資源開発環境調査 セルビア・モンテネグロ Serbia and Montenegro
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資源開発環境調査 セルビア・モンテネグロ Serbia and Montenegro 目 次 第 1 部 資源開発環境調査 1. 一般事情 ································································1 2. 政治・経済概要 ··························································2 3. 鉱業概要 ································································4 4. 鉱業行政 ································································4 5. 鉱業関係機関 ····························································4 6. 投資環境 ································································5 7. 地質・鉱床概要 ··························································5 8. 鉱山概要 ································································7 9. 新規鉱山開発状況 ························································8 10. 探査状況 ·······························································9 11. 製錬所概要 ·····························································9 12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 ························11 第 2 部 地質解析 1. 地質・地質構造 ·························································12 2. 鉱床 ···································································23 3. 鉱床胚胎有望地域 ·······················································66 資料(統計、法律、文献名、URL 等)·········································73 第 1 部 資源開発環境調査 1. 一般事情 1-1. 面積 10 万 2,173 ㎢ 1-2. 人口 1,060 万人 1-3. 首都 権謀的憲章上首都の規定はないが議会・政府はベオグラード(116 万人)、 セルビア・モンテネグロ裁判所はボドゴリッツァ(20 万人)に設置さ れると規定。 1-4. 公用語 セルビア語 1-5. 宗教 セルビア正教、イスラム教、カトリック 1-6. 地勢等 6~7 世紀 スラヴ人が定住。 14 世紀 ドゥーシャン王の中世セルビア王国絶頂期 1389 年 コソボの戦いでセルビアはオスマン・トルコ軍に敗退し、その後 500 年に渡り トルコの支配を受ける。1978年 セルビア、モンテネグロはベルリン条約により独立が承 認される。1914 年 オーストラリア皇太子暗殺事件をきっかけにオーストラリアはセルビ アに宣戦布告した。1918 年 スロベニア、クロアチアとともに「セルビア人、クロアチア 人、スロベニア人王国」(ユーゴスラビアの前身)建国。1941 年 ナチス・ドイツによる 侵略。1944 年 ユーゴスラビア社会主義連邦人民共和国を建国。1992 年 セルビア、モン テネグロから構成されるユーゴスラビア連邦共和国を樹立。1999 年 NATO による空爆を 受ける。2000 年ミロシェビッチ政権が崩壊した。2002 年 連邦再編のための合意が成立。 2003 年 セルビア・モンテネグロに国名を変更した。 出典:ARC レポート - 1 - セルビアモンテネグロ 2. 政治・経済概要 2-1. 政体 2 つの共和国から成る連合国家 2-2. 元首 スベトザル・マロビッチ大統領(2003 年 3 月就任、任期 4 年) 2-3. 議会 一院制 (定数 126 名:セルビア 91 名、モンテネグロ 35 名が選出される。) 連合国家議会の構成(☆印=与党) セルビア選出 議席数 セルビア急進等 30 セルビア民主党(☆) 20 民主党 13 G17 プラス(☆) 12 セルビア復興運動・親セルビア(☆) 8 セルビア社会党 8 モンテネグロ選出 議席数 モンテネグロ社会民主党(☆)と 19 モンテネグロ社会民主主義者党の連合 モンテネグロ社会人民党、モンテネグロ人民党及 14 びセルビア人民党の場合 モンテネグロ自由同盟 2 注※ アルバニア系政党は憲法的憲章前文に対する反対を理由に連合国家議会に代表 を出さない旨を述べており、右議席はモンテネグロ自由同盟に付与された。 2-4. 政治概況 2000 年 9 月 ユーゴ大統領戦況を契機に、国民による政権に対する抗議行動が広まり、 ミロシェビッチ政権は崩壊、民主派のコシュトゥーニツァ氏が新大統領に就任した。 2001 年 6 月 国際社会からの強い要請に応じミロシェビッチ前大統領が旧ユーゴ国際 刑事裁判所へ引き渡された。 80 年代から緊張が続いていたコソボでは、98 年 2 月末以降銃撃戦が頻発。99 年 3 月に は NATO の空爆が実施された。同年 6 月にユーゴは和平案を受け入れ、空爆は終了し、現 在、国連コソボ・ミッション(UNMIK)及び国際安全保障部(KFOR)が展開している。 モンテネグロでは 97 年にジュカノビッチ大統領が就任して以来、独立へ向けた動きが 活発化していたが、2002 年 3 月 EU の仲介により、現在の連邦を穏やかな連合国家に再 編することで関係当事者が合意した。右合意に基づき、2003 年 2 月に連合国家の憲法的 憲章が連邦議会手採択公布され「セルビア・モンテネグロ」に国名変更された(同年 3 - 2 - セルビアモンテネグロ 月に大統領、閣僚評議会(注:内閣に相当)が議会により承認された)。 2003 年 3 月 ジンジッチ・セルビア共和っ子苦首相暗殺事件が発生。事件後、セルビア 共和国政府は非常事態宣言を発令し、首謀者等の逮捕など、国内組織犯罪の対策に乗り 出す。また、後継首相に指名されたジブコビッチ氏は陣実地政権の政策の継承と全閣僚 の留任を発表した。 2003 年 12 月 ジンジッチ・セルビア共和国議会繰上げ選挙が実施された。同選挙では、 極右のセルビア共進等が第一党となったものの、民主は諸政党が 6 割を得票。2004 年 3 月 コシュトゥーニツァ首相率いる少数与党連立内閣が成立した。 2-5. 主要産業 食品加工、金属、電気、化学、繊維、農業(小麦、とうもろこし、ジ ャガイモ、ひまわり等) 2-6. GDP 108 億$ 一人当たり 1,100$(2001 年 推定) 2-7. 通貨 (セルビア)ノビ・ディナール (モンテネグロ)公定通貨としてユーロを採用 2-8. 為替レート 1 米ドル=61.37 ノビ・ディナール(2005/02 現在) 2-9. 貿易 (2003 年) 輸 出 29 億 1,700 万ドル 輸 入 79 億 5,700 万ドル 2-10. 対日貿易(2004 年) 貿易額 貿 易 品 目 (¥) 日本の輸出 12.8 億円 機械、食料品 日本の輸入 2.2 億円 食材品、機械 2-11. 経済概況 ミロシェビッチ政権下のユーゴに対し、国際社会は一連の紛争の尾責任を「ミ」政権 にあるとして、経済制裁措置を課すとともに、国際機関へのアクセスも制限したため、 国内経済は疲弊し、また国際的にも孤立した。さらに 99 年の NATO 空爆は経済の悪化に 拍車をかけた。 政権交代後、国際社会は対ユーゴ制裁を解除。また、今後はユーゴの経済再建のため の支援を行う方針。IMF、EBRD にも加盟(2000 年 12 月)。 2001 年 6 月に開催された支援国会合により、国際社会から今年度文として 12 億 8,000 万米$の復興支援が表明された。 国内では民営化や経済の構造調整に一定の成果が見られるものの、今後の経済の再建 - 3 - セルビアモンテネグロ には多大な努力を要するものと見られる。。 3. 鉱業概要 3-1. 鉱産品目別生産量(2003 年) 鉱 種 セルビア・モンテネグロ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ラ ン ク 銅鉱石(千 t) 25.2 13,675.6 0.2 26 銅地金(千 t) 14.0 15,236.7 0.1 36 鉛鉱石(千 t) 0.4 2,850.5 0.0 35 鉛地金(千 t) 0.5 6,864.7 0.0 48 亜鉛鉱石(千 t) 5.4 9,167.6 0.1 33 亜鉛地金(千 t) 0.1 9,806.5 0.0 35 アルミニウム地金(千 t) 120.2 28,001.3 0.4 30 ボーキサイト(千 t) 540.1 147,819.2 0.4 17 金鉱石(t) 3.6 2,349.4 0.2 31 銀鉱石(t) 1.0 18,207.5 0.0 41 セレン地金(t) 30.0 2,264.5 1.3 15 マンガン鉱石(千 t) 10.0 24,345.4 0.0 16 出典:World Metal Statistics Yearbook 2004 3-2. 埋蔵量 鉱 種 セルビア・モンテネグロ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク セレン(t) 2,000 170,000 1.2 6 出典:Mineral Commodity Summaries 2004 3-3. 輸出量 日本のセルビア・モンテネグロからの主要非鉄金属輸入実績(2003 年) 輸入実績なし。 4. 鉱業行政 4-1. 法律 エネルギー、金属、非金属などすべての鉱物資源に関する法律である。この法律は 1995 年に公布されている。探査権は Prospecting Licence と Exploration Licence の2種類 がある。鉱業法も 1995 年に公布されている。鉱業法は鉱山開発プロセスの探査後の開発 及び鉱山の操業に関する法律である。鉱業権には Exploitation Licence と Mining Operation Licence の2つがある。現行鉱業法の見直しが 2002 年に開始され、検討され ている。 5. 鉱業関係機関 5-1. 政府機関 - 4 - セルビアモンテネグロ 鉱山・エネルギー省(Ministry of Mining &Energy) 鉱業、エネルギー、国家エネルギーバランス、石油・天然ガスの生産を管轄している。 鉱業・地質部では、鉱業活動に関する地質調査と鉱業権の許可についての権限を有して いる。また、科学・環境保全省にも地質調査を実施する部門が存在することから両者を 統合して地質調査所を設立することを検討している状況にある。 6. 投資環境 6-1. 治安 2005 年 3 月 8 日、セルビア・モンテネグロのコソボ暫定自治政府首相ハラディナイ氏 (旧コソボ解放軍地方司令官)が ICTY(旧ユーゴ国際刑事裁判所)においてコソボ紛争 時の戦争犯罪容疑で起訴され、首相職を辞任した。今後、ICTY におけるハラディナイ元 首相の起訴に対し、コソボ地方のアルバニア系住民による反発が高まり、コソボ全域で 2004 年 3 月 17 日に発生した騒擾事件と同様の騒擾が発生する可能性がある。コソボ地方 では、国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)、コソボ国際安全保障部隊(KFOR)が不測の事 態に対して即応体制を敷いていますが、情勢は流動的な状態にあり、治安も不安定な状 況にある。 7. 地質・鉱床概要 セルビア・モンテネグロは、国土の東側をマグマ弧が横切り、テチス金属生成帯の鉱 床が胚胎するヨーロッパ諸国の中でも多くの鉱床が認められる国である。特に数多く確 認されている鉱床は以下のとおりである。 1) 高硫化系、浅熱水金鉱床 2) 斑岩、スカルン銅金鉱床 3) 鉱染、堆積層内硫化物金鉱床 - 5 - セルビアモンテネグロ 第 7-1 表 セルビア・モンテネグロの地質鉱床概要図(JMEC 内部資料) - 6 - セルビアモンテネグロ 8. 鉱山概要 8-1.Cerevo 鉱山 会社名(権益比率): RTB Bor 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 金属量 t Cu 1999 -- 2000 5,000 e 2001 5,000 e 2002 5,000 e 2003 5,000 e Raw Materials Data August 2004 備考:建設中 8-2.Veliki Krivelij 鉱山 会社名(権益比率): RTB Bor 鉱床 鉱種 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 粗鉱生産量 品位 金属量 Mt %Cu Cu t 1999 2.5 1.00 20,000 e 2000 2.5 e 1.00 15,000 e 2001 10,000 e 2002 10,000 e 2003 10,000 e Raw Materials Data August 2004 8-3. Majdanpek 鉱山 緯度・経度:44.04.59N,22.05.38E 会社名(権益比率): RTB Bor 鉱床 鉱種 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 年 粗鉱生産量 品位 金属量 Mt % Cu Cu t 1999 20,000 e 2000 3.5 e 0.50 10,000 e - 7 - セルビアモンテネグロ 2001 10,000 e 2002 10,000 e 2003 10,000 e 採鉱法 :OP 副産物等 :Zn Pb 9. 新規鉱山開発状況 9-1. Belo Brdo 鉱山 会社名(権益比率):Trepca 鉱床 鉱種 : Pb Zn Ag 埋蔵鉱量 :資源量 2.0 百万 t 112g/tAg, 7.7%Zn, 8.2%Pb 開発計画 :2002 年現在 開発費 :US$4 百万 採鉱法 :UG 年間採掘量 0.18 百万 t 選鉱 :150t/d 9-2.Crnac 鉱山 会社名(権益比率):Trepca 鉱床 鉱種 : Pb Zn Ag 埋蔵鉱量 :資源量 1.4 百万 t 166g/tAg, 3.5%Zn, 11.7%Pb 開発計画 :2002 年現在 開発費 :US$5 百万 採鉱法 :UG 年間採掘量 0.14 百万 t 9-3. Novo Brdo 鉱山 会社名(権益比率):Trepca 鉱床 鉱種 :Pb, Zn, Ag 埋蔵鉱量 :資源量 2.3 百万 t 135g/tAg, 7.5%Zn, 4.9%Pb 開発計画 :2002 年現在。 開発費 :US$11 百万 採鉱法 :UG 年間採掘量 0.20 百万 t 選鉱 :400t/d 9-4. Ajvalija 鉱山 会社名(権益比率):Trepca 鉱床 鉱種 :Zn Pb - 8 - セルビアモンテネグロ 埋蔵鉱量 :資源量 1.2 百万 t 126g/tAg, 18.8%Zn, 9.6%Pb 開発計画 :2002 年現在。 開発費 :US$6 百万 採鉱法 :UG, 年間採掘量 0.07 百万 t 選鉱 :150t/d 10. 探査状況 10-1.Hereward Ventures 社(英) ・セルビア共和国東部における探鉱 鉱区面積は 72.75km2 で、斑岩型の Bor 銅金鉱床を含む Timok 銅金ベルトに位置する。 Timok 銅金ベルトはセルビアの地質技師によりこれまでに集中的に調査されてきたもの の、1990 年代以降は政治的混乱もあって最新技術による探鉱は行われていない。同社は 衛星画像解析と地表踏査による予備的な調査を既に実施済みであり、銅金鉱床有望地を 3 か所絞り込んでいる。 ・Ivanhoe Mines(カナダ)は、Hereward Ventures(イギリス) と共同で南セルビアの Lece Mining 地域の Ivan KUla 地区と Tulare 地区の探鉱実施に合意した(2005 年 2 月 Mining Journal)。 10-2. European Nickel 社(英) 2 つの地域の探鉱ライセンスを獲得した。一つはセルビアの南西で Mokra Gora 鉱床を 含む地域で、もう一つはセルビアの中央 Lipovac 地域である。Mokra Gora 鉱床は 1950 年代と 1990 年代にセルビア地質調査所によって探査されたニッケル・ラテライト鉱床で、 38 本のダイヤモンドボーリング等の結果から、埋蔵量をロシアの資源量分類で、B:30.2 百万トン、C1:64.4 百万トン、C2:150.0 百万トン、合計 244.6 百万トン、ニッケル平均 品位 0.7%と推定されている。Lipovac 鉱床は同様に 60 年代と 70 年代の探査により合計 18.2 百万トン、平均品位 0.85%と推定されている。同社では、バルカンのニッケル鉱床 を拡大取得するとの戦略でこれら鉱区を取得しており、Mokra Gora 鉱床では予備的な実 験室レベルの試験で、酸リーチング適用により、同社のトルコ Caldag ニッケルプロジェ クトより早く溶解しニッケルが得られることがわかっており、リーチング・プロセスの 修正が可能であることがわかったとしている。 11. 製錬所概要 11-1. Bor Copper Smelter/Refinery 位置 :Bor, Serbia 会社名(権益比率):RTB Bor 主要生産金属 :Cu 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年 - 9 - セルビアモンテネグロ 年 生産量 (金属量 千トン) 溶錬 精錬 1999 45.0 e 51.8 2000 34.0 e 46.0 2001 24.0 e 32.0 2002 30.0 e 35.0 2003 30.0 e 40.0 e Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 : 溶錬 :反射炉 精錬 :ELR 鉱山製錬所位置図 Majdanpek・休廃止 Veliki Krivelij Bor copper smelter/Refiner Cerevo Belo Brdo Trepca Novo Brdo - 10 - セルビアモンテネグロ 操業鉱山 Serbia Montenegro-Cu Cerevo Serbia Montenegro-Cu Veliki Krivelij Serbia Montenegro-CuZnPb Majdanpek 探鉱開発 Serbia Montenegro-PbZn Belo Brdo Serbia Montenegro-PbZn Crnac Serbia Montenegro-PbZn Novo Brdo Kosovo Trepca Pb2111,Zn1494,Ag3671 Lat42.55N,Log20.54E 精錬所 Serbia Montenegro-Cu Bor Copper Smelter/Refinery 休廃止鉱山 Serbia Montenegro-Cu Majdanpek(RTB Bor:2001~) 12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 実績無し - 11 - セルビアモンテネグロ 第 2 部 地質解析 セルビア・モンテネグロは、2003 年に旧ユーゴスラヴィア連邦共和国を破棄して形成 された連合国家である。ソビエト連邦、東欧圏全域における社会主義政権の崩壊および 民主化の影響で、1991 年に旧ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国が崩壊し、クロアチ ア、スロヴェニア、セルビア、マケドニア、ボスニア、ヘルツェゴヴィナの5つの共和 国に分裂し独立した。しかし、分裂後も、民族戦争に宗教上の紛争が加わり、周辺諸国 や国際連合までをも巻き込んで、現在も熾烈な争いが繰り返されてきた。 このような歴史的背景と社会情勢のために、この国々(あるいは一連の国家群)の資 源の賦存状況および生産活動について、正確な情報を得ることはほとんど不可能である。 もともと、社会主義国では、自由主義経済社会では到底開発し得ないような低品位の資 源でも、自給自足体制を維持するために開発操業されることが少なくない。また、自由 主義社会に対してこの種の情報が流出するのを極度に制限していることもあって、その 規模などを直接間接に比較できる情報が極めて限られている。旧ユーゴスラヴィア社会 主義連邦共和国の地下資源に関する情報もその例外ではない。 国際鉱物資源開発協力協会(1996)の報告書「旧ユーゴスラヴィア連邦共和国」では、 100 を超える鉱床が一覧で紹介されている。セルビアやマケドニアの銅資源や、ボスニア やクロアチアのボーキサイトなどは世界的水準にある資源といわれてきたが、その実態 がなお明らかでないのは上述のような理由によっている。 このように、ユーゴスラヴィアの鉱物資源についてまとまった文献は極めて少ない。 わずかに、Jankovic, S.(1977, 1982a, 1982b)による鉱物資源についての文献が知ら れてきた。国際鉱物資源開発協力協会(1996)は、これらにもとづいて、平成6年度資 源開発協力基礎調査プロジェクト選定調査報告書「旧ユーゴスラヴィア連邦共和国」を その後、平成9年度金属鉱業事業団資料情報センター報告書業務報告書「東欧諸国の地 質鉱床」が出版されている。この中からセルビア・モンテネグロの該当する箇所を今回 の地質解析の基礎資料として主に活用した。 1.地質・地質構造 東欧諸国(第 1-1 図)は、ヨーロッパ大構造区図(第 1-2 図)において原ヨーロッパ (Eo-Europa)、古ヨーロッパ(Paleo-Europa)またはプロトヨーロッパ(Proto-Europa)、 中ヨーロッパ(Meso-Europa)、新ヨーロッパ(Neo-Europa)わたり、極めて複雑な地質 構造をなしている。セルビア・モンテネグロは、新ヨーロッパに属するアルプス造山帯 (カルパチア造山帯・バルカン造山帯・ディナール造山帯・ヘレナ造山帯の一部)に属