(茶 研 報83:21~28,1996) 報 文

市販 緑 茶 の個 別 カ テ キ ン類 とカ フ ェイ ンの 分 析

農林水産 省食 品総 合研 究所* 後 藤 哲 久 ・長 嶋 等 東京都農業試験場** 吉 田 優 子 ・木 曽 雅 昭 (平成8年3月1日 受理)

Contents of Individual and in Japanese

Tetsuhisa GOTO, Hitoshi NAGASHIMA National Food Research Institute Yuko YOSHIDA, Masaaki KISo Tokyo Metropolitan Agricultural Experiment Station

Eighty-five samples of commercially available Japanese green were assayed for caffeine and the following eight catechins; epicatechin (EC), epigallocatechin (EGC), epicatechin gallate (ECg), epigallocate- chin gallate (EGCg), (C), gallocatechin (GC), catechin gallate (Cg), and gallocatechin gallate (GCg). The tea samples were derived from the following types of tea ; , , , , Hojicha, Kamairisei tamaryokucha, and Mushisei tamaryokucha. The total catechin content ranged from 9 to 18 except Hojicha and the caffeine content ranged from 2 to 4 % of dry tea leaf. Four major catechins, EC, EGC, ECg, and EGCg, and caffeine were found in nearly all of tea, although some of the Hojicha samples did not have quantititative levels of EC. In addition, four catechins, C, GC, Cg and GCg, were detected in some samples. Gyokuro and Matcha, both of which are produced from leaves grown under a sunshade, contained more caffeine and less catechins compared to the other types of teas. In general, the higher grade teas contained more caffeine and the lower grade teas contained more catechins. More than half of total catechins contented in the teas was EGCg. The combined contents of EGC and EGCg comprised approximately 80 % of total catechin content regardless of the tea type. The level of the free type catechins, EC and EGC, was less than half of the contents of ester type catechins, ECg and EGCg, in Sencha and the tamaryokuchas and less than one-third of ester type catechins in Gyokuro and Matcha. The level of catechins was much lower in Hojicha tea than in the other six types and the catechins composition was also different ; probably due in part to the roasting of the tea during processing.

カテキ ン類,カ フェイ ンといった茶成分 の生 1緒 言 理活性 に関 しての研究 も進 み,茶 葉 中に含 ま 近年,人 の食生 活 と健康 の関 わ りに対す る れ るカテ キ ン類 に古 くか ら生活 の種 々の場面 関心 が高 ま り,日 本 の伝 統的飲料 であ る茶 が で用 い られ知 られ ていた消臭効果 の他,抗 酸 健康飲料 として見直 されてい る。 その中 で, 化作 用,抗 変 異原性,抗 腫 瘍性,抗 菌 作 *〒305茨 城 県 つ く ば 市 観 音 台2-1-2

**〒190東 京 都 立 川 市 富 士 見 町3-8-1

21 市 販 緑 茶 の個 別 カ テキ ン類 とカ フ ェイ ンの分 析

用,抗 高血圧 作用 等数 多 くの生理 活性 が (GC),カ テ キ ン ガ レ ー ト(Cg),ガ ロ カ テ キ あ る こ とが知 られ る よ うに な った。 また カ ン ガ レ ー ト(GCg)の4種 の カ テ キ ン 類(以 フェイ ンは,茶 葉,コ ー ヒー豆等 の一 部植物 下,微 量 カ テ キ ン 類)と,カ フ ェ イ ン の 含 有 体 に含 まれ る植物性 アル カロイ ドで,興 奮作 量 を 明 ら か に し た の で,そ の 茶 種,ク ラ ス に 用や 利 尿 作 用 等 の 生 理 活 性 が知 られ て い よ る 差 異 を 含 め て 報 告 す る 。 る。 2試 薬 と試験方法 緑茶 にお いてはタ ンニ ン とも呼 ばれ るカテ キ ン類 はい くつ かのポ リフェノール化合物 の 2.1試 料 と試料調製 総称 で,エ ピカテキ ン(EG),エ ピガ ロカテキ 試 料 は1993年 末 に 収 集 した 市 販 緑 茶 試 ン(EGC),エ ピカテ キンガ レー ト(ECg), 料 を用 いた。 分析 に当た り試料 は末松 等の エ ピガロカテ キンガ レー ト(EGCg)の4種 が 方法 に修正 を加 えた方法 で調製 した。粉砕 主 に含 まれ,そ の含有量 は,茶種,品 質等 に した 試 料 約500mgを100ml容 の メ ス フ ラ よ り差 が あ るが,合 計 量 で茶 葉乾 燥重 量 の ス コに計 りと り,ア セ トニ トリル と水 の等量 10~15%程 度 が 一般 的 であ る 。 この個別 の 混 合液約80m1を 加 え,室 温 下で緩 やか に振 カテキ ンの含有量 は,茶 葉 の成 長 に伴 い その とう抽 出 した。40分 間振 とう後,同 じ液 で100 組成 が変化す る こと9鋤,さ らに,半 醗 酵茶, mlに 定容 し,良 く混合 した。しば ら く静置 し 醗酵茶 にお いて も緑茶 とはその含有量,組 成 た 後,上 清2mlを フ ィ ル タ ー(DIS- は異 な るもの の これ ら4種 のカテ キンがその MIC13HP,ア ドバ ンテ ック東洋,東 京)で 濾 酸化 ・重 合生成物 とともにかな りの量含 ま 過 した もの を抽 出液 とした。 抽出液 は,分 析 れ る こ とも報告 され てい る。しか し,こ れ ら まで4℃ で保管 し,高 速液体 クロマ トグ ラフ カテキ ン類 の分析 に関 して は,抽 出過程 にお による分析 の直前 に水で5倍 に希釈 した。 ける異性化 あ るいは回収率 といった と ころに カテキ ン標品(EC,EGC,ECg,EGCg, 問題が あ り,さ らに分離 ・定量法 として用 い C,GC,Cg,GCg)は 三井 農林(株)食 品総 られ るペーパ ー クロ マ トか らの切 り取 り法 合研 究所 よ り分与 を受 けた もの を,カ フ ェイ や,液 体 ク ロマ トグ ラフィー も,そ の操作 ンは市販特 級品 を各 々,水 -アセ トニ トリル や,分 析所要 時間等 に煩雑性,長 い所 要時間 (9:1,v/v)に 溶解,混 合,希 釈 して用 い 等,問 題 が あ り 多 くの試 料 を分 析 した た。 その他 の試 薬 は,移 動相 溶媒 として用 い 例 は見 られ ず,機 能性等 の研 究が進 む中で, たHPLC用 アセ トニ トリル以外 はす べて市 緑茶 のカ テキ ン類 の含有量 ・組 成 は必 ず し も 販特 級品 をその まま用 いた。 明 らか とはなっていな かった。 また,カ フェ イ ンの定 量 について は,他 の成 分 による ピー 2.2高 速 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ

ク との分 離が必 ず しも満足 で きるもの ではな 試 料 の 分 析 に は 先 に 開 発 し た 逆 相 か った 。 HPLCを 用 い た 。 今回,著 者 は新 しく開発 した効率 的でか つ ポ ン プ:LC-6A,2液 高 圧 グ ラ ジ エ ン トシ 高 精 度 な 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フィー ス テ ム(島 津 製 作 所,京 都) (HPLC)に よる緑 茶 中の カテキ ン類 お よび 検 出 器:SPD-M10Aフ ォ ト ダ イ オ ー ド カ フェイ ンの同時分析法 を用 い,主 要 化学 ア レ ー 検 出 器(島 津 製 作 所) 成 分含有 量 等 のわ か って い る85点 の市販 緑 測 定 波 長:200~300nm 茶 を試料 とし,緑 茶 の機能性 を知 る上 で必 カ ラ ム オ ー ブ ン:SSC3500(40℃)(セ ン 要 な主要 カテキ ン類4種(EC,EGC,ECg, シ ュ ー 科 学,東 京) EGCg)(以 下,主 要 カテキ ン類)に 加 え,緑 イ ン ジ ェ ク タ ー:レ オ ダ イ ン7125(Rhe- 茶 中 に少量 含 まれ る主 要 カ テ キ ン類 の エ ピ odyne,米 国)20μ1ル ー マ ーで あ る,カ テ キ ン(C),ガ ロ カ テ キ ン プ 付 き

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カ ラ ム:Develosil ODS-HG(4.6mm× ピー クは見 られ なか った。 また,各 々 のカ テ 150mm,野 村 化 学,瀬 戸,愛 知), キ ン類 お よび カ フェイ ン に相 当 す る ピー ク ガ ー ド カ ラ ム(4×10mm,野 村 を,ス ペ ク トル による純 度検定 にか けた がい 化 学)付 き ず れ も問題 はなか った。 ほ うじ茶(図1G) 移 動 相 溶 媒:A液 水 一 ア セ トニ ト リル ー ではカ テキ ン類 の含有量 が少 ないため感度 を 85%リ ン 酸(95.45+4.5+ 上 げて分析 してい る こと と,加 熱 に よる と見 0.05,v/v/v) られ る着色 した物質 が抽 出液 に多 く含 まれ る B液 水 - ア セ トニ ト リル - ことに よ り,EGCg後 においてべ一 スラ イ ン 85%リ ン 酸(49.95+50.0+ が やや上昇 す る傾向 が認 め られたが,ECg, 0.05,v/v/v) Cgの 定量 に妨 害 とな るほ どではなか った。ま 試 料 注 入 量:イ ン ジ ェ ク タ ー の ル ー プ を 用 た,い ずれの試料 を繰 り返 し分析 して もゴー い て20μ1注 入 ス トピー ク等 の障害 は生 じなか った。 定 量 方 法:カ テ キ ン 類 は231nm,カ フ ェ イ ン は274nmの 吸 収 を 用 い,1 3.2緑 茶 の主要 カテキ ン類及 びカフ ェイ 点 検 量 線 法 に よ っ た 。 ンの含有量 試 料 の 定 性:標 準 試 料 と の 絶 対 保 持 時 間 の 今 回分析 した85点 の茶 試料 に含 まれ る,主 比 較 に よ っ た 。 ま た 必 要 に 応 要 カテキ ン類4種,カ フェイ ン,及 び8種 の じ200-300nmの ス ペ ク ト ル カテ キン類(EC,EGC,ECg,EGCg,GC, を 物 質 及 び 純 度 の 確 認 に 用 い C,GCg,Cg)の 合計値 としての総 カ テキ ン量 た 。 の,茶 種,ク ラス別 平均含有量 を表1に 示 し た。 3結 果 総 カテキ ン量 は同 じ茶種 の中で は上級 の も 3.1各 種 緑 茶 の ク ロ マ トグ ラ ム の よ り下級 の ものが 多 く,お おい下茶(玉 露

分 析 し た 各 種 茶 の ク ロ マ トグ ラ ム を 図1に 及び抹茶)の 含有量 はほう じ茶 を除 く他 の茶 示 し た 。 す べ て の 茶 種 に お い て 分 析 の 対 象 と よ り少 なか った。主要 カ テキン類 の中 を個別 し た9種 の 化 合 物 の 定 量 に 妨 害 と な る よ う な に見 る と,い ずれの茶種,ク ラスにおい て も

図1各 種 茶 の 抽 出 液 の 高 速 液 体 ク ロ マ トグ ラム A:カ テ キ ン類 お よ び カ フ ェ イ ン標 品 混 合 物,B:上 級 玉 露,C:下 級 玉 露,D:上 級 煎 茶, E:下 級 煎 茶,F:番 茶,G:ほ う じ茶,H:釜 い り製 玉 緑 茶

23 市販 緑 茶 の 個 別 カ テ キ ン類 とカ フ ェ イ ンの分 析

表1市 販緑茶 の主要 カテキン含有量:

*主 要 カ テ キ ン4種(EC ,EGC,ECg,EGCg)にC,GC,Cg,GCgの4種 を加 え た8種 の 合 計 量 .**か ぶ せ 茶 と表 記 され た2点 を含 む

***中 ク ラ ス の2点 を含 む ****試 料6点 中1点 の みか ら検 出 され 、 他 の5点 か ら は 定 量 可 能 な量 は検 出 され な か っ た

EGCgの 含有 量が最 も多 く,お おい下茶 で は 上 級玉露 の内の1点 で4.3%,少 な い方 は,ほ 総 カテキ ン量 の60%前 後,そ の他 の茶種 では うじ茶 に1.5%前 後の ものが2点 あ り,ま た, ほ う じ茶 を除 い て50%程 度以 上 の含 有量 で ほ うじ茶 の ように加熱 を受 けていない もので あった。次 いでEGCの 含有量 が多 く,ピ ロガ は,番 茶 に1.5%台,1.6%台 の ものがそれ ぞ ロール を持 つカテ キン類(EGC,EGCg)の 含 れ1点 あった。煎茶,玉 緑 茶で は,上 級 の釜 有量 の合計 は総 カテキ ン量 の約80%で あった。 い り製玉緑茶,蒸 し製玉緑茶 に3.5%を 越 え る カ フェイ ンの含 有量 は茶種,ク ラス によ り ものが各々1点 あったが他 はお おむね3%台 差 が見 られ た。おお い下 茶は煎茶,玉 緑茶 よ 前 半で,下 級 の煎茶 には2%台 前半 の もの も り含 有量 が多 く茶葉乾 燥重量 の3.5~4%含 見 られ た。 有 し,煎 茶,玉 緑茶 の それ は3~3.5%程 度 で あった。 また,番 茶,ほ うじ茶で は さらに少 3.3微 量 カテ キン類 の含有量 な く2%前 後 であ った。今 回分析 した試 料85 緑 茶 中に比較 的少量含 まれ る4種 の微 量 カ 点 中で最 もカ フェイン含有量 が多 か った のは テキ ン類(GC,C,GCg,Cg)に ついて,分

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表2市 販緑茶中の微量カテキン類 の含有量

*試 料 中 で 該 当 の 微 量:カテ キ ン類 が定 量 され た 試 料 の 数 **含 有 量 が 測 定 さ れ た 試 料 で の 平 均 含 有 量(%) ***定 量 さ れ た 試 料 が な い た め含 有 量 が 測 定 さ れ な か っ た .***か ぶ せ 茶 と表 記 さ れ た 試 料2点 を 含 む

析 した試料中定量 可能 な量 が検 出 された試料 EGCとEGCgの 合計 量 の平均 値が す べて の の点数 と,そ の検 出 された量 の平均値 を,各 茶種,ク ラス を とお して総 カテキ ン量の80% 茶種,ク ラス別 に表2に 示 した。表1に 示 し 程度 で ほぼ一定 であ った。吉 田等 は,茶 芽 の た主要カ テキ ン類 が ほ うじ茶 のECを 除 き全 生育 に伴 い個 々のカテ キン類 の含 有量が変 化 部 の試料 に共通 に含 まれて いたのに対 して, する中で,ECとEGC,ECgとEGCgの 変化 微量 カテ キン類 で は今 回分 析 した全 茶種,ク の仕 方が よ く似 てい るこ とを報告 して お り, ラス の試料 か ら共 通 に検 出 され た もの は な EGCとEGCgの 合計 量が 総 カテ キ ン量 に 占 かった。 また,そ の含有量 において も,ほ う める割合 が一定 してい る とい う今 回の結果 と じ茶 のGCg(表2,図1G)を 除いてすべ て 符合 し,緑 茶 カテキ ンの一 つの特 徴 と見 られ 1%以 下で あった。その 内で は,お お い下 茶, る。 また,遊 離型 カ テキン(EC,EGC)の 含 特 に玉 露 に0.3%台 の比 較 的高濃 度 のCが 含 有量 はエ ステル型 カテ キン(ECg,EGCg)の まれていた(表2,図1B,C)。 半分以下 の ものが多 く,特 におお い下 茶で は, 遊離型 カ テキンの量 はエ ステル型 カテキ ンの 4考 察 1/3以 下 であった。 また,エ ス テル型 カテ 4.1カ テキ ン類 の組成 の茶種 ・ク ラス に キ ンは,茶 の渋 味 と強 く相関 す る ことが示 さ よる差異 れ てい るが,玉 露 ・抹茶で はその含有量が 少 主要 カ テ キ ンで は,ピ ロ ガ ロール を持 つ な く,茶 の旨味成分 とされ るア ミノ酸類 が

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多 く含 まれ,こ れが ア ミノ酸 の 旨味 が強 く渋 GCも6点 全部 か ら検 出 された。 しか しなが 味の少 ない独 特 の味 を形成 してい る もの と考 ら,総 カテキ ン量 は2.3~5.4%で 他 の茶 種の えられ る。 1/3以 下で,こ れが ほう じ茶 に渋味,苦 味 微 量 カテキ ン類 は,主 要カテ キン類 よ りも, が少 ない 理 由 と考 えられ る。 茶種,ク ラス に よる違 いが 大 きか った。GC は,前 田,中 川 の報告 で はほ うじ茶の みか ら 4.3総 カテ キン及 びカ フェイ ンの含有量 検 出 され ていたが,今 回の分 析 では微 量 なが 今 回 の分析 で は,各 茶種 か ら2~4%の カ ら煎茶,玉 緑茶 の多 くに含 まれ ていた。 しか フェイ ンが検 出 された。 カ フェイ ンの量 は こ し,お お い下茶 で は下級抹茶 の内 の1点 か ら れ まで報告 されてい る とお り,上 級 の もの 検 出 されたの みであ った。CgとGCgは これ に多 く下級 の ものに少 なかった。また,玉 露, も微量 なが ら多 くの煎茶か ら検 出 され,特 に 抹茶 は煎茶,玉 緑茶 と比較 して0.5~1%程 上 級 の もの に含有量 が多 い傾 向が見 られた, 度多 くのカ フェイン を含 んでいた。 カフ ェイ しか し,玉 緑 茶で は検 出 され た試 料数 も少 な ンは窒素化 合物 で,緑 茶の品質 の指標 とされ く,ま た その量 も微量 であ り,あ ま り含 まれ る全 窒素含有量 で は,こ れ も品質 と深 い関わ ていなか った。 この理 由 としては,玉 緑茶 の りが ある窒素化 合物 のア ミノ酸 と同 じ く窒 生産 が九州 の一部 地域 に偏 ってい るこ とに よ 素含 有量 の一部 として測定 され,こ れが おお る,品 種 や栽培 条件 の差 がそ の原 因の一つ と い下 茶,上 級茶 で全窒素含有 量 が多 い こ と なってい る ことが考 え られ るが,こ の こ とに の一 つの理 由 と考 えられ る。 関 しては,品 種,栽 培条件 等 を特定 した検 討 ほ うじ茶 の総 カテ キン量(約3.9%)が 前報 が今後 さらに必要 で ある。 また,お おい下 茶 のタ ンニ ン量(約8.8%)と 比 較 して大 幅に はCを かな り含 むがそ の他 のGC,GCg,CG 低か った。 これ は,茶 葉 に含 まれて いたカテ をほ とん ど含 んで いなか った。 カテ キ ン類 の キ ン類 が加 熱 を受 け るこ とに よ り,今 回測定 含 有量 は光 に よる影響 を強 く受 け るこ とが知 した8種 の カテ キ ン類 以 外 の もの に も変化 られてお り21),さ らに吉田等 は茶 葉 中のCの し,そ の結果,8種 のカテ キン類 の合計 とし 含 有量 は,茶 葉の生育 に伴 い急激 に減少 す る ての総 カテキ ンの値 が低 くなったの に対 し, ことを報告is)して い る。この よ うに,茶 葉 中の 比色 によるタ ンニ ン量 の測 定 では変化 した も 微 量カ テキ ン類 は栽培 条件,摘 採 時期等の影 のの一部 も発色 したた め と考 え られ る。 響 を主要 カテキ ン類 よ りも鋭敏 に表 して いる 今 回の測定値 を前報 の値 と比 較す る と, と見 られ る面 もあ るが,そ の詳細 は さらな る ほ う じ茶 を除 い て,カ フ ェイ ン の 量 が 約 検討 を待た な くて はな らない。 20%,総 カテキ ン量 と比色法 によるタ ンニ ン の値 との比 較 で総 カ テ キ ン量 が10~15%高 4.2ほ う じ茶 のカ テキ ン類 い結 果 とな った。 この原因 として は,前 報 で ほ うじ茶 は今 回分析 した7種 の茶 の中で, は熱 水 に よる抽出法 を用いた の対 し,今 回は そ の製造工 程の 中に他 の6種 と違 う加熱工程 試料 の異性化 等が少 な く回収率が 高い ことが で ある焙煎 工程 を持 ってい る。 カテ キン類 は 報告 され て い る50%ア セ トニ トリル に よる 加 熱 によ り変化す る こ とが知 られ てお り22), 抽出 法 を用 いた ことと,総 カテキ ン とタン 今 回の分析結果 も他 の茶種 と大 き く異な って ニ ンで は測定 の原 理が異 な るこ とが その理 由 いた。 まず,ECは 以前 の報 告 では玉 露 と同 として考 え られ るが,そ の詳細 はさ らに検 討 程度 の含有量 とされ ていたが,今 回の試 料で の必要 があ る。 は1点 か ら検 出された だけでほ とん ど含 まれ 5摘 て いなか った。 また,他 の茶種 の試料 で はあ 要 ま り検 出 され なか ったGCgが 分析 した6点 市 販録 茶試 料7茶 種85点 の8種 の カ テキ す べ てか ら平 均 で約1%検 出 さ れ,さ らに ン類 とカフェイ ンの含有量 を測定 した。玉 露

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抹 茶 は 煎 茶,玉 緑 茶 と比 較 し て や や 多 く の カ ノ ー ル 類 の 食 中 毒 細 菌 に 対 す る 抗 菌 活 性, フ ェ イ ン を 含 む 一 方 総 カ テ キ ン 量 は 少 な か っ 日 食 工 誌,36,996-999 た 。 同 じ茶 種 の 中 で は,上 級 茶 は 一 般 に 下 級 6)原 征 彦 ・松 崎 妙 子 ・鈴 木 建 夫(1987): 茶 よ り多 く の カ フ ェ イ ン を 含 み 総 カ テ キ ン 量 茶 成 分 の ア ン ジ オ テ ン シ ンI変 換 酵 素 阻 害 は 低 か っ た 。 個 々 の カ テ キ ン 類 の 中 で は,エ 能 に つ い て,農 化,61,803-808 ピ ガ ロ カ テ キ ン ガ レ ー ト(EGCg)の 含 有 量 が 7) ELIAS, P. S. (1986) : Current biological

最 も多 く,総 カ テ キ ン 量 の50~60%を 占 め, problems with and caffeine, Cafe エ ピ ガ ロ カ テ キ ン(EGC)と 合 わ せ た 量 は 総 Cacao The (Paris), 30, 121-138

量 の 約80%で あ っ た 。 遊 離 型 カ テ キ ン(EC, 8)前 田 茂 ・中 川 致 之(1977):各 種 緑 茶 の EGC)の 含 有 量 は,エ ス テ ル 型 カ テ キ ン 総 合 的 理 化 学 分 析,茶 研 報,No.45,85-92

(ECg,EGCg)の,煎 茶,玉 緑 茶 で は 半 分 以 9)西 条 了 康(1981):茶 葉 の 生 育 に 伴 う カ テ 下,玉 露,抹 茶 で は1/3以 下 で あ っ た 。 玉 キ ン類 の 変 動,茶 技 研,No.61,28-30 露,抹 茶 で は 多 く の 試 料 か ら カ テ キ ン(C)が 10)吉 田 優 子 ・木 曽 雅 昭 ・長 島 等 ・後 藤 哲 検 出 さ れ た が,そ れ 以 外 の 微 量 カ テ キ ン類 は 久(1996):茶 芽 の 生 育 に と も な う化 学 成 分 ほ と ん ど検 出 さ れ な か っ た 。 ほ う じ 茶 の カ テ 含 量 の 変 化,茶 研 報,No.83,9-16 キ ン類 は,加 熱 に よ る 変 化 を 受 け る た め か 量 11)西 岡 五 夫(1986):タ ン ニ ン の 化 学 一 最 近 的 に も 少 な く,そ の 組 成 も他 の 茶 種 と大 き く の 研 究,化 学 と 生 物,24,428-439 異 な っ て い た 。 12)寺 田 志 保 子 ・前 田 有 美 恵 ・増 井 俊 夫 ・鈴 木 裕 介 ・伊 奈 和 夫(1987):各 種 茶(緑 茶, 6謝 辞 半 発 酵 茶,紅 茶)浸 出 液 お よ び テ ィ ー ド リ 本 研 究 に 当 た り,茶 試 料 を ご 提 供 い た だ い ン ク ス 中 の カ フ ェ イ ン,カ テ キ ン組 成,日 た 茶 業 者,各 県 試 験 研 究 機 関,及 び,野 菜 ・ 食 工 誌,34,20-27 茶 業 試 験 場 関 係 各 位,並 び に,粉 砕,水 分 含 13)末 松 伸 一 ・久 延 義 弘 ・西 郷 英 昭 ・松 田 良 有 量 の 測 定 等,試 料 の 前 処 理 を し て い た だ い 子 ・小 松 美 博(1995):緑 茶 中 の カ フ ェ イ ン, た 野 菜 ・茶 業 試 験 場 品 質 化 学 研 究 室 天 野 い ね カ テ キ ン類 の 測 定 の た め の 新 し い 抽 出 法, さ ん に 深 謝 い た し ま す 。 食 科 工,42,419-424 14)中 川 致 之 ・鳥 井 秀 一(1964):茶 カ テ キ ン 7引 用 文 献 に 関 す る研 究(第1報)ペ ー パ ー ク ロ マ ト

1)松 崎 妙 子 ・原 征 彦(1985):茶 葉 カ テ キ グ ラ フ ィ ー に よ る カ テ キ ン 類 の 個 別 定 量 ン 類 の 抗 酸 化 作 用 に つ い て,農 化,59, 法,茶 技 研,No.29,67-76 129-134 15)中 川 致 之(1980):液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 2)SHIMOI, K., NAKAMURA, Y., TOMITA, L, に よ る 茶 の カ テ キ ン の 自 動 分 析 法,茶 技 研, HARA, Y. and KADA, T. (1986): The No.58,38-41

pyrogallol related compounds reduce UV 16)池 ヶ 谷 賢 次 郎 ・高 柳 博 次 ・阿 南 豊 正 -inducedmutations in Escherichia coli B/ (1990):茶 の 分 析 法,茶 研 報,No.71, r WP2, Mutat. Res., 173, 239-244 43-74 3)原 征 彦 ・松 崎 敏 ・中 村 耕 三(1989): 17) GoTO, T., YOSHIDA,Y., Kiso, M. and

茶 カ テ キ ン の 抗 腫 瘍 作 用,栄 食 誌,42,39-45 NAGASHIMA,H. (1996): The Simultanio- 4)戸 田 真 佐 子 ・大 久 保 幸 枝 ・生 貝 初 ・島 us Analysis of Individual Catechins and

村 忠 勝(1990):茶 カ テ キ ン類 お よ び そ の 構 Caffein in Green Tea, J. Chromatogr., in 造 類 似 物 質 の 抗 菌 作 用 な ら び に 抗 毒 素 作 press 用,日 細 菌 誌,45,561-565 18)後 藤哲久 ・堀 江秀樹 ・大 関 由紀 ・増 田英 5)原 征 彦 ・石 上 正(1989):茶 ポ リ フ ェ 昭 ・藁科二 郎(1994):化 学成 分か ら見 た市

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販 緑 茶 の 品 質,茶 研 報,No.80,23-28 22) NAKAGAWA,M. (1967) : The Nature and 19)中 川 致 之(1975):緑 茶 の 渋 味 の 計 測,茶 Origin of Polyphenols in Hoji-cha 研 報,No.43,27-30 (Roasted Green tea), Agric. Biol. Chem., 20)中 川 致 之 ・田 村 真 八 郎 ・石 間 紀 男(1972): 31, 1283-1287 緑 茶 の 呈 味 構 造 と し好 性 に 関 す る 研 究,日 23)向 井 俊 博 ・堀 江 秀 樹 ・後 藤 哲 久(1992): 食 工 誌,19,475-480 煎 茶 の 遊 離 ア ミ ノ 酸 と全 窒 素 の 含 量 と価 格 21)阿 南 豊 正 ・中 川 致 之(1974):茶 葉 の 化 学 と の 関 係 に つ い て,茶 研 報,No.76,45-50 成 分 含 量 に 及 ぼ す 光 の 影 響,農 化,48,91-96

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