KISHIDAIA Bulletin of Tokyo Study Group No.111,Aug. 2017 ─ 目 次 ─

新海 明:こしき糸は足場糸になる …………………………………………….. 1 初芝伸吾・石井智陽・寺内優美子・池田博明:ウズグモの餌種 ...... 6 泉 宏子:ムツメカレハグモの観察 ………………………………………...... 10 腰高直樹:蓑虫による円網食い行動について ……...... 13 安田明雄:立春を迎えた 3 頭のジョロウグモ(横浜市金沢区での記録) ..... 16 鈴木佑弥:オガタモリヒメグモの網構造と捕食行動について ……………….. 19 藤野義人:京都市上京区御霊神社に生息しているヒトエグモ ……………….. 24

DRAGLINES 鈴木佑弥:ムナボシヒメグモを捕食したテングヌカグモ雌 ...... 32 鈴木佑弥:イエユウレイグモによるクモ食の記録 …………………………... 32 鈴木佑弥:茨城県つくば市で採集されたクモ ...... 34 鈴木佑弥:桜川市真壁町およびつくば市神郡にて採集されたクモ ……...... 36 市川武明:上野原市新田で採集したクモ …………………………...... 38 五十嵐 悟・細井俊宏・水澤玲子・馬場友希: 福島市でツシマトリノフンダマシを発見 …………... 39 平松毅久:ヨコヅナサシガメによるギンメッキゴミグモ卵嚢からの吸汁 ... 40 平松毅久:ジョロウグモの卵嚢で越冬していたクロマルイソウロウグモ幼体 …………………………………………………………...... 41

馬場友希・中島 淳:福岡県北九州市白島(男島)のクモ ...... 43 馬場友希・片山直樹:沖縄島における水田・休耕田のクモ ………………….. 46 菅波洋平:白神山地 (秋田県 )の土壌から採集されたクモ類 …………………… 51 谷川明男・宮下 直:佐渡島のクモ類採集記録 ……………………………….. 55 池田博明:東京蜘蛛談話会 2016 年度観察採集会報告 町田市芹ケ谷公園のクモ ………………………………………….. 74

KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017

こしき糸は足場糸になる

新 海 明

Kishidaia108 号にスズミグモの粘らない横糸について「足場糸説」と「こしき糸説」 があることを述べたことがあった(新海 2016 ). クモの網の研究を活発に開始した 1980 年代の初めの私の興味は,ジョロウグモの網 に残された五線譜状の足場糸の存在についてであった.ジョロウグモのいわゆる足場糸 は,普通の円網の足場糸と同じものなのか.だとしたのならば,なぜ横糸作成後も取り 去られずに残されたままなのか.残された足場糸にはどのような役割があるのか.スズ ミグモの粘らない横糸との関連性は …などなどの疑問である. その当時の野帳を見直したところ,足場糸とこしき糸に関する観察記録がかなり残さ れていた.改めて見直すと,こしき糸と足場糸の関係を探る資料になるものがあること が分かった. ここでは,この古いデータを基にして,「橋糸はワク糸にならない」(新海 2015 ) という報告をもじり,「こしき糸は足場糸になる」というテーマでこしき糸と足場糸の 関係について考察してみたい.

方 法 調査は,1982 年( 23 例) 1986 年( 3 例) 1987 年( 8 例)に東京都八王子市にあ る八王子城跡と千葉県天津小湊町(現,鴨川市)にある東京大学千葉演習林および沖縄 県中頭郡中城村にある中城城跡において行った. 造網初期のクモを見かけたら,その種名と幼・成を区別した.しかし記録していなか ったものも多くそれらは不明とした.そして,こしき糸と足場糸が,以下に述べる 2 つ のタイプのうちのどちらのタイプで張られたのかを記録した.すなわち,タイプ A は こしき糸と足場糸が不連続となって見えるもので(図 1A),タイプ B はこしき糸と足 場糸が連続して張られているものである(図 1B).

結果と考察 1982 年・ 1986 年・ 1987 年に調査したクモの種類,日時,場所をタイプ A および B に分けてまとめたものを表 1 に示す.

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A B

図 1.こしき糸と足場糸の2つのタイプ. A はこしき糸と足場糸が不連続で, B は両者が連続している . 表 1.こしき糸と足場糸の 2 つのタイプ . タイプ A はこしき糸と足場糸が不連続で,タイプ B は両者が連続している .

タイプ A(不連続) サツマノミダマシ 幼 2 東京都八王子市八王子城跡 1982.6.12. ワキグロサツマノミダマシ 不明 3 八王子市八王子城跡 1982.8.11. トガリオニグモ 亜♀ 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.8.7. トガリオニグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.8.11. アシナガグモの一種 幼 1 千葉県天津小湊町(東大千葉演習林)本沢林道 1982.4.18. シロカネグモの一種 幼 1 千葉県天津小湊町(東大千葉演習林)本沢林道 1982.4.18. シロカネグモの一種 幼 8 千葉県天津小湊町(東大千葉演習林)本沢林道 1987.2.22. タニマノドヨウグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.5.29. キララシロカネグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.7.31. キララシロカネグモ 幼 1 東京都八王子市八王子城跡 1986.6.21. キンヨウグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.7.31. 合計 21 例

タイプ B(連続) ヤマオニグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.5.29. ヤマオニグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.8.7. ヤマオニグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.8.11. サツマノミダマシ 幼 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.6.12. サツマノミダマシ 不明 1 千葉県君津市(東大千葉演習林)猪の川林道 1982.8.28. ワキグロサツマノミダマシ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.8.11

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コゲチャオニグモ 不明 1 千葉県君津市(東大千葉演習林)猪の川林道 1982.8.28. ギンナガゴミグモ 幼 1 東京都八王子市八王子城跡 1986.7.5. チブサトトゲグモ 不明 1 沖縄県中城村中城城跡 1982.7.18. ヌサオニグモ 亜♀ 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.7.23. ヌサオニグモ ♀1 東京都八王子市八王子城跡 1982.8.7. カラフトオニグモ 幼 1 千葉県天津小湊町(東大千葉演習林)清澄山 1986.11.23. チュウガタコガネグモ 不明 1 東京都八王子市八王子城跡 1982.8.11. 合計 13 例

この表を見ると,タイプ A(不連続)にはトガリオニグモを除き,アシナガグモ類が 多く含まれ,タイプ B(連続)はオニグモ類が多いことがわかる.これらのデータには 示されていないが,私はこの他にゴミグモ類・コガネグモ類・ウズグモ類・ジョロウグ モなどがタイプ B(連続)であることを確認している.タイプ B がより広範な種類で 見られるようだ. さらに,サツマノミダマシやワキグロサツマノミダマシでは A と B の両方のタイプ があったことも興味深い.ともに観察例が少なく断定的なことは述べられないが,後述 する考察のひとつの証拠になる可能性がある.

ⅰ)こしき糸は足場糸になる タイプ A と B は,その構造を見れば誰でも明確に区別できる(図 1).すなわち, タイプ A はこしき糸と足場糸の境目にギャップがあり,タイプ B にはそこにギャップ はない.しかし,その造網過程を比較するとギャップは A・B 共にないのである. どういうことか,タイプBの造網過程はここで詳述する必要はないだろう.こしき糸 は外側に行くに従い連続しながら 間隔が次第に広がるだけである.一 方,タイプ A は図 1A に示したよう に見た目の明瞭なギャップが,こし Q き糸と足場糸の間に存在する.とこ P ろが,見た目上のギャップはその造 網過程を観察するとなくなってし まうのである(図 2). 詳述しよう.クモは,円網の中心 部のこしきから縦糸を 1 本ずつた どりながら円周を描くように移動 し,こしき糸を張り始める.3~5 周 すると,その「こしき糸」の終点(図 図 2.こしき糸と足場糸は不連続だが糸は PQ で 2-P 点)から,同じ縦糸を外側に つながっている.説明は本文を参照. 3

少しずらし,そこに「足場糸」の起点となる糸を付着するのだ(図 2-Q 点).そして, ここからさらに外側へ足場糸を張っていくのである. つまり,PQ 間には縦糸と重なるようにもう 1 本の糸が引かれ,こしき糸と足場糸は この糸によってつながっているわけである. すなわち,タイプ A は網の構造上ではこしき糸と足場糸の境目(ギャップ)が明瞭に 認められるのだが,造網過程を観察するとこしき糸と足場糸は連続して張られているこ とが分かる.こしき糸の終点 P と足場糸の起点 Q は必ず同一の縦糸上に存在しており, 異なる縦糸にずれて付着されることはない.また,造網時にわずかに立ち止まることは あるが時間的な中断はたいしたものではない.クモはこしき糸を P 点で張り終えると, 縦糸上を外側に移動して糸疣を Q 点に付着し,そこから足場糸を連続して取り付け始 めるのである.

ⅱ)こしき糸と足場糸に違いはない 私は,スズミグモの粘らない横糸をめぐる問題でこしき糸と足場糸について考察した ことがあった(新海 2016 ).少し長くなるが以下に引用する. 「こしき糸と足場糸はそもそも別物ではなく,本来同じ種類の糸に由来するのではな いかと考えている.おそらく,同じ糸疣から引き出されたまったく同じ種類の糸であろ う. それがなぜ,こしき糸と足場糸に区別されるのか.それは,完成後の網の構造上の区 分からだろう.足場糸は普通円網では横糸を張る際に切り取られていき,完成後の円網 には残されない.だからこそ,ジョロウグモの完成後の円網に足場糸が残されているこ とが不思議なのである.スズミグモでは,こしき糸から同じ操作で張られた足場糸の作 成後に円網作成が終了してしまう.そこで,この粘性のないヨコ糸の正体は『何なんだ』 というわけだ. 普通円網の構造上あるいは作成過程から区別された『こしき糸』と『足場糸』は,本 来は中心からワク部に張られる『粘性のないヨコ糸』でしかなく,この糸をスズミグモ は普通円網より稠密に張ったもので,ジョロウグモはスズミグモよりもその糸を粗く張 り,そこに横糸を付加したもの.さらに,普通円網では粘性のある横糸を張るときに, その糸を取り外していったのだ …と考えるだけでよいではないか」 これが,こしき糸と足場糸についての現在の私の見解である. 本報告でも,サツマノミダマシとワキグロサツマノミダマシで A と B の両方のタイ プの張り方が混在していたことも,この見解を支持する証拠の一つと考えている.同一 の種類が A と B 両方の張り方をすることは,こしき糸と足場糸が本質的に異なるもの でなく,こしき糸から足場糸へ移行する際に見られるギャップは,おそらく円網作成す る上で必要なこしき(あるいは足場)糸が,造網上あるいは網構造上で,現在のところ は十分には解明されていない何らかの理由で必要に迫られ,その使い方を変えただけの ものであり,結果として円網(こしき糸や足場糸)のバリエーションが多様なものにな

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っていったのではないかと想像している.

引用文献 新海明 2015 .橋糸はワク糸にならない.Kishidaia ,107:9-11. 新海明 2016 .中平清先生遺稿「土佐のクモ」(2)スズミグモのヨコ糸は足場糸かこし き糸か.Kishidaia ,108:9-15.

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ウズグモの餌種

初芝伸吾・石井智陽・寺内優美子・池田博明

要 約 カタハリウズグモの野外における餌種を調査しました. 5 例のうち 4 例は小形のハ エで, 1 例は小形甲虫のキクイムシの一種でした.

はじめに クモの餌となる昆虫の種類はクモの捕獲特性によって異なることが知られています. スイスのナイフェラーはクモの科ごとに捕獲した昆虫の科の目録を報告していました (Nyffeler 1999 ;池田 2015 に紹介).しかし,ナイフェラーの報告はウズグモ科の クモの餌となる昆虫目録を欠いていました. ウズグモ類は毒腺を欠き,捕獲昆虫の動きを抑止するのにラッピングのみを用いる捕 獲特性を持ちます( Lubin 1986 ). このような捕獲特性からフェーリクスは『 Biology of 』第 3 版の「餌捕獲 Prey Capture 」の節において,「毒液なしでの餌捕獲 Prey Capture without Venom 」 という項目を新設し,以下のようなウズグモ類の餌捕獲特性を記述していました (Foelix 2011 ). ・獲物に対しては 1 時間以上もかける,糸の長さは 100 m以上にもなる徹底的なラッ ピングを行う( Lubin 1986, Opell 1988 ). ・しっかりしたラッピングによって強い張力が生み出されている.ラッピングが餌の体 の軟部を圧縮し,四肢を折り曲げて破壊し,効果的に獲物を窒息させる.しめあげら れて死ぬ餌もあるほどだ( Eberhard et al. 2006 ). 消化酵素はたぶん脚や関節の膜が壊れたところから入るのだろう.驚いたことに糸 タンパク質は中腸の吐き戻しの消化酵素によって破壊されていない.ラッピングの糸 は二種類から成っているようだ.細い糸は消化されリサイクルされるが,太い糸は消 化液に抵抗性がある( Weng et al. 2006 ). このような捕獲特性から,私たちは野外のウズグモ類の餌となる昆虫は特定の昆虫類 に偏っているのではないかと予想しました. 先行記録を調べてみますと,ルービンの観察では,ニューギニアの円網ウズグモの一 種 Lubinella morobensis の捕獲行動で観察された餌は, 5 匹のショウジョウバエと 3 6

匹のイエバエ, 2 匹のアリ( Anopolepis 属と未同定の一種)と,ハエに偏った結果を 記録していました.また,ルービンはヒメウズグモの一種 Philoponella undulata とミ ナミウズグモの一種 Zosis geniculatus のラッピング時間を調べていますが,その際に 彼女が選んで与えた昆虫はイエバエ,クロバエ,バッタ幼虫,ショウジョウバエ,アリ (Anopolepis 属の一種)でした.このうち,バッタ幼虫はこれらのクモにとってなじ みのない餌であると説明されていますし,アリも防御物質を分泌するためでしょう,捕 獲域にラップしたまま残されて,食事場所での再ラップされないものが多いと報じられ ていました( Lubin 1986 ).ウズグモ類にとって,アリは食べないわけではないもの の,厄介な餌なのでしょう. また,エバーハードらはコスタ・リカの熱帯雨林の日陰に造網するヒメウズグモの一 種 Philoponella vicina のフィールドで集めた昆虫餌種 46 個は 9 目,小さな甲虫から 脚の長いカまでにわたったと記していました.ビデオ録画等により野外でメスが攻撃し た餌種はガガンボ,イエバエ,ショウジョウバエ,アリ,コマユバチ,ガ,ヨコバイ, 甲虫と列挙されていて,餌に関してはジェネラリスト(なんでも食)であると判断して いました( Eberhard et al. 2006 ).

方 法 2016 年 6 月から 10 月にかけて桐生自然観察の森(群馬県桐生市川内町 2 丁目 902- 1)で石井・寺内が円網を張っているウズグモ類が保持している餌包みを採集し,三角 紙に保存しました.採集された餌包みを初芝が撮影し,サイズを測定したうえで包みを 開いて餌昆虫の撮影・同定を行いました.本報では餌包み内の昆虫写真は省略しました. 報文全体の解説・考察は池田が行っています. データはまだ十分とは言えませんが,同好の士の関心を喚起する意味で,第一報を報 告します.なお 6 月に桐生自然観察の森で円網を張っているウズグモ類として, 2016 年 6 月 12 日のクモ観察会および前日の予備調査で記録したクモはカタハリウズグモ Octonoba sybotides のみでした(池田・石井・寺内 2016 ).

結果

№1 採集日 2016 年 6 月 25 日 採集者 石井智陽 餌包みの長径 1.8mm ,短径 1.2mm . 餌包みの中の昆虫の体長 2.8mm . 昆虫種 コウチュウ目 キクイムシ科 ヨシブエナガキクイムシ Platypus calamus Blandford ♂1 個体 同定文献:林匡夫・森本桂・木元新作, 1984 .

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№2 採集日 2016 年 6 月 30 日 採集者 石井智陽 餌包みの長径 3.4mm ,短径 1.4mm . 餌包みの中の昆虫の体長不明. 昆虫種 ハエ目ノミバエ科の一種 . Phoridae gen. sp. 同定文献:平嶋義宏・森本桂, 2008 .

№3 採集日 2016 年 7 月 7 日 採集者 石井智陽 餌包みの長径 1.8mm ,短径 1.6mm . 餌包みの中の昆虫の体長不明. 昆虫種 ハエ目アシナガバエ科の一種 Dolichopodidae gen. sp. 同定文献:平嶋義宏・森本桂, 2008 .

№4 採集日 2016 年 10 月 16 日 採集者 寺内優美子 餌包みの長径 2.7mm ,短径 2.6mm . 餌包みの中の昆虫の体長不明. 昆虫種ハエ目キノコバエ科の一種 . Mycetophilidae gen. sp. 同定文献:平嶋義宏・森本桂, 2008 .

№5 採集日 2016 年 10 月 16 日 採集者 寺内優美子 餌包みの長径 2.8mm ,短径 2.5mm . 餌包みの中の昆虫の体長不明. 昆虫種 ハエ目イエバエ科 Caricea 属の一 種 Caricea sp. 同定文献:篠永哲, 2003.

初芝の観察によると,ラッピングの程度は もっとも厚くラップされているもの(イエバ エ Caricea 属 sp. )を 5 とすると,キクイムシは 4,ノミバエは 3,アシナガバエは 2,キノコバエ 3 となりました.また,キクイムシでは胸部や腹部の外骨格・翅以外の 筋肉等は消化されて,ほぼ残っていませんでした.

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考 察 桐生自然観察の森のウズグモ円網種(カタハリウズグモ以外のウズグモ円網種は記録 されていない)の餌包みにラップされていた昆虫はハエ類が主でした.エバーハードら (Eberhard et al. 2006 )はヒメウズグモの一種で餌種に関してジェネラリストと評 価していましたが,桐生自然観察の森の餌種の結果からは一概にジェネラリストと断言 することが躊躇されました.ルービンも主な餌をハエと判断しているようです( Lubin, 1986 ). ナイフェラーの造網性クモ類の餌種の結果をみると,ハグモ科ハグモ類の餌種に双翅 目が 64±15 %と多いのに気づかされます.双翅目以外の餌は同翅目の 21±13 %でした. これほど餌として双翅目が多い造網性クモ類は他に例がありません( Nyffeler 1999 ). ハエが捕獲されやすいのは,毒腺のないウズグモ類だからではなく,篩板糸の網の特徴 なのかもしれません. ウズグモが保持する餌包みの様態とも合わせて,引き続きウズグモの餌種に注意を払 ってみたいと思っています.

参考文献 池田博明, 2015. 『クモは虫を食べる』の構想. KISHIDAIA ,106 :5-20. 池田博明・石井智陽・寺内優美子, 2016 .桐生自然観察の森 6 月のクモ. KISHIDAIA ,109 : 36-37 . 林匡夫・森本桂・木元新作, 1984 .原色日本甲虫図鑑Ⅳ. 保育社. 平嶋義宏・森本桂監修, 2008 .新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ(トンボ目・カワゲラ目・バッタ目・カメ ムシ目・ハチ目他.北隆館. 篠永哲, 2003 .日本のイエバエ科 . 東海大学出版会. Eberhard, W. G., G. Barrantes, J.-L. Weng. 2006. Tie them up tight: wrapping by Philoponella vicina spider breaks, compresses and sometimes kills their prey. Naturwiss. 93: 251-254. Folelix ,R. 2011. Biology of Spiders, Third edition. Oxford University Press . Lubin, Y. D. 1986. Web building and prey capture in the Uloboridae. In Shear, W. A. ed. Spiders: Webs, Behavior and Evolution. Stanford University Press, Stanford. 132-170. Nyffeler, M., 1999. Prey selection of spiders in the field. J.Arachnology, 27:317-324. Opell, B. D. 1988. Prey handling and food extraction by the triangle web spider Hyptiotes cavatus (Uloboridae). J. Arachnol., 16: 272-274. Weng, J.-L., G. Barrantes, W. G. Eberhard. 2006. Feeding by Philoponella vicina (Aranea, Uloboridae) and how uloborid spiders lost their venom glands. Can. J. Zool., 84: 1752-1762.

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ムツメカレハグモの観察

泉 宏 子

2016 年 4 月 23 日,千葉市若葉区にある泉自然公園のケヤキの幹に多数の小さなク モの住居が作られているのを見つけ,観察を行った. クモはムツメカレハグモ Lathys sexoculata で,体長は 2mm 程,木の幹に 7mm ~15mm の棚網状のシート網を 張り住居としていた.このケヤキは樹高約 10m,樹径約 60cm の木であった.クモの住居は地面から 60cm の高さ から 250 個以上散在しており,2m 位の高さまでに多く見 られた.木の上の方は双眼鏡で確認したが上に行くほど数 は少なくなり 6m 程の高さまであるように見えたが定かで はない.このケヤキは林の西側の一番外れにあるため,日 の当たる側と木々に遮られて日の当たらない側があった. クモの住居は日の当たる明るい幹面にはほとんどなく,日 図 1. 観察したケヤキ 陰となっている幹面に作られていた.

図 2. ムツメカレハグモの住居 図 3. 住居内のムツメカレハグモ ♀ (右下はダニ)

住居はクモのいない空住居の方が多かった.中にいたクモを 13 個体調べたが,いず れも雌であった.卵嚢は 2016 年 5 月 8 日の時点ではまだ作られていなかったが,2 週 間後の 5 月 22 日に訪れたときには作られていた.網の表面に作られていたため容易に

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見つけることができた.色は白色で,シートを二枚合わせた作りで,サイズは小さいも ので 3.5mm×2.8mm ,大きいもので 5mm×3.5mm であった.採集卵嚢 5 つを調べた 結果,卵は淡黄色でサイズは 550µm×400µm,1 卵嚢内に 8 卵~ 12 卵あった.子グモ の孵化を確認したが,産卵から孵化迄の日数は未確認である. 同様の網をこのケヤキの付近の木や公園内の他の場所で探してみたが見られなかっ たため,ムツメカレハグモは局所的にコロニーを作って生息していると思われる.2017 年の同時期にも同所を訪れてみたが,やはりこのケヤキにのみ見られた. また,2016 年の 4 月の観察時には,数個の住居内に白い糸に包まれた繭のようなも のが 1~3 個あった.その中心部は真っ赤な卵塊らしき塊が透けて見えた.まだムツメ

図 4. ムツメカレハグモの卵嚢 図 5. 丸っぽい卵嚢(屋内撮影)

図 6. 卵嚢中の卵 図 7. 孵化して間もない幼体

図 8. ダニの死骸 図 9. ダニの卵塊

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カレハグモの卵嚢を確認していない時期であったため,これがこのクモの卵嚢だと思っ た.しかし,よく見てみると中の真っ赤なものはダニの死骸やダニの卵塊であった. ダニはムツメカレハグモに寄生しようと入り込んだのか?そしてそのダニがクモの 住居の中で産卵もして,逆に親共々クモの餌としてラッピングされたのか?など,ダニ の生態やムツメカレハグモとダニの関係にも興味が惹かれた. 最後に,本報告に際し,クモの同定確認をしていただいた安藤昭久氏に心よりお礼申 し上げる.

参考文献 小野展嗣・緒方清人 1993 .日本におけるムツメカレハグモの記録およびその雄の記載.Acta Arachnol., 42:129–133.

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蓑虫による円網食い行動について

腰 高 直 樹

著者は,群馬県桐生市においてクロツヤミノガ Banbalina sp. の幼虫と思われる所謂 蓑虫の一種が,カラフトオニグモ Eriophora astridae の円網を食べる様子を野外で観 察したので報告する. 網食い行動は,2017 年 4 月 17 日に群馬県桐生市川内町の保全林「桐生自然観察の 森」で目撃した.著者は,カラフトオニグモの幼体が,林内に作られた木造施設の外壁 から近くの樹木に枠糸を渡して作った円網を観察していた.枠糸は長く,施設壁面から 網の中心部まではおよそ 1m 程であった.観察のはじめ,クロツヤミノガの幼虫と思わ れる蓑虫(以下「蓑虫」)が,木造施設の外壁から枠糸を伝ってカラフトオニグモの網

図 1.カラフトオニグモの網に侵入する蓑虫(クロツヤミノガの幼虫と思われる個体)

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図 2.円網の中心の真下にぶら下がる蓑虫 図 3.円網を食べ進む蓑虫と,破けたカラ フトオニグモの網

図 4.網の下部を左右に移動しながら経糸・横糸を食べていく蓑虫 に侵入を始めた(図 1).蓑虫は枠糸にぶら下がって歩き続け,10 分程をかけて円網の 中心の真下の辺りまで移動した(図 2).次に,蓑虫は円網の最下部から上方向に向かっ て網を食べながら進んだ.下部から食べられた円網は伝線したストッキングの様に破け, 半円状に変形した(図 3).蓑虫は網の下部を左右に移動しながら枠糸以外の部分を食べ 続けた(図 4).蓑虫は 20 分程で,網のほぼ全てを平らげた. 蓑虫が網を食べている間,カラフトオニグモは時折,蓑虫の近くまで様子を確認しに 来る仕草をみせたものの,基本的には為されるがままで,蓑虫に対して攻撃する姿勢は

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図 5.一部の枠糸を残し網のほとんどを食べ終えた蓑虫

全く見せなかった.また,カラフトオニグモは網が枠糸の一部だけになる直前まで網を 諦めて完全に立ち去ることもなかった.蓑虫はその後,木造施設の屋根に向かって延び る枠糸を上っていった(図 5). ミノガの幼虫による蜘蛛の糸の捕食については,ヨーロッパにおいてフタエミツカド チビミノガ Diplodoma laichartingella (Goeze 1783) による「はげた樹皮下のクモの 巣などを食べること(日本産蛾類標準図鑑 3 巻)」が記録されている.また,雑食傾向 の強いミノガの仲間でも,今回観察した種と考えているクロツヤミノガは特に食性が多 様であることで知られており,クモの網を食べることに驚きはないように思われる.(た だし正確な同定はできておらず,近縁の種の可能性もある.)ただ,クロツヤミノガを 含め,蓑虫が円網に侵入した記録は類似がなく,網の構造部を破壊することなく食べる 点から,蜘蛛の網を常食していることも考えられ,今後も機会を持って観察が必要な行 動と感じた.春先のことでもあるので,葉の少ない時期の救荒食の可能性はあるのかも しれない. 謝辞:本報について情報提供いただいた工藤誠也氏,鈴木佑弥氏に厚く御礼申し上げ る.

引用文献 広渡俊哉・那須義次・坂巻祥孝・岸田泰則編 2013 .日本産蛾類標準図鑑 3 巻.学研教育出版.

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立春を迎えた 3 頭のジョロウグモ (横浜市金沢区での記録)

安 田 明 雄

ジョロウグモ Nephila clavata が年を越して生存した記録は,これまでのキシダイア に 4 例の報告がある(鈴木 1993 ,徳本 1994 ,初芝 1999 ,加藤・馬場 2016 ).これ らの報告のなかで最長の生存記録は,2016 年に東京都目黒区で記録されたもので,2 月 13 日まで確認されている(加藤・馬場 2016 ).他の報告ではいずれも 1 月中に死 亡している. 今回,筆者は,2 月初めに横浜市金沢区で 3 頭のジョロウグモの雌の生存を確認し, その中の 1 頭は 2 月下旬まで生存したので報告する. 2016 年 2 月 3 日に横浜市金沢区の横浜中学校・高等学校の構内で 3 頭のジョロウ グモの雌が生存していることに気がついた.3 頭が生存していた場所は,中学校校舎の 北側の窓辺である(図 1,2).建物の内側から窓ガラスをたたいてみると,ゆっくり と腹部を動かしたので生存が確認された.3 頭のうち,1 頭(個体 A)は卵のうをガー ドし,他の 2 頭(個体 B,C)は網上にいた.2 頭がいた網は,共に破損箇所が目立ち, また,風に舞った落ち葉が何枚も付着しているので,網の張り替えは晩秋以降行われて いないように思われた.

表 1.2 月に確認されたジョロウグモ

個体 場所 地上高 最終確認

個体 A 壁面(卵のうをガード) 約 4m (1 階の窓) 2 月 10 日 個体 B 網上 約 4m (1 階の窓) 2 月 17 日 個体 C 網上 約 8m (2 階の窓) 2 月 23 日

その後,ときどき窓ガラスをたたいて反応を確認した.3 頭ともじっとしていて,し ばらく見ていても窓ガラスをたたかない限り,動くことはなかった.

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図 1 ジョロウグモがいた窓 図 2 窓枠の上部にいるジョロウグモ( 2 月 3 日撮影)

観察を続けると,個体 A は 2 月 13 日の朝にいなくなっており,その周辺からも遺 骸を含めて見つけることはできなかった.2 月 11 日,12 日は出勤しなかったので,最 後に確認したのは 2 月 10 日である.個体 B は 2 月 18 日の朝,網上で死んでいた. 個体 C は 2 月 23 日の午前中まで生存が確認された.2 月 23 日の横浜は,「春の 嵐」となり,南寄りの風が強く,最大瞬間風速が 21.7m (横浜地方気象台の観測)を 記録する天候であった.建物内から観察すると,このような風が強い中,クモは網の窓

表 2.2016 年 12 月- 2016 年 2 月の横浜の気温(横浜地方気象台)

時期 日平均気温 (℃) 平年値 *( ℃) 平年値との差 (℃)

12 月上旬 11.4 9.8 +1.6 12 月中旬 8.6 8.3 +0.3 12 月下旬 10.0 7.4 +2.6 1 月上旬 7.5 6.2 +1.3 1 月中旬 5.6 5.8 -0.2 1 月下旬 7.2 5.6 +1.6 2 月上旬 6.6 5.7 +0.9 2 月中旬 7.9 6.3 +1.6 2 月下旬 8.1 6.8 +1.3 *1981-2010 年の平均値 17

枠の上部をしきりに動き回り,雨や風をしのげる場所を探しているかのようであった. その動きは,今まで寒さを耐えるかのようにじっとしていてほとんど動かなかったのに, どこにエネルギーを蓄えていたのかと思うような動きであった.午後4時頃,再度様子 を確認しに行くと,クモはいなくなっていた.おそらく強風により落下したものと思わ れる.外に行き,網の周囲の地上部を見回してみたがクモは発見できなかった. 3 頭がいた校舎の北側は数メートル離れて崖がせまっており,日当たりが悪く1日の 気温の変動が小さいと思われる.また本校舎の窓は,外壁よりも約 60cm 内側の枠内 についているため,風雨の影響を直接受けにくい環境にある.さらに,校舎内の照明に より夜も餌となる昆虫類が網にかかりやすく,他の造網場所よりも餌条件が良かったの ではないかと推察される. また,2016 年 12 月から 2017 年 2 月までの日平均気温は,平年値に比べて高かっ た(表 2).11 月 24 日には,11 月としては 54 年ぶり降雪が観測される一方で,12 月には最高気温が 20 ℃を超える日が 2 回( 22 日:20.5 ℃,23 日:20.2 ℃),1 月と 2 月に,最高気温が 15 ℃を超える日が 4 回( 1 月 3 日: 15.4 ℃,2 月 17 日 18.7 ℃,20 日:18.5 ℃,23 日:18.1 ℃)あり,暖冬であった. 加藤・馬場による 2016 年の東京で記録された観察例との共通点は,①造網場所が建 物の北側で一日の気温の変動が小さく,風雨が直接あたりにくい場所であること②冬の 気候が平年より高いことである. それにしても,年を越すことさえ希なジョロウグモが,同一箇所で 3 頭もの個体が 2 月まで生存していたことは驚きであった.暖冬の年はこれまで何度もあったが,構内で 冬のジョロウグモを観察してこなかったので,以前にも立春を越すような個体がいたか 否かは不明である.今後も,中学校舎でジョロウグモがいつまで生存するのか観察を続 けたい.

参考文献 鈴木成生 1993 .冬のジョロウグモ.Kishidaia ,65:35. 徳本 洋 1994 .金沢市におけるジョロウグモの1月での生存例.Kishidaia ,66:48. 初芝伸吾 1999 .年越しするジョロウグモ.Kishidaia ,77:78–79. 加藤俊英・馬場友希 2016 .東京都目黒区における 2 月中旬の野外でのジョロウグモの記録. Kishidaia ,109:21–22.

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KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017

オガタモリヒメグモの網構造と捕食行動について Web structure and predatory behavior of Robertus ogatai Yoshida 1995 (Araneae :Theridiidae)

鈴 木 佑 弥 Yuya Suzuki

はじめに オガタモリヒメグモ Robertus ogatai Yoshida 1995 はヒメグモ科モリヒメグモ属 に属する,体長 3.5mm ほどの小さなクモである(図 1).本種の属するモリヒメグモ 属は,シフティングやツルグレン装置などにより採集されることが多いとされる(吉田 2003 )が,その網構造や捕食行動は不明であった.筆者は茨城県つくば市にて, 2016 年 2 月 13 日から 2017 年 3 月 24 日にかけて本種計 4 個体を採集したが,いずれも山 地の林道脇や渓流脇の石下より見つかった(図 2).このような生息環境ゆえ,自然状 態において網を破壊せずにその構造を観察するのは困難であったので,飼育下での観察 を試みた.その結果,網構造および捕食行動を確認できたので,本種および本属におけ る初の記録としてここに報告する.

材料と方法 飼育および観察に用いた個体は, 2017 年 3 月 24 日に茨城県つくば市小田にある宝

1mm 図 1.オガタモリヒメグモ♀成体. 図 2.オガタモリヒメグモの生息環境. 19

篋山の渓流脇にて石の下から採集した雌成体 1 個体(体長約 3mm )である.飼育装置 として,縦 10.8cm×横 7.5cm×高さ 8.6cm のプラスチック製透明容器を用いた.容器 内に鉢底ネットを入れ,容器の底との間に高さ 1-2cm 程の空間をつくった.鉢底ネ ットの周辺には湿度維持のために水を含ませたミズゴケを配置した.クモを容器内に離 し,造網したところで網構造を撮影・スケッチした.さらに,キイロショウジョウバエ (体長約 3 ㎜)を網の糸にかけ,捕食行動をコンパクトデジタルカメラ( OLYMPUS STYLUS Tg-4 Tough )により撮影した.捕食行動の観察は 2017 年 3 月 26 日から 4 月 1 日にかけて計 4 回行った.

結果と考察 網構造について 観察された網構造を図 3 および 4 に示す.オガタモリヒメグモは,飼育容器へ投入 した日の翌日には既に造網していた.しかしながら,網が張られていたのは当初期待し ていた鉢底ネットの下面に設けた空間ではなく,鉢底ネット末端部とミズゴケとの隙間 であった.網は,上面を鉢底ネットの端部,側面と底面をプラスチック容器の壁面およ びミズゴケによって囲まれた,縦 50mm×横 45mm×高さ 4mm 空間に張られていた. 空間の上面である鉢底ネットには,不規則な網目から構成される平面的な構造(あるい

1 2

3 4

図 3. オガタモリヒメグモの網. 3.1 .網上部の平面的な構造 . 3.2 網断面 . 3.3. クモを取り 囲むように配置される粘性捕獲糸 . 3.4. 網の周縁部に配置された分岐する粘性糸 .

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1 2

図 4.オガタモリヒメグモの網構造.写真をもとに作図した. 4.1. 容器下面からみた網全形 図. 4.2. 網断面図. 4.3. 網周縁部に張られた糸.図中左側の灰色領域はミズゴケを示す. 破線は粘性のある捕獲糸を示す.粘性糸末端の黒点は基質との接点を示す.スケールは 10mm .

はアーチ状トンネルの天井状の構造)が張られていた(図 3.1 ,3.2 ,4.2 ).その構造 の縁部から底面に向けて,長さ 3 ㎜ほどの捕獲糸( trap threads )が空間を取り囲むよ うに約 20 本引かれており,クモはこれら捕獲糸の囲まれた状態で,平面的構造に占座 していた(図 3.3 ).捕獲糸全体が粘球に覆われており,捕獲糸間を水平につなぐ糸に も粘性があった(図 3.4 ,4.3 ). 本種の属するモリヒメグモ属はカガリグモ属やゴケグモ属に近縁であると考えられ ており(吉田 2003, Arnedo et al .2004 ),実際,今回観察された「平面的な構造と そこから地表に向かって引かれる捕獲糸から構成される」網構造は,新海( 1992 )に 示されているハンゲツオスナキグモのそれとよく似ている(ヒメグモ科内でも特定の網 型が収斂的に生じうることが報告されているので,網型の類似が系統的近縁性を必ずし も反映しないことに注意 : Eberhard et al .2008 ).ただし,カガリグモ属やゴケグ

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モ属の網に共通してみられるトンネル状の住居( retreat )が,本造網例では確認されな かった.本種は網を地中や構造物の隙間から地表の草間などに展開することはなく,も っぱら石の下の隙間等に張ると思われるので,住居と捕獲部の明確な区別を欠いている 可能性がある. Eberhard et al. (2008 )によれば,一見すると乱雑に糸を張り巡らしているかの ように見えるヒメグモ科の不規則網も,ある規則性のもとに造網されるという.すなわ ち,造網の初期段階には骨組みとなる糸がいくつか張られ,造網過程でその糸間をつな ぐ糸によって複数の方向に引っ張られることで,ジグザグな軸糸を成し,それらの糸の 間にひし形~六角形の網目ができるという.筆者は本種の網を最初に確認した際,網上 部の平面的な構造を「単に糸が乱雑に張り巡らされただけのシート網」と認識したが, この構造にも軸糸と思しき糸やひし形~六角形の網目が確認できることから(図 3.1 , 図 4.1 ),本種の網もまた,一定の規則性のもと造網されたヒメグモ科の不規則網の一 種であると解釈すべきだろう.この点について確証を得るには,今後造網過程を観察す る必要がある.

捕食行動について 翅をちぎったショウジョウバエを餌として与えると,ハエは複数の粘糸に絡まり,そ の場で宙吊り状態になった(図 5.1 ).すると,クモはシート部を伝って獲物まで接近 し,第一脚で獲物に触れた直後(図 5.2 ),前脚で獲物を押さえつけながら咬み伏せた (図 5.3 ,5.4 ).何回か咬みついた後,獲物を前脚で掴んだまま,シート部の占座し ていた位置まで運搬し,摂食をはじめた.観察した 4 例全てにおいて,クモは上記のよ

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3 4 図 5. オガタモリヒメグモの捕食行動.画像は動画より切り抜いたもの . 5.1. 粘糸に絡 まり宙吊り状態になるショウジョウバエ . 5.2. 第一脚で獲物に触れる . 5.3. 前脚 で獲物を掴みながら , 牙を大きく開く . 5.4. 咬み伏せる . 22

うな過程で獲物を捕獲し,いずれも第四脚による粘球糸の投げかけを行わなかった.ま た,餌捕獲後の無粘性糸によるラッピングは 4 例中 1 例のみで観察され,糸繰り出し 行動は 10 回前後だった.カガリグモ属やゴケグモ属は捕獲糸によって釣り上げた獲物 に対し,第四脚間に張った粘球糸を投げかける(すなわちバイティングよりもラッピン グが優先される)が,本観察ではクモ自身の体長と同等の大きさの獲物を与えたにも関 わらず,バイティングが優先したことから,本種はもっぱらバイティングが先行する捕 食行動を示す種であると予想される.実際,本種は上顎が強く(吉田 2003 ),歩脚も 太くがっしりしており,バイティング型の捕食に適応した体形にみえる. 以上より,オガタモリヒメグモは狭所に捕獲糸付きの不規則網を張り,粘性のある捕 獲糸によって吊りあげられた餌をバイティングにより捕食する習性をもつことが示さ れた.本種をはじめとする,落葉の下面や石の下などに生息する微小な造網性種の網や 捕食行動を自然状態において観察するのは極めて困難であるが,飼育下において理想的 な造網環境を再現することができれば(安藤 2004 ),解明できるものも少なくないだ ろう.

謝 辞 網構造の解釈にあたり,安藤昭久氏および新海 明氏より数々の有益なコメントをいただいた. この場を借りて御礼申し上げる.

引用文献 Arnedo, M. A., Coddington, J., Agnarsson, I. ,and Gillespie, R .2004. From a comb to a tree: phylogenetic relationships of the comb-footed spiders (Araneae, Theridiidae) inferred from nuclear and mitochondrial genes . Molecular Phylogenetics and Evolution, 31: 225–245 . Eberhard, W. G., Agnarsson, I. and Levi, H. W. 2008. Web forms and the phylogeny of theridiid spiders (Araneae: Theridiidae) : chaos from order. Systematics and 6:415–475. 安藤昭久 2004 .ヨロイヒメグモの網は放射状. Kishidaia ,86: 13–14 . 新海 明 1992 .ハンゲツオスナキグモの網構造と餌捕獲行動. Kishidaia ,64: 23–24 . 吉田 哉 2003 .日本産ヒメグモ科総説.日本蜘蛛学会. 223pp .

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KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017

京都市上京区御靈神社に生息しているヒトエグモ 個体群の齢調査

藤 野 義 人

1.はじめに 筆者は,ヒトエグモの生活史を解明する目的で, 2015 年 5 月から 2016 年 4 月まで 京都市上京区御靈神社に生息しているヒトエグモ個体群の齢調査を行った.その結果, ヒトエグモは一年中成体・幼体・二齢幼体が見られること, 5 月初旬頃から 10 月下旬 頃にかけて産卵していること,卵嚢や卵,一齢幼体や二齢幼体について分かったので報 告する.

2.研究方法 (1)調査期間 2015 年 5 月から 2016 年 4 月まで,毎月 1 回の調査を実施した. (2)調査地 調査地の御靈神社(上御靈神社)は,京都市上京区に鎮座し,平安遷都の 794 年に 桓武天皇によって創建された由緒ある古い神社である.境内には,本殿,楼門,拝殿, 絵馬堂,神輿蔵,境内神社など古い木造建造物があり,その周囲に石燈篭,狛犬,石碑 などの石造建造物が多くある. (3)調査場所 ヒトエグモは,古い神社や寺院,旧家の屋内 だけではなく,屋外でも生活している.事前調 査で,ヒトエグモが潜み,生活している境内の 石燈篭 22 基を選定し調査対象とした.石燈篭 番号 1 番から 22 番の位置を図 1 に示す. (4)調査方法 ①目視による齢調査,採集による体長測 定 御靈神社

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図 1.境内の石灯篭の配置図

石燈篭は基本的に図 2 のような構造を している.上部から順に,宝珠・笠・火袋・ 中台・竿・基礎により構成される.全てが 石材で造られていることが多いが,火袋 部分が木材で造られている基もある.各 部が重なる部分には僅かな隙間が生じそ の隙間空間にヒトエグモは潜み,生活し ている.本調査では,石燈篭 22 基につい て覗き込む隙間を決め毎回同じ隙間を調 査した. ヘッドライトを用いて隙間を覗き込 み,目視でクモを確認し,出現個体数,成 体・幼体・二齢幼体の判別,性が判別でき る場合は雌雄の別を記録した.採集可能 な場合には自作の採集用具を使ってクモ を追い出して採集し, 1mm 方眼紙を張り 付けた測定用プラシャーレに入れ,性別 を記録し体長測定を行った.写真撮影後, 種の保護のためクモは元へ返した.飼育 用,標本用の採集は最小限にとどめた.な お,出囊後の二齢や若齢幼体は発見しに 図3: 石置きトラップ くいので石置きトラップ(図 3)による誘

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引も行った.平らな瓦や石による石置き

トラップは石燈篭の中台部分に合計 50 個セットした.各石燈篭の出現個体数に は石置きトラップによる出現個体数も加

えた. ヒトエグモの成体,幼体,二齢幼体の判 別については,筆者の飼育経験によるも のであり,後述するがサイズ構成を調べ 図4 :ヒトエグモの卵嚢 た結果,成体前の幼体後期の個体を成体 2015 年 8 月 11 日 と判別している場合があったと思われる. 体長の測定方法は,デジタルノギスを 使用して実測する方法と, 1mm 方眼紙を 張り付けた測定用プラシャーレに入れた クモとデジタルカメラのレンズを水平に 構えて撮影し,パソコンに取り込んだ画 像を元に測定,計算して求める方法を用 いた. ②産卵期についての調査 ヒトエグモは,屋外では木造建造物や 石造建造物の隙間や大木の樹皮下に潜み 図5:剥ぎ取り採取した卵嚢殻 生活をしている.卵嚢が見られるのはそ のような隙間である.これまでの調査や 飼育により,ヒトエグモが白色の薄い円 盤状の卵嚢を作ることを確認している(図 4).本調査では,産卵期を明らかにするた めに目視による新しい卵嚢の有無,出現数,産み付けられた場所を記録した.また,出 嚢後の卵嚢殻の採取を冬季に行い,卵嚢の大きさ等を測定した.卵嚢殻の採取方法は, スプレーのりをスプレーした黒色画用紙を卵嚢殻のある隙間に差し込み卵嚢殻の上か ら押し付け卵嚢殻を剥がし取る方法を考案し試行した(図 5).

3.調査結果 (1)目視によるヒトエグモ齢調査結果 目視による御靈神社ヒトエグモ個体群の齢調査結果を以下に示す.図 6 は,月毎の齢 別組成を示したグラフである. 目視による御靈神社ヒトエグモ個体群の齢調査の結果,月により出現個体数に違いが 見られるが,一年中,成体,幼体,二齢幼体が出現することを確認した.本調査で出現 したのべ個体数は,成体 830 頭,幼体 699 頭,二齢幼体 120 頭,計 1649 頭であっ た.出現した成体と思われる個体は,ほとんどが雌だと思われた.成体と思われる雄個

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図 6.月毎の齢別組成

体は少なく, 2015 年 5 月 1 頭, 9 月 1 頭, 10 月 1 頭, 11 月 1 頭, 12 月 1 頭, 2016 年 1 月 2 頭, 2 月 2 頭, 3 月 1 頭, 4 月 2 頭,計 12 頭であった. 季節変化をみると,全出現個体数は冬季( 12 月・ 1 月・ 2 月)に減少傾向を示し,春 3 月から増加し秋 11 月まで 100 頭以上であった.4 月, 5 月, 6 月, 7 月, 11 月は 150 頭を超える出現数であった.二齢幼体の出現は, 5 月から 10 月にかけて多い傾向 を示した. 調査した個々の石燈篭により,出現個体数や齢毎の出現個体数に差が見られた. (2)体長測定結果 本調査で 159 頭のヒトエグモを採集し,体長測定を行った.その結果,サイズは 1.9 ㎜から 9.5 ㎜までの幅が見られた.生殖器から判別して成体雌と思われる個体は 15 頭, 成体雄と思われる個体は 9 頭であった.幼体と思われる個体は 135 頭であった.幼体 の中で体長 3.0 ㎜未満の若齢(二齢)幼体と思われる個体が 94 頭と多く採集された (図 7,8,9,10 ).

図 7:成体雌 図 8:成体雄 図 9:幼体 図 10 :二齢幼体

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月別の採集個体数に違いはあるが,どの月も体長サイズの異なる成体,幼体,二齢幼 体と思われる個体が採集された.採集個体数は,冬に少なく,夏に多くなる傾向が見ら れた(図 6). (3)産卵期についての調査 本調査で合計 50 個の新しく産卵された卵嚢を確認した.2015 年 5 月 2 個, 6 月 14 個, 7 月 21 個, 8 月 6 個, 9 月 6 個, 10 月 1 個であった.2015 年 11 月, 12 月, 2016 年 1 月, 2 月, 3 月, 4 月の調査では確認できなかった.調査結果よりヒトエグ モの産卵期は, 5 月初旬頃から 10 月下旬頃であることが分かった. 同じ隙間を調査したので,同一卵嚢を継続して観察することができた.しかし,産卵 から孵化までの日数,産卵から二齢幼体出嚢までの日数については分からなかった. なお,ヒトエグモ雌親は,卵嚢を保護する習性があり,新しく産み付けられた卵嚢に は必ずと言っていいほど卵嚢に覆いかぶさったり卵嚢近くで見守ったりしている雌親 の姿があった.細い松葉をそっと卵嚢に近づけたりすると襲い掛かるほどであった.出 嚢直後に卵嚢近くにいる雌親を観察しており,二齢幼体が出嚢するまで保護するのでは ないかと思われる. (4)卵嚢サイズ,クラッチサイズについての調査 本調査で,新しい卵嚢を 5 個,孵化一齢がいる卵嚢 1 個を採取した.卵嚢殻は,石 燈篭近くの杉の樹皮下に産卵された卵嚢殻 3 個を加えて合計 37 個(置き石に産卵され た卵嚢殻 3 個,樹皮下に産卵された卵嚢殻 3 個,剥ぎ取り法で採取した卵嚢殻 31 個) 採取した. ヒトエグモの卵嚢は,図 11 のように上面観はほぼ円形で大きさは直径 10mm 前後, 側面観は中央部が 1.5mm ほど盛り上がったなだらかな山形をしている.卵嚢作りを観 察した結果,卵が産み付けられた袋状の卵嚢は,外側から卵嚢に沿ってさらに糸を吐き つけられ薄い絹糸のシーツで覆うように念入りに丈夫に仕上げられる.そのため上面観 はほぼ円形であるがなだらかな山形の裾野部分(帽子に例えるとつばに当たる部分)を 含めるとやや楕円形をしていることが多い.本調査で合計 43 個の卵嚢,卵嚢殻を得て

図 11 :卵嚢の上面観と側面観(写真は飼育下での卵嚢: 2017 年 5 月産卵のもの)

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図 12 .卵嚢が見られた場所

図 13 .ヒトエグモの卵 図 14.ヒトエグモの一齢幼体 顕微鏡 ×50

実測した結果,卵嚢の径は 5.8mm から 11.9mm まで様々で,平均すると 10.1mm , 外側の長径は 10.5mm から 16.1mm で,平均すると 13.4mm であった. 本調査で確認した 43 個の卵嚢,卵嚢殻が出現した場所は,中台と置石の隙間の上部 に 3 個,燈篭の隙間の下部に 26 個,上部に 12 個,樹皮の隙間の垂直方向に 3 個であ った(図 12 ). 本調査で得た 6 個の新しい卵嚢の内部を調べたところ, 5 個には卵が見られた.1 個 には孵化した一齢が見られた.5 個の卵嚢内の卵数は 11 個から 19 個まで様々で,平 均 14.6 個であった.ヒトエグモの卵は,図 13 のように薄い黄白色で光沢がある.サ イコロの角を丸く削ってできた形のように少し角のある球形をしており,大きさは長径 0.8mm ,短径 0.6mm 位であった. 1 個の卵嚢内で孵化していた一齢幼体数は 23 頭であった.全身黄白色(図 14)で体 長は 1.6mm 位であった.なお,卵嚢殻内より脱皮殻を採取しおよその卵数を推測しよ うと試みたが脱皮殻が散乱していたりして満足できる結果は得られなかった.

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4.考 察 (1)ヒトエグモの産卵期 目視によるヒトエグモ齢調査の結果,月により成体,幼体,二齢幼体の出現個体数に 違いが見られたが,一年中,成体,幼体,二齢幼体が出現した.活動が低下する冬季( 12 月, 1 月, 2 月)にも成体,幼体,二齢幼体が出現したことは,産卵期が春から秋にか けてであると推測された.このことを証明するために,新しい卵嚢の出現調査を行った 結果, 5 月初旬頃から 10 月下旬頃にかけて産卵された卵嚢を確認できた.京都市内の 他の場所での調査でも同様の結果であったので,京都市内での産卵期は 5 月初旬頃か ら 10 月下旬頃にかけてであることはほぼ間違いないと考えている. 同じ隙間を調査したので,同一卵嚢を継続して観察することができた.その結果,産 卵から二齢幼体の出嚢までの日数は 30 日から 40 日位ではないかと思われた.産卵か ら孵化までの日数については分からなかった.解明するには,更なる野外での継続観察, 飼育観察が必要であり今後の課題である. (2)ヒトエグモの成体・幼体・二齢幼体 本調査で 159 頭のヒトエグモを採集し,体長測定を行った結果,サイズ構成は 1.9mm から 9.5mm までの幅が見られた.生殖器から判別して成体雌は体長 6.4mm 以上,成体雄は体長 5.9mm 以上と思われた.二齢幼体は飼育結果から判断して体長 1.9mm から 2.3mm 位であると推測している.三齢以上の幼体は体長 2.5mm 位から 5.7mm 位であると思われた.ヒトエグモが何回脱皮をして成体になるかについては今 回の調査では判断できなかったが,これまでの野外調査や飼育結果などから推測して 4 回~ 5 回ではないかと考えている. (3)ヒトエグモの卵嚢とクラッチサイズ 本調査で合計 43 個の卵嚢,卵嚢殻を得て実測した結果,卵嚢の大きさは 5.8mm か ら 11.9mm まで様々であった.また,新しく産卵された 5 個の卵嚢内の卵数は 11 個 から 19 個であった.1 個の卵嚢内の一齢幼体数は 23 頭であったので卵数も 23 個で あると推測される.ヒトエグモが一度に産む卵の数は,卵嚢のサイズから判断して多く ても二十数個であると推測された.卵数に違いがあるのは,産卵時までの発育期間や餌 条件などが異なるためだと思われる.1 雌親個体が年間何個の卵嚢を作るかについては 不明であるが,置石に 2 個の卵嚢が産み付けられている場合,樹皮下に 3 個並んだ卵 嚢が産み付けられている場合,卵嚢殻の剥ぎ取りで 2 個から 4 個の卵嚢殻が並んで採 取される場合などから考えて, 1 雌親個体が年間に 1 個から 4 個程度の卵嚢を作るの ではないかと推測された.

5.おわりに ヒトエグモの生活史を解明する目的で,京都市上京区御靈神社において一年間の齢調 査を行った結果,ヒトエグモは一年中成体・幼体・二齢幼体が見られること,産卵期は 5 月上旬頃から 10 月下旬頃にかけてであること,卵嚢や卵の色・形・大きさについて,

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卵嚢内の卵数について,一齢幼体や二齢幼体について明らかになった.生活環の一端が 明らかになったが,脱皮回数や寿命,雌 1 個体の産卵回数など不明な点も多い.また, 行動や食性などの生態面について,国内での生息分布状況についてなどまだまだ解明さ れていない点は多い.今後も継続した野外観察や飼育観察に取り組みこれらの課題を解 決していきたい.

謝 辞 本調査では,御靈神社境内での調査を快諾していただき,情報提供をしていただいた小栗栖元 德宮司はじめ神社関係者の方々に大変お世話になりました.感謝申し上げます.

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ムナボシヒメグモを捕食したテングヌカグモ雌 鈴 木 佑 弥

テングヌカグモによるムナボシヒメグモの捕食を観察したので,ここに報告する. 2017 年 3 月 23 日 21 時 33 分,茨城県つくば市天王台筑波大学一の矢学生宿舎共用棟のコンク リート壁にて,高さ 1m ほどの位置にある突出部の裏側に張られた糸上にテングヌカグモ Paikiniana mira Oi, 1960 雌成体(体長約 3.0 ㎜)が静止し,ムナボシヒメグモ Platnickina sterninotata (Bösenberg & Strand, 1906) 雌(体長約 2.5 ㎜)を摂食していた(図 1). テングヌカグモは主に林床に生息し,下草 の根元や落葉間などにシート網を張るという (千国 1989 ,新海 2006 )が,その採餌行 動や餌メニューはほとんど報告されていな い.本種をはじめ、「シート網を張って微小昆 虫を捕らえている」と予想されながらも実際 の採餌習性が不明なコサラグモ類は数多く存 在すると考えられる。今後も注意深く観察し 図1 . ムナボシヒメグモを摂食するテング ていきたい。 ヌカグモ雌 . スケールバーは5㎜ . 引用文献 千国安之輔 1989. 写真日本クモ類大図鑑 . 偕成社 . 新海栄一 2006. 日本のクモ . 文一総合出版 .

イエユウレイグモによるクモ食の記録 鈴 木 佑 弥

筆者がこれまでに記録した,イエユウレイグモによるクモ食の事例を報告する.観察 は 2016 年 5 月から 2017 年 6 月にかけて,筆者の住む茨城県つくば市天王台の筑波 大学一の矢学生宿舎棟一階の出入り口周辺にて行った.外出・帰宅時に天井や壁の隅に 張られた本種の網を観察し,クモを摂食していた場合は写真を撮影した後餌グモを回 収・同定した.その結果,不明種 2 例を含む 11 例のクモ食が記録された(表 1).餌 種には,ジグモ科からワシグモ科まで多様な分類群が含まれていた.本種は屋内の天井 や壁の隅などに大型のシート状不規則網を張る造網性種として知られるが,その一方で,

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表1.イエユウレイグモによるクモ食の事例. f,M,y はそれぞれ雌亜成体,雄成 体,幼体を示す . 餌科 餌種 雌雄・成幼 観察日 図 ジグモ科 ジグモ Atypus karschi 1M 2016/6/25 図1 ジグモ科 ワスレナグモ Calommata signata 1M 2016/6/25 ― ユウレイグモ科 イエユウレイグモ Pholcus phalangioides 1y 2016/6/25 図4 ヒメグモ科 オオヒメグモ Parasteatoda tepidariorum 1y 2017/6/4 ― ジョロウグモ科 ジョロウグモ Nephila clavata 1y 2016/7/5 図3 コモリグモ科 ハラクロコモリグモ Lycosa coelesis 1M 2017/6/16 図2 キシダグモ科 ハシリグモ属の一種 Dolomedes sp. 1y 2016/5/29 ― フクログモ科 フクログモ属の一種 Clubiona sp. 1y 2016/7/2 ― ワシグモ科 ナミトンビグモ Sanitubius anatolicus 1f 2016/6/9 ― ― 不明種 1y 2016/7/8 ― ― 不明種 1y 2016/9/26 ―

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3 4 図1.ジグモ雄成体を摂食するイエユウレイグモ雌成体.図 2.ハラクロコモリグモ雄成体 を捕食するイエユウレイグモ雌成体.図 3.ジョロウグモ幼体を捕食するイエユウレイ グモ雌成体. 図4.イエユウレイグモ幼体を捕食するイエユウレイグモ雌成体.スケ ールは 5mm . 他の造網性種の網に侵入して網主を捕食する習性をもつことが,野外観察および飼育実 験により確認されている( Jackson & Rowe 1987; Jackson & Rowe 1987 ).今回 記録された餌種のうちジグモ(図 1)やハラクロコモリグモ(図 2)等の徘徊性は,本 33

KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017 ───────────────────────────────── DRAGLINES ── 種の網に備わっているガムフット様の構造(新海 1987 )により捕獲されたと思われる. 一方,造網性種であるジョロウグモ(図 3)やオオヒメグモ,そして同種のイエユウレ イグモ(図 4)に関しては,網上における何らかの干渉を経て捕獲に至った可能性も考 えられる.造網性種である本種が能動的なクモ食性種( araneophagic spider )である とは考えにくいが,ガムフットを用いた餌捕獲行動や他の造網性種との干渉それ自体は 注目に値するので,今後も観察を継続したい.

参考文献 新海栄一 2006 .日本のクモ.文一総合出版. 新海明 1987 .ユウレイグモ科のクモの網構造について. Atypus ,89: 42 . Jackson R. R. & R .J.Rowe 1987. Web-invasion and araneophagy by New Zealand and Australian pholcid spiders. New Zealand Journal of Zoology ,14: 139-140 . Jackson, R. R. & Brassington, R 1987. The biology of Pholcus palangioides (Araneae , Pholcidae): predatory versatility , araneophagy and aggressive mimicry. J. Zool.,211: 227-238 .

茨城県つくば市で採集されたクモ 鈴 木 佑 弥

筆者が 2016 年 5 月~ 2017 年6月にかけて茨城県つくば市で採集したクモのう ち,CD日本のクモ Ver.2016 に収録されている茨城県クモ目録に記録のなかったもの を以下のリストに示す(すでに当県より採集されているが,単に報告されていないもの も含まれている可能性がある).採集および同定は筆者が行った.学名および掲載順は 日本産クモ類目録 Ver.2017R1 (谷川 2017 )に準ずる.

Loxosceles rufescens (Dufour 1820) イトグモ つくば市天王台( 1M 5-V-2016 ) Telema nipponica (Yaginuma 1972) ヤマトヤギヌマグモ つくば市小田( 1F1M 7- IV-2016 ) Nesticella mogera (Yaginuma 1972) チビホラヒメグモ つくば市小田 (1M 20-IV- 2016 ) Takellina sadamotoi Yoshida & Ogata 2016 サダモトヒメグモ (2F 1M 12-V-2017) 平地の小規模な雑木林にて,ツバキやヒサカキの葉裏,葉枝間にみられた.図 1 に雄 成体を示す.

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Spheropistha miyashitai (Tanikawa 1998) ミヤシタイソウロウグモ つくば市天王 台( 1F 21-V-2017 ) Mermessus naniwaensis (Oi 1960) ナニワナンキングモ つくば市要( 1M 13-X- 2016 )水田脇の草地にて藁下より採集された.図 2 に雄成体および触肢を示す . Alopecosa moriutii Tanaka 1985 ハタチコモリグモ つくば市天王台( 1F 21-Ⅳ- 2017 1F 17-VI-2017 )池周辺の開けた草地を徘徊していた.図 3 に雌成体を示す. 腹部背面のハの字状明色斑が目立つ個体と目立たない個体が混在していた.

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KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017 ───────────────────────────────── DRAGLINES ── Agroeca kamurai Hayashi 1992 カムラタンボグモ つくば市天王台 (2F3M 20-IV- 2017) 樹林地の林縁にて落ち葉下に多数みられた.図 4 に雄成体,図 5 に雄成体 を示す. Clubiona yaginumai Hayashi 1989 ヤギヌマフクログモ つくば市小田( 1F2M 27-V-2017 ) Cladothela unciinsignita (Bösenberg & Strand 1906) ムナキワシグモ つくば市 要( 3F3M 24-V-2017 )水田や水路脇の湿った地表にて,藁下より採集された. Haplodrassus hatsushibai Kamura 2007 ムサシハイタカグモ つくば市天王台 (1M 6-Ⅳ-2017 )樹林地の林縁にて落ち葉下より採集された.図6に雄成体を示 す.

参考文献 新海明・安藤昭久・谷川明男・池田博明・桑田隆生 2014. CD 日本のクモ Ver.2014.

桜川市真壁町およびつくば市神郡にて採集されたクモ 鈴 木 佑 弥

筆者は 2017 年 5 月 4 日から 5 日にかけて,茨城県桜川市真壁町およびつくば市神 郡にてクモを採集する機会を得たので,採集されたクモ類のリストをここに報告する. リストの掲載種は成体が採集されたものに限り,幼体や写真のみの記録は除外した.学 名及び掲載順は日本産クモ類目録 Ver.2017R1 (谷川 2017 )に準じた.また, CD 日 本のクモ Ver.2016 において茨城県の記録が掲載されていないものに※を示した.採集 は基本的に筆者が行ったが,筆者以外の者が採集者したものについては採集者名を示し た.同定は筆者が行った.

採集情報略号 筑:2017/04/04 ・05 真壁町筑波高原キャンプ場( 36°14'6.17"N, 140°6'28.03"E ) 羽:2017/04/05 真壁町羽鳥( 36°15'35.44"N, 140° 5'19.63"E ) 神:2017/04/05 つくば市神郡( 36°11'38.50"N, 140° 6'33.44"E )

1.Chrysso foliata (L.Koch 1878) ホシミドリヒメグモ 筑 04 1M 2.Yunohamella yunohamensis (Bösenberg & Strand 1906) ユノハマヒメグモ 筑 波 04 1M

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KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017 ── DRAGLINES ───────────────────────────────── 3.Ainerigone saitoi (Ono 1991) サイトウヌカグモ 1F1M 筑 04 ※ 照葉樹の葉枝上より採集された(図 1).雌雄ともに腹部背面は黒色,腹面,側面 および背面後端部は黄褐色.安藤昭久確認. 4.Strandella quadrimaculata (Uyemura 1937) ヨツボシサラグモ 筑 04 1F3M 5.Diphya okumae Tanikawa 1995 オオクマヒメドヨウグモ 筑 04 1M 寺田採集 (採集時雄亜成体,飼育後 2017/05/10 雄成体) 6. ogatai Tanikawa 2001 オガタオニグモ 筑 04 1F 柏木採集 1M 桒原採 集 ※ 7.Gibbaranea abscissa (Karsch 1879) キザハシオニグモ 筑 04 1M 8.Coelotes kitazawai Yaginuma 1972 アズマヤチグモ 筑波 04 1F 9.Hahnia pinicola Arita 1978 アカマツハタケグモ 筑 05 1F1M ※ ヒノキ等針葉樹の樹皮裏にみられた(図 2) 10 .Anyphaena pugil Karsch 1879 イヅツグモ 筑 04 1F1M 11 .Clubiona kurosawai Ono 1986 クロサワフクログモ 筑 04 1M ※ 12 .Drassodes serratidens Schenkel 1963 トラフワシグモ 筑 04 1M 新中採集 13 .Drassyllus sasakawai Kamura 1987 ヤマヨリメケムリグモ 筑 04 2M 桒原・鈴木採集 ※ 14 .Lysiteles coronatus (Grube 1861) アマギエビスグモ 筑 05 1M 15 .Mendoza ibarakiensis (Bohdanowicz & Prószyński 1987) キタヤハズハエト リ 神 1M 16 .Phintella parva (Wesołowska 1981) アサヒハエトリ 筑 04 1M ※ 17 .Pseudicius kimjoopili (Kim 1995) クモマハエトリ 神 2M ※ 18 .Sibianor kochiensis (Bohdanowicz & Prószyński 1987) ナカヒラハエトリ 筑 04 1F1M ※ 19 .Sibianor nigriculus (Logunov & Wesołowska 1992) クロツヤハエトリ 羽 1M 20 .Stertinius kumadai Logunov, Ikeda & Ono 1997 コミナミツヤハエトリ 筑 04 3F ※ 落葉広葉樹の樹皮表面に張り付いた蔦より採集された. 21 .Yaginumaella striatipes (Grube 1861) ウススジハエトリ 筑 05 1M

謝 辞 採集に協力してくださった桒原良輔,寺田昂平,新中健斗,柏木志乃(筑波大学)の各氏および, サイトウヌカグモを同定確認してくださった安藤昭久氏に御礼申し上げる.

参考文献 新海明・安藤昭久・谷川明男・池田博明・桑田隆生 2014. CD 日本のクモ Ver.2014. 谷川明男 2017. 日本産クモ類目録 Ver.2017R1 . 37

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図 1.サイトウヌカグモ . a. 雌成体背面図 . b. 雌成体腹面図 . c. 雄成体背面図 . d. 雄触肢 .

a b c d 図2.アカマツハタケグモ. a.雌成体背面図. b.雌外雌器. c.雄成体背面図. d.雄触肢.

上野原市新田で採集したクモ 市 川 武 明

2017 年 3 月 9 日に,山梨県上野原市新田でクモを採集する機会を得たため報告す る.採集は全て筆者が行った.本目録の和名,学名,配列順は日本産クモ類 ver.2017R1 に従い,CD 日本のクモ ver.2016 において当県での記録が無い種については※で表す. なお幼体の記録については取り上げていない.

F は♀成体を,M は♂成体を,f は♀亜成体を表す. ※Nesticella mogera (Yaginuma 1972) チビホラヒメグモ M ※Microdipoena ogatai (Ono 2007) ヤマトコツブグモ M Erigone prominens Bösenberg & Strand 1906 ノコギリヒザグモ F,M 38

KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017 ── DRAGLINES ───────────────────────────────── Arctosa ipsa (Karsch 1879) ヒノマルコモリグモ M ※Hygrolycosa umidicola Tanaka 1978 シッチコモリグモ M Brommella punctosparsa (Oi 1957) ナシジカレハグモ F Orthobula crucifera Bösenberg & Strand 1906 オトヒメグモ M Clubiona kurilensis Bösenberg & Strand 1906 ヒメフクログモ F,M ※Nandicius kimjoopili (Kim 1995) クモマハエトリ f( 飼育後同年 5 月 21 日成熟 )

福島市でツシマトリノフンダマシを発見 五十嵐 悟 1・細井俊宏 1・水澤玲子 2・馬場友希 3 1. 福島市 小鳥の森 2. 福島大学 人間発達文化学類 3. (国研) 農研機構 農業環境変動研究センター ツシマトリノフンダマシ Paraplectana tsushimensis は,これまで東北地方からの 確認・報告はなかったが(新海ら 2016 ),今回福島県福島市において本種を発見した ので報告する. 発見したのは 2017 年 6 月 28 日の午前 8 時 35 分頃で,福島県福島市山口字宮脇に ある福島市小鳥の森の,ホオジロの小径と呼ばれる,コナラを主とした広葉樹林内の散 策路である.五十嵐・細井が本個体を採集し,水澤・馬場がツシマトリノフンダマシで あることを確認した.発見時,本個体は地上におり,アリの攻撃を受けているように見 えた.非常に目立つ体色であったため目に留まり,発見に至った.体長は 9 ㎜ほどで, メスの成体であった.周囲を探してみたが,他のメスやオス,卵のうなどはなかった.

図1.福島県福島市にて採集されたツシマトリノフンダマシ Paraplectana tsushimensis (メス成体)の,発見時の様子(a),液浸標本(b),および外雌器(c).

引用文献 新海 明・安藤昭久・谷川明男・池田博明・桑田隆生 2016. CD日本のクモ ver.2016. 著者自 刊 CD. 39

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ヨコヅナサシガメによるギンメッキゴミグモ卵嚢からの吸汁 平 松 毅 久

ヨコヅナサシガメによるクモ卵からの吸汁については,ジョロウグモを対象とした例 がインターネット上に出回っている(例えば http://kumomushi.web.fc2.com/h_j/ jorou.htm )ため,ご存じの読者諸兄も少なくないと思われる.筆者は,ヨコヅナサシ ガメがギンメッキゴミグモの卵嚢から吸汁するのを観察したので報告する. 日時は 2016 年 10 月 31 日,場所は埼玉県東松山市岩殿の正法寺(通称岩殿観音) である.境内にはサクラの木が何本か植えられており,空中湿度が高いせいかコケ類や 着生シダのノキシノブ Lepisorus thunbergianus がサクラの樹皮に付着していた(写 真 1).その中の 1 本のサクラの樹皮を見ていると,ノキシノブの葉裏に 1 頭のヨコヅ ナサシガメ Agriosphodrus dohrni 5 齢幼虫(以下ヨコヅナ)がいるのに気付いた.こ のサクラの樹皮には他にヨコヅナの姿は見当たらなかった.ヨコヅナは何やら「黄色い 綿状のもの」に口吻を差し込んでいた(写真 2).よく見ると「黄色い綿状のもの」は ギンメッキゴミグモ Cyclosa argenteoalba の卵嚢で,すぐ近くにはそこから孵化した と思われる幼体が計 4 頭しおり糸でぶら下がっていた.ヨコヅナは 1 時間後に見た時 はまだ吸汁していたが, 3 時間後には姿を消していた. ヨコヅナは中国原産の外来種で,積荷に紛れて九州に侵入したと考えられている(野 澤 2012 ).国立環境研究所ウェブページ「侵入生物データベース」のヨコヅナサシガ メについての記述( https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/ 60420.html )によると,九州への侵入が 1930 年代,関東への侵入が 1990 年代とさ れている.埼玉県には記録から見て 2000 年に侵入したと推測され, 2004 年には県内 各地で確認されていることから,この時期に完全に広がり定着したと推測されている (野澤・新井, 2006 ). ヨコヅナの食性は多岐にわたり,鱗翅類幼虫,小さなハエの成虫,小甲虫の成虫など 各種小昆虫の殆どを強大な吻で貫いて捕食(吸汁)する(中尾 1954a ).年一化性, 5 齢幼虫で越冬する. 5 齢(終齢)幼虫の期間は他の齢期に比べて長く約 7 か月である (中尾 1954b ). 上記荘司康治郎氏( HN:「きどばん」)のウェブサイトでは,ジョロウグモ卵からの 吸汁が確認されたのは,千葉県北西部(画像なし),横浜市(画像あり)でいずれも 2009 年 11 月となっている(詳細な地名および年月日は不明).時期から判断すると,おそ らくヨコヅナは越冬前の 5 齢幼虫であろう.餌昆虫が少なくなる冬期,ジョロウグモに

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写真 1 写真 2

限らず,樹皮またはその付着物に産み付けられたクモ卵はヨコヅナの餌になっているの かもしれない.今後クモ類の天敵としてヨコヅナに要注目である. 最後にヨコヅナサシガメの同定及び文献のご紹介を賜った日本半翅類学会会員の野 澤雅美氏に厚く御礼申し上げる.

引用文献 中尾舜一 1954a .ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni Signoret に関する生態学的研究 (Ⅰ):その分布及び一般習性について.九州大學農學部學藝雑誌, 14: 319–328 . 中尾舜一 1954b .ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni Signoret に関する生態学的研究 (Ⅱ):その周年経過及び幼齢期の記載.九州大學農學部學藝雑誌, 14: 329–336 . 野澤雅美・新井浩二 2006 .埼玉県におけるヨコヅナサシガメの分布記録.寄せ蛾記, 119: 17– 21 . 野澤雅美 2012 .埼玉県産サシガメ科の整理.寄せ蛾記, 145: 21–31 . 国立環境研究所.侵入生物データベース. https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/ 荘司康治郎.クモ画像集. http://kumomushi.web.fc2.com/index.html

ジョロウグモの卵嚢で越冬していたクロマルイソウロウグモ 幼体 平 松 毅 久

2013 年 1 月 31 日北本市荒井で,ジョロウグモ Nephila clavata L. Koch 1878 (以 下ジョロウ)の卵嚢で越冬中のクロマルイソウロウグモ Spheropistha melanosoma Yaginuma 1957 (以下クロマル)の幼体を採集した.ジョロウの卵嚢は,地面から高 さ 1.6m の地点にあるシラカシの葉を 2 枚つづり合わせて産みつけられており,クロ 41

KISHIDAIA, No.111, Aug. 2017 ───────────────────────────────── DRAGLINES ── マルは卵嚢を支持する乱雑に張り巡らされた糸の間に脚を縮めて潜んでいた.クロマル は体長約 1mm ,シラカシの葉の長さは上の葉が約 10cm ,下の葉が約 7cm ,卵塊は全 長約 2cm であった.クロマルは秋頃ジョロウの網に入っているのを何度か確認してい る(平松 2010 )が,卵嚢では初めてである.クロマルはオオヒメグモ,カグヤヒメグ モ,ニホンヒメグモなどの網に侵入して網主を捕食するばかりか,卵嚢のそばで待機し 出嚢直後の子グモを食べることが知られている(新海 2006 )が,今回の観察例は単な る越冬場所としての利用なのか,それとも来春の子グモ孵化を狙って卵嚢のそばに待機 していたのかは不明である.

引用文献 新海栄一 2006 .ネイチャーガイド 日本のクモ. 335p.文一総合出版. 平松毅久 2010 .ジョロウグモの網に入っていたクロマルイソウロウグモ. Kishidaia, 97 :24 . キンヨウグモの網構造や餌捕獲行動の詳細は,新海( 1998 )によって報告されてい る.それによると,初期の幼体が水平円網を張るのに対し ,後期の幼体および成体は縦

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福岡県北九州市白島(男島)のクモ

馬場友希 1・中島 淳 2 1. (国研)農研機構 農環研 2. 福岡県保健環境研究所

白島(しらしま)は福岡県北九州市若松区の響灘上にある島で,東側の男島(おしま) と西側の女島(めしま)の 2 島から成る.このうち男島には石油の備蓄基地があるた め,関係者以外の立ち入りが禁止されているが,著者のうち中島は県が実施する外来種 生息状況調査の一環として,男島において 2016 年 6 月と 9 月に生物相の調査を行う 機会に恵まれ,その際複数のクモの標本を得た.同島においては植物,鳥類,爬虫類, 昆虫類,海岸動物などの報告はあるものの(福岡県の自然を守る会, 1985 ),クモの 採集記録はこれまで存在せず貴重な記録となるため,ここに採集リストを掲載する.調 査では 16 科 29 種のクモが採集され,これらのクモは 80% エタノールの液浸標本とし て農環研に保管されている.目録中の数字は採集日を, F はメス成体, M はオス成体, y は幼体を表す.分類体系および種の並び順は谷川(2016 )に従った.県内新記録種か 否かの判定は新海ら (2016 )を参照して行った.なお、この他に海岸岩礁からタナグモ 科の未同定種が得られているが、これについては別途報告する予定である.末筆ながら, 調査に便宜を図っていただいた福岡県環境部自然環境課と白島国家石油備蓄基地の関 係者,及び調査に同行していただいた須田隆一氏(福岡県保健環境研究所)に厚くお礼 申し上げる.

採集情報 福岡県北九州市若松区大字安屋 男島 (34.012549N, 130.725899E) 採集日: 2016/6/17 ・9/30 採集者: 中島 淳 同定者: 馬場友希

標本目録 Segestriidae エンマグモ科 1. Ariadna lateralis Karsch 1881 ミヤグモ 0617 1F Theridiidae ヒメグモ科 2. Argyrodes bonadea (Karsch 1881) シロカネイソウロウグモ 0930 2y 43

3. Parasteatoda asiatica (Bösenberg & Strand 1906) キヒメグモ 0617 1M 4. Parasteatoda ryukyu (Yoshida 2000) リュウキュウヒメグモ 0617 2F, 0930 2F 5. Steatoda cingulata (Thorell 1890) ハンゲツオスナキグモ 0930 1F1M Linyphiidae サラグモ科 6. Neriene albolimbata (Karsch 1879) ヤガスリサラグモ 0930 1F (福岡県新記録) Tetragnathidae アシナガグモ科 7. Leucauge blanda (L. Koch 1878) チュウガタシロカネグモ 0930 1F 8. Leucauge subblanda Bösenberg & Strand 1906 コシロカネグモ 0617 1F1M Nephilidae ジョロウグモ科 9. Nephila clavata L. Koch 1878 ジョロウグモ 0930 1F Araneidae コガネグモ科 10. Araneus ventricosus (L. Koch 1878) オニグモ 0930 1F1y 11. Argiope minuta Karsch 1879 コガタコガネグモ 0930 3F 12. Cyclosa confusa Bösenberg & Strand 1906 ミナミノシマゴミグモ 0617 2F3M, 0930 2F1y 13. Neoscona scylloides (Bösenberg & Strand 1906) サツマノミダマシ 0617 2y Uloboridae ウズグモ科 14. Octonoba varians (Bösenberg & Strand 1906) ヤマウズグモ 0930 1F Lycosidae コモリグモ科 15. Piratula procurvus (Bösenberg & Strand 1906) チビコモリグモ 0617 2F1M Pisauridae キシダグモ科 16. Dolomedes sulfureus L. Koch 1878 イオウイロハシリグモ 0930 1F1y Ctenidae シボグモ科 17. Anahita fauna Karsch 1879 シボグモ 0930 4y Eutichuridae コマチグモ科 18. Cheiracanthium lascivum Karsch 1879 ヤマトコマチグモ 0617 1F ツチフクログモ科 19. Itatsina praticola (Bösenberg & Strand 1906) イタチグモ 0617 1F Philodromidae エビグモ科 20. Philodromus subaureolus Bösenberg & Strand 1906 アサヒエビグモ 0617 1F1M 21. Tibellus japonicus Efimik 1999 シャコグモ 0617 2F Sparassidae アシダカグモ科 22. Sinopoda forcipata (Karsch 1881) コアシダカグモ 0930 1F Thomisidae カニグモ科 23. Bassaniana decorata (Karsch 1879) キハダカニグモ 0617 1F 24. Xysticus ephippiatus Simon 1880 チュウカカニグモ 0617 1M (福岡県新記録)

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Salticidae ハエトリグモ科 25. Evarcha albaria (L. Koch 1878) マミジロハエトリ 0930 1M 26. Hakka himeshimensis (Dönitz & Strand 1906) イソハエトリ 0930 4y 27. Hasarius adansoni (Audouin 1826) アダンソンハエトリ 0930 1F 28. Phintella arenicolor (Grube 1861) マガネアサヒハエトリ 0617 1M 29. Siler cupreus Simon 1889 アオオビハエトリ 0930 2y

引用文献 福岡県の自然を守る会 1985. 福岡県の自然第 7 集 白島の自然.櫂歌書房,福岡. 新海 明・安藤昭久・谷川明男・池田博明・桑田隆生 2016. CD 日本のクモ ver.2016. 谷川明男 2016. 日本産クモ類目録 ver.2016R1. http://www.asahi-net.or.jp/~dp7a-tnkw/ japan.pdf

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KISHIDAIA, No. 111, Aug. 2017

沖縄島における水田・休耕田のクモ

馬場友希・片山直樹 国立研究開発法人 農研機構・農業環境変動研究センター

はじめに 南西諸島ではこれまでクモの採集記録が多く報告されているが(谷川・佐々木 1999 ), 調査地の多くは原生林などの一次的自然に偏っており,農地などの二次的自然における クモ相はほとんど調べられていない.そこで,著者らは, 2016 年 5 月 25 日から 27 日にかけて,沖縄県沖縄島のイネ・タイモ・ショウブ・イグサ(ビーグ)を栽培する水 田やその周辺の休耕田を含む計 11 地点の農地において(図 1),畦からの見つけ取り によるクモ相の調査を行った.採集したクモ類は全て 80% エタノールの液浸標本にし た後に,それらを類別・同定した.採集されたクモは国内未記録種を含む計 10 科 20 属 26 種 63 点にのぼった.これらのデータは南西諸島の農地におけるクモ相の基礎情 報として有用と考えられるため,標本情報の目録を作成し,ここに発表する.また , 沖 縄島における農地のクモ相の特徴や特筆すべき種についても末尾で簡単に触れる.目録 中の F はメス成体, M はオス成体, y は幼体を表す.各個体が得られた圃場の作目や環 境も可能な限り目録中に記した.

採集地略号 2016/5/25 1. 浦添・・・浦添市牧港 (26.265059N, 127.730589E) 2. 喜如嘉・・・国頭郡大宜味村喜如嘉 (26.707321N, 128.150316E) 3. 大宜味・・・国頭郡大宜味村田港 (26.659016N, 128.131988E) 2016/5/26 4. 田井等・・・名護市田井等 (26.614826N, 128.018782E) 5. 伊野波・・・国頭郡本部町伊野波 (26.657688N, 127.907209E) 6. 喜瀬・・・名護市喜瀬 (26.525827N, 127.944766E) 7. 安富祖・・・国頭郡恩納村安富祖 (26.496259N, 127.886304E) 8. 金武・・・国頭郡金武町金武 (26.454541N, 127.939312E) 9. 伊芸・・・国頭郡金武町伊芸 (26.460632N, 127.879413E)

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図 1 調査地の位置と名称 1. 浦添 , 2. 喜如嘉 , 3. 大宜味 , 4. 田井等 , 5. 伊野波 , 6. 喜瀬 , 7. 安富祖 , 8. 金武 , 9. 伊芸 , 10. 屋嘉 , 11. 楚南 2016/5/27 10. 屋嘉・・・国頭郡金武町屋嘉 (26.456565N, 127.857077E) 11. 楚南・・・うるま市石川楚南 (26.407356N, 127.816947E)

採集者:馬場友希・片山直樹 同定者:馬場友希

標本目録 Mimetidae センショウグモ科 1. aphana (Walckenaer, 1802) ヨツトゲセンショウグモ(図 2) 2M 屋嘉 休耕田 採集記録は Baba et al. (2017) で報告済みである. Nesticidae ホラヒメグモ科 2. Nesticella mogera (Yaginuma 1972) チビホラヒメグモ 1F 金武 休耕田 47

Theridiidae ヒメグモ科 3. Coleosoma floridanum Banks 1900 ヨシダサヤヒメグモ 1F 喜如嘉 ショウブ , 1F 休耕田 , 1F1M 屋嘉 休耕田 4. Coscinida japonica Yoshida 1994 トガリクサチヒメグモ 1F 屋嘉 休耕田 Linyphiidae サラグモ科 5. Erigone sp. ヒザグモ属の一種 (図 3) 2F1M 田井等 タイモ , 1F 田井等 イネ . 日本本土の水田で広く見られるノコギリヒザグモ E. prominens と思われるが, 沖縄県から記録がないため,慎重に検討する必要がある. Tetragnathidae アシナガグモ科 6. Glenognatha dentata Zhu & Wen 1978 ミナミヨツボシヒメアシナガグモ 1M 田井等 タイモ , 1F 伊野波 タイモ , 1M 安富祖 タイモ , 1M 屋嘉 タイモ , 1F1y 屋嘉 休耕田 7. Tetragnatha javana (Thorell 1890) オナガアシナガグモ 1F 大宜味 タイモ 8. Tetragnatha mandibulata Walckenaer 1842 オオアシナガグモ 1F1M 楚南 イグサ 9. Tetragnatha maxillosa Thorell, 1895 ヤサガタアシナガグモ 1F 浦添 タイモ , 1F 喜瀬 水路 10. Tetragnatha nitens (Audouin 1826) ヒカリアシナガグモ 1F 喜如嘉 ショウブ , 1F3M 大宜味 , 1F 伊芸 水路 , 1F 屋嘉 休耕田 11. Tetragnatha praedonia L. KOCH, 1878 アシナガグモ 2F 屋嘉 休耕田 Araneidae コガネグモ科 12. Argiope aemula (Walckenaer 1842) ナガマルコガネグモ 1M 屋嘉 休耕田 13. Cyclosa confusa Bös. & Str. 1906 ミナミノシマゴミグモ 1F 屋嘉 タイモ Lycosidae コモリグモ科 14. Arctosa laminata Yu & Song 1988 ネッタイコモリグモ 1M 伊芸 タイモ 15. Pardosa jambaruensis Tanaka 1990 ヤンバルコモリグモ 1F 喜如嘉 ショウブ 16. Pardosa pseudoannulata (Bös. & Str. 1906) キクヅキコモリグモ 1y 屋嘉 休耕田 17. Pirata subpiraticus (Bös. & Str. 1906) キバラコモリグモ

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1F1M 伊野波 , 1F 金武 タイモ , 1F3M3y 屋嘉 休耕田 18. Piratula clercki (Bös. & Str. 1906) クラークコモリグモ 1F 喜瀬 タイモ , 1F 伊野波 , 19. Trochosa aquatica Tanaka 1985 ナガズキンコモリグモ 1F 金武 休耕田 , 1y 喜瀬 タイモ 20. Wadicosa okinawensis (Tanaka 1985) リュウキュウコモリグモ 2F 伊芸 タイモ Eutichuridae コマチグモ科 21. Cheiracanthium mordax L.Koch 1866 ミナミコマチグモ 1F 屋嘉 休耕田 Thomisidae カニグモ科 22. Thomisus okinawensis Strand 1907 オキナワアズチグモ 1F 屋嘉 タイモ Salticidae ハエトリグモ科 23. Bianor incitatus Thorell 1890 ウデボソハエトリ 1M 浦添 タイモ , 1F1M 金武 タイモ , 1M 屋嘉 休耕田 24. Mendoza suguroi Baba 2013 シマヤハズハエトリ 1y 屋嘉 休耕田 25. Helicius sp. ジャバラハエトリグモ属の一種 (図 4) 1F 屋嘉 休耕田 26. Phlegra sp. タテジマハエトリグモ属の一種 (図 5) 1F1M 屋嘉 休耕田

備考:圃場では,水田の代表的なクモのグループであるアシナガグモ属やコモリグモ 科のクモが多く見られた.アシナガグモ属のクモについては,日本の水田で広く見られ るヤサガタアシナガグモに加え( Baba & Tanaka 2016 ),四国や九州など温暖な地 域に分布するヒカリアシナガグモや,本土には分布しないオナガアシナガグモ・オオア シナガグモなどが確認された.コモリグモ科のクモについてはリュウキュウコモリグ モ・ヤンバルコモリグモなど南西諸島に特異的に分布する種に加え,キバラコモリグモ・ キクヅキコモリグモなど本土の水田との共通種も見られた.キバラコモリグモは日本本 土では北関東以北の田んぼに多く,九州・四国などの温暖な地域では山間地の水田での み見られるが(Baba & Tanaka 2016 ),沖縄島では平野部の水田においても多く見 られた.これは南西諸島の個体群と本土の個体群とで好適な気候条件や生息環境が異な る可能性を示唆しており,興味深い. 休耕田は現行水田に比べて植物の多様性が高く,生息地構造が複雑であるため,多様 な種類のクモが確認された.その中には近年,記載されたシマヤハズハエトリ(Baba 2013 )や,最近,著者らが日本新記録種として報告したヨツトゲセンショウグモ Ero

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図 2-5.特筆すべき種 . 2. ヨツトゲセンショウグモ ( ), 3. ヒザグモ属の一種 (Erigone sp. ), 4. ジャバラハエトリグモ属の一種 (Helicius sp. ), 5. タテジマハエト リグモ属の一種 (Phlegra sp. ). aphana (図 3) (Baba et al, 2017 ),さらに日本未記録種と思われるジャバラハエト リグモ属の一種 Helicius sp. (図 4)やタテジマハエトリグモ属の一種 Phlegra sp. (図 5) など珍しい種が確認されている.このように南西諸島の農地とその周辺環境は 国内未記録の種が見つかる余地が残されているため,南西諸島のクモ相の全容を明らか にする上でも今後農地のクモ相に注目する必要がある.

引用文献 Baba YG 2013. Two new of jumping spiders (Araneae: Salticidae) from Japan. Acta Arachnologica 62: 103-107. Baba YG, Katayama N, Tanikawa A 2017. New records of the pirate spider Ero aphana from Japan. Fauna Ryukyuana 34: 11-14. Baba, YG, Tanaka, K. 2016. Environmentally Friendly Farming and Multi-scale Environmental Factors Influence Generalist Predator Community in Rice Paddy Ecosystems of Japan. NIAES Series 6. 171-179. 谷川明男・佐々木健志 1999. 沖縄県産クモ類目録 . Kishidaia 76:61-101.

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KISHIDAIA, No. 111, Aug. 2017

白神山地(秋田県)の土壌から採集されたクモ類

菅 波 洋 平

はじめに 調査地の白神山地は,青森県の南西部から秋田県の北西部に広がる標高 1000m 級 の山地である.人の影響をほとんど受けていない原生的なブナの天然林が世界最大級の 規模で分布している.1993 年 12 月に日本で初めてユネスコ世界遺産に登録された. その結果,白神山地は,イヌワシやクマゲラなど希少な鳥類を生息させ,土壌動物など 多くの未知の種を擁する「多様な遺伝子プール」として,1995 年からは巡視や研究者 の特別な調査をのぞき,遺産の中心部への一般の入山が制限された. 茨城土壌動物研究会は,1994 年 8 月 27 日から 28 日にかけて秋田県藤里町の白神 山地で土壌動物の採集会を行った.その際に採集されたクモ類について,筆者が同定し リストを作成することになった. 調査が済んでからずいぶん時間が過ぎてしまったが,今回,採集された種をすべて 同定し,4 科 12 属 12 種の生息が明らかになったので報告する. 報告するに当たって,標本を提供していただいた茨城土壌動物研究会の会員の皆様 に感謝申し上げる .

採集地と植生 採集地は,白神山地であるが,具体的には秋田県藤里町の田苗代湿原周辺の 3 地点, 岳岱自然観察教育林の 3 地点,小岳周辺の 6 地点の計 12 地点である.各調査地点の標 高,採集期日,植生は次のとおりである. St.1: 藤里町田苗代上 : 780m. 1994 年 8 月 27 日. ブナ (優占種 )・サワグルミ・トチノキ・ハウチワカエデ・オオカメノキ・ホウ・ チ シマザサ・ジャコウソウ・エゾアジサイ . St.2: 藤里町田苗代・湿原内 : 780m. 1994 年 8 月 27 日. ハイイヌツゲ・ニッコウキスゲ・ St.3: 藤里町田苗代(St.1 より駒ヶ岳寄り): 810m. 1994 年 8 月 27 日. ブナ・サワグルミ・ヤマウルシ・ツタウルシ・チシマザサ・ツクバネソウ・ツバメ オモト・マイヅルソウ . St.4-1: 藤里町岳岱自然観察教育林 : 620m. 1994 年 8 月 27 日. 51

ブナ (優占種)・ホオノキ・ユキザサ・シダ (林床にササなし) . St.4-2: 藤里町岳岱自然観察教育林 : 620m. 1994 年 8 月 27 日. ブナ (優占種)・ホオノキ・ユキザサ・シダ (林床にササなし) . St.5: 藤里町岳岱自然観察教育林 : 620m. 1994 年 8 月 27 日. ブナ (優占種)・ホオノキ・ユキザサ・シダ (林床にササなし) . St.6: 藤里町小岳山頂 : 1040m. 1994 年 8 月 28 日. ハイマツ・アカミノイヌツゲ(林床にササなし). St.7-1: 藤里町小岳山頂・東斜面 : 1040m. 1994 年 8 月 28 日. ミヤマナラ・アカミノイヌツゲ・ミネカエデ・ヤマウルシ・ミヤマホツツジ・ササ . St.7-2: 藤里町小岳山頂・西斜面 : 1040m. 1994 年 8 月 28 日. ミヤマナラ・ハクサンシャクナゲ・ St.8: 藤里町小岳 : 980m. 1994 年 8 月 28 日. マルバマンサク・ミヤマナラ・ミヤマホツツジ・ハクサンシャクナゲ・アカミノイ ヌツゲ・ナナカマド・ササ . St.9: 藤里町小岳 : 930m. 1994 年 8 月 28 日. ブナ・ダケカンバ・カエデ・オオカメノキ・チシマザサ . St.10: 藤里町小岳 : 820m. 1994 年 8 月 28 日. ブナ・タムシバ・オオカメノキ・ハウチワカエデ・ムラサキヤシオ・チシマザサ .

調査方法 各地点で約 30 ~40ℓ の土壌試料を採集し,紙袋,土嚢袋などに入れて持ち帰った . 土壌試料をツルグレン装置で約 48 時間かけて抽出し,約 80 %のアルコールに液浸 し標本とした.

調査結果 12 地点で採集された種で種名のわかったものは,12 科 12 属 12 種である.12 種 の中で,キタホラヌカグモ,ヤマトオオイヤマケシグモ,ヒメヨツボシサラグモ,ヤマ ジコナグモ,マツモトハエトリは秋田県では初めての記録となる. なお,種名のわからないものが 22 種採集されているので,わかり次第報告する .

採集されたクモ類目録 ・科・属・種の配列と和名の表示は,「日本産クモ類目録 ver.2017R1 」(谷川 2017 ) に従った . ・データのリストは,1)調査日,2)採集個体数と性別,3)調査地点 ・略号は次のとおり : F 雌の成体, f 雌の幼体, M 雄の成体, m 雄の幼体 .

タマゴグモ科 Oonopidae

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1. オキツハネグモ Orchestina okitsui Oi, 1958 1994 年 8 月 27 日, 1f, (St.4-2).

サラグモ科 Linyphiidae 2. テナガグモ Bathyphantes gracilis (Blackwall, 1841) 1994 年 8 月 28 日, 1m, (St.8). 3. キタホラヌカグモ Caviphantes pseudosaxetorum Wunderlich, 1979 1994 年 8 月 27 日, 1F, (St.1). 1994 年 8 月 28 日, 2F, (St.7-2). 1994 年 8 月 28 日, 4F, (St.9). 4. クサチゴマグモ Micrargus herbigradus (Blackwall, 1854) 1994 年 8 月 28 日, 1F, (St.6). 1994 年 8 月 28 日, 1F. (St.7-1). 5. タテヤマテナガグモ Microbathyphantes tateyamaensis (Oi, 1960) 1994 年 8 月 28 日, 1M, (St.10) 6. クマダヤマトコナグモ Paratapinocyba kumadai H. Saito, 1986 1994 年 8 月 27 日, 4F, (St.5). 1994 年 8 月 28 日, 2F, (St.7-2). 1994 年 8 月 28 日, 1F, (St.8). 1994 年 8 月 28 日, 1F, (St.9). 7. ヤマトオオイヤマケシグモ Ryojius japonicus H. Saito & Ono, 2001 1994 年 8 月 27 日, 2F, (St.6). 1994 年 8 月 28 日, 3F, (St.6). 8. ヒメヨツボシサラグモ Strandella yaginumai H. Saito, 1982 1994 年 8 月 27 日, 1f, (St.5). 1994 年 8 月 28 日, 1f, (St.9). 1994 年 8 月 28 日, 1f, (St.10). 9. ヤマジコナグモ Tapinocyba silvicultrix H. Saito, 1980 1994 年 8 月 27 日, 1F, (St.6). 1994 年 8 月 28 日, 4F1M, (St.6). 10. ヤマクロサラグモ Tibioploides monticola H. Saito & Ono, 2001 1994 年 8 月 27 日, 4F, (St.1). 1994 年 8 月 27 日, 1F, (St.3). 1994 年 8 月 28 日, 1F, (St.9). 1994 年 8 月 28 日, 1F, (St.10).

タナグモ科 Agelenidae 11. オバコヤチグモ Coelotes obako Nishikawa, 1983 1994 年 8 月 28 日, 1F, (St.10).

ハエトリグモ科 Salticidae 12. マツモトハエトリ Bristowia heterospinosa Reimoser, 1934 1994 年 8 月 28 日, 1m, (St.9).

文 献 小野展嗣編著 2009. 日本産クモ類 . 738pp. 東海大学出版会 .

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新海 明・谷川明男・安藤昭久・池田博明・桑田隆夫 2016. CD 県別クモ類分布図 . Ver. 2016. 著者自刊 . 新海栄一 2017. 増補改訂版 日本のクモ . 407pp. 文一総合出版 . 谷 川 明 男 2017. 日 本 産 ク モ 類 目 録 ver. 2017R1. http://www.asahi-net.or.jp/~dp7a- tnkw/japan.pdf 千国安之輔 2008. 写真・クモ類大図鑑改訂版 . 308pp. 偕成社 .

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KISHIDAIA, No. 111, Aug. 2017

佐渡島のクモ類採集記録

谷川明男・宮下 直

佐渡市による動植物生息状況調査の一環で, 2012 年 9 月から 2014 年 6 月にかけ て,佐渡島にてクモ類の採集調査を行った.その結果採集されたクモ類のデータリスト を掲載する.ただし , 種名を挙げたのは , 成体の標本が採集されて種名を同定すること ができたものに限っている.

採集日および採集調査者 2012 年 9 月 26 日から 30 日:馬場友希,高木俊, Wimolwan Chotwong ,谷川明男 2013 年 5 月 23 日から 27 日:馬場友希・谷川明男 2013 年 7 月 12 日から 16 日:須黒達巳・谷川明男 2013 年 9 月 26 日から 29 日:井原庸・谷川明男 2014 年 6 月 19 日から 23 日:輿石紗葉子・谷川明男

採集地点座標 妙宣寺 N37.97132 E138.37287 F3 N38.01336 E138.27025 F2 N38.02113 E138.24446 F N38.03652 E138.41228 瓜生屋 N38.01624 E138.43004 道の駅 N38.04533 E138.44425 O N37.98176 E138.35447 669 N37.88112 E138.41338 794 N38.01751 E138.38109 795 N38.14373 E138.38300 796 N38.14929 E138.38456 797 N38.15278 E138.38519 798 N38.16716 E138.36103 799 N38.18363 E138.34249 800 N37.94273 E138.45178 801 N37.94399 E138.47364 802 N38.00181 E138.51293 803 N38.03604 E138.45049 804 N37.99918 E138.43783 806 N37.84680 E138.26823 807 N37.86034 E138.27880 811 N37.86849 E138.28330 813 N37.88681 E138.29011 843 N38.01046 E138.44267 844 N37.99809 E138.42393 845 N37.99287 E138.41754 846 N37.95066 E138.35185 847 N37.89414 E138.35673 848 N37.89177 E138.35342 849 N37.81958 E138.23447 55

850 N38.13752 E138.39127 851 N38.11544 E138.39406 852 N38.10241 E138.41008 853 N38.04901 E138.27398 854 N38.06230 E138.28727 855 N38.06096 E138.28437 856 N38.00615 E138.26013 857 N37.85357 E138.27408 858 N37.87046 E138.28406 875 N38.27808 E138.50353 876 N38.04034 E138.41073 877 N38.17590 E138.44637 878 N38.05109 E138.47962 879 N38.02516 E138.34447 880 N37.96460 E138.37475 881 N37.85309 E138.31298 882 N38.28879 E138.44520 883 N38.01708 E138.34590 884 N38.12800 E138.38374 885 N38.10802 E138.28515 886 N38.00046 E138.45317 887 N37.93897 E138.45732 888 N37.94254 E138.34060 889 N37.91171 E138.36558 890 N37.83633 E138.34404 970 N38.13024 E138.43701 971 N37.96990 E138.41623 972 N37.95234 E138.41285 973 N37.94910 E138.37389 974 N37.92444 E138.31335 975 N38.07152 E138.39875 976 N38.04253 E138.36835 977 N38.04262 E138.32485 978 N38.02745 E138.29995 979 N38.00948 E138.32461 980 N38.00491 E138.43421 981 N37.97622 E138.39831

目 録 データは,採集地:採集日・性別の順に記してある. F:メス成体,M:オス成体 Atypidae ジグモ科 Atypus karschi Dönitz 1887 ジグモ 845:140623F, 854:130525F, 881:130714F Calommata signata Karsch 1879 ワスレナグモ 976:140622F Oonopidae タマゴグモ科 Gamasomorpha kusumii Komatsu 1963 クスミダニグモ 845:130524M, 880:130715F Orchestina sanguinea Oi 1955 アカハネグモ 878:140621F, 974:140621F, 976:140622F Pholcidae ユウレイグモ科 Pholcus crypticolens Bös. & Str. 1906 ユウレイグモ 669:130713F, 875:130714M, 875:130716F, 880:130715F, 976:140622F Theridiidae ヒメグモ科 Anelosimus crassipes (Bös. & Str. 1906) アシブトヒメグモ

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669:130713F, 798:130715F, 801:120928F, 844:130524FM, 845:130524F, 846:130524M, 849:130524M, 854:140620FM, 856:130525FM, 856:140620F, 875:130714F, 875:140620FM, 878:140621F, 880:130715F, 970:140620F, 971:140621F, 972:140621F, 973:140621F, 974:140621F, 976:140622FM, 977:140622F, 978:140622F Anelosimus iwawakiensis Yoshida 1986 イワワキアシブトヒメグモ 669:130713F, 852:130525M, 856:130525M, 856:140620F, 875:130714F, 875:140620F, 877:140620F, 878:130714F, 878:140621F, 880:130715F, 971:140621F, 972:140621F, 974:140621F, 978:140622F Argyrodes miniaceus (Doleschall 1857) アカイソウロウグモ 799:120927F, 876:130714M Ariamnes cylindrogaster (Simon 1888) オナガグモ 877:130714F, 880:130715F Chikunia albipes (S.Saito 1935) ギボシヒメグモ 669:130713F, 844:130524M, 847:130524M, 852:130525M, 856:130525FM, 875:130713M, 875:140620FM, 876:130714F, 877:140620F, 878:140621F, 971:140621F, 972:140621F, 973:140621F, 975:140622F, 976:140622F Chrysso foliata (L.Koch 1878) ホシミドリヒメグモ 846:130524F, 847:130524FM, 849:130524F, 852:130525F, 853:130525FM, 856:130525M, 875:130714F, 875:140620F, 881:130715F, 975:140622F Coleosoma octomaculatum (Bös. & Str. 1906) ヤホシヒメグモ 844:130524F, 979:140622FM Dipoena punctisparsa Yaginuma 1967 シモフリミジングモ 856:140620F, 974:140621F Enoplognatha abrupta (Karsch 1879) カレハヒメグモ 856:130525F Enoplognatha caricis (Fickert 1876) ヤマトコノハグモ 848:130524F, 850:130525M, 978:140622F Episinus affinis Bös. & Str. 1906 ヒシガタグモ 875:140620F Neospintharus fur (Bös. & Str. 1906) フタオイソウロウグモ 875:130714F, 878:130714F, 880:130715F, 970:140620F, 974:140621F, 977:140622F Neospintharus nipponicus (Kumada 1990) ツノナガイソウロウグモ 875:130714F, 876:130714FM, 880:130715F Okumaella okumae (Yoshida 1988) クロササヒメグモ 875:140620FM, 877:130714F, 877:140620F, 878:140621M, 970:140620F,

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972:140621FM, 973:140621FM Parasteatoda angulithorax (Bös. & Str. 1906) ツリガネヒメグモ 795:140619M, 800:120928F, 802:120928F, 875:130714M, 877:130714F, 877:140620FM, 880:130715F, 972:140621F, 974:140621M Parasteatoda asiatica (Bös. & Str. 1906) キヒメグモ 880:130715F, 974:140621M Nihonhimea japonica (Bös. & Str. 1906) ニホンヒメグモ 804:120928F, 875:130927F, 877:130927F, 890:130928F Parasteatoda kompirensis (Bös. & Str. 1906) コンピラヒメグモ 798:130715M, 856:140620M, 875:130713M, 875:130714FM, 875:140620FM, 877:140620, 878:130714F, 880:130715F, 970:140620, 974:140621M Keijiella oculiprominens (S. Saito 1939) キヨヒメグモ 971:140621F Parasteatoda tabulata (Levi 1980) オオツリガネヒメグモ 798:130715FM, 875:130713F, 975:140622M, 976:140622F Parasteatoda tepidariorum (C. L. Koch 1841) オオヒメグモ 797:120927F, 798:130715F, 798:120927F, 803:120928F, 875:130716F, 877:130714F, 877:140620F, 882:130713F, 975:140622F Phoroncidia pilula (Karsch 1879) ツクネグモ 971:140621F Phycosoma flavomarginatum (Bös. & Str. 1906) キベリミジングモ 849:130524FM, 973:140621F, 974:140621FM Phycosoma japonicum (Yoshida 1985) ヤマトミジングモ 669:130713FM, 795:140619F, 846:130524F, 856:140620F, 875:140620M, 880:130715F, 881:130715FM, 974:140621F Phycosoma mustelinum (Simon 1889) カニミジングモ 795:120927M, 795:140619FM, 796:120927FM, 801:120928M, 846:130524FM, 856:140620FM, 875:130714M, 875:140620F, 877:130927FM, 877:140620FM, 884:130927F, 887:130928F, 889:130928F, 970:140620F, 973:140621F Platnickina sterninotata (Bös. & Str. 1906) ムナボシヒメグモ 669:130713F, 847:130524FM, 875:130714F, 875:140620F, 878:130714F, 970:140620F, 973:140621F, 974:140621F, 976:140622F, 977:140622F Rhomphaea sagana (Dön. & Str. 1906) ヤリグモ 796:120927F, 877:130714F, 973:140621F Robertus ogatai Yoshida 1995 オガタモリヒメグモ

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795:140619M Rugathodes nigrolimbatus (Yaginuma 1972) タカネヒメグモ 973:140621F Spheropistha miyashitai (Tanikawa 1998) ミヤシタイソウロウグモ 875:130714M, 875:140620F Steatoda cingulata (Thorell 1890) ハンゲツオスナキグモ 801:120928M, 845:140623F Stemmops nipponicus Yaginuma 1969 スネグロオチバヒメグモ 875:130713F, 879:130715M, 880:130715F, 881:130715F, 974:140621F Takayus chikunii (Yaginuma 1960) バラギヒメグモ 846:130524M, 878:130714F, 878:140621F, 881:130715F, 890:130928F Takayus takayensis (S. Saito 1939) タカユヒメグモ 795:140619FM, 854:140620F, 875:140620F, 970:140620F Theridion pinastri L. Koch 1872 ムネグロヒメグモ 669:130713M, 798:130715M, 854:140620F Yaginumena castrata (Bös. & Str. 1906) ボカシミジングモ 798:130715M, 880:130715FM, 881:130715M, 888:130928M, 974:140621M Yaginumena mutilata (Bös. & Str. 1906) コアカクロミジングモ 856:140620F, 875:130714F, 875:140620F, 971:140621F, 974:140621F Yunohamella lyrica (Walckenaer 1842) シモフリヒメグモ 795:140619F, 972:140621F Yunohamella subadulta (Bös. & Str. 1906) コケヒメグモ 880:130715F Yunohamella yunohamensis (Bös. & Str. 1906) ユノハマヒメグモ 877:130714F, 972:140621F Theridiosomatidae カラカラグモ科 Ogulnius pullus Bös. & Str. 1906 ヤマジグモ 875:140620FM, 884:130927M, 970:140620F, 973:140621F Theridiosoma epeiroides Bös. & Str. 1906 カラカラグモ 877:140620F, 971:140621F, 972:140621F, 973:140621FM Mysmenidae コツブグモ科 Microdipoena pseudojobi (Lin & Li 2008) ナンブコツブグモ 875:130714F ヨリメグモ科 Comaroma maculosa Oi 1960 ヨロイヒメグモ 845:130524F Conculus lyugadinus Komatsu 1940 ヨリメグモ

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797:120927F, 880:130715F Nephilidae ジョロウグモ科 Nephila clavata L. Koch 1878 ジョロウグモ 797:120927F, 798:120927F, 800:120928FM, 801:120928F, 802:120928M, 803:120928M, 804:120928FM, 875:130927M, 890:130928M Araneidae コガネグモ科 Acusilas coccineus Simon 1895 ハツリグモ 798:120927y, 849:130524y, 875:130714F, 875:140620F, 878:130714F, 880:130715F, 974:140621F Araneus acusisetus Zhu & Song 1994 オオクマヤミイロオニグモ 846:130524F, 847:130524F, 875:130714F, 880:130715F Araneus ishisawai Kishida 1920 イシサワオニグモ 797:120927F, 798:120927F, 800:120928F, 801:120928F, 802:120928F, 877:130927F, 884:130927F, 887:130928F, 890:130928F Araneus semilunaris (Karsch 1879) マルヅメオニグモ 669:130713F Araneus tsurusakii Tanikawa 2001 カラオニグモ 798:130715F, 844:130524F, 849:130524F, 852:130525FM, 856:130525F, 875:130714F, 880:130715F, 970:140620F, 976:140622F, 977:140622F Araneus variegatus Yaginuma 1960 ニシキオニグモ 801:120928F Araneus ventricosus (L. Koch 1878) オニグモ 796:120927F, 845:140623F, 875:130714M, 883:130713F, 976:140622M Araniella yaginumai Tanikawa 1995 ムツボシオニグモ 795:140619FM, 798:130715F, 844:130524F, 850:130525F, 852:130525FMy, 854:130525F, 971:140621F Argiope amoena L. Koch 1878 コガネグモ 876:130714FM, 883:130713F, 975:140622M Argiope bruennichi (Scopoli 1772) ナガコガネグモ 799:120927F, 800:120928F, 801:120928F, 803:120928F, 804:120928F, 876:130714M Argiope minuta Karsch 1879 コガタコガネグモ 799:120927F, 800:120928F, 803:120928F, 804:120928F, 890:130928F Chorizopes nipponicus Yaginuma 1963 ヤマトカナエグモ 669:130713M, 856:140620F, 875:140620F, 878:140621F, 880:130715F, 881:130715F, 970:140620F, 973:140621M, 976:140622M Cyclosa argenteoalba Bös. & Str. 1906 ギンメッキゴミグモ

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888:130928F Cyclosa japonica Bös. & Str. 1906 ヤマトゴミグモ 799:120927F, 803:120928F, 804:120928F, 853:130927F, 875:130713y, 876:130714F, 877:130927F, 878:130714F, 879:130715M, 880:130715FMy, 888:130928F Cyclosa laticauda Bös. & Str. 1906 キジロゴミグモ 669:130713F, 878:130714F Cyclosa octotuberculata Karsch 1879 ゴミグモ 875:130713F, 875:140620F, 878:130714F, 880:130715F, 883:130713F, 971:140621F Cyclosa onoi Tanikawa 1992 オノゴミグモ 848:130524FM, 852:130525F Cyclosa sedeculata Karsch 1879 ヨツデゴミグモ 845:130524M, 846:130524y, 849:130524FM, 852:130525M, 856:140620F, 875:130714F, 875:140620M, 876:130714F, 877:140620FM, 878:130714F, 880:130715F, 970:140620F, 972:140621F Cyrtarachne bufo (Bös. & Str. 1906) トリノフンダマシ F:140822F, F2:140908F, F3:140908F Cyrtarachne akirai Tanikawa 2013 オオトリノフンダマシ 669:130713FM, 875:130714M, F3:140908F Cyrtarachne nagasakiensis Strand 1918 シロオビトリノフンダマシ 881:130715F Gibbaranea abscissa (Karsch 1879) キザハシオニグモ 844:130524F Hypsosinga sanguinea (C. L. Koch 1844) シロスジショウジョウグモ 795:140619F Larinia argiopiformis Bös. & Str. 1906 コガネグモダマシ 794:120927M Larinioides cornutus (Clerck 1757) ナカムラオニグモ 803:120928M, 845:130524F, 845:140623F, 848:130524F, 856:130525F, 975:140622F, 978:140622F Neoscona adianta (Walckenaer 1802) ドヨウオニグモ 794:120927F, 803:120928F, 878:130714F, 975:140622F, 977:140622F, 979:140622FM Neoscona mellotteei (Simon 1895) ワキグロサツマノミダマシ 803:120928F Neoscona nautica (L. Koch 1875) イエオニグモ

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804:120928F, 883:130713FM Neoscona scylla (Karsch 1879) ヤマシロオニグモ 798:130715F, 875:130713F, 876:130714F, 878:130714FM, 880:130715M Neoscona scylloides (Bös. & Str. 1906) サツマノミダマシ 798:130715M, 875:130714F, 876:130714FM, 878:130714M, 880:130715F Plebs astridae (Str. 1917) サガオニグモ 846:130524F, 853:130525M, 877:140620F Plebs sachalinensis (S. Saito 1934) カラフトオニグモ 795:140619F, 798:130715F, 845:130524F, 846:130524F, 875:130713F, 875:140620F, 877:140620F, 972:140621F, 973:140621F Pronoides brunneus Schenkel 1936 コオニグモモドキ 795:140619FM, 854:140620F Yaginumia sia (Str. 1906) ズグロオニグモ 瓜生屋 :140622F Mimetidae センショウグモ科 Kulczyński 1911 アオグロセンショウグモ 794:120927F Ero japonica Bös. & Str. 1906 センショウグモ 669:130713FM, 875:130714F, 880:130715F Tetragnathidae アシナガグモ科 Leucauge celebesiana (Walckenaer 1842) オオシロカネグモ 798:130715F, 803:120928F, 804:120928F, 856:140620M, 875:130713F, 875:130714F, 875:130927F, 875:140620M, 878:130714FM, 878:140621M, 880:130715M, 884:130927F, 971:140621M, 972:140621FM, 973:140621FM Leucauge subblanda Bös. & Str. 1906 コシロカネグモ 669:130713F, 795:140619FM, 854:140620FM, 856:140620F, 875:130713F, 875:130714F, 875:130716M, 875:140620FM, 876:130714F, 877:130714F, 877:140620F, 878:130714F, 878:140621FM, 880:130715FM, 881:130715F, 970:140620FM, 971:140621F, 972:140621F, 973:140621F, 974:140621FM, 975:140622FM, 976:140622FM, 977:140622F, 978:140622FM Leucauge subgemmea Bös. & Str. 1906 キララシロカネグモ 798:130715F, 875:130713F, 875:130714FM, 876:130714F, 878:130714F, 878:140621M, 880:130715M Menosira ornata Tikuni 1955 キンヨウグモ 800:120928F, 801:120928M, 803:120928FM, 804:120928F, 853:130927F, 875:130927FM, 877:130927M, 890:130928F

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Meta reticuloides Yaginuma 1958 ヤマジドヨウグモ 875:130927F, 884:130927F Metleucauge chikunii Tanikawa 1992 チクニドヨウグモ 797:120927F, 877:130714F Metleucauge kompirensis (Bös. & Str. 1906) タニマノドヨウグモ 875:130716F, 875:140620FM, 877:140620M, 880:130715F, 972:140621FM Metleucauge yunohamensis (Bös. & Str. 1906) メガネドヨウグモ 843:130524F, 851:130525F, 852:130525FM, 853:130525F, 877:130714F Pachygnatha tenera Karsch 1879 ヒメアシナガグモ 794:120927F, 852:130525F, 876:130714F, 975:140622F, 978:140622FM Tetragnatha caudicula (Karsch 1879) トガリアシナガグモ 669:130713M Tetragnatha maxillosa Thorell 1895 ヤサガタアシナガグモ 669:130713F, 794:120927M, 801:120928F, 844:130524M, 856:140620F, 878:130714F, 878:140621FM, 970:140620F, 971:140621F, 973:140621F, 975:140622F, 978:140622FM Tetragnatha praedonia L. Koch 1878 アシナガグモ 669:130713F, 797:120927F, 803:120928F, 804:120928, 843:130524FM, 844:130524F, 846:130524F, 847:130524F, 852:130525F, 856:140620M, 875:140620M, 878:140621F, 880:130715M, 970:140620FM, 971:140621F, 975:140622F, 976:140622FM, 977:140622F, 978:140622F Tetragnatha squamata Karsch 1879 ウロコアシナガグモ 844:130524M, 876:130714FM, 878:140621F, 970:140620M, 975:140622F, 976:140622FM, 977:140622M, 978:140622F Tetragnatha yesoensis S. Saito 1934 エゾアシナガグモ 795:140619FM, 854:140620M, 875:140620FM, 878:140621F, 972:140621F, 973:140621F, 976:140622FM Nesticidae ホラヒメグモ科 Nesticella brevipes (Yaginuma 1970 ) コホラヒメグモ 886:130928F Linyphiidae サラグモ科 Ainerigone saitoi (Ono 1991) サイトウヌカグモ 843:130524F, 846:130524FM, 847:130524M, 849:130524FM, 856:130525FM, 856:140620F, 875:130714F, 875:140620F, 877:140620F, 880:130715F, 881:130715F, 975:140622F Bathyphantes gracilis (Blackwall 1841) テナガグモ 978:140622F

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Doenitzius peniculus Oi 1960 デーニッツサラグモ 846:130524F, 879:130715F, 880:130715F, 973:140621F Erigone prominens Bös. & Str. 1906 ノコギリヒザグモ 978:140622F, 979:140622M Gnathonarium exsiccatum (Bös. & Str. 1906) ニセアカムネグモ 971:140621M, 979:140622F Hylyphantes graminicola (Sundevall 1830) クロナンキングモ 803:120928FM, 843:130524FM, 846:130524F, 856:130525F, 876:130714M, 878:140621FMy, 978:140622F Microbathyphantes tateyamaensis (Oi 1960) タテヤマテナガグモ 845:130524F, 855:130525F, 875:130713F, 875:130714M, 876:130714F, 877:130714F, 879:130715F Nematogmus sanguinolentus (Walckenaer 1842) チビアカサラグモ 803:120928y, 804:120928F, 852:130525F, 879:130715y Neriene angulifera (Schenkel 1953) ハンモックサラグモ 795:140619FM Neriene brongersmai van Helsdingen 1969 チビサラグモ 795:140619FM, 843:130524F, 853:130525FM, 854:130525M, 855:130525F, 875:130716F, 971:140621F Neriene fusca (Oi 1960) クスミサラグモ 875:140620F Neriene longipedella (Bös. & Str. 1906) アシナガサラグモ 798:130715F, 799:120927F, 800:120928F, 803:120928F, 804:120928F, 853:130927F, 875:130927F, 877:130927F, 887:130928F, 889:130928F, 890:130928F Neriene nigripectoris (Oi 1960) ムネグロサラグモ 971:140621FM Neriene oidedicata van Helsdingen 1969 ヘリジロサラグモ 794:120927F, 801:120928F, 843:130524F, 846:130524F, 875:140620FM Neriene radiata (Walckenaer 1842) シロブチサラグモ 843:130524F, 844:130524F, 848:130524F, 971:140621F Neserigone basarukini Eskov 1992 ミヤマナンキングモ 795:140619F, 875:130714F, 875:140620F, 970:140620F, 971:140621F, 972:140621FM, 973:140621F Paikiniana mira (Oi 1960) テングヌカグモ 844:130524F Solenysa mellotteei Simon 1894 アリマネグモ

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845:130524F Turinyphia yunohamensis (Bös. & Str. 1906) ユノハマサラグモ 843:130524FM, 845:130524F, 846:130524F, 847:130524FM, 849:130524F, 852:130525FM, 853:130525FM, 856:130525F, 875:140620F, 877:140620F, 973:140621F, 974:140621F Ummeliata insecticeps (Bös. & Str. 1906) セスジアカムネグモ 852:130525F, 856:130525M, 875:140620F, 878:140621F, 975:140622F, 978:140622FMy Oecobiidae チリグモ科 Uroctea compactilis L. Koch 1878 ヒラタグモ 804:120928F Uloboridae ウズグモ科 Hyptiotes affinis Bös. & Str. 1906 オウギグモ 877:130927F Octonoba sybotides (Bös. & Str. 1906) カタハリウズグモ 669:130713F, 856:140620M, 875:130714F, 875:130716F, 878:130714F, 880:130715F, 970:140620FM, 971:140621F, 974:140621F, 975:140622FM, 976:140622M, 977:140622M Octonoba varians (Bös. & Str. 1906) ヤマウズグモ 798:120927F, 880:130715F, 972:140621F, 975:140622F Octonoba yesoensis (S. Saito 1934) エゾウズグモ 877:130714F, 877:130927F, 884:130927F ヤマトガケジグモ科 Nurscia albofasciata (Strand 1907) ヤマトガケジグモ 845:140623F Agelenidae タナグモ科 Agelena labyrinthica (Clerck 1757) イナズマクサグモ 807:120928F Agelena silvatica Oliger 1983 クサグモ 道の駅 :120928F Allagelena opulenta (L. Koch 1878) コクサグモ 800:120928F, 801:120928F, 803:120928FM, 804:120928FM, 885:130927F, 890:130928F

Cybaeidae ナミハグモ科 Cybaeus aquilonalis Yaginuma 1958 コナミハグモ 796:120927F, 877:130927F

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Dictynidae ハグモ科 Dictyna foliicola Bös. & Str. 1906 ヒナハグモ 669:130713F Lathys annulata Bös. & Str. 1906 カレハグモ 669:130713F, 847:130524FM, 852:130525FM, 877:140620F, 881:130715F Ctenidae シボグモ科 Anahita fauna Karsch 1879 シボグモ 669:130713F, 856:140620F, 876:130714F, 970:140620FM, 973:140621M, 974:140621F Pisauridae キシダグモ科 Dolomedes angustivirgatus Kishida 1936 スジボソハシリグモ 856:140620M Dolomedes raptor Bös. & Str. 1906 アオグロハシリグモ 856:140620F, 875:130716M, 875:130716F, 972:140621M Dolomedes saganus Bös. & Str. 1906 スジブトハシリグモ 844:130524M, 847:130524M, 856:130526FM, 856:140620FM, 971:140621M Dolomedes sulfureus L. Koch 1878 イオウイロハシリグモ 798:120927F, 800:120928F, 804:120928F, 875:130716F, 878:130714M, Pisaura lama Bös. & Str. 1906 アズマキシダグモ 854:130525F, 855:130525FM, 875:130714F, 875:140620F Lycosidae コモリグモ科 Alopecosa moriutii Tanaka 1985 ハタチコモリグモ 845:140623F, 854:130525M, 975:140622F, 976:140622F, 976:140623F, 980:140623F, 981:140623F Alopecosa virgata (Kishida 1909) スジブトコモリグモ 854:130525FM, 854:130714F, 854:140620FMy, 854:140620FM, 855:130525F Arctosa ebicha Yaginuma 1960 エビチャコモリグモ 794:120927M, 975:140622F Arctosa ipsa (Karsch 1879) ヒノマルコモリグモ 846:130524M, 856:140620M, 875:130714M, 877:130927M, 886:130928M, 973:140621M Arctosa kawabe Tanaka 1985 カワベコモリグモ 798:130715M, 851:130525FM Arctosa stigmosa (Thorell 1875) クロココモリグモ 847:130524M, 856:130525F, 856:140620M, 975:140622F, 979:140622F

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Lycosa ishikariana (S. Saito 1934) イソコモリグモ 807:130526F, 811:130527F Pardosa agraria Tanaka 1985 イナダハリゲコモリグモ 856:130525M, 856:140620FM, 878:140621FM, 970:140620FM, 971:140621FM, 975:140622FM, 977:140622FM, 978:140622FM, 980:140623N Pardosa albomarginata Tanikawa et al. 2014 ヘリジロコモリグモ 856:130525FM, 978:140622F Pardosa astrigera L. Koch 1878 ウヅキコモリグモ 844:130524F, 845:140623F, 847:130524F, 850:130525FM, 852:130525FM, 856:130525M, 856:140620F, 875:140620F, 878:140621F, 970:140620FM, 971:140621FM, 976:140622FM, 977:140622F, 978:140622FM, Pardosa brevivulva Tanaka 1975 ヤマハリゲコモリグモ 843:130524FM, 854:140620F, 855:130525M, 971:140621F Pardosa diversa Tanaka 1985 ハタハリゲコモリグモ 795:140619FM, 850:130525FM Pardosa laura Karsch 1879 ハリゲコモリグモ 847:130524M, 854:140620FM, 856:140620FM, 875:130716M, 875:140620FM, 878:140621M, 971:140621FM, 974:140621M Pardosa yaginumai Tanaka 1977 キシベコモリグモ 798:120927FM, 798:130715FM Pirata subpiraticus (Bös. & Str. 1906) キバラコモリグモ 848:130524FM, 856:130525M, 856:140620FM, 878:140621F, 971:140621F, 976:140622F, 978:140622F, 979:140622F, 980:140623F Piratula clercki (Bös. & Str. 1906) クラークコモリグモ 800:120928F, 846:130524F, 853:130525F, 877:130714FM, 877:140620M, 880:130715M, 884:130927F, 886:130928F, 972:140621F, 973:140621M, 973:140621FM, 975:140622F Piratula meridionalis (Tanaka 1974) ミナミコモリグモ 804:120928F, 856:140620F Piratula piratoides (Bös. & Str. 1906) イモコモリグモ 856:140620M, 878:140621FM, 970:140620F, 978:140622F Piratula procurva (Bös. & Str. 1906) チビコモリグモ 856:140620F, 875:130714FM, 876:130714M, 879:130715FM, 880:130715M, 970:140620F, 973:140621M, 974:140621M, 976:140622FM, 978:140622F Piratula yaginumai (Tanaka 1974) ナミコモリグモ

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851:130525FM, 852:130525F, 979:140622FM Trochosa ruricola (De Geer 1778) アライトコモリグモ 804:120928M, 847:130524FMy, 852:130525M, 856:130525M, 856:140620FM, 879:130715F, 970:140620FM, 970:140620F, 975:140622F, 977:140622F Thomisidae カニグモ科 Bassaniana decorata (Karsch 1879) キハダカニグモ 976:140622F Diaea subdola O. P.-Cambridge 1885 コハナグモ 669:130713FM, 854:140620FM, 856:140620F, 875:130714F, 875:140620FM, 877:140620F, 878:130714F, 880:130715F, 881:130715F, 971:140621FM, 974:140621FM, 976:140622FM, 977:140622FM, 978:140622F Ebrechtella tricuspidata (Fabricius 1775) ハナグモ 669:130713FM, 794:120927FM, 798:120927M, 798:130715F, 800:120928FM, 801:120928FM, 803:120928FM, 804:120928M, 844:130524M, 846:130524F, 852:130525F, 856:130525FM, 856:140620M, 879:130715F, 971:140621M, 975:140622FM, 977:140622F, 978:140622F Heriaeus mellotteei Simon 1886 アシナガカニグモ 669:130713FM Lysiteles coronatus (Grube 1861) アマギエビスグモ 795:140619F, 846:130524F, 850:130525F, 854:130525M, 875:140620M Oxytate striatipes L. Koch 1878 ワカバグモ 669:130713F, 798:130715F, 843:130524M, 847:130524M, 856:130525FM, 875:140620F, 977:140622F Ozyptila matsumotoi Ono 1988 マツモトオチバカニグモ 876:130714F, 879:130715F, 881:130715F Ozyptila nipponica Ono 1985 ニッポンオチバカニグモ 843:130524F, 875:130714F Pistius undulatus Karsch 1879 ガザミグモ 882:130713M Tmarus piger (Walckenaer 1802) トラフカニグモ 852:130525F, 854:140620FM Tmarus rimosus Paik 1973 セマルトラフカニグモ 875:130714FM, 875:130716F, 880:130715F, 881:130715F, 970:140620M Xysticus croceus Fox 1937 ヤミイロカニグモ 974:140621F, 975:140622F

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Xysticus ephippiatus Simon 1880 チュウカカニグモ 855:130525M Xysticus hedini Schenkel 1936 クロボシカニグモ 975:140622FM, 978:140622FM Xysticus insulicola Bös. & Str. 1906 アズマカニグモ 813:130526M, 844:130524M, 848:130524F, 855:130525F, 878:130714F Xysticus kurilensis Str. 1907 チシマカニグモ 875:130716F, 884:130927F Xysticus saganus Bös. & Str. 1906 ゾウシキカニグモ 875:130716F, 876:130714FM, 879:130715FM, 881:130715FM Xysticus transversomaculatus Bös. & Str. 1906 ヨコフカニグモ 813:130715M, 素浜 :140622F Liocranidae ウエムラグモ科 Agroeca kamurai Hayashi 1992 カムラタンボグモ 843:130524M, 851:130525M Clubionidae フクログモ科 Clubiona diversa O. P.-Cambridge 1862 ミチノクフクログモ 977:140622F Clubiona japonica L. Koch 1878 ヤマトフクログモ 669:130713F, 801:120928Fy, 802:120928M, 856:130525M Clubiona jucunda (Karsch 1879) ヤハズフクログモ 795:120927F, 977:140622F Clubiona kurilensis Bös. & Str. 1906 ヒメフクログモ 798:120927F, 798:130715M, 804:120928M, 856:140620M, 979:140622F Clubiona kurosawai Ono 1986 クロサワフクログモ 875:140620F, 885:130927M, 976:140622F Clubiona rostrata Paik 1985 マイコフクログモ 798:130715F Clubiona vigil Karsch 1879 ムナアカフクログモ 669:130713FM, 803:120928F, 875:130714M, 878:130714F Clubiona yaginumai Hayashi 1989 ヤギヌマフクログモ 845:130524M, 881:130715M Orthobula crucifera Bös. & Str. 1906 オトヒメグモ 669:130713FM, 843:130524F, 844:130524FM, 880:130715F, 881:130715F Otacilia komurai (Yaginuma 1952) コムラウラシマグモ 796:120927FM, 798:120927F, 801:120928M Phrurolithus claripes (Dönitz & Str. 1906) イナズマウラシマグモ

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795:140619FM Phrurolithus coreanus Paik 1991 キレオビウラシマグモ 852:130525F, 973:140621F Phrurolithus pennatus Yaginuma 1967 ヤバネウラシマグモ 876:130714M, 879:130715F Trachelas japonicus Bös. & Str. 1906 ネコグモ 844:130524F, 845:130524M, 846:130524F, 849:130524FM, 974:140621F Anyphaenidae イヅツグモ科 Anyphaena pugil Karsch 1879 イヅツグモ 849:130524F, 973:140621F サシアシグモ科 Shinobius orientalis (Yaginuma 1967) シノビグモ 877:130927y (DNA バーコーディングによる同定) Gnaphosidae ワシグモ科 Cladothela parva Kamura 1991 ヒメチャワシグモ 875:130714F Drassodes serratidens Schenkel 1963 トラフワシグモ 855:130525M, 858:130527M Drassyllus sanmenensis Platnick & Song 1986 エビチャヨリメケムリグモ 843:130524M, 848:130524M, 851:130525M, 852:130525M, 875:130713F, 875:130714F, 875:130716F, 875:130716F, 875:140620F, 880:130715F, 973:140621F Drassyllus sasakawai Kamura 1987 ヤマヨリメケムリグモ 795:140619M, 852:130525F Gnaphosa kompirensis Bös. & Str. 1906 メキリグモ 795:140619M, 798:130715F, 852:130525M, 856:140620Fy, 875:130713F, 875:130714FM, 875:140620M, 878:140621M, 879:130715FM, 971:140621FM Odontodrassus hondoensis (S. Saito 1939) ヤマトフトバワシグモ 669:130713F, 798:130715F, 879:130715F, 978:140622FM Sergiolus hosiziro (Yaginuma 1960) ホシジロトンビグモ 977:140622F Zelotes tortuosus Kamura 1987 クロケムリグモ 794:120927F, 977:140622F Miturgidae ツチフクログモ科 Prochora praticola (Bös. & Str. 1906) イタチグモ 669:130713F, 875:130714F

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Eutichuridae コマチグモ科 Cheiracanthium lascivum Karsch 1879 ヤマトコマチグモ 847:130524M, 848:130524FM, 856:130525M, 856:140620FM, 875:140620F, 878:130714F, 878:140621F, 970:140620F, 971:140621M, 978:140622F, 979:140622F Cheiracanthium unicum Bös. & Str. 1906 ヤサコマチグモ 669:130713M, 854:140620M, 856:140620M, 875:130714FM, 875:140620M, 878:130714FM, 976:140622M, 977:140622M, 978:140622M Philodromidae エビグモ科 Philodromus aureolus (Clerck 1757) コガネエビグモ 795:140619F, 854:130525M Philodromus auricomus L. Koch 1878 キンイロエビグモ 976:140622FM Philodromus spinitarsis Simon 1895 キハダエビグモ 875:130713F, 973:140621F Philodromus subaureolus Bös. & Str. 1906 アサヒエビグモ 669:130713FM, 854:140620FM, 856:140620FM, 878:140621M, 881:130715F, 970:140620FM, 975:140622FM, 976:140622FM, 977:140622FM, 979:140622F Thanatus miniaceus Simon 1880 ヤドカリグモ 978:140622M Tibellus japonicus Efimik 1999 シャコグモ 798:130715F, 803:120928y, 976:140622F Salticidae ハエトリグモ科 Asianellus festivus (L. Koch 1834) ヤマジハエトリ 804:120928M, 875:140620M Evarcha albaria (L. Koch 1878) マミジロハエトリ 669:130713FM, 798:120927M, 798:130715M, 799:120927F, 803:120928FM, 804:120928M, 813:130526F, 846:130524FMy 849:130524M, 856:130525FM, 858:130527F, 875:140620M, 878:140621M, 881:130715FM, 885:130927F, 971:140621M, 979:140622M Hakka himeshimensis (Dönitz & Str. 1906) イソハエトリ 813:130715FM Helicius cylindratus (Karsch 1879) コジャバラハエトリ 875:130716F Helicius yaginumai Bohd. & Prós. 1987 ジャバラハエトリ 846:130524F, 852:130525M, 856:140620FM, 880:130715M,

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881:130715FM, 970:140620FM, 974:140621M, 976:140622FM Heliophanus lineiventris Simon 1868 タカノハエトリ 807:130526FM Heliophanus ussuricus Kulczyński 1895 ウスリーハエトリ 850:130525FM, 852:130525M Laufeia aenea Simon 1889 エキスハエトリ 802:120928M, 877:130714F, 877:130414F, 880:130715F, 881:130715M Marpissa pulla (Karsch 1879) ヨダンハエトリ 669:130713F, 813:130526M, 856:130525F, 875:130714F, 875:130713M Mendoza canestrinii (Ninni in Canes. & Pav. 1868) オスクロハエトリ O:130709M Mendoza elongata (Karsch 1879) ヤハズハエトリ 794:120927FM, 801:120928M, 804:120928F, 856:130525FM, 875:130714F Myrmarachne japonica (Karsch 1879) アリグモ 875:130713F, 881:130715F, 971:140621F, 977:140622F Myrmarachne kuwagata Yaginuma 1967 クワガタアリグモ 856:140620M Neon reticulatus (Blackwall 1853) ネオンハエトリ 877:130714F, 877:130414F, 880:130715FM Phintella arenicolor (Grube 1861) マガネアサヒハエトリ 669:130713F, 795:140619M, 798:130715M, 844:130524M, 846:130524M, 852:130525F, 853:130525M, 854:140620FM, 856:140620FM, 875:130714F, 875:140620FM, 971:140621FM, 972:140621FM Phintella linea (Karsch 1879) メガネアサヒハエトリ 856:130525F, 856:140620F Plexippoides doenitzi (Karsch 1879) デーニッツハエトリ 669:130713F, 801:120928M, 802:120928F, 803:120928FM, 804:120928F, 843:130524F, 844:130524F, 845:130524F, 846:130524F, 847:130524F, 848:130524M, 849:130524F, 856:130525F, 875:130714F, 875:130927FM, 875:140620F, 878:130714F, 878:140621F, 884:130927F, 885:130927F, 888:130928F, 889:130928F, 970:140620F Pseudeuophrys iwatensis (Bohd. & Prós. 1987) イワテハエトリ 975:140622M Rhene albigera (C.L.Koch 1848) ヒメカラスハエトリ 669:130713F, 845:130524F, 849:130524F, 875:130714M, 876:130714M, 880:130715M Rhene atrata (Karsch 1881) カラスハエトリ

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669:130713F, 977:140622F Sibianor kochiensis (Bohd. & Prós. 1987) ナカヒラハエトリ 875:130713F, 875:130716F Sibianor pullus (Bös. & Str. 1906) キレワハエトリ 798:130715M, 854:140620F, 875:130714F, 875:130713F, 875:140620M, 879:130715F, 971:140621F, 973:140621F, 975:140622FM Siler cupreus Simon 1889 アオオビハエトリ 669:130713F, 881:130715F, 976:140622F Sitticus penicillatus (Simon 1875) シラホシコゲチャハエトリ 798:130715F, 813:130715F, 852:130525F Talavera ikedai Logunov & Kronestedt 2003 ヒメスジハエトリ 852:130525M Yaginumaella striatipes (Grube 1861) ウススジハエトリ 795:120927FM, 795:140619FM, 796:120927FM, 850:130525F, 877:130714FM, 884:130927M

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KISHIDAIA, No. 111, Aug. 2017

東京蜘蛛談話会 2016 年度観察採集会報告 町田市芹ケ谷公園のクモ

池 田 博 明

2016 年度の東京蜘蛛談話会の観察採集会は, 2016 年 5 月 15 日, 7 月 10 日, 10 月 16 日, 2017 年 2 月 19 日に東京都町田市芹ケ谷公園で行った.

▲町田市芹ケ谷公園にて 2016 年 5 月 15 日(池田撮影). 参加者(敬称略. 50 音順) 5 月 15 日(日) 荒井葵,荒井俊一朗,荒井千代子,荒井俊光,荒井允裕,池田博明,泉宏子,市川武 明,岩崎絵理子,岩崎巧芽,岩本明美,加藤輝代子,木村聡子,木村知之,木村隼太, 甲野涼,信太理央,鈴木祐弥,谷井ちか子,萩野康則,初芝伸吾,土方秀行,深瀬龍之 介,本間幸治,本間李花,渡邉智大,渡部章( 27 名) 7 月 10 日(日) 安藤昭久,池田博明,岩崎絵理子,岩崎巧芽,遠藤則男,加藤輝代子,近藤秀樹,近 藤滋子,近藤友揮,近藤将生,近藤実里,貞元己良,荘司康治郎,鈴置慎悟,田中明郎, 仲田晶子,初芝伸吾,水山栄子( 18 名)

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▲町田市芹ケ谷公園にて 2016 年 7 月 10 日(池田撮影). 10 月 16 日(日) 安藤昭久,池田博明,市川聡一郎,遠藤則男,木村知之,熊木由記子,近藤滋子,近 藤将生,清水早沙,清水良美,嶋田順一,信太理央,新津海,新津慶子,萩野康則,水 山栄子,渡部章( 17 名)

▲2017 年 2 月 19 日撮影(初芝撮影)

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2 月 19 日(日) 池田博明,一色千枝子,遠藤鴻明,及川照代,加藤輝代子,熊木由記子,近藤秀樹, 近藤友揮,近藤将生,貞元己良,清水早沙,清水良美,萩野康則,箱根ゆみ子,初芝伸 吾,藤井弓子,本間幸治,矢崎英盛,横田千寿子,依田宏( 20 名) 以上敬称略.

目 録 本目録は,現地で観察採集された種の記録と持ち帰った標本を同定した記録を合わ せ集計したものである. なお,今回の目録は,成体が確認できなかった種については確認目録に入れず,参 考資料として別目録として示した.同定結果を送って下さった安藤昭久氏,市川武明氏, 荘司康治郎氏,鈴木祐弥氏,貞元己良氏,初芝伸吾氏,水山栄子氏,ヒメグモ類の一部 を同定して頂いた吉田哉氏,コガネグモ類・アシナガグモ類の一部を同定して頂いた谷 川明男氏に感謝致します. また,本目録は,谷川明男(2017 )日本産クモ類目録 ver.2017R1 (http://www . asahi-net .or .jp/~dp7a-tnkw/japan .pdf 2017 年 4 月 30 日閲覧)に準拠した. 成長段階の凡例は M:成体 ♂,F:成体 ♀,m:亜成体 ♂,f:亜成体 ♀,n:幼体, R:住 居巣, E:卵嚢を示す.

成体を確認した種 127 種 5 月 7 月 10 月 2 月 キシノウエトタテグモ Latouchia typica R クモタケ F Rn クスミダニグモ Gamasomorpha kusumii F MF シャラクダニグモ Opopaea syarakui M ダニグモ Gamasomorpha cataphracta MF アカハネグモ Orchestina sanguinea M F トビジロイソウロウグモ Argyrodes cylindratus n F チリイソウロウグモ Argyrodes kumadai F MmF FEn n オナガグモ Ariamnes cylindrogaster Fn n n n シモフリミジングモ Dipoena punctiisparsa MmF n n ムラクモヒシガタグモ Episinus nubilus Fn Fn n オダカグモ Meotipa argyrodiformis n MFfEn フタオイソウロウグモ Neospintharus fur MnF MFE Mn mn ニホンヒメグモ Nihonhimea japonica MFn FEn キヒメグモ Parasteatoda asiatica F カグヤヒメグモ Parasteatoda culicivora MF MF Mm Fn

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オオヒメグモ Parasteatoda tepidariorum MFn FE MF F ハラダカツクネグモ Phoroncidia altiventris MF n ツクネグモ Phoroncidia pilula Fn n MF アマミミジングモ Phycosoma amamiensis Mm キベリミジングモ Phycosoma flavomarginatum MFn F サトヒメグモ Platniciana mneon MfFE ムナボシヒメグモ Platnickina sterninotata MFnE MFnE mFn ヒゲナガヤリグモ Rhomphaea labiata F ヤリグモ Rhomphaea sagana n F n ノジマモリヒメグモ Robertus nojimai F シロホシヒメグモ Steatoda grossa F マダラヒメグモ Steatoda triangulosa M スネグロオチバヒメグモ Stemmops nipponicus MFn MFn Mm バラギヒメグモ Takayus chikunii M サダモトヒメグモ Tekellina sadamotoi F n ボカシミジングモ Yaginumena castrata M MmFn コアカクロミジングモ Yaginumena mutilata F F n マダラミジングモ Yaginumena maculosa F ヨロイヒメグモ Comaroma maculosa F タマヤミサラグモ Arcuphantes tamaensis F ザラアカムネグモ Asperthorax communis MF カマクラヌカグモ Baryphymula kamakuraensis M クロテナガグモ Bathyphantes robustus F ハラジロムナキグモ Diplocephaloides saganus F コデーニッツサラグモ Doenitzius pruvus F F MF MF マルムネヒザグモ Erigone edentata MF F ノコギリヒザグモ Erigone prominens MF MF MF ノコバヤセサラグモ Lepthyphantes serratus MF タテヤマテナガグモ Microbathyphantes tateyamaensis MF F F MF チビアカサラグモ Nematogmus sanguinolentus F F F mn ヘリジロサラグモ Neriene oidedicata F MF n カントウケシグモ Nippononeta kantonis MF イマダテテングヌカグモ Oia imadatei F F MFn MF テングヌカグモ Paikiniana mira F オオイオリヒメサラグモ Syedra oii F ヤマトトウジヌカグモ Tojinium japonicum F

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アトグロアカムネグモ Ummeliata feminea F MF F フタエツノヌカグモ Walckenaeria keikoae F F MF オオシロカネグモ Leucauge celebesiana Fn MF Fn n コシロカネグモ Leucauge subblanda MFn MF n キララシロカネグモ Leucauge subgemmea mn MF n メガネドヨウグモ Metleucauge yunohamensis F f mn ヤサガタアシナガグモ Tetragnatha maxillosa nF MF MF M アシナガグモ Tetragnatha praedonia n F MmF ウロコアシナガグモ Tetragnatha squamata MnFE n n ジョロウグモ Nephila clavata n n MF E ビジョオニグモ Araneus mitificus Ff マメオニグモ Araneus nojimai M カラオニグモ Araneus tsurusakii MF n ナガコガネグモ Argiope bruennichi n F コガタコガネグモ Argiope minuta n n F ヤマトカナエグモ Chorizopes nipponicus Mn ギンメッキゴミグモ Cyclosa argenteoalba MFn Mmn Fn n ゴミグモ Cyclosa octotuberculata F ヨツデゴミグモ Cyclosa sedeculata F FnE mn シロスジショウジョウグモ Hypsosinga sanguinea MF n n mn n サガオニグモ Plebs astridae F カラフトオニグモ Plebs sachalinensis F n ヒラタグモ Uroctea compactilis R n Fmn マネキグモ Miagrannopes orientalis F n カタハリウズグモ Octonoba sybotides MmfF MFE n n ハラクロコモリグモ Lycosa coelestis F ウヅキコモリグモ Pardosa astrigera MF n ナミコモリグモ Pirata yaginumai M クラークコモリグモ Piratula clercki MFE n イオウイロハシリグモ Dolomedes sulfureus Fn MmFn n n ササグモ Oxyopes sertatus n MF n センショウグモ Ero japonica n M クサグモ Agelena silvatica n mn En コクサグモ Allagelena opulenta n n MF アズマヤチグモ Coelotes kitazawai MF MF シモフリヤチグモ Iwogumoa insidiosa F M F ヤマヤチグモ Tegecoelotes corasides F

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コタナグモ Cicurina japonica MF Fn MF MF イタチグモ Prochora praticola fm Mn n n イヅツグモ Anyphaena pugil F オトヒメグモ Orthobula crucifera MF MF M MF コムラウラシマグモ Otacilia komurai F n MF MF ウラシマグモ Phrurolithus nipponicus MFf F f ヤバネウラシマグモ Phrurolithus pennatus MF マダラフクログモ Clubiona deletrix F F ネコグモ Trachelas japonicas MF F n fn チャクロワシグモ Cladothela oculinotata MF トラフワシグモ Drassodes serratidens F ヒゲナガツヤグモ Micaria dives MFn fn クロチャケムリグモ Zelotes asiaticus MF キハダエビグモ Philodromus spinitarsis Mmf n mn アサヒエビグモ Philodromus subaureolus Fn F n n シャコグモ Tibellus japonicus mn Fn n キハダカニグモ Bassaniana decorata MF mn コカニグモ Coriarachne fulvipes Fn コハナグモ Diaea subdola MmF MF n ワカバグモ Oxytate striatipes MF Fn n fn マツモトオチバカニグモ Ozyptila matsumotoi Mn Fn Fn ニッポンオチバカニグモ Ozyptila nipponica Fn MFn アズチグモ Thomisus labefactus Mn MFn n ヤミイロカニグモ Xysticus croceus MFf F マミジロハエトリ Evarcha albaria M F ウデブトハエトリ Harmochirus insulanus Mn コジャバラハエトリ Helicius cylindratus M エキスハエトリ Laufeia aenea m F n F ヨダンハエトリ Marpissa pulla Mm M m ヤサアリグモ Myrmarachne inermichelis M FEn アリグモ Myrmarachne japonica MFn F n n クモマハエトリ Nandicius kimjoopili MF チャイロアサヒハエトリ Phintella abnormis Fn Fn n n メガネアサヒハエトリ Phintella linea F メスジロハエトリ Phintella versicolor Mn M デーニッツハエトリ Plexippoides doenitzi Fn Fn MmFf カラスハエトリ Rhene atrata f MF n

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ヒトリコゲチャハエトリ Sitticus avocator Mm シラホシコゲチャハエトリ Sitticus penicillatus M

成体が確認できなかった種 31 種 5 月 7 月 10 月 2 月 ジグモ Atypus karschi R n カネコトタテグモ Antrodiaetus roretzi R シロカネイソウロウグモ Argyrodes bonadea n n ツリガネヒメグモ Parasteatoda angulithorax n カニミジングモ Phycosoma mustelinum m クロマルイソウロウグモ Spherospistha melanosoma n オオクマヒメドヨウグモ Diphya okumae n エゾアシナガグモ Tetragnatha ezoenssis n ハツリグモ Acusilas coccineus n n アオオニグモ Araneus pentagrammicus n トガリオニグモ Eriovixia pseudocentrodes n キジロゴミグモ Cyclosa laticauda n ヤマゴミグモ Cyclosa monticola m ヤマトゴミグモ Cyclosa japonica n ワキグロサツマノミダマシ Neoscona mellotteei n n ヤマシロオニグモ Neoscona scylla n サツマノミダマシ Neoscona scylloides n m ムツトゲイセキグモ Ordgarius sexspinosus n オウギグモ Hyptiotes affinis n アオグロハシリグモ Dolomedes raptor n シボグモ Anahita fauna mn ネコハグモ Dictyna felis n n ヤマトフクログモ Clubiona japonica f n ムナアカフクログモ Clubiona vigil n ヤギヌマフクログモ Clubiona yaginumai f n キンイロエビグモ Philodromus auricomus n クマダハナグモ Ebelingia kumadai n n n ハナグモ Eberchtella tricuspidata n セマルトラフカニグモ Tmarus rimosus m n n タカノハエトリ Heliophanus lineiventris f ヒメカラスハエトリ Rhene albigera n

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2016 年 5 月 15 日の生態記録 西入口の樹幹から初芝伸吾氏がムツトゲイセキグモ幼体(体長 1.9mm ,体重 2mg ) を採集した. 大池付近のアオキ葉裏から泉宏子氏がツクネグモ♂を発見した.池田はムツトゲ幼 体と誤認した. 西入口の壁面に巣を作っていたと言うヤチグモ(体長 12 .3mm ,体重 137mg )は メガネヤチグモではなく,シモフリヤチグモ成体 ♀であった. トンネル内に造網していた腹部全体が黒褐色のヒメグモ(岩崎巧芽君採集)はカグ ヤヒメグモ♀だった.全体に黒いカグヤヒメグモは初めて見た. ジョロウグモのまどいが1例,葉上にあった. コシロカネグモ♀♂成体のほか,オオシロカネグモ♀成体も見られた.シロカネグ モの成熟期はチュウガタシロカネグモが 4 月と 9 月,コシロカネグモが 5 月,オオシ ロカネグモが 6 月とみなしていたが,オオシロカネグモに 5 月この時期に成体がいる のは意外だった. コモリグモ類が個体数も種数も少なかった.以後の時期も同様であった. マダラミジングモは東京都初記録(市川武明氏採集,吉田哉氏同定). 当日の記録種数は 88 種.最終的な記録種数は 95 種+幼体での記録種 11 種.

2016 年 7 月 10 日の生態記録 カタハリウズグモが交尾中だった(荘司氏による観察). フタオイソウロウグモ♀がヒメグモを,ムナボシヒメグモ♀がコクサグモ幼体を, チリイソウロウグモ♀がカタハリウズグモの卵のうを捕殺していた.ボカシミジングモ がアリを捕獲していた. 市民の森ではクモタケが 1 本見られた.市民の森にはヤブ蚊が多かった.キララシ ロカネグモは市民の森のみで見られた. 当日の記録種数は 71 種.最終的な記録種数は 82 種+幼体での記録種 12 種.

2016 年 10 月 16 日の生態記録 ヤサガタアシナガグモが交尾していた(このオス成体は腹側が黒くなかったので, 谷川氏に同定していただいた).シロスジショウジョウグモの垂直円網でタテ糸 17 本, ヨコ糸 11 ~13 本を観察した( 1 例).開こしきに見えるほど中央が空いていた. 当日の記録種数は 54 種.最終的な記録種数は 58 種+幼体での記録種 6 種.

2017 年 2 月 19 日の生態記録 ヒラタグモの住居巣内の卵のうから子グモが出のうしていた.出のう幼体が見られ る時期として意外である(加藤輝代子氏より).

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ジョロウグモの卵のうが樹幹上ではなく,市民の森域の照葉上に産卵されている例 が 3 例観察された. チャイロアサヒハエトリの越冬住居巣内にチャイロの幼体が 5~6 頭同居していた. これらは出のう幼体と思われた.この住居巣にはメスジロハエトリのオス成体も越冬し ていた(遠藤・矢崎氏より). アリグモ雄幼体が葉裏の越冬巣内で越冬していた. 落ち葉を集めている場所にトビムシが多く生息し,そこでコサラグモ類を 5~6 種確 認できた(初芝伸吾氏より).コサラグモ類は冬季に成熟する種が多く,当日には正確 に同定できない種が多いため当日の記録種数と最終的な種数の間の差が大きい. 記載直後の種サダモトヒメグモ Tekellina sadamotoi 幼体は貞元己良氏の採集・同 定による. 5 月に初芝氏もメス成体を採集していた.斑紋や色彩に特徴のあるクモであ る. 当日の記録種数は 34 種.最終的な記録種数は 63 種+幼体での記録種 14 種.

考 察 芹が谷公園の面積は約 10ha である. Miyashita et al . (1998) では面積約 11ha の 分断林の二か所が調査されている( Yokohama 3 および Tokyo 3 ). 5 月から 9 月下 旬の地表から 2m 以内の造網性クモ類の記録種数は Yokohama 3 では 29 種(コガネ グモ科 10 種,アシナガグモ科 2 種,ジョロウグモ科 1 種,ヒメグモ科 9 種), Tokyo 3 では 25 種(コガネグモ科 9 種,アシナガグモ科 3 種,ジョロウグモ科 1 種,ヒメグ モ科 7 種)だった.これに比べて,芹が谷公園の 5 月から 10 月の比較しうる科のクモ の記録種数は幼体のみが記録された種も含めて 64 種(コガネグモ科 22 種,アシナガ グモ科 9 種,ジョロウグモ科 1 種,ヒメグモ科 32 種だった.原町田市民の森だけで記 録された種のキララシロカネグモを除く) 芹が谷公園の種数は他の分断林より多かった.ただし,各種の個体数はそれほど多 いという印象はなかった.環境の多様性がクモ種数の多様性に影響を与えているのかも しれない.採集者の密度の高さの影響も可能性がある.

参考文献 Miyashita , T., A. Shinkai and T . Chida , 1998 . The effects of forest fragmentation on web spider communities in urban areas . Biological Conservation , 86: 357-364 .

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KISHIDAIA 投稿規定

1)投稿資格は本会会員とする.ただし共著者には,会員以外の者を含むことができる.依頼原稿 については,本会会員でなくとも,運営委員会の承認があればよい. 2)投稿内容は,クモや東京蜘蛛談話会に関しての論文,解説,記録,紀行文,感想などとする. 3)原稿の採否については,運営委員会にて決定する.また,原稿に対して加筆・削除・訂正など をお願いすることがある. 4)頁数は図表を含めて,刷り上がり 8 頁以内とし,超過頁分は著者負担となる.ただし超過頁分 の代金を徴収しない場合があり,別項に記す.超過頁代は 1 頁につき 2500 円とするが,印刷 費の変更等により,金額が変ることがある. 5)特別な費用を要する印刷は,その実費を著者負担とする. 6)別刷りは 50 部単位で作成するが,その費用は全額著者負担とする. 7)論文の著者校正は 1 回だけとする.DRAGLINES など短文の場合は著者校正を省略する場合があ る. ・超過頁分を徴収しない場合 補 1)談話会活動報告(観察会報告・合宿報告など)は超過頁代を取らない. 補 2)各県別目録を積極的に掲載する方針が 1997 年 4 月の総会で確認され,主旨に沿う原稿に関 しては超過頁代を取らずに掲載する. 補 3)その他運営委員会で認めたもの. ・原稿作成上の注意 1)原稿は, 1 行目にタイトル, 2 行目に著者名を入れ, 3 行目から本文を書いて下さい. 2)プリントアウトしたものではなく,電子ファイルそのものを,なるべくメール添付で ご送信ください.容量が大きくて送信できない場合には yahoobox の ID kishidaia に PW spider でログインしてアップロードし,その旨を谷川までご連絡いただいてもけっこうで す.また,データ便などの転送サービスを利用されたり,CD などのメディアに入れたもの を郵送していただいても結構です. 4)ファイル形式は,マイクロソフトワードの DOC ,DOCX 形式かテキスト形式にして ください.短いものはメール本文でも結構です.なお,原稿ファイルでは,スペースを打ち 込んでの中央ぞろえや字下げなどはしないでください.段落メニューの中央揃えなどを利 用するか,すべて左寄せにしておいてください.採集リストはエクセル表でいただくのが最 も好都合です. 4)図,写真などはなるべくスキャナーなどで取り込み, JPEG などの汎用形式の画像フ ァイルでお送り下さい.スキャナーなどを所持されていない場合には原図そのものをお送 りくださればこちらでスキャンします.また,画像解像度は刷り上りのサイズで 300dpi 以 上でないときれいに印刷できません.スキャナーで読み込む場合は読み込み精度を 400dpi 以上(可能ならば 720dpi )に設定してください.デジタルカメラで撮影した写真は解像度 などを変更せずにもとのままの解像度でお送りください.

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東京蜘蛛談話会 運営委員 池田 博明・小野 展嗣・加藤輝代子・木村 知之・甲野 涼・新海 明・須黒 達巳 谷川 明男・仲條 竜太・萩本 房枝・初芝 伸吾・安田 明雄 会 長:新海 栄一 〒185-0011 東京都国分寺市本多 1-6-6 本 部:小野 展嗣 〒305-0005 茨城県つくば市天久保 4-1-1 国立科学博物館動物研究部 会誌編集:谷川明男 〒247-0007 横浜市栄区小菅ヶ谷 1-4-2-1416 E-mail: [email protected] (原稿送付先)谷川明男(上記)まで ファイルサイズが大きな場合には, yahoobox の ID kishidaia に PW spider でログイ ンしてアップロードし,その旨を谷川までご連絡いただいてもけっこうです. 通信編集:谷川 明男 〒247-0007 神奈川県横浜市栄区小菅ヶ谷 1-4-2-1416 E-mail: [email protected] 事 務 局:初芝 伸吾 〒186-0002 東京都国立市東 3-10-8 コンフィデンス高垣 105 (有)エコシス E-mail: [email protected] 会 計:須黒 達巳 〒240-0026 横浜市保土ヶ谷区権太坂 1-39-6 E-mail: [email protected] 郵便振替: 00170-8-74885 東京蜘蛛談話会(年会費:一般 2000 円/学生 1000 円) 会計監査:梅林 力・加藤輝代子 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ KISHIDAIA No.111 2017 年 8 月 30 日 印刷 編集者 谷川 明男 2017 年 8 月 30 日 発行 発行者 新海 栄一 発行所 東京蜘蛛談話会 茨城県つくば市天久保 4−1−1 国立科学博物館動物研究部 小野 展嗣 方 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 印刷 株式会社オーエム 大阪市東成区中道 4-5-14-101

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