する同社の権益取得状況と 2003 年生産量を第 3-1 表に示 す。 第 3-1 表 Norilsk Nickel 社の権益取得状況 取得企業名 生産量 権益 取得時期 備考 (活動の拠点) (t) (%) Polyus 社 2 6 . 0 1 0 0 2 0 0 2 年 1 1 月 Olimpiada 鉱山(金埋蔵量 700t)を操業 (クラスノヤルスク地方) Lenzoloto 社 9.6 65.87 2003 年 7 月 100 か所以上の漂砂金を採掘 (イルクーツク州) Matrosov Mine 社 0.7 50.6 2003 年 8 月 Natalkinskoye 鉱床を開発中 (マガダン州) 他には、Polimetal 社が 10.7t、Russdragmet 社(Barrick Gold 社(加)が 29%所有)が 6.2t、Artel Stratel Amur 社が 6.1t を 2003 年にはそれぞれ生産している。最近の傾向として、外資が権益の過半 を持つ外資系鉱山からの生産が増えており、近年の金増産の主因となっている。(2004 年 4 月 9 日カ レント・トピックス<2004 年 10 号/JOGMEC>参照。) Polimetal 社(ロシア最大の銀生産ホールディング社)は、所有する Serebro Magadan 社(マガダン州) の Dukat(銀埋蔵量 14,810t)、Lunnoe(同 3,010t)両鉱山からの銀生産が非常に好調で、2003 年の生産

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量は 410t を記録、銀生産者として世界トップ 10 入りを果たした。同社によれば、2003 年のロシア全 体の銀生産量は 715~808t(数年来データ見直しがない World Metal Statistics とは相当の乖離あり) とされる。同社は、2003 年 9 月、生産者として初めて 1 年間の金輸出ライセンスを取得した。 現在のロシアにおける金鉱業の特徴として、生産された金の大半が商業銀行に買い取られ、輸出さ れている点を挙げることができる。 3-4-2. 銅(ニッケル、PGM) 銅は世界 6 位(ニッケル:1 位、白金:2 位)の生産量である。主な銅生産企業として、Norilsk Nickel 社、Urals Mining & Metallurgical Company(UGMK 社)及び Kyshtym Copper-Electrolyte Works(KMEZ 社)がある。 Norilsk Nickel 社(ロシア最大の銅生産者): 2002 年の生産量は、電気銅 450 千 t、電気ニッケル 218 千 t、PGM 対前年比 1%増であった。また、 2003 年には銅 467 千 t、ニッケル 309 千 t(生産量+備蓄量 64 千 t)を販売し、白金とパラジウムは Johnson Matthey 社の推測ではそれぞれ 32.7t と 91.8t を輸出したとされる。 活動の拠点は、東シベリア地域の Norilsk(クラスノヤルスク地方タイムィル自治管区)と、コラ半 島の Monchegorsk と Pechenga(ムルマンスク州)である。 Norilsk の 2 鉱山地域(Norilsk1、Talnakh- Oktyabrsky)では、前者は Zapolyarny と Medvezhy 鉱山 が、後者は Oktyabrsky、Komsomolsky、Taimyrsky の 3 鉱山が操業されており、鉱石は銅、ニッケル、 コバルト、PGM を含む。ここで生産される原料は、ロシア全体のニッケルとコバルトの 85%、銅の 70%、 PGM の 95%以上を占めるとされ、Norilsk と Talnakh の両選鉱場で銅・ニッケル精鉱が生産されている。 コラ半島の 3 鉱山(Tsentralny、Severny、Kaula-Kotselvaara)から採掘された鉱石(Cu:0.3~0.77%、 Ni:0.6~1.7%)は、Pechenganickel Mining & Metallurgical Combine で精鉱に処理される(同 Combine はトーリング方式で Cu・Ni マットも生産している)。 それぞれの精鉱から、Norilsk の製錬プラントでは電気銅、電気ニッケル、コバルトと貴金属精鉱が、 Monchegorsk の Severonickel Metall urgical Combine では電気銅、電気ニッケルと貴金属精がそれぞ れ生産される自給体制が確立されている。 2003 年 6 月、Norilsk Nickel 社は、北米でのパラジウムの販売を増やすため、米国唯一の PGM 生産 者である Stillwater Mining 社を買収(対価:100 百万 US ドル+パラジウム現物 877 千 oz)した。2003 年 12 月、同社は、毎年 300~450 百万 US ドル規模の投資を行う 2015 年までの生産計画を策定した。 ちなみに、2002 年投資額は 351 百万 US ドル(鉱山:117 百万ドル、選鉱:20 百万ドル、製錬:45 百万 ドル、エネルギー:20 百万ドル)であった。 同社は、2004 年 6 月、Talnakh-Oktyabrsky 地域とコラ半島 Zhdanovskoye 鉱床における資源埋蔵量 を初めて公表した[前者:鉱量 221.7 百万 t、Ni2.41%(Ni 量 5,335 千 t)、Cu4.12%(Cu 量 9,124 千 t)、 後者:鉱量 173.3 百万 t、Ni0.75%(Ni 量 1,302 千 t)、Cu 0.35%(Cu 量 600 千 t)]。

UGMK 社(ロシア第 2 位の銅生産ホールディング会社): 主な鉱石生産地と 2003 年生産量は、第 3-2 表のとおりである。

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第 3-2 表 UGMK 社の鉱石生産地 傘下企業名 銅精鉱 亜鉛精鉱 鉱山名 備 考 (拠 点) (t) (t) Gaisky GOK Gaiskoye & 76,182 11,797 (オレンブルク州) Letneye Uchalinsky GOK Uchalinsky& 46,000 106,854 UGMK 社 38% (バシコルトスタン共和国) Molodyozhny Safyanovskaya Med Safyanovskoye 30,145 - Uralelectromed社 の一部門 (スヴェルドロフスク州) (計画量) Svyatogor 社 Volkovsky & 25,168 3,374 (スヴェルドロフスク州) Turynsky Urupsky GOK Urupsky 6,368 - 計画量 (カラチャイ-チェルケス共和国) * GOK:Mining & Beneficiation Combine 2004 年 4 月、UGMK 社は、Gaisky GOK の主力である Gaiskoye 鉱山が採掘のピークを迎えたとして、 Letneye 鉱山第Ⅱ期拡張工事(5 年間で 120 百万 US ドルを投資し、鉱量 5 百万 t(Cu 3.08%、Zn 1.1%) を確保する計画)に着手した。同 GOK では、2009 年までに 8 百万 t/年の鉱石処理を可能とする選鉱設 備の更新・拡張計画も進められている。Svyatogor 社は、UGMK 社が開発中の Tarnesk 銅・亜鉛鉱床か らの鉱石を受け入れるため、2005 年末までに投資額 26 百万 US ドルで選鉱能力の増強(2.5 百万 t/年) を行うこととしており、他に Volkovsky 鉱山第Ⅱ期工事の計画もある。 UGMK 社の銅鉱石自給率は約 5 割とされるが、同社ではロシア全体としてカザフスタンやモンゴルに 銅精鉱を求めるのが難しい状況[カザフスタンでは国内製錬所で銅精鉱が消費され、ロシアの輸入量は 2000 年:96.8 千 t から 2003 年:0.6 千 t へ、モンゴルでは中国向けの輸出が増え、同じく 33.3 千 t から 11.8 千 t へそれぞれ減少。(以上、すべて精鉱量)]にある上に、鉱石不足(自山鉱が 10 年で枯渇 する見通し)という深刻な問題を抱えている。これを打開するために、新たな原料供給源として Udokan 銅鉱床(チタ州、銅量約 20 百万 t、Cu 1.5%)の開発権獲得に強い意欲を示している。また、銅・亜鉛 鉱石の産地であるバシコルトスタン共和国にも注目し、同国の非鉄金属鉱業振興に 354 百万 US ドルの 投資プログラムを提案、この見返りとして Buribayevsky GOK(銅-硫化鉄鉱石の採掘・選鉱コンビナー ト)、Bashkir Copper-Sulfer Combine(銅・亜鉛鉱石の採掘・選鉱コンビナート、亜鉛選鉱場(処理能 力 100 千 t/年)の建設を計画中)、Khaibullinskaya Mining 社(銅-硫化鉄鉱石の採掘会社、ロシア最 大級とされる Yubileinoye-Podolskoye 鉱床の開発ライセンスを所有しており、採掘・選鉱コンビナー ト建設を計画中)の政府所有分権益(順に 64.66%、79.78%、100%)を取得することで最近、同共和国政 府と合意した。

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同社の製錬拠点と 2002 年生産量を第 3-3 表に示す。 第 3-3 表 UGMK 社の製錬拠点 粗銅 電気銅 傘下企業名 拠 点 備 考 (t) (t) Uralelectromed 社 スヴェルドロフスク州 - 330,864 UGMK 社 53.3% Kirovgrad スヴェルドロフスク州 58,582 - Uralelectromed 社のポリメタル部門 Sredneuralsk Copper スヴェルドロフスク州 106,253 - UGMK 社 Works (SUMZ 社) 63.96% Svyatogor 社 スヴェルドロフスク州 61,491 - Mednogorsk オレンブルク州 31,072 - Copper-Sulfur Combine(MMSK 社)

Uralelectromed 社の 2003 年の電気銅生産量は、対前年比 9%減の 300 千 t であった。同社は、この 他に鉛、白金、セレン、テルルなどを生産している。2003 年 7 月、同社は Standard Bank などの国際 銀行団から、Glencore 社(スイス)への電気銅販売を条件として 60 百万 US ドルの 3 年ローンを受けて いる。また、同社では、150 千 t/年の新電解設備(70 百万 US ドル、建設期間 2.5 年)建設計画がある。

KMEZ 社(チェリャビンスク州): 粗銅を生産する Karabashmed(KMEZ 社 80%)を傘下に持つ。KMEZ 社は、2003 年にブリケット銅精鉱 140,430t(鉱石生産地等の詳細は不明)を生産した。これと、Karabashmed の粗銅(2003 年実績:45.6 千 t、Karabash Copper Combine から鉱石が供給される)とから、電気銅 78.8 千 t が生産された。同社 は、この他に白金、パラジウムなども生産している。KMEZ 社は、2003 年 8 月に総工費 30 百万 US ドル でスヴェルドロフスク州に竣工した Novgorod Metallurgical Plant(銅スクラップを原料として 40 千 t/年の電気銅を生産)との統合・再編の計画が伝えられている。

Ufaleinikel 社(チェリャビンスク州): ウラル地域の小規模な珪ニッケル鉱床を対象に操業している。2003 年にはニッケル 7,543t(対前年 比 23.4%増)、コバルト 2,408t(同 20.1%増)を生産した。 2004 年 2 月、同社は、ニッケル製錬の副原料となるコークスが中国需要の影響で高騰し、入手困難 になったとしてニッケル生産ラインの停止を余儀なくされた。なお、Norilsk Nickel 社からトーリン グ方式で精鉱が供給されているコバルトについては生産を継続している。 3-4-3. 亜鉛(鉛) 亜鉛は世界 11 位の生産量である。亜鉛・鉛精鉱には相当量の金・銀を含むことが多いため、これら

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精鉱の輸出に対して、政府は「貴金属を含む鉱物資源の輸出割当枠」を毎年定めている。鉱石生産地と しては、②銅の項で記した Uchalinsky GOK が最大であるが、その他生産地としては、第 3-4 表に示す とおり。 第 3-4 表 主な亜鉛(鉛)鉱石生産地(2004 年輸出割当枠より) コンビナート名 亜鉛精鉱 鉛精鉱 銅精鉱 備 考 (拠 点) (t) (t) (t) Dalpolimatall GMK(沿海地方) 50,000 15,000 - Nikolaevskoye 鉱山を含め 坑内 3 鉱山を稼行 鉛精錬能力(12 千t/年) Ormet 社 39,000 - 83,800 (オレンブルク州) Alexadrinskaya Mining 社 36,000 - 105,000 (チェリャビンスク州) Sibir-Polimetall 社(アルタイ地方) 30,000 15,000 33,000 Gorevsky GOK - 39,000 - (クラスノヤルスク地方) *GMK:Mining & Metallurgical Combine、いずれも精鉱量(gross wt.)

亜鉛製錬に関しては、外国のトレーダー等から供給される精鉱から地金を生産するトーリング方式 の生産企業が複数存在し、主な亜鉛地金生産者に、ロシアでのシェアが 6 割の Chelyabinsk Zink Plant(ChTsZ)と、第 2 位の Elektrotsink 社がある。2003 年の主な鉱石・精鉱の対ロシア輸出国は、 カザフスタン 105.6 千 t、アイルランド 39.6 千 t、メキシコ 14.7 千 t、テュニジア 12.0 千 t(以上、 精鉱量)などであった。 ChTsZ(チェリャビンスク州): 2003 年 7 月に Chelyabinsk Pipe Rolling Mill(ChTPZ)の一部門となった。2003 年末、Elektrotsink 社が UGMK 社に買収され、ChTsZ にとって最大の鉱石供給元(2003 年実績:106 千 t)であった Uchalinsky GOK と Elektrotsink 社とが系列に組み込まれた影響から、2004 年の調達可能な鉱石量は 40 千 t に留 まる見通し。このため、ChTsZ は、海外から鉱石 70 千 t を調達する輸入契約を Euromin SA 社(スイス) と締結する一方で、Gaisky GOK や Bashkortostan Copper-Sulfer Combine などからの国内調達量を増 やして対応する計画である。なお、2003 年の同社の電気亜鉛生産量は 177.3 千 t であった。 Elektrotsink 社(北オセチヤ共和国): 2003 年末、UGMK 社に買収され、2004 年には Uchalinsky GOK の亜鉛精鉱を主な原料として電気亜鉛 85 千 t、電気鉛 30 千 t、カドミウム 300t の生産を予定している。2005 年までに亜鉛生産能力を 110 千 t/年に拡張する計画がある。 なお、UGMK 社は、②銅の項で述べたバシコルトスタン共和国の非鉄金属鉱業振興プログラムの中で、

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年産 100 千 t の亜鉛電解設備の建設を計画している。 3-4-4. モリブデン、タングステン モリブデンは世界 6 位、タングステンは同 2 位(2002 年ベース)の生産量である。2003 年生産量とし て、モリブデン精鉱は前年比 17.0%減、モリブデン地金は同 75.2%減とのデータがある。主な鉱石生産 地は表 5.に示すとおりである。 Zhirekensky GOK は、2003 年 9 月からフェロモリブデンの生産を開始したが、それ以前は Chelyabinsk(チェリャビンスク州中心都市)と Vladikavkaz(北オセチヤ共和国中心都市)で精鉱を処理 した。Sorsky GOK はロシア最大のモリブデン生産者とされており、同様にフェロモリブデンを生産す る。両 GOK を所有する Soyuzmetallresurs 社は Siberian Aluminum 社の原料部門である。極東地域の Primorsky GOK はタングステン精鉱と銅精鉱を生産しており、Lermontovskaya Mining 社はモスクワの Volfram & Nalchik Hydrometallurgical Plant による買収の動きが伝えられている。

第 3-5 図 主な鉱石生産地一覧 タングステ コンビナート名 モリブデン 鉱山名 ン精鉱 備 考 (拠 点) 精鉱(t) (t) Tyrnauzsky GOK Tyrnauzskoye 240 1,000 2001 年 (カバルダ-バルカル共和国) Zhirekensky GOK Zhirekenskoye 3,000 - Soyuzmetallresurs 社 (チタ州) (生産能力) Sorsky GOK Sorskoye N.D. - Soyuzmetallresurs 社 (ハカシヤ共和国) Primorsky GOK Vostok-2 - 5,000 2003 年 (沿海地方) 銅精鉱 4,700t Lermontovskaya Mining 社 Lermontovskoye - 1,700 2002 年 (沿海地方)

3-4-5. アンチモン 世界 2 位の生産量である。③亜鉛(鉛)の項で記した輸出割当枠によれば、Sarylakh-Surma 社は 2003 年にアンチモン精鉱 14,000t の割当量があった。2004 年の割当量は 8,500t である。 3-4-6. クロム 生産量は世界 8 位である。西シベリア地域ヤマロ・ネネツ自治管区で Rai-Iz 鉱山を操業する Kongor-Khrom 社[Chelyabinsk Electrometallur- gical Combine(ChEMK:ロシア最大のフェロアロイ・ メーカー)と Yamal Mining 社の J/V]は、2003 年にクロム精鉱 60 千 t を生産し、2004 年には 250 千 t へと生産拡大を目指している。

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ChEMK は、2003 年にフェロクロム 645.1 千 t、クロム地金 38.2 千 t をそれぞれ生産した。 3-4-7. チタン 世界チタン生産の約 3 割を占める VSMPO-Avisma 社(VSMPO:スヴェルドロフスク州 Yekaterinburg、 Avisma:ペルミ州 Berezniki)がチタン製品(スポンジ、インゴット、圧延材等)を製造しており、2001 生産実績は 18.0 千 t であった。同社は 2002 年にチタン製品 10,520t を輸出した。

4. 鉱業行政 4-1. 地下資源利用ライセンスの改正 天然資源省では、①地質調査、②地質調査及び探鉱・開発、③探鉱・開発の 3 つのカテゴリーから なるライセンスに関して、①のみ有する事業者が引き続き探鉱・開発を行う場合に、応札してライセ ンスを取得するしか方法がない現状を改善すべく、入札なしで優先的に取得可能な改正を検討してい る。 すでに地下資源法の改正案が国会と連邦議会で承認され、現在、大統領の署名待ちとの情報がある (www.mineral.ru サイト他)一方で、法案は最終的な判断に達していないとする天然資源省の官僚談話 の記事(ヴェドモスチ紙)もある。改正案(アンダーライン箇所)の概要は、以下のとおり。 (1) 地下資源利用ライセンス(鉱業権)のうち、地質調査権は認可で、それ以外のライセンスは入札で 付与される(一定規模以上の大鉱床の場合、探鉱・採掘権は認可による取得が可能、との情報もあ る)ものとし、連邦地下資源管理基金はライセンス交付に責任を負う

(2) ライセンスの種類: 地質調査権(5 年未満)、探鉱・採掘権(鉱区毎に算定される期間)、地質調査&探鉱・採掘権(Combined license:鉱区毎に算定される期間)

(3) 地質調査権から探鉱・採掘権への移行優先権:認められる方向?

(4) ライセンスの譲渡:認められる方向?

(5) 鉱区情報:ライセンスの対象となる鉱区リストを整備する

(6) ロイヤルティ:採掘量に応じて以下の税率で売上に課税

・ マンガン、クロム:4.8% ・ 金:6.0% ・ 貴金属(白金族金属、銀):6.5% ・ 非鉄金属全般、レアメタル:8.0%

(7) 地下資源使用料:

・ 探鉱鉱区に関する定期払い:鉱種毎の 1km2当り単価に基づき鉱区面積に応じた額を納入(地 質調査は該当せず)

・ 採掘鉱区に関する一括払い:生産能力に基づき試算される採掘税額の 10%以上を納入 (JOGMEC カレントトピックス 2004/9/2)

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4-2. 天然資源課税の増税 鉱物やエネルギーなどの地下資源利用に対して増税(具体的には以下に示すような項目)が検討され ている。 ・鉱区使用税の引き上げ ・石油採掘税:1t 当たり 347 ルーブルから 400 に引き上げ(上院委員会が可決済み) ・鉱物採掘税の税率引き上げ ・石油輸出税に対する新税体系の適用(下院が 4/23 に可決) →ウラル原油価格 20~25 US ドル/バレル:20 ドルを上回った分に対して税率 45% 25 US ドル以上/バレル:25 ドルを上回った分に対して税率 65% ・ 金属鉱物に対する輸出税(過去 1999~2002 年まで、金には 5%課税された) 4-3. 税関法改正 2004 年 1 月、不透明で難解かつ不公正と国内外から指摘され続けてきた税関システムを、分かりや すく簡単な手続きにする大幅な改正がされた。これまでロシアへの投資や貿易促進の足かせの一つと もいわれ、ロシアが目指す WTO 加盟のためにも改正は不可欠と見られていた。要点は、①書類審査期 間の短縮、②事前書類審査の導入、③優良業者に対する手続き簡易化、④自社倉庫での通関の導入 な どが挙げられ、物流事情の好転が期待されている。 4-4. 貴金属を含む鉱物資源の輸出割当枠 主要鉱産物の生産動向、③亜鉛(鉛)の項を参照。毎年、政府決定がなされることになっており、割 当量の承認を受けた生産者は精鉱等の輸出が可能になる。 4-5. 貴金属の輸出ライセンス 主要鉱産物の生産動向、①金・銀、②銅(ニッケル、PGM)の項及び文末脚注のⅰ・ⅱを参照のこと。 PGM については、ロシアの WTO 加盟に向け、独占体制を見直すために現行の輸出方式を変更する動き がある。 4-6. PGM 情報の開示 国家機密法が開示を禁じている PGM 情報(埋蔵量や生産量・輸出量などのデータ)を公表する動きが あるが、開示法案に大統領が署名したとか、政府がデータの一部公表を決定したなどと伝えられるよ うに、開示動向の情報は錯綜している。 4-7. 地下資源利用ライセンスの入札 ①Udokan 銅鉱床、②Sukhoi Log 金鉱床(イルクーツク州:金埋蔵量 1,029t(品位 Au 2.7g/t)、最近 の調査で PGM、銅・コバルトを伴うことも明らかになっている)の 2 大鉱床開発に関して、連邦政府(関 係省庁)と地方政府の間で、公募(コンクール)によるか競売(オークション)とするか、応札者はロシア 企業に限定するか否かなど、入札方法と実施時期を巡って紆余曲折が続いている。ちなみに、前者に は Norilsk Nickel 社、UGMK 社や Kazakhmys 社(カザフスタン)などが関心を示し、後者は Norilsk Nickel 社、Barrick Gold 社(加)、Fleming Family & Partners 社(英)などが関心を示しているとされる。

5. 鉱業関係機関

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5-1. 政府機関 2004 年 8 月、天然資源省の改組が行われた。同省幹部によれば、改組の主な内容は、(1)天然資源 省の政策実施機能を 3 つの独立エージェンシー(連邦庁)に分割する、(2)各連邦庁は、地方部局と連携 して所管分野の業務を実施する、(3)連邦管理局は、天然資源省の傘下で、天然資源及び環境保護に関 する国家管理と、各連邦庁の業務の監督を行う、の 3 点。 地下資源使用連邦庁は、地下資源法の策 定を所管し、地下資源利用ライセンスの審査や交付等に関する業務を担当する。地方部局を除く同連 邦庁の人員は約 130 名。

6. 投資環境 6-1. 外資政策 投資促進に関しては、2000年5月に発足した経済発展貿易省が所管。従来の商業省、経済省、CIS 担当省、連邦為替輸出管理局、国家北方問題委員会、体育・スポーツ・観光省等が有した機能の一部 を継承している。

外資に関する奨励 奨励業種:天然資源の開発投資には、生産分与契約(PSA)法がある。投資保護法には奨励業種の定 義は明記されていない。その他の業種への投資については、個別に大統領令や地方政府の法令により 優遇税制が規定されている場合がある。 各種優遇措置:製造設備投資は、地方政府が一定期間、法人税や地方税の優遇税を定めている場合が ある。各優遇措置には、法人税の減免、原材料輸入の関税減免、機械設備等の資本財輸入に関する優 遇措置が含まれる。

外資に関する規制 規制業種・禁止業種:特定産業(軍需工業、旅客航空業、保険業、地下資源の開発など)には、外資 の出資比率に制限がある。 出資比率:100%外資出資の現地法人(有限会社や株式会社)を設立可。

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外国企業の土地所有の可否:2001年10月に採択された土地基本法では土地の所有権を外国人にも認め ている(ただし、同基本法第1条第6項によると、農地、一部森林地域、自然保護地域などは対象外と 規定)。 資本金に関する規制:外国企業が株式会社を設立する場合の最低資本金は、月額の法廷最低賃金(2002 年5月から450ルーブル)の1,000倍。有限会社を設立する場合の最低資本金は、月額最低賃金の100倍。 その他の規制:優遇税制の適用条件に、現地調達率の規制がある場合あり。

税 制 法人税:法人税に相当するものとして企業利潤税があり、最高税率は2002年1月より35%から24%に 引き下げられた。 二国間租税条約:1986年の日ソ租税条約を継承している。配当、利子、ロイヤルティについては源泉 国で課税されることもあり、日ロ租税条約では各々15%、10%、10%に減免。 その他税制:連邦税、地方税等、合計40種類以上の税がある。主な税には、付加価値税(20%、国税 基本法の修正で2004年から18%に引き下げる見込み)、道路税(2001年より1%に軽減)、消費税(5%)、 個人所得税(2001年より13%に軽減)、統一社会保障税、資産税(2%)などがある。

現地での資金調達制度 ロシア中銀からフルバンキング・ライセンスを取得している銀行は700行以上あるが、いずれも資産 規模は小さい。1998年8月の金融危機以来、銀行の信用創造機能は回復しておらず、国内ローンは大 半が1年未満の短期ローン。

為替管理と外貨交換制度 ロシア国内の外貨建て決済は禁止。ロシア企業が輸入代金を前払いした場合、90日以内に商品を輸 入する義務あり。ロシア企業が、商品を輸出した場合、90日以内に外貨を受領し、その外貨の50%を 公認銀行を通じてルーブルに転換する義務がある。

技術・工業および知的財産権供与にかかわる制度 知的所有権に関する法律は採択されたが、ロシア国内では必ずしもその法律が順守されていないこ とが指摘されている。今後、WTOへの加盟交渉に際し、知的所有権の保護の問題が多くの議論を呼ぶ ものと思われる。

外国企業の会社設立手続き・必要書類 会社設立書類(定款など)、出資者の書類(登記簿抄本、定款、取引銀行からの推薦状等)、資本 金払込証明書、他に数多くの書類を要し、いずれもロシア語訳が必要。なお、会社の設立には数ヵ月 を要する。

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6-2. 通関 WTO加盟申請中(1994年申請)であり、現状のステータスはオブザーバー。CIS関税同盟。

貿易管理制度 管轄官庁:経済発展貿易省(http://www.economy.gov.ru)、国家税関委員会(http://www.customs.ru)、 ロシア中央銀行(http://www.cbr.ru)、ほか。 輸入品目規制:貴金属、医療品、カーペット、殺虫剤、工業廃棄物、武器の製造に利用できる可能性 のある機械、技術、材料などをロシアに輸入する際には、ライセンスが必要。 輸入地域規制:国連が経済制裁として貿易取引を規制する国を除き、特になし。 輸入関連法:1993年の関税法が貿易取引に関する基本原則を規定。国家税関委員会の法令、税法、付 加価値税法、物品税法及びその他においても輸入取引を規定。 輸入管理その他:日本からの輸入については特に規制なし。 輸入品目規制:魚、甲殻類、宝石、貴金属、天然資源、軍事用の機械や兵器、化学・技術情報、特定 の木材、皮、油性植物の種、医療品などの輸出にはライセンスが必要。 輸出地域規制:国連が経済制裁としての貿易取引を規制する国を除き特になし。 輸出関連法:関税法、国家税関委員会の法令、他。

関税制度 管轄官庁:国家税関委員会。 関税率問い合わせ先:国家税関委員会。 関税体系:基本税率(最恵国税率)、開発途上国を原産国とする商品に基本税率の75%、後発開発途 上国は免税。ただし、CIS諸国からの商品輸入については関税同盟に基づき輸入税が免税されている 場合あり。 品目分類:HS分類。 関税の種類:従価税、従量税、あるいはこれらの併用。 課税基準:関税法に基づき算出される通関価値に対して課税。通常は、ロシアで通関手続きを行う国 境までCIF価格に対して課税。 対日輸入適用税率:基本税率(最恵国税率)。 特恵等特別措置:CIS関税同盟加盟国からの輸入に免税が適用(ただし、砂糖など例外あり)。 関連法:1993年の関税率法が関税、通関価格、原産国の定義などを規定。 関税以外の諸税:付加価値税(通常は18%、一部10%や0%に軽減)、物品税、通関手数料(通常は 通関価格の0.15%)天然ガス輸出税30%等。

為替管理制度 管轄官庁/中央銀行:ロシア中央銀行。 為替相場管理:管理変動相場制。MICEX(Moscow Interbank Currency Exchange)における外為取

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引価格に基づき、中銀が公定為替レートを決定。 貿易取引:ロシアへの輸出代金は米ドル、ユーロ、円など銀行を通じて外貨で受領。ルーブルは国際 決済通貨ではない。ロシア企業から資金受領後、90日以内のデリバリーが義務付けられている。 貿易外取引:ロシア企業がサービスの輸入に際して1万ドル以上の外貨を支払う場合には、サービス契 約書とインボイスに加え通貨管理局の許可証が必要。 資本取引:資本投資については、中央銀行の許可または届け出が必要。ロシア現地法人が180日以上の 外貨建てローンを受領する場合、中央銀行の許可が不要となる。 関連法:「外貨規制および外貨管理について」(1992年)、中央銀行書簡第352号「外貨建て取引に 関する基本原則」、ほか。 その他:中央銀行・国家税関委員会命令第86号-Ⅰ、01-23/26541「輸出取引から獲得した外貨の規 制について」

輸出入手続き 輸出入許可申請先:輸出入ライセンスの申請には、通常、経済発展貿易省へ申請。製品によっては、 農業省、国家規格・度量衡委員会、保健省等へも申請。 必要書類等:通関の委任状、運送関連書類、通関価値を証明する書類(要求があった場合)、配送書 類、輸出入パスポート、取引契約書、関税が支払われる旨を証明する書類、ほか。 査 証:特になし。

6-3. 金融 1995年の中央銀行法は通貨政策の目標を通貨防衛、インフレ抑制による対外支払いの保証、商業銀 行の監督においている。 ルーブルの対外レートについて中銀は、1999年以来管理フロート政策をとってきた。公の政策はフ ロートであるが、中銀による為替安定の手段は外為市場に積極的に介入し、ルーブルを名目価値で徐々 に引き下げることであり、ルーブルの急激な上昇を阻止するため市場に介入した。この政策は産業界 からは概ね評価されている。 近年は経常勘定に外貨の大量の流入がみられ、中銀の市場介入と相伴って外貨準備高は急激に積み 上ってきた。中銀には対外債務支払いに見合う十分な外貨準備の確保と対外レートの安定という役割 りが負わされている。1999年の経常勘定余剰の上昇は債務返済やその他の対外支払いを帳消しにして、 なお、外貨準備に流入したが、それでも100億ドルを下回る低水準にあった。経常勘定の内容が改善し たことで結果的にルーブルの対外レートとマクロ経済への信頼が高まり、2000年以降年間の対外債務 返済額が上昇しているにも拘わらず外貨準備高は急激な増加に転じ、1999年末の84億ドルから2000年 末は242億ドル、2002年末440億ドル、2003年2月以降は500億ドルの大台を超えている。(いずれも金 は除く) 1992年に2,500%に達したハイパーインフレは1997年末には11%にまで収束させることに成功した が、1998年夏の金融為替危機で再び2桁台に急上昇した。即ち、1998年6月のインフレ率(消費者物価

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上昇率)6.4%から同年末には84.5%となった。その後はハイパーインフレが懸念されたものの1999 年央は36.5%へ、2001年末には18.6%まで引き下げられ、インフレ抑制に成功している。(2002年末 は15.0%) 規制されない大量の外貨の流入でマネーサプライの急速な伸びが統制価格(住宅費、運賃、エネル ギー価格)の引き上げと連動して、2001年以来強いインフレ上昇圧力となっていた。中銀は急増する 外貨を国内の金融市場と分離せず通常の手段で買い取っていたため、市場でのマネーの伸びは高水準 となった。マネーサプライ(ルーブル)の伸びは2000年後半には60%近くまで上昇したが、2001年末 には40%へ低下、2002末は32.3%にある。 2003年に入るとマネーサプライの伸びは増加に転じている。同年9月の対前年同期比伸び率は48%に 上昇、また1~8月でみても26.6%で前年同期の13.1%の倍に達している。マネー供給上昇要因として 先ず原油価格高による貿易黒字の拡大を通して外貨準備がかさ上げし、さらに第2四半期に民間部門へ の資本流入がネットで積み上ったことが指摘される。 マネーサプライの大幅な増加という事態でも政府と中銀はインフレを抑えることに成功している。 その要因として、①1999年以来経済予測と経済成長に安定性がみられるようになりルーブル通貨への 需要が伸び、市中の余剰ルーブルを吸収できる経済規模と成長力が生まれる一方、市中でのマネーの 流動が経済の安定に伴い減速していること、②財務省が予算余剰分の多くを中銀の政府勘定に預ける ことで市中のマネーを引き締めたこと、の2つの要因が考えられている。政府によるこの“安定化ファ ンド”は石油価格の変動による財政収支の不安定に対処し、対外債務支払いを保証する。さらに、経 常勘定余剰がもたらすインフレ上昇圧力を緩和する効果も期待できる。 ロシア金融市場における金利は1990年代後半は政治・経済の不安定、財政の大幅赤字、債権市場に おける外資参入の制限、などを反映して全般に上昇し、中銀の政策金利(リファイナンスレート)は 1998年60%、99年は55%の高水準にあったが、ロシア経済の安定に伴い同金利は引き下げられて2000 年及び2001年は25%に低下し、2002年はさらに21%に下るなど市場では一般金利がリファイナンスレ ートを下回っていた。市中銀行の企業向貸し出し金利は商業銀行の顧客獲得競争の激化で2000年 24.43%、2001年17.91%、2002年15.70%へ低下してきている。預金金利も2000年の6.51%が2002年は 4.95%に下がった。 政策金利は 2003 年には 2 回の引き下げを経て過去最低の 16%となっていた。中銀は 2004 年 1 月 15 日にこれを 14%に引き下げた。中銀の貸出金利の引き下げはロシア経済が安定したことを示している。

6-4. 労働 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用 外国人就業規制:外国人がロシアで働く場合、労働許可の取得を必要とする。しかし、外国人が外国 法人(駐在員事務所や支店)で働く場合には、その外国法人の認証機関からの許可証を労働許可に代 行している例がみられる。 在留許可:外国人がロシア現地法人で働く場合、長期滞在ビザ(ロシア国外へ外出するつど、許可を 要す)の取得が必要。便宜上、1年間の商業用数次ビザを取得し、出入国する例がみられる。外国人が

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駐在員事務所で働く場合には、1年間の数次ビザの取得可。 現地人の雇用義務:最低雇用人数は特に定められていない。

6-5. 治安 2004 年 8 月から 9 月にかけて、ロシア国内においてチェチェン情勢に関連すると見られるテロ事 件が連続して発生している(2004 年 8 月 24 日旅客機 2 機の爆破事件、同 8 月 31 日モスクワ市北部 地下鉄駅周辺での爆弾テロ事件、同 9 月 1 日北オセチア共和国の学校占拠事件)。これらの事件は、 いずれも、チェチェン武装勢力が起こした疑いが強く、今後とも同様のテロ事件が続く可能性がある。

6-6. 交通 道路状況をみると、2002年で総延長92万キロ以上に達するがその多くは質が悪く地方の村落の道路 の40%は未舗装となっている。主要道路の3分の1で重量制限、時速40キロ以下の速度制限が課されて いる。道路を通過した車輛総重量は220億トン・キロメーターであり1990年の3分の1を割っている。 輸送インフラとしての道路の悪化が進み、またハイウェイでは強盗団の襲撃が増えていることが原因 とみられる。西側でみられる高速道路のネットワークは未だないが、サンクトペテルブルグ、モスク ワ、ミンスク及びロストフの4大都市を結ぶ高速道路は完成している。政府は世銀やEBRDの協調融資 を得て道路建設の主要プロジェクトを立ち上げているが、計画の前進には国内における金融機関の公 共融資の活発化、民間資本参加の明確なルール作りが必要となる。 ロシアの鉄道は全土で14万9,000キロ、うち8万7,000キロが公共サービス、6万2,000キロは特別な 産業用鉄道である。公共鉄道部分の45%は電化されている。2001年初、政府は3段階の鉄道リストラ 計画を発足させており国有鉄道の一部を2010年までに民営化する予定となっているが、ロシアでは鉄 道は重要な輸送手段で、かつ150万人が雇用されるという戦略的産業と位置づけられており計画の進行 は遅れている。 国土が広大なため航空は国内の重要な輸送手段であり、2000年は530億乗客キロメートルの実績で あるが、1990年の3分の1にすぎない。全飛行の4分の3に旧ソ連製航空機が使用され、民間航空機の約 半分は使用期間が15年を超えており運行上の安全性が問題となっている。政府は民間の航空会社の航 空機更新を促進するためのリースの導入や金融支援を開始した。

6-7. 電力 国内には9つの原子力発電所(29の原子炉)が存在し、発電可能総量は約21ギガワットである。原 子力発電は、ロシア国内の遠隔地に立地した産業向けに電力を供給するうえで大きな役割を果たして いる。資金難により、原子力発電所の維持・修繕が遅れ気味である。しかし、原子力発電所における 1997年の事故発生率は米国、日本に次いで世界3位の低さであった。

燃料・エネルギー関連品目の生産量

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1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 原油(100万トン) 318 307 301 306 303 305 324 348 379 421 天然ガス(10億立方米) 581.0 570.0 575.0 544.0 564 563 584 581 595 616 石炭(100万トン) 272.0 263.0 257.0 245.0 232 249 258 270 253 - 電力(10億kWh) 876.0 860.0 847.0 834.0 827 845 878 891 889 - 火力発電 601.0 583.0 583.0 567 564 562 - - - - 水力発電 177.0 177.0 155.0 158 159 161 - - - - 原子力発電 98.0 100.0 109.0 109 104 122 - - - -

〔出所〕CIS Statistical Yearbook

7. 地質・鉱床概要 ロシア共和国はヨーロッパ大陸からアジア大陸にわたる広大な地域を占め、地質構造区分について も多くの異なった説があり、その地質構造全体を要約して説明することは極めて困難である。ここで はNalivkin(1962)“Geology of USSR"(Rast英訳)に従い、旧ソ連をロシア卓状地、シベリア卓上地、 西シベリア低地、ウラル地向斜、アンガラ地向斜、中央アジア地向斜、地中海地向斜、太平洋地向斜(第 7-1図)に区分した。なお、第7-2図にはロシア全域の地質概要図を示した。

第7-1図 旧ソ連の地質構造図(金属鉱業事業団(1995))

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第 7-2 図 旧ソ連の地質概要図(金属鉱業事業団(1995))

8. 鉱山概要(操業鉱山) 8-1. Olimpiada鉱山 国名/地域 :/ クラスノヤルスク(Krasnoyarsk)地方 名前 :Olimpiada 位置 :Krasnoyarsk 会社名(権益比率):Polyus 社( Norilsk Nickel 社 100%) 埋蔵鉱量 :資源量 135百万t 5.200g/t Au 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年:1996 年 粗鉱生産量 品位 金属量 Mt g/t Au t Au 1999 3.5 5.00 15.700 2000 3.359 5.00 14.500 2001 5.824 5.00 15.600 2002 5.127 5.00 25.080 2003 6 e 5.00 26.000 Raw Materials Data August 2004

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採鉱法 :露天掘 備考 :増産計画あり。

8-2. Gaysk Mining JSC 鉱山 国名/地域 :Russia/ Gay Orenburg 名前 :Gaysk Mining JSC 位置 :Gay Orenburg 会社名(権益比率):Urals Mining & Metals 鉱床 鉱種 :Cu 生産量 (直近5ヵ年) 年 金属量 t 1999 50,000 e 2000 55,000 e 2001 66,200 2002 68,500 2003 76,200 Raw Materials Data August 2004 8-3. UGMK 社関係鉱山 国名/地域 :Russia/各地 名前 : Gaisky GOK (オレンブルク州) Gaiskoye & Letneye鉱山 Uchalinsky GOK (バシコルトスタン共和国) Uchalinsky & Molodyozhny鉱山 Safyanovskaya Med (スヴェルドロフスク州) Safyanovskoye鉱山 Svyatogor 社 (スヴェルドロフスク州) Volkovsky & Turynsky鉱山 Urupsky GOK (カラチャイ-チェルケス共和国) Urupsky鉱山 会社名(権益比率):Urals Mining & Metallurgical Company(UGMK社) Uchalinsky GOK(UGMK 社38%) 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年: 精鉱生産量 銅精鉱 亜鉛精鉱 Gaisky GOK (オレンブルク州) Gaiskoye & Letneye鉱山 76,182t 11,797t Uchalinsky GOK (バシコルトスタン共和国)Uchalinsky & Molodyozhny鉱山 46,000 106,854 Safyanovskaya Med (スヴェルドロフスク州) Safyanovskoye鉱山 30,145 - Svyatogor 社 (スヴェルドロフスク州) Volkovsky & Turynsky鉱山 25,168 3,374 Urupsky GOK (カラチャイ-チェルケス共和国) Urupsky鉱山 6,368 -

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8-4. Uchalinsk Mining JSC 鉱山 国名/地域 :Russia/Uchaly 名前 :Uchalinsk Mining JSC 位置 :Uchaly 会社名(権益比率): State of Russia 26.4% Glencore 11.3% 鉱床 鉱種 :Cu Zn 生産量 (直近5ヵ年) 年 金属生産量 t Cu Zn 1999 28,000t e -- 2000 28,000 e -- 2001 33,500 88,800 2002 49,300 e 101,000 2003 46,000 106,900 Raw Materials Data August 2004 採鉱法 :露天掘

8-5. Zhdanovskoe, Zapolyarnoye, Kaula, Kotselvaara 鉱山など 国名/地域 :Russia/Kola半島 名前 :Zhdanovskoe, Zapolyarnoye, Kaula, Kotselvaara 鉱山など 位置 :Kola半島のMonchegorsk とPechenga(ムルマンスク州) 緯度・経度 : Zhdanovskoe 北緯 69 度 19 分 東経 30 度 20 分 Zapolyarny 北緯 69 度 19 分 東経 30 度 20 分 Kaula 北緯 69 度 19 分 東経 30 度 20 分 Kotselvaara 北緯 69 度 19 分 東経 30 度 20 分 会社名(権益比率):Norilsk Nickel 社 鉱種 : Ni Cu Co Pd 埋蔵鉱量・品位: 1)資源量 2004 年6 月 Zhdanovskoe 鉱床 173.3 百万t Ni0.75% Cu 0.35% 金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の鉱業の趨勢 JOGMEC 2)鉱量 (1996 Roskill) Zhdanovskoe 2.5 百万 t 0.61%Ni

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Zapolyarnoye 2.13%Ni Kaula 1.56%Ni Kotselvaara 1.10%Ni 住鉱コンサルタント株式会社(2001): 世界のニッケル -資源の実態とその問題点― 鉱床タイプ :正岩漿性ニッケル硫化物鉱床 地質概要 :鉱床の多くは北西から南東に伸びる早期原生代のグリーンストン帯の Pechenga 地区、 Monchegorsk 地区などに賦存する。グリーンストン帯はピクライト、玄武岩、安山岩、アル カリ岩、および各種の堆積岩からなり、その厚さは 16,000mにも達するといわれる。Pechenga 地区には 20 以上の鉱床が知られる。この地区では蛇紋岩化した橄欖岩、輝岩および斑レイ 岩が層状岩体の主部を構成する。鉱体の多くは厚い橄欖岩の下部に伴われる。鉱体は層状, 板状、レンズ状が一般的で、走向延長よりも傾斜延長方向に比較的良い連続性を示す。 鉱石鉱物はペントランダイト、黄銅鉱、磁硫鉄鉱、斑銅鉱、キューバナイトであり白金族 鉱物は極めて僅かである。

鉱化作用の年代:早期原生代 生産量 (直近 5 ヵ年)Zapolyarny Mine 年 粗鉱生産量 品位 金属量 Mt % t 1999 - Ni 30,000 e - Cu 20,000 e 2000 7.374 0.50 Ni 30,000 0.30 Cu 15,000 2001 7.644 0.60 Ni 30,000 0.30 Cu 13,000 2002 6.908 0.70 Ni 32,000 0.30 Ni 14,000 2003 6.618 0.70 Ni 35,000 0.30 Cu 15,000 Raw Materials Data August 2004 採鉱法 :坑内掘・露天掘

8-6. Norilsk―Talnakh 国名/地域 :Russia/東シベリア地域のNorilsk―Talnakh 名前 :Oktyabrsky 、Komsomolsky 、Taimyrsky、Severny鉱山など 位置 :東シベリア地域のNorilsk(クラスノヤルスク地方タイムィル自治管区)

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緯度・経度 : Komsomolsky 北緯 69 度 30 分 東経 88 度 25 分 Oktyabrsky 北緯 69 度 30 分 東経 88 度 25 分 Severny 北緯 69 度 30 分 東経 88 度 25 分 Taimyrsky 北緯 69 度 30 分 東経 88 度 25 分 会社名(権益比率):Norilsk Nickel 社 鉱種 :Cu Ni Co PGM 埋蔵鉱量・品位:出典により鉱量が異なる。 1) 2004 年6 月 Norilsk社発表 Talnakh-Oktyabrsky 地域 221.7 百万t Ni2.41% Cu4.12% 金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の鉱業の趨勢 JOGMEC 2) USGS(1998)はロシア全体の埋蔵鉱量を 13.9 百万t(Ni 金属量)と推定しているが、その ほぼ 60%が Norilsk 地域であるとされることから(Roskill 1996)、約 8 百万 t が賦存 しているものと見積もられる。 鉱床別品位; Komsomolsky 2.7%Ni ktyabrsky 0.79%Ni 住鉱コンサルタント株式会社(2001): 世界のニッケル -資源の実態とその問題点― 3) Komsomolsky 21.7 百万 t 2.62%Cu 1.05%Ni Oktyabrsky 91.3 百万 t 5.60%Cu 1.95%Ni Taimyrsky 75.1 百万 t 3.16%Cu 2.86%Ni Raw Materials Data August 2004

鉱床タイプ :正岩漿性ニッケル硫化物鉱床 地質概要 :シベリア卓状地の北西端に位置する。この地域は二畳紀後期から三畳紀前期にかけて噴出 したいわゆる“洪水(flood)玄武岩”の北西端に当たり、玄武岩溶岩、凝灰岩とそれらに貫 入する超苦鉄質~苦鉄質岩床群によって特徴付けられる。 鉱床は斑レイ岩と粗粒玄武岩を母岩とする。成因は、Norilsk-Kharayelakh 断層に沿って 上昇したマグマが垂直方向に拡がったマグマ溜りを形成し、その下部に大量の硫化物メルト が不混和現象によって沈積し、それらが分化したピクライト質マグマとともにシル状に貫入 したといわれる。鉱石は Ni,Cu 以外に、多量の PGM 特に Pd が濃集している。Pt:Pd は 1:3 に近い。

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鉱化作用の年代: 二畳紀―三畳紀 発見の経緯 :1920 年代 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年: 1948 <Komsomolsky> 年 粗鉱生産量 品位 金属量 Mt % t 1999 Ni 40,000 e Cu 30,000 e 2000 1.948 1.20 Ni 22,000 e 2.30 Cu 40,000 e 2001 2.160 1.20 Ni 24,000 e 2.30 Cu 40,000 e 2002 2.403 1.20 Ni 24,000 2.30 Cu 39,000 2003 2 e 1.20 Ni 27,000 2.30 Cu 57,000 Raw Materials Data August 2004

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<Oktyabrsky> 年 粗鉱生産量 品位 金属量 Mt % t 1999 Ni 100,000 e Cu 230,000 e 2000 4.533 2.00 Ni 80,000 e 4.50 Cu 195,000 e 2001 4.718 2.00 Ni 83,000 e 4.50 Cu 190,000 e 2002 4.739 2.00 Ni 84,000 4.00 Cu 173,000 e 2003 4.884 2.00 Ni 100,000 4.00 Cu 275,000 Raw Materials Data August 2004 <Taimyrsky> 年 粗鉱生産量 品位 金属量 Mt % t 1999 Ni 60,000 e Cu 40,000 e 2000 2.679 2.30 Ni 55,000 e 2.20 Cu 60,000 e 2001 2.763 2.30 Ni 58,000 e 2.20 Cu 60,000 e 2002 2.925 2.10 Ni 58,000 2.20 Cu 59,000 e 2003 2.971 2.10 Ni 71,000 2.20 Cu 92,000 e Raw Materials Data August 2004 Norilsk地域の鉱床群はNorilsk鉱床とTalnakh鉱床からなる。Norilsk鉱床の鉱量は既に枯 渇に近づいており、生産はTalnakh鉱床に属するOktyabrsky, TaimirskyおよびKomsomolsky の3鉱体に集中している。OktyabrskyとTaimirsky鉱床からの粗鉱生産量は5.6百万t/年、平均 品位は塊状高品位鉱体を採掘しているため2.7%Niと高い(Roskill,1999)。これに対し Komsomolsky鉱床は粗鉱生産量は2.0百万t/年、品位は鉱染状鉱石を主体に採掘しているため 0.8~1.0%Niと低い。

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採鉱法 :露天掘および坑内掘 副産物等 :Ni Co PGM

文献 ・ Alexander Yakubchuk(2002): MMAJ Forum

8-7. Dalpolymetal 鉱山 名前 :Dalpolymetal 位置 :ナホトカ北東約 300Km のシホテアリン山脈東斜面のダルネゴルスク市およびそ の周辺に位置する。鉱山から川沿い 25Km で日本海に達する。 会社名(権益比率): Dalpolymetal 鉱床 鉱種 :Pb Zn Ag 埋蔵鉱量 :(年間採掘量約 100 万 t で)約 25 年分位の鉱量がある。 (財)国際鉱物資源開発協力協会(2002) 鉱床タイプ :スカルン型 地質概要 :鉱山は 4 鉱床よりなる。これらは白亜紀前期の付加体に含まれる異地性の三畳紀 の石灰岩を交代したスカルン型銀・鉛・亜鉛鉱床である。鉱床は板状、レンズ状、マント状、脈状な

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どさまざまな形態の鉱床からなる。白亜紀後期~暁新世の酸性火山活動が鉱化作用をもたらしたもの と考えられている。4 鉱床の内最大のニコラエフ鉱床の主要鉱体は地下 700-1,200mにあり、全体と して約 45 度傾斜した板状の鉱体であるが、一部パイプ状に深部に伸びる複雑な構造を示す。他の 3 鉱床は 300-400mの深度にある。 鉱石鉱物は方鉛鉱、閃亜鉛鉱、磁硫鉄鉱を主とし、少量の硫砒鉄鉱や黄銅鉱などを伴う。脈石鉱物 はヘデン輝石、ざくろ石、斧石などのスカルン鉱物および石英、方解石からなる。 鉱化作用の年代 :白亜紀後期~暁新世 発見の経緯 : 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年: 1897 年 粗鉱生産量 品位 精鉱品位 Mt % % 1999 1 2-3%Pb 62-74%Pb 2%Zn 50%Zn 50g/tAg 1,500g/tAg 2000 2001 2002 2003 (財)国際鉱物資源開発協力協会(2002) 採鉱法 :坑内掘り。 選鉱法 :亜鉛精鉱および銀・鉛精鉱を生産。1998 年には亜鉛精鉱の 80%が日本に輸出さ れた。

9. 新規鉱山開発状況 9-1. Norilsk Nickel 社 Natalkinskoye 金鉱床(マガダン州) 探鉱が終了して F/S 中。2004 年 4 月の発表によれば、18 か月以内に選鉱場の建設(50 百万 US ドル) に着手する見込み。金ポテンシャル量 1,500t とされる。 Titimukhta 金鉱床(クラスノヤルスク地方) 2003 年 12 月に探鉱・開発ライセンスを取得した。2005 年度までに調査を終え、2007 年には年産 2t の金を生産する予定。ライセンスの期間は 20 年で、鉱石は 7km と至近な Olimpiada 金鉱山の選鉱プラ ントで処理する計画。 チタン鉱石生産地開発 探鉱・開発ライセンスを所有する Tsentralnoye チタン・ジルコン砂鉱床(タンボフ州)と Gremyakha- Vyrmes チタン鉱床(ムルマンスク州)の 2 地域で、チタン鉱石の生産地開発を目指して探鉱活動を継続

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中。 9-2. UGMK 社 Tarnesk 銅・亜鉛鉱床(スヴェルドロフスク州) 開発費 32 百万 US ドルで採掘設備の建設に着手した。2005 年 11 月に生産を開始し、800 千 t/年の 銅・亜鉛鉱石(銅量 12 千 t)を採掘、Svyatogor 社の選鉱場で処理する。埋蔵鉱量 6,437 千 t(品位:Cu 1.44%、Zn 4.57%)とされる。 Letneye 銅鉱山拡張(オレンブルク州) 2004 年 4 月、5 年間で 120 百万 US ドルを投資し、銅・亜鉛精鉱ベースで 5 百万 t が見込まれる周辺 鉱床の開発を決めた。 Osenneye 銅鉱床(オレンブルク州) 2003 年開発ライセンスを取得し、2004 年 7 月から開発に着手する。埋蔵鉱量は 6 百万 t で、開発期 間 10 年が予定されている。 9-3. 金プロジェクト Novoshirokinskoye 含金多金属鉱床(チタ州) 2004 年 1 月、Highland Gold Mining 社(英)傘下の Russdragmet 社が鉱山開発に着手したと発表。投 資額 25 百万 US ドルで資金回収期間 6 年、2006 年の生産開始(2t/年、開発期間 20 年)を予定している。 金埋蔵量は 1 百万 oz(品位 Au 5.8g/t)。 Nezhdaninskoye 金鉱床(サハ共和国) 2003 年末、Celtic Resources 社(アイルランド)が 180 千 t/年の選鉱場を立ち上げて開発を準備中。 金確認埋蔵量は 430t(品位 Au 5.5g/t)と評価されている。 Kupol 金鉱床(チュコト自治管区) Bema Gold 社(加)が 2003 年に 8 百万 US ドルで探鉱を行った。確認埋蔵量は金 57t、銀 594t とされ、 2007 年の生産開始を目指している。 Berezitovoe 金鉱床(アムール州) F/S 中の High River Gold 社(加)が 2004 年 5 月、54.1%を所有する Buryatzoloto 社と共に 2005 年 生産開始を目標に開発を行うと発表。1.5 百万 t/年の鉱石(品位 Au 2.4g/t)処理プラントを 50 百万 US ドルで建設する予定。埋蔵量は金 43t、銀 225t とされる。 9-4. 銅プロジェクト Udokan 鉱床(チタ州) ロシア政府が 2005 年 11 月に入札を予定している開発待ちプロジェクトでは世界最大規模の銅鉱床 で、埋蔵鉱量 1,375 百万 t、銅量約 2 千万 t、銅品位 1.45%と評価されている。 9-5. その他プロジェクト 9-5-1. Rubtsovskoye 多金属鉱床(アルタイ地方) 2004 年 2 月、Sibir-Pplimetall 社は 2 年半で鉱山開発を行うことを地方政府との間で合意した。350 千 t/年の銅・鉛・亜鉛鉱石を採掘・処理するコンビナートを 20 百万 US ドルで建設し、2006 年中には 生産が開始される予定(年産で銅精鉱 54 千 t、亜鉛精鉱 52 千 t、鉛精鉱 28 千 t)。

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10. 探査状況 Norilsk Nickel 社(コラ半島 PGE 鉱床(ムルマンスク州)) 傘下の Kola Mining & Metallurgical Company (KMMC 社:Pechenganickel Mining & Metallurgical Combine と Severonickel Metallurgical Combine の操業管理部門)が Monchegorsk 地域で行っている 探鉱で、2004 年 4 月に 350t 規模の PGE 鉱床を発見したとされる。同地域は 2003 年末時点で埋蔵量 209t と評価されていた。鉱床探査は 3 年計画で行われる予定。 コラ半島 PGE 鉱床(ムルマンスク州) 2004 年 3 月、カナダの Puma Minerals 社(Bema Gold 社が権益の 64%を所有)は、East Pansky 鉱区で 幅 3.6m、品位 PGE+Au 4.39g/t などの鉱徴を確認したと発表。隣接する Fedrova Tundra 鉱区では Barrick Gold 社が探鉱を実施中。鉱床胚胎が期待される層準の分布状況がフィンランドの PGE 鉱床として知ら れる Portimo-Penikat Complex の地質に似た環境とされる。 Chagoyansk 金鉱床(アムール州) 2004 年 3 月、Rio Tinto 社(英)は探鉱・開発ライセンスを取得した Peter Hambro 社(英)と共同探鉱 に関する J/V を締結。第Ⅰ期に 1.5 百万 US ドルを投資して 51%を取得後、第Ⅱ期には 3.5 百万 US ド ルの負担で権益を 65%に増やすオプションあり。

11. 製錬所概要 11-1. Karabashsk Copper Smelter 国名/地域 :Russia/Urals 名前 :Karabashsk Copper Smelter 位置 :Karabashsk, Cheliabinsk Region, Urals 会社名(権益比率):State of Russia 主要生産金属 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 1999 29.4 2000 36.4 2001 41.7 2002 42.4 2003 45.6 Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 溶錬 :溶鉱炉

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11-2. Kirovgrad Copper Smelter 国名/地域 : Russia/Urals 名前 : Kirovgrad Copper Smelter 位置 : Kirovgrad, Sverdlovsk oblast, Urals 会社名(権益比率):Urals Mining 主要生産金属 :Cu

生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 1999 55.0 e 2000 49.9 2001 46.6 2002 50.0 e 2003 45.0 e Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group

製錬方法 : 溶錬 :反射炉

11-3. KMZE 国名/地域 : Russia/チェリャビンスク州 名前 : KMZE 位置 : チェリャビンスク州 会社名(権益比率): Kyshtym Copper-Electrolyte Works(KMEZ社) Karabashmed(KMEZ 社80%)--粗銅を生産する 主要生産金属 : Cu(粗銅、電気銅) 生産量 年 生産量 2003 粗銅 45,600t 電気銅 78,800t 備考 :KMEZ 社は、2003 年8 月に総工費30 百万USドルでスヴェルドロフスク州に竣工したNovgorod Metallurgical Plant(銅スクラップを原料として40 千t/年の電気銅を生産)との統合・再編の計画が伝 えられている。

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11-4. Krasnouralsk Copper Smelter 国名/地域 : Russia/Urals 名前 : Krasnouralsk Copper Smelter 位置 : Krasnouralsk, Oblast Jekaterinburg, Urals 会社名(権益比率):Urals Mining 主要生産金属 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 1999 55.0 e 2000 56.7 2001 55.3 2002 61.5 2003 60.8 Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 溶錬 :反射炉

11-5. Kyshtym Copper Refinery 国名/地域 :Russia/Urals 名前 :Kyshtym Copper Refinery 位置 :Kyshtym, Oblast 年 生産量 (金属量 千トン) Chelyabinsk, Urals 精錬 会社名(権1999 63.0 益比率):State of Russia 主 要 生 産2000 77.0 金属 :Cu 2001 82.1 生産量 ( 直 2002 70.3 近 5 ヵ年) 2003 78.8

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Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 精錬 :ELR

11-6. Mednogorsk Copper Smelter 国名/地域 : Russia/Urals 名前 : Mednogorsk Copper Smelter 位置 : Mednogorsk, Urals 会社名(権益比率):Ormed 主要生産金属 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 1999 -- 2000 16.0 2001 24.0 2002 -- 2003 -- Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 溶錬 :溶鉱炉

11-7. Nadezhda (Norilsk) Nickel/Copper Smelter/Refinery 国名/地域 :Russia/Siberia 名前 :Nadezhda (Norilsk) Nickel/Copper Smelter/Refinery 位置 :Norilsk, Siberia 会社名(権益比率):Norilsk Nickel 主要生産金属 :Cu Ni 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) Cu 溶錬 精錬 1999 325.0 e 350.0 e

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2000 350.0 e 358.0 2001 360.0 e 384.0 2002 360.0 e 365.0 2003 350.0 e 345.0 Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group

製錬方法 : 溶錬 :VAN 精錬 :ELR

副産物 :Co

11-8. Pyshma Copper Refinery 国名/地域 :Russia/Urals 名前 :Pyshma Copper Refinery 位置 :Werchnjaja Pyshma, Oblast Jektarinburg, Urals : 会社名(権益比率):Urals Mining 主要生産金属 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) 精錬 1999 271.0 2000 312.1 2001 327.8 2002 330.9 2003 330.0 e Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 精錬 :ELR

11-9. Sredneuralsk Copper Smelter 国名/地域 : Russia/Urals 名前 : Sredneuralsk Copper Smelter 位置 : Sredneuralsk, Urals 会社名(権益比率):Urals Mining

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主要生産金属 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 1999 81.8 2000 103.6 2001 105.6 2002 106.3 2003 84.9 Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 溶錬 :VAN 精錬 :ELR

11-10. Monchegorsk Nickel/Copper Smelter/Refinery 国名/地域 :Russia/Kola 名前 :Monchegorsk Nickel/Copper Smelter/Refinery 位置 :Monchegorsk, Kola 会社名(権益比率):Norilsk Nickel 主要生産金属 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 Cu 精錬 Cu 精錬 Ni 1999 100.0 e 90.0 e 90.0 e 2000 100.0 e 95.0 100.0 2001 110.0 e 100.0 105.0 2002 110.0 e 89.0 100.0 2003 100.0 e 106.0 e 107.0 Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 溶錬 :電気炉 精錬 :ELR

11-11. Norilsk 国名/地域 : Russia/Norilsk

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名前 : Norilsk 位置 : Norilsk 会社名(権益比率): Norilsk Nickel 社 主要生産金属 :Cu (電気銅)、Ni(電気ニッケル)、コバルト 生産量 (直近5ヵ年) 年 生産量 千t 精錬 Cu 精錬 Ni 1999 125.0 e 2000 123.0 2001 125.0 2002 120.0 450* 218* 2003 132.0 Raw Material Data August 2004 *金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の鉱業の趨勢 JOGMEC 副産物 :Co

11-12. Orsk Nickel Refinery 国名/地域 :Russia/ 名前 :Orsk Nickel Refinery 会社名(権益比率):Yuzhuralnickel JSC, Russia State of Russia 51% Urals Mining and Metals Company, Russia 23.5% 主要生産金属 :Ni 生産量 (直近5ヵ年) 年 生産量 千 t Ni 1999 3.0 e 2000 9.0 2001 10.0 e 2002 10.0 e 2003 10.0 e Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group

11-13. Dalpolymetal 国名/地域 :Russia/

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名前 :Dalpolymetal 位置 :ナホトカ北東約 300Km 会社名(権益比率): Dalpolymetal 主要生産金属 :Pb

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生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年 1931 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 精錬 9 Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 溶錬 :溶鉱炉 (鉛精鉱およびバッテリーリサイクル) 副産物 : Bi 12t、 青金 12t

11-14. Chelyabinsk Zinc Refinery 国名/地域 : Russia/チェリャビンスク州(Chelyabinsk) 名前 : Chelyabinsk Zinc Refinery 位置 : Sverdlovski Trakt, Ekaterinburgskoye, Chelyabinsk 会社名(権益比率): Chelyabinsk Pipe Rolling Mill(ChTPZ) 主要生産金属 :Zn(電気亜鉛) 生産量 (直近5ヵ年) 年 生産量 千t 1999 138.0 2000 145.7 2001 155.0 2002 165.8 2003 177.3 Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 備考 2003 年7 月にChelyabinsk Pipe Rolling Mill(ChTPZ) の一部門となった。2003 年末、Elektrotsink 社がUGMK 社に買収され、ChTsZ にとって最大の鉱石供給元(2003 年実績:106 千t)であった Uchalinsky GOK とElektrotsink 社とが系列に組み込まれた影響から、2004 年の調達可能な鉱石量は 40 千t に留まる見通し。このため、ChTsZは、海外から鉱石70 千t を調達する輸入契約をEuromin SA 社(スイス)と締結する一方で、Gaisky GOK やBashkortostan Copper-Sulfer Combine などからの国内 調達量を増やして対応する計画である。(金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の 鉱業の趨勢 JOGMEC)

11-15. Vladikavkaz Lead/Zinc Refinery (Electrozink) 国名/地域 : Russia/北オセチヤ共和国

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名前 : Vladikavkaz Lead/Zinc Refinery (Electrozink) 位置 : Vladikavkaz,北オセチヤ共和国 会社名(権益比率): Urals Mining & Metallurgical Company(UGMK社) (金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の鉱業の趨勢 JOGMEC) あるいは Electrozink JSC, Russia 100% ( Raw Materials Data, August 2004) 主要生産金属 :Zn 生産量 (直近5ヵ年) 年 生産量 千t 1999 75.0 e 2000 75.0 e 2001 75.0 e 2002 80.0 e 2003 90.0 e Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 2004 年にはUchalinsky GOK の亜鉛精鉱を主な原料として電気亜鉛85 千t、電気鉛30 千t、カドミウ ム300t の生産を予定している。2005 年までに亜鉛生産能力を110 千t/年に拡張する計画がある。(金属 資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の鉱業の趨勢 JOGMEC) 副産物 :Pb

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鉱山製錬所位置図

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操業鉱山 Russia-Au-Olimpiada Olimpiada クラスノヤルスク地方 Russia-Cu-Gaysk Mining JSC Gaysk Mining JSC Russia-CuNi-UGMK UGMK 社関係鉱山 Gaisky GOK (オレンブルク州) Gaiskoye & Letneye 鉱山 Uchalinsky GOK(バシコルトスタン共和国)Uchalinsky & Molodyozhny 鉱山 Safyanovskaya Med (スヴェルドロフスク州) Safyanovskoye鉱山 Svyatogor 社 (スヴェルドロフスク州)Volkovsky & Turynsky鉱山 Urupsky GOK (カラチャイ-チェルケス共和国)Urupsky鉱山 Russia-Cu-Uchalinsk Mining JSC Uchalinsk Mining JSC Uchaly

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Russia-NiCuPd-Kola Zhdanovskoe, Zapolyarnoye, Kaula, Kotselvaara鉱山など Kola半島の Monchegorsk とPechenga(ムルマンスク州) Zhdanovskoe 北緯 69 度 19 分 東経 30 度 20 分 Zapolyarny 北緯 69 度 19 分 東経 30 度 20 分 Kaula 北緯 69 度 19 分 東経 30 度 20 分 Kotselvaara 北緯69度19分 東経30度20 Russia-NiCuPd-Komsomolsky Komsomolsky 東シベリア地域のNorilsk(クラスノヤルスク地方タイ ムィル自治管区) 北緯69度30分 東経88度25分 Russia-NiCuPd –Norilsk Oktyabrsky 、Komsomolsky 、Taimyrsky、Severny鉱山など北緯69度30分 東経88度25分 Russia-NiCuPd-Oktyabrsky Oktyabrsky 北緯69度30分 東経88度25分 Russia-NiCuPd-Taimyrsky Taimyrsky 北緯69度30分 東経88度25分 Russia-PbZnAg-Dalpolymetal Dalpolymetal ナホトカ北東約300Kmのシホテアリン山脈東斜面 のダルネゴルスク市およびその周辺に位置 Russia-Zn-Uchalinsk JSC Uchalinsk JSC 探鉱開発 Russia-Au-Natalkinskoye Natalkinskoye マガダン州 Russia-Cu-Udokan Udokan : CHARA,: 40 km: South Russia-CuZn-Tarnesk -Tarnesk 精錬所 Russia-Cu-Karabashsk :Karabashsk Copper Smelter Russia-Cu-Kirovgrad Kirovgrad Copper Smelter Russia-Cu-KMZE KMZE(Kyshtym Copper-Electrolyte Works)チェリャビンスク州 Russia-Cu-Krasnouralsk Krasnouralsk Copper Smelter Krasnouralsk, Urals Russia-Cu-Kyshtym Kyshtym Copper Refinery Kyshtym, Urals=KMZE Russia-Cu-Mednogorsk Mednogorsk Copper Smelter Mednogorsk, Urals Russia-Cu-Monchegorsk Monchegorsk Copper Smelter/Refinery Monchegorsk, Kola Russia-Cu-Nadezhda (Norilsk) Nadezhda (Norilsk) Copper Smelter/Refinery Norilsk, Siberia Russia-CuNi-Norilsk Norilsk 同上 Russia-Cu-Pyshma Pyshma Copper Refinery Russia-Cu-Sredneuralsk Sredneuralsk Copper Smelter Russia-Zn-Chelyabinsk Chelyabinsk Zinc Plant (ChTsZ) Russia-Zn- Elektrotsink Elektrotsink ×(但し首都 Vladikavkaz マーク)

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 実績なし

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第 2 部 地質解析 1. 地質・地質構造 ロシアは、長年ソビエト連邦の一部として存続してきたため、ロシアだけ独立して記載された地質 及び鉱床の記載は見あたらない。従って、この報告書では、平成6年度地質解析委員会報告書(CIS 諸国の地質と鉱物資源)を主に引用し、その他に旧ソビエト連邦全域として記述された報告書から抜 粋した資料あるいは地域毎の記載からの引用できる情報をまとめた。 また、旧ソ連はヨーロッパ大陸からアジア大陸にわたる広大な地域を占め(第1-1図)、地質構造区 分についても多くの異なった説があり、その地質構造全体を要約して説明することは困難である。こ こではNalivkin(1962)“Geology of USSR"(Rast(1973)英訳)にしたがい、ロシア卓状地、シベリ ア卓上地、西シベリア低地、ウラル地向斜、太平洋地向斜(第 1-2 図)に区分して述べる。第 1-3 図に は旧ソ連の地質概要図を示した。

第1-1図 旧ソ連の地形略図

出典;金属鉱業事業団(1995)

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第 1-2 図 旧ソ連の地質構造区分図 出典:金属鉱業事業団(1995)

第 図 旧ソ連の地質概要図 1-3 出典:金属鉱業事業団(1995)

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1-1. ロシア卓状地 ここでのロシア卓状地はStille(1924)のフェノサルマチア(Fenosalmatia)の一部に相当する。フェノ サルマチアは東ヨーロッパ・クラントまたはロシア・クラントとも言われ、さらに(1)バルト楯状地 (Baltic shield)、(2)ロシア平坦地(Russian )に区分される。

1-1-1. バルト楯状地(Baltic shield) バルト楯状地のロシアでの分布はカレリアーコラ半島に限られる。第 1-4 図に示すようにこの地域 の先カンブリア界は主としてSaamides(>2500Ma) およびBelomorides(>2000Ma) からなり、 Svecofenides Karelidcs(>1800Ma) 、Gothides(>1300Ma) ないしDalslandian(>1000Ma) および Jomian(>600Ma)も分布する。Saamidesは始生代の生成であり、コラ半島およびカレリア南部に分布 する。Saamidesの岩石は片麻岩、花崗岩類、角閃岩、ベグマタイト、ミグマタイト、閃緑岩などから なる(Nalivkin.1962)。Katarchean(3000~3500Ma)の残存岩片がSaamides中に含まれているという 報告もされているが、疑問視する者もいる。世界の他の始生界地域と異なり、顕著なGreenstone belt および斜長岩が認められないのが特徴である(Ager.1980)。コラ半島中央部のOlenegors鉄鉱床はこの 時代の生成で片麻岩中に産する。Belomoridesは白海の南西沿岸地域に分布し、始生代最後期から原 生代初期に生成されたと考えられる。その岩石は片麻岩、グラニュライトおよびペグマタイトからな る。Belomoridesの生成年代として2600~2800Maの値も得られており、これがSaamidesの同時異相 とする考え方もある。 この時代(1800Ma)はヨーロッパにおける先カンブリア時代の主要な活動期で、この活動によりEo (第1-8図)はほぼ完成した(市川,1979)。ロシアではSvccofonidcsを地表で見る事は出来ないが、 Kaleridesはカレリア地方にかなり広く分布し、下部カレリア層とその上に不整合に重なる上部カレリ ア層からなる。前者は結晶片岩、片麻岩、珪岩、角閃岩および変質溶岩で構成され、後者は弱変成の 結晶片岩、珪岩、ドロマイト、頁岩、輝緑岩およびひん岩からなる。カレリア地域に分布する鉄鉱層 はKarclidcsに属する(Nalivkin,1962)。カレリアーコラ半島地域のGothidesないしDalslandianおよび JomianについてAger(1980)とNalivkin(1962)とが年代その他の記載で一致せず、不明な点があるが、 カレリア地域においてKarelidesの上に傾斜不整合にのるShokshinian砂岩およびこれと同時異相の Suisarian火山溶岩はGothidesないしDalslandianに、その上に小規模に分布する砂岩・粘土岩層が Jotnianに相当し、コラ半島のTundra層、Keivy層、Imandra-Varzuga下部層とはんれい岩、かんら ん岩および花崗岩がGothidesないしDalslandianに、Dalslandianに、Imandra-Varzuga上部層、 Pechenga-Kuchin層、Rybamhil Peninsula層、Ter層およびCapeteryev層がJomianに相当すると思 われる。コラ半島のGothidesないしDalslandian相当層は角閃岩、片麻岩、結晶片岩、珪岩、結晶質 炭酸塩岩、礫岩および砂岩などからなる。またJotnian相当と考えられるImandra-Vazuga上部層は粘 土質岩、炭酸塩岩、および塩基性~中性火山岩類、Rybachii Peninsula層はドロマイトと泥質石灰岩、 Ter層およびCape Teryev層は礫岩および砂岩からなっている。

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第 1-4 図 Fenno-Scandian Shield 地質図(AGER,1980)

1-1-2. ロシア平坦地(Russian plain) ロシア平坦地は東はウラル、南はアルプス褶曲帯、北西はバルト楯状地、西はTomquist構造線によ り限られる (第 1-4 図)。ロシア平坦地は地形、テクトニクス、層序的地史においてアバラチア山脈と ロッキー山脈に挟まれた北アメリカの内部低地に類似している(Ager,1980)。広大なロシア平坦地の大 部分は先カンブリア変成岩を基盤とした比較的薄い平らな古生代およびそれ以後の堆積物により覆わ れている。バルト楯状地のNW方向の構造はそのままロシア平坦地下部に延長してモスクワ北方に達 し、そこでNE方向に転じTomquist構造線に向かう。しかし、モスクワ南方およびワルシャワで鋭く NW方向に向きを変えている(第 1-5 図)。各所で始生代の岩石の露頭が認められており、ロシア平坦 地の下にはバルト楯状地におけるSaamidesのような古期岩類が分布していると考えられる。ロシア平 坦地の先カンブリア基盤岩を被覆する地層は厚さ4㎞あるいはそれ以下で、エオカンブリア紀、カンブ リア紀、オルドビス紀、シルル紀、テボン紀、石炭紀、ペルム紀、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀、第三

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第 1-4 図 ヨーロッパの大構造区(Khain,1977※に加筆) ヨーロッパでの横線はPro-to-Europa.B,R,U,Eは Eo-Eurpaの細分.B:バトル・シールド, R:ロシア平坦地,U:ウクライナ地塊,E:エリア

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第1-5図 フェノサルマチアの基盤構造略図(Watson,1977※による) 被覆層を除去.縦線模様は鉱化帯, 波破線は地質構造を示す(市川,1979)岩波講座地球科学6 P,10

紀および第四紀の各地層からなる。エオ・カンブリア系(ロシアではSinian“震旦系"が用いられている) 主として白海海岸など北部地域に分布する。基本的には礫岩-砂岩-粘土質岩の層序を示し、火山岩類を 伴う。カンブリア系は砂岩-粘土質岩(“blue clays")からなり、バレンツ海からエストニアのフィンラ ンド湾南岸に沿って分布し、地表下ではモスクワ-ポートランドの線まで南に延長している。オルドビ ス系は炭酸塩岩を主とし、砂岩、燐酸塩岩を伴う浅海性堆積物からなり、その堆積範囲はロシア平坦 地の大部分に及んでいる。シルル系の堆積は北部に限られ、おもに石灰岩、頁岩からなる。デボン系 はロシア平坦地の非常に広い地域にわたって露出するが、その北半分では陸成の“Old Red Sand-stone"層、南半分では海成相を示す。前期古生代末にはロシア平坦地全域にわたって海退が進み 陸化した。デボン紀中期には海進が始まり、それが最も進んだFrasinianにはウラルからヴォルガにか けて、れき青質石灰岩、頁岩及び砂岩が堆積し大油田の一つを形成している。石炭系はバレンツ海沿 岸からモスワ南東方にかけて広く、またドネツ盆地には独立して、露出している。石炭系下部は石灰 岩が、上部はロシア平坦地の大部分で石灰質岩、南部で粘土質岩および砂岩が優勢である。しかし、 石炭紀初期には短期間の海退があり石炭層の堆積があった。ロシアではシルル紀、デボン紀および石

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炭紀前期を中期古生代としているが、国際的には認められていない。南部のドネツ盆地での石炭堆積 は上部石炭紀から下部ペルム紀にかけてである。ペルム期には、ロシア平坦地の昇降運動は地域ごと に大きな差があり、ペルム系は、同時期でも浅海成の石灰岩-ドロマイトから陸成の石膏を伴う赤色層 まで変化し層厚も異なる。ペルム紀末には海はウラルおよびアルプスまで退き、ロシア平坦地は陸化 し、陸成層の発達と侵食が起こった。三畳紀から中部ジュラ紀までこの状態が続き、この間の地層は 陸成の礫岩、赤色砂岩、泥岩を主とする。中部ジュラ紀以降海進が起こり、ロシア平坦地の大部分で 未固結の砂及び粘土が堆積し白亜紀末に再び陸化するまで続いている。第三系の分布は極めて局地的 である。

1-1-3. ロシア卓状地のテクトニクスと火成活動 ロシア卓状地の地質構造は先カンブリア造山型と原生代末期~顕生代の被覆層型に分けられる。前 者の地質構造は Saamian(>2500Ma), Belomorian(>2000Ma), Karelian(>1800Ma), Gothian(>1300Ma),Daislandian(>1000Ma)およびJotnian(>600Ma)の造山連動により生成された ものである(Ager,1980)。とくにKarelian造山連動は最も広範囲かつ強力で、これによりロシア卓状地 の基盤がほぼ完成した。 Saamian連動は始生代末に起こり、最も複雑な構造形成、穂々の火成活動および高度変成作用をも たらした。激しい変成作用により火山岩と貫入岩との区別が困難である。アレリアでは西部に花崗岩、 閃緑岩が広く分布し、小規模の閃緑岩と角閃岩(はんれい岩または玄武岩起源)が認められる。コラ半島 では花崗片麻岩を大規模深成岩体として産し、その他、片麻状閃緑岩及び角閃片麻岩も貰入する。ウ クライナ地塊でも花崗閃緑岩で始まる火成活動が広く認められる。Saamianの 貫入岩の特徴はミグマタイトの広範囲の分布とその周辺の片麻岩への注入である。Belomorianはウク ライナ地塊では玄武岩溶岩の火山活動により開始されるが、カレリアおよびコラ半島では認められて いない。その後大規模のBclomorian花崗岩類の貫入があり、カレリアではオネガ湖西岸および白海沿 岸にしゅう曲構造に調和的に産するのが認められる。コラ半島ではBelomorian期しゅう曲とシンキネ マチックな白粒岩質深成岩類が広く分布する。この深成岩類には塩基性~酸性の分化作用が認められ その最終ステージに生成した花こう閃緑岩および微斜長石花崗が半島東部に、Murmansk深成岩を形 成している。ウクライナにおけるこの期の貰入岩は花崗岩、閃緑岩および閃長岩で代表される。Karelia 期(Karclian, GothianおよびDalslandlanを含む)の火山活動は、カレリアではKarclidcsに属する下部 カレリア層の角閃岩、変質溶岩と上部カレリア層の輝緑岩およびひん岩に代表されるものと、Gothian ~DalslandianのSuisarian火山岩によるものでいずれも塩基性~中性の火山岩類からなる。また、コ ラ半島とウクライナではGothian~Dalslandianの火山岩起源の角閃岩と緑色片岩によりそれぞれ代 表される。これらの活動の後に、カレリアではRapakivi型貫入岩類とさらにKarelia貫入岩類、コラ半 島ではKarelia貫入岩類が形成された。いずれも花崗岩を主とする。ウクライナでは火山活動以前の Kirovograd-Zhitomir花崗岩と、後の花崗岩及びはんれい岩の貫入が認められる。 Jotnianの火成活動(Baikalianとも称せられる)は超塩基性-塩基性-中性の火山岩-貫入岩複合岩帯(オ フィオライト)で特徴づけられる。コラ半島のImandra-VarzugaおよびPechenga-Kuchin層のものが

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その例である。これらの岩石の銅-ニッケルの正マグマ鉱床を伴う。 被覆層型構造の形成はJotnianの最末期に始まる。カレリア地域のJotnian砂岩-粘土岩層、コラ半島 のTcr層およびCape Ter'yev層(砂岩-れき岩層)はその例である。原生代の被覆層は、造山型の地層に比 べ地質構造は単純で、ほとんど貫入岩を伴わず、変成作用も微弱である。古生代以降の被覆層の構造 も同様で非常に緩やかな撓曲構造を示し、その傾斜は 5 ~15°の範囲である。しかし、西方のウラ ルとの境界ではヘルシニア造山帯南方の地中海向斜との境界ではアルプス造山運動の影響を受けてい る。 古生代以降のアルカリ岩活動がコラ半島およびウクライナで認められている。前者はカレドニア期 に一致し、アルカリ閃長岩、霞石閃長岩及びアルカリ花崗岩からなる。後者はヘルシニア期及び中生 代の生成でアルカリ花崗岩、アルカリ閃長岩、霞石閃長岩からなる。また、稀に古生代の玄武岩-輝緑 岩を産し、ロシア卓状地の周緑部には中生代および新生代の火山岩類が小規模に分布する。

1-2. シベリア卓状地 シベリア卓状地はアルダン地塊およびアナバル地塊などの楯状地と被覆層の分布地域とに分けられ る。アルダン地塊は主として始生代カルノカイト質片麻岩、輝石片岩、角閃岩、珪岩、下部原生代の 塩基性火山岩類と堆積岩を原岩とする結晶片岩およびはんれい岩-斜長岩、およびこれらを貫くアラス カイト質花崗岩、さらに中・上部原生代の砂岩-シルト岩層からなる。これらの地層は上部原生代(エオ カンブリア紀を含む)および顕生代の被覆層に一部覆われる。また、アナバル地塊は始生代の輝石片麻 岩、塩基性片岩、珪岩、結晶質石灰岩、およびミグマタイトと花崗岩類および斜長岩からなり、これ らは同様に上部原生代~顕生代の地層に一部覆われている。二つの楯状地以外にもVitim地塊、 Poromian高地、バイカル地域、東サヤン、エニセイ山地などに小規模の始生露出地域があり、これら には原生界を伴っている。 シベリア卓状地の被覆層は上部原生界(エオカンブリア系を含む)、古生界、中生界、新生界からなる。 上部原生界は千枚岩、珪岩、砕層岩類及び炭酸塩岩などからなる。ロシア卓状地に比較して下部古生 界の発達が著しく、その厚みは数kmに達する。上部古生界のうちデボン系および石炭系をほとんど欠 如し、ベルム系のみが良く発達する。三畳系、ジュラ系および下部白亜系は、良く発達するが、上部 白亜系、古第三系をほとんど完全に欠如している。カンブリア系は水平層の場合、主として石灰岩、 泥灰岩、ドロマイトおよび粘土岩からなり、上部では海浜性の赤色層を産する事がある。層厚は比較 的薄く数100m程度であるが、卓状地全般に広く分布する。しかし、各地に撓曲構造の発達が認められ、 この場合は層厚数1000mに達し、岩相は水平層の場合と同様であるが、しばしば厚い岩塩層を挟む。 ネルドビス系はカンブリア系に伴って広く発達するが、比較的薄く、層厚はより一定している。海浜 相の赤色砕層岩類を主とし、海成の石灰岩、泥灰岩および粘土岩を伴う。シルル系はオルドビス系に 伴って産し、岩相も同様で、分布域は卓状地北部を主とする。陸成のベルム系および下部三畳系は、 シベリア卓状地西部の大部分を覆って発達し、その他の地域にも各地に露出する。これらは石炭層を 挟む砕層岩類および火山岩類からなる。塊状の黒色頁岩からなる海成の三畳系も卓状地北束緑に分布 する。ジュラ系および下部白亜系は卓状地で最も広く分布し、層厚3000m~4000mに達する。いずれ

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も、膨大な石炭層を胚胎し、ジュラ系は礫岩、砂岩および粘土質岩、白亜系は礫岩、砂岩および粘土 質岩のほか、未固結の礫、砂、および粘土からなる。一部にガス層も見出されている。 シベリア卓状地の先カンブリア造山運動はSaamian,Belomorian, KarelianおよびBaikalianに分け られている。Saamian運動はアナバルおよびアルダン地塊などの始生界で認められる。Saamian運動 は激しい変形作用、変成作用および火成活動をもたらした。塩基性火山岩類は塩基性片岩あるいは角 閃岩を形成した。輝岩、かんらん岩および優白質閃緑岩を伴って大規模に貫入した石英-紫蘇輝石閃緑 岩は片麻岩に変成した。紫蘇輝石花崗岩の貫入も広く認められる。Belomorian運動は始生界の上に重 なる下部原生界で認められ、アルダン地塊、東サヤンおよびエニセイ地域などに例がある。始生界と 下部原生界の間は傾斜不整合で境され、両者間には変成度と堆積物に相違が認められる。Belomorian 期の火成活動は超塩基性岩、はんれい岩-斜長岩および花崗岩類などの貫入岩類で代表される。 Kalerian運動は下部原生界と上部原生界の間の傾斜不整合をもたらした。Kalerian期には塩基性の 火山活動により溶岩および凝灰岩が広く形成され、花崗岩類が貫入している。これらは変成してそれ ぞれ塩基性片岩および片麻状花崗岩となった。Baikallan運動は上部原生代末に起こり、先カンブリア 界とカンブリア系間の不整合、変形、変成作用と火成活動を伴っている。火山活動は塩基性から酸性 にわたっているが、貫入岩は花崗岩類を主としている。 シベリア卓状地における被覆層形成期の火成活動として顕著なものは、時代的にはヘルシニア期に 一致するシベリア・トラップの形成である。その分布面積は約1500万㎢、厚さは100~1000mで初成時 には2000mに達していると考えられる。その噴出相は玄武岩溶岩および同質凝灰岩、貫入相は粗粒玄 武岩ないし、はんれい岩である。貫入岩はカンブリア、オルドビス、シルル、石炭およびペルムの各 系に貫入し、その形態はシルを主とし、その他岩脈、岩林、ラコリスあるいはパイプ状をなして産し ているのが認められる。シベリア・トラップの形成時期は上部石炭紀から下部三畳紀と考えられている。 また三畳紀中期~白亜紀のパイプ状含ダイアモンド・キンバレー岩も産する。中生代以降の火成活動と しては、キンメリア期の塩基性火山岩および貫入岩と花崗岩類が小規模であるが各地に産し、アルプ ス期のアルカリ岩(霞石閃長岩、閃長岩、アルカリ花崗岩)がアルダン地塊に、玄武岩がシベリア卓状地 南緑部に分布する。

1-3. 西シベリア低地 西シベリア低地はシベリア卓状地とウラル地向斜に挟まれた世界有数の規模を有する低地であり、 3500m以上の厚い中生界、古第三系および新第三系に覆われているが、基盤は先カンブリア界および 古生界からなる。低地の北東部では基盤の構造は卓状地のそれであり、シベリア卓状地の延長部に当 たると考えられる。しかし、中央部、西部および南西地域ではエオカンブリア系および古生界ハカレ ドニアおよびヘルシニア造山運動によるしゅう曲作用を受けており、Zonenshain et al,(1992)は西シ ベリア低地の大部分を占める中央アジア造山帯を想定している(第1-5,6図)。 先カンブリア時代の片麻岩、花崗岩類および結晶片岩がBerezov地域および低地中央部のNaginoで 見いだされている。これらは、いずれもしゅう曲作用を受けたカンブリア紀ないし石炭紀の古生界が 発達する地域である。卓状地タイプの古生界はエニセイの100㎞西で、カンブリア系およびデボン系が、

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見いだされている。中生界及び新生界は次のように分けられる。下部三畳系~中部ジュラ系(陸成)、上 部ジュラ系~下部白亜系(海成)、下部白亜系~上部白亜系(陸成)、上部白亜系~古第三系(海成)、新第 三系。これらは低地緑辺部ではやや複雑であるが、中央部では均質である。これらのうち火山岩相を 含むのは、下部三畳系-中部ジュラ系で、その下部では塩基性、中上部では塩基性~酸性の火山岩類を 挟む。

1-4.ウラル地向斜 ウラル地向斜はヨーロッパおよびアジア大陸の境界をなし、北は北極海岸から南はカスピ盆地およ びトゥラン盆地の厚い堆積物の下に隠れるまで約2500㎞続いておりロシア卓状地の大陸塊とシベリ ア卓状地の大陸塊の衝突により形成されたものである(Hamilton,1970)。 ウラル地向斜の西緑帯は、厚い古生代の劣地向斜または後造山堆積物により特徴付けられている。 この堆積物は、上部カンブリア系の砕層岩類、オルドビス系の砕層岩-炭酸塩岩、シルル系、デボン 系、および石炭系の炭酸塩岩類からなる。その束は、原生代の堆積物及び火山岩類を覆う大陸棚堆積 物が分布する。原生花崗岩は砕層岩類、珪質岩、炭酸塩岩、火山岩類、およびこれの変成岩類から構 成され、ウラル地向斜の中軸部に点在して露出する。以上が“外帯”と称せられ、ウラル山脈の西側 斜面を構成し、その東はウラル主断層を介して“内帯”と接する。ウラル主断層のすぐ東は古生代の 海洋底物質が分布し西へ衝上している。内帯の最下部はオルドビス系のフリッシュ堆積物、オフィオ ライトおよび平行岩脈群からなる。オフィオライトは主として超塩基性岩と塩基性火山岩類から構成 され、北部で厚く連続するが、中央部で分解し、南部で再び発達する。このオフィオライト帯は白金 を伴うので白金帯と呼ばれている。これらの東側でシルル紀およびデボン紀の砕層岩、炭酸塩岩帯オ フィオライトからなる厚い優地向斜堆積物に覆われ、この堆積物は上部で遷移堆積物に移行する。堆 積物中にオフィオライトのオリストリスを含む最古の岩石は下部石炭系である。内帯では上部石炭紀 の初め、外帯では、ペルム紀に陸化が始まり、ペルム紀末には、ヨーロッパとアジアとは一つの大陸 になったと考えられる(Ager,1980)。したがって、ウラル地向斜では上部石炭系からジュラ紀まで 石炭を含む陸成相が認められる。ジュラ紀末および白亜紀に小規模な海進があり、第三紀にも同様に も海進海返を繰り返したが、ウラル地向斜は山脈としての形態をほぼ維持した。 原生代の火成岩は稀にしか認められない。山脈の分水嶺付近に塩基性火山岩類が見いだされるほか、 南部ウラルにRapakivi型花崗岩類、北部に花崗斑岩を属するのみである。オルドビス紀後期には変動 が起こり、それまでに形成された岩石は、顕著な変形作用と変成作用を被った。これとほぼ同時に張 力場の発生により広範な塩基性マグマの噴出と塩基性及び超塩基性貫入岩体が形成(オフィオライト の形成)された。これらの現象は、島孤と形成と緑海の拡大を意味する(Ager,1980)。シルル紀、 デボン紀および下部石炭紀まで緑海及び島孤での火山活動が続き、堆積物とともに優地向斜を形成し た。この火山活動により形成された火山岩は、玄武岩、玄武岩質安山岩、安山岩、及び石英安山岩で ある(Nalivkin,1962)。カレドニア期の貫入として、塩基性および超塩基性岩以外に、花崗岩類が ウラル中央部および南部に産する。ヘルシニア期の巨大な貫入岩が、地層の走向方向に沿い、幅100 -200㎞、長さ約1200㎞にわたる帯に分布している。貫入岩の岩型は種々あるが、花崗岩類が優勢で

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ある。花崗岩類は、花崗岩、花崗閃緑岩、石英閃緑岩およびからなり、閃長岩に移行することがある。 閃長岩を主とする岩体は稀であるが、ウラル中央部に知られている。かんから岩、輝岩、はんれい岩、 および蛇紋岩からなる小規模な超苦鉄質岩体が稀ではあるが認められる(Nalivkin,1962)。

1-5. 太平洋地向斜 太平洋地向斜はCISの極東地域であり、シベリア卓状地の東及び東南側に当たり、チェルスキ山脈、 コリマ地塊、チュコート半島、コリヤータ山脈、カムチャッカ半島、シホテアリニおよび東Transbaikal -アムール地域を含んでいる。その大部分はキンメリア期及びアルプス期造山帯である(第1-6図)。 本地向斜の最古の岩石である先カンブリア界は多くの地域に小規模な露出が認められている。すな わちゼーヤ地塊、コリマ地塊、オホーツク地塊、チュコート地塊、東Transbaikal地域、シホテアリニ 南部、中央カムチャッカ山脈、およびサハリンなどである。始生界はこれらすべての地域に産し、片 麻岩、結晶片岩、ミグマイタイトおよびか角閃岩かどからなる。原生界は始生界の上に不整合な重な り、結晶片岩、珪岩、結晶質石灰岩及び火山岩類などから構成されている。キンメリア帯での下部古 生界の露出は良くないが、多数の地域で認められる。東Transbaikal、アムール、ノヴォシビルスク島、 チュコート半島、ヤナ-コリマ地域にはカンブリア系あるいはオルドビス系が分布し、これらの岩相 は砕屑岩類及び石灰岩である。アルプス帯のカンブリア系とオルドビス系は稀にしか産出しない。岩 相はキンメリア帯の場合と同じである。シルル系、デボン系及び下部石炭系はより広範に分布する。 Omolon地塊およびヴェルホヤンスク山脈ではデボン系あるいは石炭系中に火山-堆積層を産する。火 山岩類は酸性及び塩基性で堆積岩は石灰岩、砂岩及び頁岩からなる。その他の地域ではこれらの時代 の火山活動は知られておらず、砕屑岩類と石灰岩からなっている。中・上部石炭系の分布は極めて限 られている。また、ベルム系の発達する地域では中・上部石炭系は見出されない。ベルム系は古生界 の中で最も重要で広く分布する。キンメリア帯のハタンガ、レナ、ヴェルホヤンスク山脈、チェルス キー山脈南部、コリマ、Yukagiriana高地、Omolonなどにはフリッシュ型のベルム系が露出する。ア ルプス帯のベルム系は珪質頁岩とチャートが特徴的で石灰岩も一般的に産する。 太平洋地向斜の最も重要な特徴は、主として海成堆積物、挟炭層及び火山岩層からなる中生代の地 層の広範な形成である。また、高い山脈の端には、モラッセ型の厚い礫岩層が発達する。三畳期の岩 石は地向斜のすべての地域で見いだされる。三畳系の特に広く分布する地域は、ヤナ-コリマ盆地、 Olenek、ヴェルホヤンスク山脈東方、アムール、東Transbaical、およびシホテアリニ南部なのであ る。中・下部三畳系は直接ベルム系の上に重なって発達し、石灰岩と砕屑岩類からなる。しかし、上 部三畳系はジュラ系と伴うことが多く、両者で厚い砂岩・頁岩層を形成する。ヤナ、Indigirka、コリ マおよび東Transbaicalのジュラ系は礫岩、砂岩及び頁岩からなるが、その中に火山岩層を挟んでいる。 下部白亜系はジュラ系と密接にともない岩相も類似している。上部白亜系と古第三系も相伴って産す る。キンメリア帯の上部白亜系・古第三系は、アルプス帯のそれらと異なり、卓状地型で変成作用も 弱く、ほとんど海成層を欠き、しゅう曲も緩やかで、造山時貫入岩を産しない。アルプス帯の上部白 亜系・古第三系は広く分布し、厚い層厚を有し、かなり変成し、複雑な構造を示し、かつ造山時貫入 岩を産する。キンメリア帯では陸成の砂岩頁岩中にしばしば火山岩類を挟みまた石炭層を伴う。アル

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プス帯の岩相は海成の砂岩、頁岩及び礫岩と挟炭層、火山岩層である。キンメリア帯の新第三系は完 全な卓状地型で火山活動も微弱である。それに対して、アルプス系の新第三系は、変成作用が弱い事 を除けば、同帯の上部白亜系・古第三系とほとんど同様である。 ゼーヤ地塊から東ヘジュグジュル山脈さらにオホーツク地塊にいたる先カンブリア花崗岩が続き、 この花崗岩はOmolon盆地にも露出する。小規模の塩基性の貫入岩も各地に産する。カンブリア紀、オ ルドビス紀及びシルル紀の地層にともなうカレドニア期の火山岩類の分布は極めて限られており、ま たカレドニア期の貫入岩類も小規模で産出が少ない。ヘルシニア期の火山岩類は、ヴェルホヤンスク 山脈中のフリッシュ層が分布しない内帯のベルム系に広く分布し、下部は塩基性、上部は酸性の岩石 を産する。ヘルシニア期の花崗岩、花崗閃緑岩は、西Transbaical、東Transbaical、Uda盆地、ジュ グジュル山脈、小Khingan、Khanka湖付近、シホテアリニ、コリマ山塊に産する。チュコート半島 には霞石閃長岩が見いだされているが、貫入時代はまだ確定していない。 キンメリア期の火成岩類は、キンメリア帯で特に優勢であるが、アルプス帯でも広く分布する。下・ 中部ジュラ紀火山岩類は、シホテアリニの中性岩とコリマ山塊の中酸性岩が知られている。上部ジュ ラ紀及び下部白亜紀の火山岩類は極めて広く分布し、特にキンメリア帯で顕著である。東Transbaical には上部ジュラ紀の塩基性~中性~酸性の火山岩類を産し、さらに東のアムールには下部白亜紀の塩 基性岩、ジュグジュル山脈南部には上部ジュラ紀下部白亜紀の火山堆積岩層が分布する。ジュグジュ ル山脈東北部には下部白亜紀の、マガンスク帯、インディギルカ-コリマ地域およびコリマ地塊周囲 には上部ジュラ紀の酸性および塩基性火山岩類を産する。キンメリア期の貫入岩類は前期(ジュラ紀 中期)と後期(ジュラ期-白亜紀前期)に分けられる。前期貫入岩類には、東Transbaicalおよびシホ テアリニに産する花崗岩と花崗閃緑岩およびヴェルホヤンスク-コリマ地域のはん岩及び石英ひん岩 がある。後期貫入岩類には、東Transbaicalの花崗岩、閃緑岩、はん岩類、閃長岩及びモンゾニ岩、シ ホテアリニのはんれい岩、アルカリ閃長岩及びカリ花崗閃緑岩、シベリア東北部の花崗岩と花崗閃緑 岩、コリマ山塊の小規模中性及び塩基性貫入岩、チュコート半島の小規模なはんれい岩、Omolon山塊 及びオホーツク北部のアルカリ貫入岩類などがあり極めて変化に富んでいる。 アルプス期火成活動は三つのステージに分けられる。第一ステージは、上部白亜紀の火山活動に始 まり、古第三紀の貫入岩の生成で終わる。第二ステージは古第三紀及び中新世の火山岩と中新世の貫 入岩の活動を含む。第三ステージは鮮新世から第四紀の塩基性熔岩の活動である。アルプス期造山運 動初期の影響はキンメリア帯にも認められるが、後期ものは造山時貫入岩を含めて皆無である。第一 ステージの火山活動は、アルプス帯に近いキンメリア帯南部では認められるが、北部ではほとんど認 められない。第三紀には、キンメリア帯は団結して卓状地の性質を持ったと考えられる。アルプス帯 で、最も広い上部白亜紀火山岩帯は、カムチャッカ半島コリヤーク山脈に見いだされる。ここでは強 くしゅう曲した厚い堆積岩中に塩基性~中性火山岩を含むフィオライトを産する。サハリン西海岸に は酸性~中性~塩基性火山岩が分布する。シホテアリニ山脈では上部白亜紀の火山岩層の上にこれよ り広く厚い古第三紀火山岩が発達する。その岩相は前者は塩基性を主とし酸性岩を伴い、後者は酸性 火山岩からなる。上部ジュラ紀・古第三紀火山岩帯が陸成の堆積岩に挟まってジュグジュル山脈のオ ホーツク海沿岸からチュコト海沿岸、さらにチュコート半島ベーリング海沿岸まで幅200-250km、

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長さ約3000kmにわたって連続している。この火山岩帯の生成時代と組成は地域から地域へ変化し、 その幅はそれぞれCenomanian~始新世、玄武岩質安山岩から石英安山岩・流紋岩である。古第三紀・ 中新世火山岩類が最も広く分布するのは、シホデアリニ山脈である。この火山岩層は上部白亜紀火山 岩層の上に不整合に重なり、中新世までの間に玄武岩質安山岩~流紋岩火山岩活動が4サイクル認めら れる。サハリンでこの時期の火山活動は小規模である。カムチャッカおよびコリヤーク山脈には古第 三紀の安山岩と中新世の安山岩・石英安山岩・流紋岩が分布する。鮮新世・第四紀火山岩はアルプス 帯に広く産出する。シホテアリニ山脈及びサハリンでは鮮新世の安山岩・流紋岩と第四紀の玄武岩を 産する。カムチャッカおよびクリル諸島では鮮新世・第四紀火山活動はそれほど顕著ではないが、現 在まで火山活動は続いている。第四紀・現世の火山活動は安山岩熔岩および火山砕屑岩を主として玄 武岩を伴う。キンメリア帯のアルプス紀貫入岩としでは火山底マグマまりと考えられる小規模な花崗 岩及び花崗閃緑岩岩体を局部的に産するのみである。これに対し、アルプス帯には造山時貫入岩がし ばしば認められる。シホテアリニには白亜期末の花崗岩類、はんれい岩及び閃緑岩のほか始新世ある いは漸新世の花崗岩類を産する。カムチャッカおよびコリヤーク山脈には白亜紀と考えられる花崗閃 緑岩とオフィオライトの一部である超塩基性岩が見いだされる。

1-6. 地質構造発達史 プレートテクトニクスによる(例えば、丸山,1986;Zonenshain et al, 1985,1990,1992)ユーラシ アの構造発達史の研究結果を要約して述べることにする。 二つの主要なクラトンすなわちロシア(東ヨーロッパ)及びシベリアクラトンがCISの骨格を構成 している。他の地域は多くの大小陸型の地塊あるいは付加体を含む多数の造山帯からなっている。古 生代のウラル造山帯がロシアクラトンの東側に走り、付近にはカザフスタン付加微小大陸が存在する。 ロシアクラトンとシベリアクラトンの間の大部分は中央アジア造山帯(前記中央アジア地向斜とは異 なる)が占める(Zonenshain et al, 1992)。これらの造山帯は大部分付加的性質を有し、多数の海岸 (緑海を含む)及び島弧帯からなるもので、後期先カンブリア時代から古生代末にいたる長期にわた って、形成されたものである(第1-6~10図)。東西に延びる古生代のティエンシャン-Skythian造 山帯(前記中央アジア地向斜と地中海地向斜の一部)は小ヨーロッパクラトンとカザフスタン付加大 陸の一連の付加の結果である。。最も若いアルプス-ヒマラヤ造山帯は、印度-アフリカ/ユーラシア 衝突の結果であるがCISに入る範囲は小さい。この造山帯はジュラ紀から現在に至るまで大量の島弧 火山岩類を伴う典型的な活動的大陸縁辺であった。白亜紀の大部分にわたって少なくとも二つの緑海 -黒海とカスピ海南部-が活動的島弧の背後に開いていた(第1-11B~12A図)。シベリアの南東方 に分布するモンゴル-オホーツク帯(前記太平洋地向斜のキンメリア帯の南部)はアムール付加大陸 と北中国大陸がシベリアと衝突した結果、中部中生代に形成されたものである。しかし、最初古生代 にはPanthalassaにつながる広い海洋が存在した(第1-6~11A図)。CISの東縁には少なくとも三 つの造山帯すなわち、シホテアリニ-サハリン、ヴェルホヤンスク-チュコートおよびコリヤーク- カムチャッカ造山帯がある。シホテアリニおよびヴェルホヤンスク-チュコートおよびコリヤーク- カムチャッカ造山帯は、白亜紀にKuraプレートがユーラシア縁辺に沈み込む間に大部分形成されたも

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のである(第1-16B-17A図)。疑問がもたれている多くの地帯がこれらの造山帯に含まれているが、 結局、シホテアリニおよびヴェルホヤンスク-チュコート造山帯と同様に中・後期白亜紀には、長い 火山帯を伴う活動的大陸縁辺が形成された。コリヤーク-カムチャッカ造山帯は多くの海洋、島弧及 び微小大陸地塊が太平洋側から移動してきた典型的な付加帯である(第1-12A図)。これらの地塊は 最後にユーラシア大陸縁辺に合体する前に数千kmも移動してきたものが多い。クリル諸島の下には現 在も活動的沈み込みが続いている(第1-13図)。ロシア及びシベリアクラトンにはリフト構造あるい はオーラコーゲンが認められる。これらは大陸分裂の際の三つの分裂肢のうちの不毛肢に当たると考 えられている。リフトに関係する火成岩がリフト構造の周辺に広がる。さらにクラトン内には多くの プレート内火山岩及び貫入岩類が保存される。コラ半島のデボン紀アルカリ深成岩、シベリア卓状地 のペルム紀-三畳紀の巨大な台地玄武岩(シベリア・トラップ)(第1-11A,14図)、また多数のシ ベリアキンバレー岩およびロシアクラトンの新しい含ダイアモンド岩がその例である。 第1-2表に総合地質構造発達史を示した。

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第1-6図 旧ソ連の古地理・古環境(1) カンブリア紀(ZQNESHAIN et.al.,1990)

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第1-7 図 旧ソ連の古地理・古環境(2) A カンブリア紀後期~オルドビズ紀早期 B シルル紀(ZQNESHAIN et.al.,1990)

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第1-8図 CISの古地理・古環境(3) A デボン紀 早期 B デボン紀 中期~後期 (ZQNESHAIN et.al.,1990)

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第1-9図 旧ソ連の古地理・古環境(4) A 石炭紀 早期 B 石炭紀 後期 (ZQNESHAIN et.al.,1990)

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第1-10 図 旧ソ連の古地理・古環境(5) A ペルム紀 早期 B ペルム紀後期 (ZQNESHAIN et.al.,1990)

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第 1-11 図 旧ソ連の古地理・古環境(6) A 三畳紀 早期 B 白亜紀 中期 (ZQNESHAIN et.al.,1990)

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第1-12 図 旧ソ連の古地理・古環境(7) A 白亜紀 後期 B 古第三紀(ZQNESHAIN et.al.,1990)

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第1-13図 旧ソ連の古地理・古環境(8) 中新世(丸山・酒井,1986) Paleogeographic reconstruction of Asia and its environs at 25Ma.The hatched areas are the Precambrian , the black areas are microcontinents or remnant island arcs, and the coarse-dotted areas are back-arc basins. The line with solid teeth is active subduction zone. The double line and the arrow show the spreading axis and the plate motion, respectively. The parts with oblique lines mean the subducted aseismic ridges. The fine-dotted areas denote the subducted Indian and Philippine Sea plates and trapped Kula plate in central Hokkaido, Japan for the last 25Ma. The subducted Pacific plate is not shown to avoid the complexity. The lateral movements of the fragmental pieces due to the Indian collision are shown by small arrows. The deltaic sedi-ments developed by the Indian collision is shown by small open circles. PH means the Philippine Sea plate.

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第1-2表 ロシアの地質構造発達史

地質時代 構造 構造運動と 火成活動と鉱化作用 代 紀 世(Ma) 輪廻 構造帯の発達 新第四紀 ア ・安山岩・玄武岩の活動(カムチャツカ)玄武岩 粗面岩の活動(小 生 鮮新世 ル ユーカサス) 新第三紀 ・酸性~中性火山岩に伴い Sb(小ユーカサス)Hg(カムチャツカ) 代 中新世 プ 鉱床の形成

漸新世 ・斑状花崗岩の搬入と斑岩 Cu鉱床の形成(小ユーカサス) 古第三紀 始新世 ス ・インド大陸とユ ・Nicopol型マンガン鉱床 (ロシア卓状地南部) 暁新世 中 ーラシア大陸の ・花崗岩類の貫入とPb-Zn、Sn,W鉱床(鉛海州) キ 白亜紀 衝突 ・オフィオライトに伴う塊状 硫化物Cu鉱床(カムチャツ 生 ン カ) メ ・花崗岩の貫入とPb-Zn(大 コーカサス)、Pb,Zn、 代ジュラ紀 、 (太平洋地向斜) リ Au,Mo Sn,W ア ・Kulaプレートの ・塊状硫化物Pb-Zn鉱床 (大コーカサス)

沈み込み ・花崗岩貫入とSn,W鉱床 (東transbalkal) 三畳紀 ヘ シベリアトラップの形成と 正マグマ性Ni-Cu鉱床 ル ・大ユーカサス島 (ノールリスク) 古 ペルム紀 シ 弧の形成 ・花崗岩類の貫入とAu鉱床 (ウラル) ニ ・北中国・Amuria ・Cu,Mo,Pb,Zn,Sn,W鉱床(カザックスン・中央アジア)、 石炭紀 世 ア 小大陸のシベリ Fe,W,Mo 鉱床(アルタイ)

デボン紀 代 アへの衝突・合 ・花崗閃緑岩の活動とAu鉱床(Kuzunetsk山脈) カ シルル紀 体 ・オフィオライトの形成と 塊状硫化Cu鉱床、正マグ レ ・ロシア・シベリ マ性Cr・Pr鉱床の生成(ウラル) オルドビス紀 ド ア卓状地の衝 ・塊状硫化物多金属鉱床 (カザックスタン) 鉱床 ニ ,Cu 突・合体 (束サヤン) カンブリア紀 ア

超塩基~塩基性の貫入岩・ 正マグマ性 鉱床

Ni-Cu (コラ半島・ウクライナ) ・ウドカン含Cu砂岩層 (シベリア卓状地)

原Eocambrian ・カザックスタン ・花崗岩の活動スカルン鉱床 Jotnian(Baikalian)

小大陸の成長 ・Fe鉱層の形成(カレリア) 生 ・Olenogorsk 鉱層の形成 (コラ半島) 代 ・ウラル緑海の発 Dalslandian 展 Gothides

Karalidcs ・Chingiz島弧の 形成 始Belomorides

・ロシア・シベリ 生 Seamides ア卓状地被覆層 代 の堆積

・ロシア・シベリ ア卓状地基盤の 形成

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2.鉱床 2-1. 鉱床生成区 旧ソ連の鉱床生成区についてはSmilnov(1963)とMagakyan(1974)の研究がある。ここでは Smilnov(1963)について要約して紹介する。 鉱床生成区を描くに当たってその基礎となるのは鉱床生成期であり、生成区の区分は特定生成期の 鉱床が発達する範囲を描く事にほかならない。一つの地域に時代の異なる鉱床生成作用が重なるとき は最終生成期に基づいて区分を行うのを原則としている。旧ソ連のうち、ロシアの鉱床生成区を以下 に示す。 Ⅰ 原生代鉱床生成区 1)ロシア卓状地鉱床生成区 2)シベリア卓状地鉱床生成区 Ⅱ カレドニア期鉱床生成区 1)アルタイ-サヤン鉱床生成区 Ⅲ ヘルシニア期鉱床生成区 1)ウラル鉱床生成区 2)ノヴァヤゼムリヤ鉱床生成区 3)タイミル鉱床生成区 Ⅳ キンメリア期鉱床生成区 1)Transbaikal-シホテアリニ鉱床生成区 2)ドネツ盆地鉱床生成区 Ⅴ アルプス期鉱床生成区 1)北東辺区鉱床生成区 2)カフカス鉱床生成区

第2-1図に上に述べた事に基づいた旧ソ連の鉱床生成区分図を示す。主要な鉱床生成期が複数重なる場 合は記号で示してある。以下の各鉱床生成区について略述する。

Ⅰ-1. ロシア卓状地鉱床生成区 バルト楯状地の鉱床で最も重要な鉱床はコラ半島のBaikal期超塩基性・塩基性貫入岩に伴う正マグ マ性Ni-Cu鉱床であり、そのほかカレリアにはKarclia期の花崗岩類にともなうスカルンSn鉱床と層 状Fe鉱床を産する。ウクライナにもBaikal期(?)超塩塩基性貫入岩に伴う正マグマ性Ni-Cu鉱床 と層状Fe鉱床を産する。ロシア平坦地の被覆層中の鉱床としてはジュラ紀のFe堆積鉱床と古第三紀の Nicopol型Mn堆積鉱床がある。特に後者は重要である。

Ⅰ-2. シベリア卓状地鉱床生成区 アルダン地塊の原生代しゅう曲帯にはFeの変成鉱床及びBaikal期花崗に関係したスカルンFeを産 する。また、同しゅう曲帯には中・上部原生代Udokan系シルト岩-砂岩中に重要な含Cu砂岩層が広 く発達する。アルダン地塊には中生代末のアルカリ貫入岩体の小規模な活動に関係した熱水性Au鉱床 が認められる。シベリアトラップに関係した鉱床としては、貫入岩相に伴う正マグマNi-Cu性鉱床と 熱水性Fe鉱床があり、前者が特に重要である。シベリア卓状地北部には三畳紀生成の含ダイアモンド キンバレー岩を産する。

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第 2-1 図 ソ連国土の鉱床生生成区分(SMIRNOV,1963) 1.―アルプス期鉱床生成区 2.―キムメリヤン期鉱床生成区 3.―ヘルシニヤン期鉱床生成区 4.―カレドニアン期 鉱床生成区 5.―原生鉱床生成区 6.―始生代鉱床生成区,7.―キムメリヤン期鉱床生成区 8.―ヘルシニヤン期鉱 床生成区 9.―トラップ岩分布区域 鉱床生成区(○で囲んだ数字) アルプス期:1.―北東近区鉱床生成区 2.―コーカサス鉱床生成区 3.―カルパチヤ鉱床生成区 4.―コペトーダー ク鉱床生成区 5.―パミール鉱床生成区 キムメリヤン期:6.―トランスパイカル-沿海州鉱床生成区 ヘルシニヤン期:7.―ウラル鉱床生成区,8. ―カザフ鉱床生成区 9.―中央アジア鉱床生成区 10.―ドネツ盆地鉱床生成区 11.―タイムウィル鉱床生成区 12.―トミーコルィヴァン鉱床生 成区 カレドニヤン期:13.―アルタイ―サヤン鉱床生成区 深生代:14.―シベリア卓状地南部鉱床生成区 15.―パルチック楯状地鉱床生成区 6. ―ウクライナ楯状地鉱床生成区

Ⅱ. アルタイ-サヤン鉱床生成区 始生代及び原生代の見るべき金属鉱床は認められていない。カレドニア期の鉱床としては、第1期の 下部カンブリア紀塩基性~中性の火山岩類に伴う東サヤン南部の塊状硫化物Cu鉱床、上部カンブリア 紀~上部オルドビス紀超塩基性岩中の正マグマ性Ti鉱床(東サヤン北部)を産する。第2期の最下部シ ルル紀花崗閃緑岩には熱水性Au鉱床Z(クズネッキー山脈)を伴う。ヘルシニア期には、アルタイ地 域に前記のデボン紀花崗岩に伴うスカルン型Fe鉱床、中期の下・中部石炭紀花崗岩中のW-Mo石英脈 鉱床及び後期生成のHg鉱床を産する。

Ⅲ-1. ウラル鉱床生成区 前記ウラル地向斜に一致する。オルドビス紀から石炭紀にいたるオフィオライトに関係した種々の

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鉱床が分布する。塩基性から酸性にわたる火山岩に伴う塊状硫化物CuまたはPb鉱床が北部と南部に広 く分布し、輝岩及びはんれい岩中の正マグマ性Ti-Fe鉱床、かんらん岩中の正マグマ性Cr鉱床及びPt 鉱床を産する。また、かんらん岩中の風化NiまたはNi-Co残留鉱床も認められる。花崗岩類の貫入に 関係した熱水性Au鉱床も南部に多数産する。以上のほか東側には堆積性の古生代及び古第三紀のMn 鉱床が知られている。

Ⅲ-2. ノヴァヤゼムリヤ鉱床生成区 地質的にはウラル地向斜の延長と考えられる地域であるが、古生代の堆積性Mu鉱床が知られている ほかは現在のところ有力な鉱床は見いだされていない。

Ⅲ-3. タイミル鉱床生成区 北部にBaikal期しゅう曲帯、南部に古生代しゅう曲帯が分布し、原生代とカレドニア期に花こう岩 とはんれい岩・輝緑岩が貫入しているが今のところこれらに関係した有力な鉱床は見いだされていな い。しかし、ヘルシニア期の花崗岩に伴い熱水性のPbおよびHg鉱床を産する。

Ⅳ-1. Transbaikal-シホテアリニ鉱床生成区 太平洋地向斜の南部に相当する。東Transbaikalではキンメリア前期の花崗岩類に伴うSnおよびW 石英脈鉱床と後期の花崗岩類に伴うPb-Zn、Au、Moなどの熱水鉱床が広く分布し、小数であるがは ん岩型のCu-Moなどの熱水鉱床も産する。シホテアリニのキンメリア帯では、キンメリア前期の酸 性貫入岩に伴う熱水性Sn鉱床を、アルプス帯では白亜期末または古第三紀の閃緑岩・花崗岩・花崗は ん岩に関係した熱水性Pb-Zn、SnおよびW鉱床を産する。

Ⅳ-2.ドネツ盆地鉱床生成区 ロシア卓状地の南端、地中海地向斜と接する位置にある。鉱床は下・中部石炭紀の岩石中に胚胎し、 生成区の東端部にHg鉱床を産する。ジュラ紀後期-白亜紀前期に生成したものと考えられる。

Ⅴ-1. 北東辺区鉱床生成区 太平洋地向斜の北部に相当する。キンメリア帯では、キンメリア期前期のはん岩及び石英ひん岩岩 脈に関係する熱水性Au鉱床がヴェルホヤンスク-コリマ地域に広く分布し、また同地域にはキンメリ ア期後期の花崗岩類に伴う熱水性またはスカルン型のMo、Pb-Zn、AsおよびAu鉱床と大規模名Sn -W鉱床帯を形成している。オホーツクからチュコートにいたる上部ジュラ紀-古第三紀火山岩帯に は白亜紀の火山岩類にともない熱水性Hg、Sn鉱床を、先後期花崗岩類に伴うAu、はん岩型Mo-Cu 鉱床を産する。アルプス帯では、カムチャッカ半島の上部白亜紀オフィオライトの塩基性火山岩に伴 い塊状Cu硫化物鉱床、超塩基性岩中に正マグマ性Cr鉱床を産し、鮮新世の安山岩及び石英安山岩には 熱水性Hg鉱床を伴っている。カムチャッカ半島には古第三紀の花崗岩類に伴って斑岩Cu鉱床を産す るという報告もある。また、漂沙Au鉱床が生成区各地に分布する。

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Ⅴ-2. カフカス鉱床生成区 地中海地向斜の一部である。大カフカス地域にはキンメリア期の下・中部ジュラ紀塩基性~中性火 山岩類に伴う塊状硫化物Pb-Zn鉱床、上部ジュラ紀花崗岩類に関係する熱水性Pb-Zn鉱床、アルプ ス紀後期の古第三紀花崗岩類に伴う熱水性W-Mo鉱床、及びアルプス期最末期の中新世~第四紀酸性 ~中性火山岩類に伴う熱水性Hg鉱床が分布する。小カフカス地域ではキンメリア期中期のジュラ紀後 期~白亜紀前期花崗閃緑岩に関係するスカルン型Fe鉱床、アルプス期前期の上部始新世オフィオライ ト超塩基性岩中の正マグマ性Cr鉱床、アルプス期中期の漸新世~中新世はん状花崗岩に伴う斑岩型Cu -Mo鉱床及び最末期上部中新世~鮮新世酸性小貫入岩体に伴う熱水性Sb鉱床を産する。

3. 鉱床有望地域の抽出 ロシアの鉱床有望地域について、1987年に発刊されたソビエト連邦の鉱物資源図説明書に基づ き、以下の述べる。 鉱床タイプの区分は研究者により異なるが、成因的特性にもとづいてここでは10タイプ、すなわち、 マグマ分化型、ペグマタイト型、カーボナタイト型、接触-交代型(スカルン型)、本来の熱水性型、 遠熱水性型、堆積型、漂砂型、風化浸透・風化残留型(風化殻型)、被変成・変成型に区分した。各 鉱床タイプ毎に有望地域を述べる。 マグマ分化型の鉱床の重要鉱種は、成因的にマフィック質-超マフィック質貫入生成体と関係のあ る硫化銅-ニッケル鉱(コバルトと白金族元素を随伴)、超マフィック質-マフィック質貫入体と関 係のあるチタン-磁鉄鉱鉱、磁鉄鉱鉱、クロム鉄鉱鉱、クロム-白金鉱、アルカリマグマ活動と関係 のある燐灰石鉱、霞石-希少金属鉱である。このタイプに属するものとして、パーライト鉱床もある。 このマグマ分化型の鉱床が発達する主な地域には、ウラル山脈、バルト楯状地東部、カフカス山脈、 アルタイーサヤン地方、アルダン楯状地、ザバイカル地方の各褶曲区、そしてシベリヤ卓状地の西部 と中央部などがある。 ペグマタイト型の鉱床は、ペグマタイトの分布が小規模なため、量的には限られている。このタイ プの鉱床としては、広く知られている含雲母ペグマタイト、窯業原料ペグマタイト、希少金属ペグマ タイトの鉱床がある。カレリア地方にはペグマタイトに胚胎された白雲母鉱床、アマゾナイト鉱床、 ムーンストーン鉱床、石英鉱床、長石鉱床が、アルタイ-サヤン地方、バイカル地方には同様な白雲 母鉱床と希少金属鉱床が、タイムィル半島、チマン地方、エニセイ山稜には同じく白雲母鉱床が賦存 している。錫鉱床の中にも、このペグマタイト型に属するものがある(アルタイ地方、東北地方)。 カーボナタイト型の鉱床は複合鉱石からなり、マイメチャーコトゥーイ地方およびコラ半島の霞石、 鉄、希少金属、金雲母を随伴する燐灰石鉱の鉱床がそうで、当該鉱床はいずれも超塩基性アルカリ貫 入岩類(カーボナタイト類)に胚胎されている。 接触-交代型(スカルン型)の鉱床は、さまざまな褶曲区で知られている。このタイプの鉱床とし て、カレローコラ地方に錫鉱床(鉛・亜鉛・銅随伴)が、ウラル山脈に鉄、モリブデン、タングステ ンの各鉱床が、カフカス地方に鉄(コバルト随伴)鉱床が、アルタイ-サヤン地方に菱苦土石、金雲

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母、鉄、金、タングステンの鉱床が、アルダン楯状地に鉄および金雲母の鉱床が、極東地方と北東地 方に金、錫、鉛・亜鉛、モリブデン、鉄の鉱床がそれぞれ分布している。 もっとも代表的な鉱床群の一つである熱水性鉱床には、本来の熱水性鉱床とさらに遠熱水性の鉱床 も含めて、鉄、多金属鉱、錫、モリブデン、タングステン、その他の希少金属、アンチモン、水銀と 砒素、金と銀、さらに非金属鉱物資源、すなわち、蛍石、重晶石、貴石・宝石などの鉱床がある。こ れらの鉱床はソ連全土に広く分布しているが、なかでも複合褶曲帯、褶曲帯、地塊-褶曲帯に特徴的 で、当該分布区域には地殻およびマントルのマグマ活動が強く働いている。 この熱水性鉱床の重要な発達地域は、ウラル山脈地方、カフカス山脈地方、アルタイ山脈地方、サ ヤン山脈地方、ザバイカル地方、極東地方、北東地方である。 堆積型の鉱床はソ連全土に広く分布しているが、その鉱床がより多く集中・胚胎されているのは卓 状地の被覆堆積層および移過-褶曲構造域である。このタイプに属する鉱床には、石炭、可燃性頁岩、 鉄鉱、マンガン鉱、そして多種にわたる工業原料-石灰石、ドロマイト、石膏、さらに燐鉱と硫黄、 幾種かの有色金属(銅、鉛、亜鉛など)の成層鉱床、すべての石油、天然ガスと各種組成の塩類の鉱 床がある。これらの鉱床の重要な分布地域は、ロシア古期卓状地、シベリア古期卓状地、スキーフー トゥラーン楯状地の地域、そして褶曲区の堆積鉱体胚胎層系および堆積鉱体規制層系がいちじるしく 発達した幾つかの区域である。 漂砂型の鉱床(金、ダイヤモンド、白金、チタン、錫、琥珀、翡翠、翠ざくろ石)は、ウラル山脈、 西シベリア、ベルホヤン-コルィマ地方、アルダン楯状地、東シベリア、アルタイーサヤン地方、ザ バイカル地方、極東地方の第四紀および現世の堆積層と密接な関係を有する。 風化浸透鉱床および風化残留鉱床の分布はきわめて少ない。このタイプに入る鉱床にはコバルトを 伴った珪酸塩ニッケル鉱鉱床があり、さらにボーキサイト、鉄、硫黄、カオリン、重晶石、バーミキ ュライト、加水金雲母の鉱床があり、稀であるが燐鉱の鉱床もある。これらの鉱床は、ロシア卓状地 南部、ウラル山脈、カザフ地方および中央アジア、アルタイ-サヤン地方、東シベリアおよび極東地 方に特有の鉱床である。 被変成鉱床および変成鉱床(合せて変成源型鉱床)は結晶岩質楯状地および結晶岩質山塊中に胚胎 され、地質時代のさまざまな褶曲区内の地塊-隆起基盤岩層にも胚胎されている。このタイプの鉱床 としては、バルト楯状地東部に含鉄珪岩ならびに高アルミナ片岩(藍晶石片岩)、ウクライナ楯状地 に含鉄珪岩、滑石、黒鉛、ボローネシュ山塊に含鉄珪岩、アルダン楯状地と沿バイカル地方北部に燐 灰石のそれぞれ鉱床があり、ウラル山脈、アルタイ-サヤン地方、極東地方、シベリア卓状地北西部 その他の地域にも存在する。 変成鉱床ないし被変成鉱床は先カンブリア紀後の褶曲区に賦存し、同褶曲区の当該鉱床としては燐 鉱鉱床、黒鉛鉱床、鉄鉱床、金鉱床、珪岩鉱床、石綿鉱床、藍晶石鉱床、マンガン鉱床がある。この タイプの鉱床は、ウラル山脈、東シベリア、極東の諸地域に点在している。

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