<<

ブラジル金属鉱物資源の魅力 ― 地質構造発達史とメタロジェニーの視点から ― レ 前サンティアゴ事務所 所長 ポ [email protected] 中山 健 ー ト

要約 ブ 金属鉱物資源は、地球表層のどの場所においても、またいつの時代においても普遍的に形成される訳ではなく、プ ラ ジ レート収束・発散地域や大陸内リフトといった特定の地質条件のほか、汎地球的な無酸素事件といった特定のイベン ル トなど様々な地球環境にも束縛される。 金 属 ブラジルは先カンブリア時代の地質体(37 億年前から 5.5 億年前)が国土面積の大部分を占める。この長期に亘る 鉱 地質時代に、ブラジルは初期大陸の誕生から成長、分裂、集合といった様々な地質環境を経験しながら現在の姿に至 物 っている。平面的な鉱物資源分布のみならず、地球の歴史という時間軸を加えて見ると、ブラジルの金属鉱物資源の 資 源 魅力がより鮮明になってくる。 の ブラジルは、これまで鉄鉱石、ニオブ、タンタル、ボーキサイトの世界的生産国として知られていた。それ以外の 魅 力 鉱物資源については世界生産の多くを占めるものはなかったが、最近銅、ニッケル鉱床の発見が相次いでいる。これ まで未だ十分な探査が進んでいないことに加え、長い地質時代に経験した特定の地質環境を考慮すれば、上記金属以 ― 地 外にも、例えば、先カンブリア時代の塩基性・超塩基性層状貫入岩体に伴う銅・ニッケル・クロム・白金族鉱床、造 質 山帯中の堆積岩を母岩とする銅・コバルト鉱床、非活動的大陸縁辺部/プラットフォーム堆積物に伴われる SEDEX 型 構 ~アイリッシュ型~ミシシッピーバレー型鉛・亜鉛鉱床、非造山型花崗岩に伴われる錫鉱床、堆積盆に伴われるウラ 造 発 ン鉱床および中生代のアルカリ岩―カーボナタイト貫入岩に伴われるニオブ、タンタル、レアアース鉱床等の大規模 達 金属鉱床存在の可能性が高いと考えられる。 史 と メ タ ロ 目次 ジ はじめに ェ ニ 1. 大陸成長の歴史 ー 2. 主な金属鉱床の生成環境と時代束縛性 の 視 3. 南米大陸の成長と地帯構造区分 点 4. ブラジルの地質概要 か 5. ブラジルの金属鉱物資源(本号では本項の一部まで掲載、以下は次号に掲載予定) ら ― 6. 南米プラットフォームの成長とメタロジェニー 7. ブラジルの金属鉱物資源ポテンシャル おわりに 参考文献

はじめに 同位体年代)とともに地殻の進化(Rb/Sr および ブラジルは、我が国の約 23 倍の国土面積を有してお Sm/Nd システム)が推定できるようになり、先カンブ り、その多くは先カンブリア時代の地質体が占めてい リア時代の地質の解明が飛躍的に進んだ。とりわけ、 る。また熱帯気候帯が広範な範囲を占めており、アマ 2000 年にブラジルで開催された第 31 回万国地質学会 ゾンのようなジャングル地帯が広く発達し、表層が植 において、多数のデータが紹介され、新しい地球観に 生に覆われ風化土壌が厚く、かつアクセスが悪いこと 基づく地質構造発達史がより明らかになってきた。 から地質の解明が遅れていた。更に多くの資料・論文 金属鉱物資源については、鉄鉱石、ニオブ、タンタ がポルトガル語で出版されて来たことも地球規模の地 ル、ボーキサイトが世界的に知られていたが、その他 質解釈への貢献を遅らせてきた要因でもあった。近年 の金属鉱物資源については、広大な面積の割には決し の放射性同位体地球科学の進歩により、地質年代 て突出したものではなかった。しかしながら、1987 年 (Rb-Sr 同位体年代、U-Pb 年代、Pb-Pb 年代、Sm-Nd から 1990 年代後半にかけての Carajas´ 地域での酸化

2008.3 金属資源レポート 19 (735) 鉄銅鉱床の発見(発見当時は、火山性塊状硫化物鉱床 ューするとともに、地質構造発達史とメタロジェニー あるいは別子型とされていた)や、原生代の Chapada の視点からそのポテンシャルについて紹介する。なお 銅鉱床のポーフィリー銅鉱床としての認定、また最近 主な資料は、1986 ~ 1988 年 DNPM 出版の の相次ぐラテライトニッケル鉱床や硫化物ニッケル鉱 “Principais Depositos´ Minerais do Brasil v.I ~ III”、 床の発見によりブラジルの金属鉱物資源のポテンシャ 2000 年 DNPM 出版の“Tectonic Evolution of South レ ルが見直されるようになって来た。Metals Economics America”および 2003 年 DNPM 出版の“Geologia, ポ Group(2006)によると、2006 年のブラジルの探鉱投 Tectonica e Recursos Minerais do Brasil”による。 ー 資額は 290.5 百万 US$ と南米ではペルーに次ぐ額にな 本文中には、これらの資料の引用は省略するが、それ ト っている。 以外の資料を引用する場合に限り出典を付記した。資 ブラジルの地質は、およそ 37 億年前から現在に至る 料が限定されているため項目ごとに粗密があることを までの長い地質時代の歴史が刻まれている。その中に 了解願いたい。また拾い上げることが出来なかった多 ブ は地球の歴史とともに形成された様々なタイプの金属 くの鉱床があると思われる。詳細については上記出版 ラ ジ 鉱床が存在することを想像するに難くはない。本報告 物および引用文献に直接あたって調べて頂きたい。 ル では、既存資料からブラジルの主要な金属鉱床をレビ 金 属 鉱 物 資 1. 大陸成長の歴史 いたらしい。それに続いて北米、グリーンランド、シ 源 ブラジルの地質は 37 億年前から現在に至ることか ベリアからなる Arctica 大陸が 25 億年前から(図 2b)、 の 南米と中央・北西アフリカからなる Atlantica 大陸が 魅 ら、その地質を理解するには、先カンブリア時代から 力 現在に至る大陸の動きを理解しておく必要がある。大 20 億年前から(図 2d)存在したらしい。現在ブラジル 陸成長(大陸配置)の変遷は、おおよそ以下のとおり に存在するクラトンは、Atlantica 大陸の一部を構成し ― 纏められる。 ていたことになる。更に Arctica 大陸に Baltica(北欧) 地 質 マグマオーシャンをへて海水が形成され、水の惑星 小大陸が衝突して Nena 大陸(~ 18 億年前、図 2c)を 構 となった地球初期には、現在のような大陸は無く、太 形成した。更に 18 ~ 15 億年前にはこれらの大陸が集 造 合して、超大陸に匹敵する Colombia 大陸が形成され 発 古代の 38 ~ 32 億年前に、大陸の始まりとして、未成 達 熟な海洋性島弧が形成され、これらが衝突して次第に た(Rogers and Santosh, 2003)。この頃南米では 史 小大陸として成長した。更に島弧と小大陸の衝突が繰 Transamazonian 造山運動が起こった。11 ~ 6 億年前 と メ り返され大きな大陸に成長していった。その変遷を図 には殆どの大陸が集合して最初の超大陸 Rodinia 大陸 タ 1 および図 2 に示す。初期の頃の小大陸の配置は余り が形成された。この時に起こった汎世界的な造山運動 ロ が Grenville 造山運動で、アフリカでは Kibaran 造山 ジ はっきりとしないが、およそ 30 億年前には、現在の ェ Kaapvaal(南アフリカ)、Pilbara(オーストラリア)、 運動と称される。Rodinia 超大陸以降の大陸成長の変遷 ニ Western Dharwar(インド)、Singhbhum(インド) は殆ど認知されていると言える。6 億年前頃に巨大マ ー の からなる最古の小大陸 Ur 大陸(図 2a)が形成されて ントルプルームの上昇により Rodinia 超大陸が分裂し、 視 点

か 億年 ら 45.5 38.0 32.0 25.0 16.0 10.0 5.42 2.51 0 冥 太古代 原生代 顕生代 ― 王 時 代 新

太古代前期 太古代中期 太古代後期 原生代前期 原生代中期 原生代後期 古生代 中生代 生 代

(Hodeon) (Palaoarchean) (Mesoarchean) (Neoarchean) (Paleoproterozoic) (Mesoproterozoic) (Neoproterozoic) 代

25.0 Arctica´ West GonduanaGondwana Canadian 20.0 18.0 Greenland Nena East GonduanaGondwana ( Siberia ( Baltica 18.0Colombia 11.0 Rodinia 6.0 Gondwana Pangea North Europe 5.0 2.5 2.0 大 30.0 Ur 陸 LunrenciaLaurencia AnstrAustraliaalia India NorthNorth AmericaAmerica Madagascar Greenland Atlantica Europe PaPdrrtt of SouthSunth AfricaAfrican 20.0 ( East Antarctica ( ( PaParrtt of Asia ( South America West Africa Nw Africa ( ( 13.0 10.0 7.5 5.3 造 Transhudson Grenville Pam-Afurcanan-African 山 14.0 9.5 運

Kibaran 動 ・ San Ignacio ・BrasiliaBrasilia 21.0 18.0 ・ArAraguaiaaguaia 南 Basiliano ・PPaarraguai Transamazonian AracuaiAracuai ・ ̃ ´ 18.0 15.0 米

・RibeiraRibeira 造 Erpinhaco~ Aulacogen (・ Borborema Roraima 山 21.0 18.0( ( ・ Kibaran ・Trtrans-Saharans-Saharaa

帯 Eburnean ・Mauvitanide-RocMauritanide-Rockelidekelide ア Pan-African フ 21.0 19.0 ・West Congo リ Limpopo ・Damaran-KatangaDamaran-Katange ( カ

Rogers and Santosh(2002), Rogers and Santosh(2003), Sankaran(2003)等から作成 図1 大陸の変遷と南米プラットフォームの造山運動

20 2008.3 金属資源レポート (736) Columbia = Ur (~3000 Ma) A (~1800Ð1500 Ma) D Pangea Madagascar (~250 Ma) Zimbabwe Northwest E. Dharwar Africa Bastar (?) South Kaapvaal Singhbum Zimbabwe Madagascar W. Dharwar (?) America Laurasia India Tethys レ Pilbara Kaapvaal Antarctica > East Ocean ポ Arctica (~2500 Ma) Yilgarn North West ー ? America Siberiancratons Australia Gondwana ト Siberia Baltica Greenland Kenorland Siberia

Baltica ブ Greenland ラ Canadian North ジ America East Gondwana ル Wyoming Nena 金 (~1800 Ma) C West Africa Gondwana 属 @ Africa Congo Baltica (~600 Ð500Ma) 鉱 B Rodinia Siberia /Kasai 物 Guyana (~1800 Ð1100 Ma) West Gondwana Nubian - Arabian 資 Shield 源 Mozambique South の Ur Belt Sao Fransisco Nena America 魅 India 力

Rio East Atlantica East Gondwana Plato Antarctica ― E.Antarctica Australia ( North America 地 Siberia, Baltica, Greenland) (Parts of Africa and Atlantica (~2000 Ma) South America) 質 構 図2 大陸の変遷図(Sankaran, 2003 に加筆)南米の位置に注目。 造 発 達 史 と 東 Gondwana、西 Gondwana および Laurencia 大陸に 陸弧環境で形成される。金属鉱床生成環境については、 メ タ 分かれた。その後、東西 Gondwana 大陸が再度集合し Mitchell and Garson(1981)、Huchinson(1983)、 ロ て Gondwana 超大陸(5 ~ 2.5 億年前)を形成した。 Sawkins(1990)、Groves ほか(1998)、Kerrich et al., ジ この集合の際に汎世界的な造山運動が起こり、アフリ (2005)、Laznicka(2006)などにより紹介されている。 ェ ニ カでは Pan-African 造山運動と称され、クラトン間に 詳細な説明は省略するが、主要な金属鉱床形成と ー Trans-Sahara、Mauritanide-Rockelide、West Congo、 Wilson サイクル(図 4)との関係について、生成環境 の 視 Damaran-Katanga 等の構造帯が形成された。南米では を網羅的に紹介している Mitchell and Garson(1981) 点 Brasiliano 造山運動と称され、Araguaia、Paraguai、 の図を図 3ab に示す。38 億年前に既に現在のプレート か Brasilia、Aracuai、Riveira、Borborema および Dom テクトニクスに類似する地球表層の運動があったこと ら ̃ ´ Felician といった構造帯が形成された(図 1 および図 6)。 が判明しており、ユニフォーミタリアニズムの観点か ― 4.5 ~ 3.5 億年前に Laurencia 大陸と Gondwana 大陸が ら、先カンブリア時代から顕生代と類似するテクトニ 衝突して Caledonia、Appalachia、Variscan、Ural- クス環境があったと考えられる。一方地球初期の先カ Altai といった造山運動が起こり、更に 2 億年前には、 ンブリア時代に限定される地質現象もあり、顕生代の Laurencia 大陸とアフリカ大陸が衝突して、Lauracia 鉱床生成環境をベースにした図 3 には先カンブリア時 大陸(Laurencia と Asia が合体したもの)と 代に限定される縞状鉄鉱鉱床(BIF)と超塩基性溶岩 Gondwana 大陸がほぼひとつながりになり、Pangea 超 (コマチアイト)に伴われるニッケル鉱床は表記してい 大陸が形成された。Pangea 超大陸に挟まれてテーチス ない点に注意願いたい。 海が、Pangea 超大陸の外側にパンサラサ海が出現した。 また金属鉱床形成は、地球発達史のなかで、地球規 1.5 億年前には Pangea 超大陸は分裂を開始し、現在の 模のプルームの活動やスノーボールアースに起因する 大陸の配置に至っている。 地球の無酸素状態などのイベントと強い関係があるこ とが分かっており(Groves et al., 2005)、上に紹介した 2. 主な金属鉱床の生成環境と時代束縛性 地質環境とともに、図 5 に示すような時代束縛性があ ブラジルの金属鉱物資源ポテンシャルを理解する上 ることも分かっている。こうしたことから、ブラジル で重要な金属鉱床の生成環境とその時代束縛性につい においても、図 5 に示すように、37 億年前から 5 億年 て簡単に触れておく。金属鉱床は地球上の特定の地質 前の間に、汎世界的に形成された鉱床の存在が期待さ 環境で形成される。例えば黒鉱鉱床が引張応力下の島 れることがわかる。 弧環境で、ポーフィリー銅鉱床が圧縮応力下の島弧・

2008.3 金属資源レポート 21 (737) A.大陸内ホットスポット B.大陸内リフト・オーラコーゲン Sn,F,Nb カーボナタイトNb, P2C5, REE, Ba, F SEDEX型Pb・Zn・Ag Sn, F 酸化鉄銅金鉱床 層状分化岩体Cu,Ni,Pt レ 0 0 ポ ー 30km 30km ト プルーム 200 400km 200 400km C.大陸内リフト D.海膨・ハワイ型海山列 蒸発岩層 LIL-枯渇 LILに富む アルカリ玄武岩 玄武岩 玄武岩 紅海型Mn 含金属高濃塩水・泥 ミシシッピーバレー型Pb・Zn・Ba Fe,Mn,As,B,Zn,Pb,Hg 堆積物 ブ 0 0 ラ キプロス型Cu-Fe ジ 30km アルカリ枯渇マントル 30km ル ポディフォーム型Podiform 金 Cr・NiS・PtCr,NiS,pt プルーム プルーム 属 初源マントル 鉱 プルーム 物 E.アンデス型マグマタイプ F.島弧・島弧内ベーズン ポーフィリー型Sn・W 初期リフト 資 浅熱水性Au・Ag 黒鉱型Cu・Pb・Zn F 源 含Cu・Ni・Co ポーフィリー型Cu・Au・Mo 浅熱水性Au・Ag 背弧海盆 キプロス型 Cu・Fe マンガンノジュール ポーフィリー型Cu・Au の 0 0 魅 力 30 30 ポディフォーム型 Cr・NiS・Pt ―

地 60km 60km

質 200 400km 200 400km 構 造 発 達 G.縁海を伴うマグマ弧 史 と ポディフォーム型Cr キプロス型Cu・Fe Sn,W,Bi,Mo,F メ オフィオライト・マントルダイアピル キプロス型 Sb ポーフィリー型 Cu・Fe タ 0 Cu・Au

ロ p p p ジ p 別子型 蛇紋岩中のHg ポディフォーム型Cr・Pt ェ 30 Cu・Fe ニ 造山型金鉱床 ー 60km の 200 600km 視 点 H.大陸・大陸衝突帯 I.後衝突火山活動 Ag,Ni,Co マグマ弧鉱化作用 Sn,W,F マグマ弧鉱化作用 オフィオライト リフト帯のマグマ活動 か 造山型Au Cr.Pt,Cu-Fe モラッセ中のU 造山型Au ら ヒスイ・霞石 U 0 0 p p ― p p p

30 30

アンダースラスト大陸地殻上のPb・Zn・Ag 含Fe・Ti アノーソサイト 60km ? 60km 200 400km 200 400km

J.オブダクションしたオフィオライトを伴う衝突帯 トーナル岩・花崗閃緑岩 海洋地殻

花崗岩・アルカリ花崗岩 上部マントル ポディフォーム型 Cr,Pt キプロス型Cu・Fe 造山型Au 0 Under-Saturated Alkaline Rocks アノーソサイト p p p カーボナタイト 石灰岩

30 火山岩 -カルクアルカリ岩 フリッシュ 堆積岩: モラッセ -ソレアイト -アルカリ玄武岩 LIL Large Ionic Lithiophile 元素 大陸地殻 60km 200km 高温変成帯 pp 高圧変成帯

図3 金属鉱床の形成環境(Mitchell and Garson, 1981に加筆)

それぞれのテクトニック環境に相当する部分を図4に示す。原著に新たに造山型金鉱床、浅熱水性金鉱床、酸化鉄銅金鉱床およ び正マグマ性銅・ニッケル・白金鉱床を追加した。

22 2008.3 金属資源レポート (738) V HJ 衝突型造山帯 覆う。これらを南米プラットフォームと称する (Alemeida et al., 1976)。 南米プラットフォームは 15 百万 km2 に亘って広が り、そのうち約 40 %が露出している。露出している大 陸地殻のうち 34 %が太古代に形成され、80 %までが 原生代前期の Transamazonian 造山運動までに形成さ レ IV EF コルディレラ型造山帯 れ、98 %までが原生代後期の Brasiliano 造山運動後ま ポ でに形成された。既述のように、南米プラットフォー ー 海洋地殻 ムでは、次のような汎地球規模の造山運動が起こった ト ことが知られている(図 1)。すなわち 21 ~ 18 億年前 の Transamazonian 造山運動、13 ~ 10 億年前の サブサクション Grenville 造山運動、7.5 ~ 5.3 億年前の Brasiliano ブ (Pan-African)造山運動(図 6 の灰黒色部)である。 ラ ジ III 島弧 E F 非活動的大陸縁辺部 クラトンはギニア高地からアマゾン河の南に広がる ル Amazonian クラトン、ブラジルの中央~東部の Saõ 金 Francisco クラトンおよびブラジル南部海岸に散在す 属 鉱 る Rio de la Plata クラトン、Luiz Alves クラトンおよ 物 II 中央海嶺 D び北東部海岸の Saõ Luis´ クラトンに区分される(図 6)。 資 源 既述のように大陸成長の過程でブラジルはアフリカ大 の 陸の一部との合体・分離を経ており、アフリカ大陸と 魅 の関連についてはその都度紹介する。 力

南米プラットフォーム最古の岩石は、Gaviao(Saõ I C A B ´ ― Francisico クラトン)で求められた Sm/NdTDM モデル 大陸地殻 地 年代で 3.7Ga が報告されている(Cordani and Sato, 質 リソスフェア 構 1999)ほか、Rio Maria 花崗岩―グリーンストンベル 造 図4 Wilson Cycle (Condie, 1989 に加筆) ト(Amazonian クラトン)の原生代後期の花崗岩およ 発 ○A ~○J は図 3 に対応 び堆積岩中のジルコン U-Pb 年代でも 3.7Ga が報告され 達 史 ている(Tassinari and Macambira,1999)。最近、 と 600Ma の Brasiliano 造山運動で形成された Borborema メ 構造帯中に産する太古代の片麻岩の中のジルコンでも タ ロ 3. 南米大陸の成長と地帯構造区分 3.7Ga Sm/NdTDM モデル年代が報告されている ジ 南米大陸は、①大陸の核となる太古代および原生代 (Dantas, et al., 2004)。 ェ ニ 前期~中期の地質体(クラトン)およびそれらを取巻 クラトンの核となる太古代の花崗岩―グリーンスト ー く原生代後期の構造帯、②その西側(ゴンドワナ大陸 ンベルトは、Carajas(Amazonian´ クラトン)、Gaviao´ の 西縁)および南部における微小大陸の付加および非活 (Saõ Francisco クラトン)、Quadrilatero Ferrifero 視 ´ ´ 点 動的大陸縁辺部での大量の大陸起源物質の堆積体(古 (Saõ Francisco クラトン)および Crixas(Brasiliã 構 か 生代)の形成と成長、Patagonia マシッフの衝突、③ 造帯中の異地性テレーン)等に分布する。 ら ゴンドワナ大陸西縁でほぼ現在の姿に近い場所でのマ Saõ Francisco クラトンでは基盤を被って、プラット ― グマ弧(ジュラ紀後期―現在)の3つのゾーンに分け フォーム堆積岩が分布する。これらを取巻くように原 られる(図 6)。 生代後期の Brasiliano(Pan-African)造山運動により これから、①から③へと大陸が成長していったこと 形成された Araguaia、Paraguai、Brasilia、Aracuai、 ̃ ´ になる。本稿では、このうちブラジル国土をカバーす Borborema、Riveira といった構造帯が発達する(図 6)。 る①に相当する範囲についての紹介となる。 古生代~中生代にこれらを覆って Parnaiba 堆積盆およ び Parana 堆積盆がまた新生代には、アマゾンからブ 4. ブラジルの地質概要 ラジル西縁の国境地帯にかけて新生代の堆積盆が形成 ブラジルの地質は、クラトン(クラトンは先カンブ された。 リア時代に安定化した地帯を指す。本報告書では原生 以下各クラトン、原生代後期の構造帯、顕生代の地 代後期の Brasiliano 造山運動前(7.5 億年前頃)までに 質について紹介する。 安定化した地帯ということになる)、クラトンを取巻く 原生代後期の構造帯およびそれらを覆う顕生代の被覆 4-1. クラトン 層に大きく区分される。クラトンは1次地殻(新たな (1)Amazonian クラトン マントルからのマグマの供給により形成された地殻) Amazonian クラトンは、アマゾン河を挟んでブラジ と2次地殻(既に形成された地殻物質の再生により形 ル中央部に広がり面積 4,300,000km2 を占める世界最大 成された地殻)により成長し、原生代中期頃までに南 級のクラトンの 1 つで、10 億年前以降に安定化した。 米大陸の基盤を形成した。更に顕生代の地層がこれを 太古代にはすでに大陸地殻が存在しており、これらが

2008.3 金属資源レポート 23 (739) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力 図5 金属鉱床形成の時代束縛性(Groves et al., 2005 に加筆)

― 地 質 残存体(inliers)として原生代の地質体の中に残され 2.26 ~ 2.11Ga および 2.11Ga、2.0 ~ 1.86Ga の 3 回の地 構 ている。まとまった太古代の地質体は Imataca 地域と 殻形成イベントが識別されている。前者は花崗岩―グ 造 発 Carajas´ 地域に分布しておりそれぞれ、3.7 ~ 3.4Ga お リーンストンベルト、後者は Central Guyana 花崗岩 達 よび 3.0 ~ 2.7Ga(Ga とは“giga age”の略で 10 億年) ベルトおよび片麻岩―ミグマタイトベルトを形成した。 史 と の年代を示す。 なお、Carajas-Iricoume´´ の地質は金属鉱物資源の項で メ Sm/Nd モデル年代によると、Amazonian クラトン 紹介する。 タ では、太古代に大陸地殻の 30 %が、原生代に残る Central Amazonian(CA)の北および東側には原生 ロ ジ 70 %が形成されたことを示している。原生代の主要な 代前期の造山帯である Moroni-Itacaiunas ベルト(MI) ェ 大陸地殻形成は 2.0Ga に起こった。クラトンの周りに が、西側には Ventuari-Tapajos´ ベルト(VT)が発達 ニ ー は、原生代後期の構造帯である Araguaia、Paraguai、 した。Moroni-Itacaiunas ベルトは、2.2 ~ 1.9Ga の の Brasilia(いずれもブラジル)および Tucavaca(ボリ Carajas-Iricoume´ ´ ブロック、Imataca コンプレックス 視 ビア)が発達する。 および West African クラトンの一部の3つの太古代 点 か Amazonian クラトンは大陸地殻主要部分の形成年 微小大陸の集合部の一部分であるとされている。 ら 代、構造方向、岩相、地球物理学的特徴などから 一方 Central Amazonian ベルト(CA)の南西側で ― Central Amazonian ( CA, >2.3Ga)、Maroni- は、原生代前期~中期にマグマ弧を形成しながら大陸 Itacaiunas(MI,´´ 2.2-1.95Ga)、Ventuari-Tapajos(VT, 地殻が付加し南西側に向かって成長し、Ventuari- 1.95-1.8Ga)、Rio Negro-Juruena(RNJ, 1.8-1.55Ga)、 Tapajos ベルト(VT)および Rio Negro-Jurena ベル Rondonia-San Ignacio ベルト(RO, 1.55-1.3Ga)および ト(RNJ)が形成された。更にその南西側では 1.4 ~ Sunsas´ ベルト(SS, 1.3-1.0Ga)の 6 個の地質体に区分 1.3Ga に大陸の衝突(San Ignacio 造山運動)により されている(図6)。同位体的特徴からこれらは、1 次 Rondonian-San Ignacio ベルト(RO)が形成された。 地殻と 2 次地殻の両方から成り立っていることが分か 最後の重要なイベントは 1.3 ~ 1.0Ga の Sunsas´ 造山運 っている。 動(SS)で、これにより、Sunsas´ ベルトが形成された。 Amazonian クラトンの核となった太古代の地質体 Sunsas´ 造山運動は、1.19 ~ 0.98Ga に Laurentia 大陸およ は、Central Amazonian ベルト(CA)の Carajas-´ び Baltica 大陸と Atlantica 大陸が衝突して形成された Iricoume´ および Roraima ブロックで原生代の火山―堆 汎世界的な Grenville 造山運動の一部をなしている。 積岩に覆われているが、2.1 ~ 1.8Ga に起こった その後再び Laurentia 大陸および Baltica 大陸と Transamazonian 造山運動は被っていない。 Atlantica 大陸が分裂し、Sunsas´ ベルトは、古生代に Imataca コンプレックスは、3.7 ~ 3.4Ga の地質体で 西側から海洋プレート(Phoenix プレート)がサブダ あるが Transamazonian 造山運動を被った太古代の高 クションを開始しマグマ弧が形成されるまで、南米大 度変成岩からなる異地性の地殻断片と考えられている。 陸西縁の非活動的大陸縁辺部となった。 その中に 2.8Ga の構造運動とマグマ活動イベントが識 別されており、Aroense イベントと称されている。

24 2008.3 金属資源レポート (740) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

̃ ― 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 か ら ―

̃

① Araguaia 造山帯、② Paraguai 造山帯、③ Brasilia 造山帯、④ Aracuaĩ ´ 造山帯、⑤ Ribeira 造山帯、⑥ Borborema 造山帯 図 6 南米プラットフォームの地質(Cordani et al., 2000 に加筆)

2008.3 金属資源レポート 25 (741) (2)Saõ Francisco クラトン Rio Itapicuru グリーンストンベルト(2.1Ga)が形成さ Saõ Francisco クラトンは、面積約 100 万 km2 の広 れた。また Gaviao´ ブロックでも Jacobina リフトが形 がりを持ち、南米大陸の中央~東部を占める。原生代 成された。Transamazonian 造山運動期に Gaviao´ ブロ 中期(Transamazonian 造山運動後)から中生代の ックと Serrinha ブロックが再度集合し I-S-C ベルトが Pangea 超大陸の分裂前まではアフリカの Congo クラ 形成された。 レ トンと繋がっていたが、Pangea 超大陸の分裂(大西洋 I-S-C ベルトの花崗岩類および堆積岩起源の片麻岩中 ポ の形成)にともなって分裂した。基盤をなす太古代の に塩基性・超塩基性層状岩体が貫入する。これは、橄 ー 中~高度変成岩および花崗岩―グリーンストン、太古 欖岩を含む斜方輝岩、ノーライトおよび班れい岩から ト 代後期から原生代前期の表成層および様々な組成から なる複数の層状シルとして貫入する。その一つである なる深成岩類、基盤岩中に形成されたオーラコーゲン Caraiba´ 岩体では斜方輝岩中に硫化物銅鉱床を胚胎す (Paramirim 構造帯)、オーラコーゲン東のクラトン る。一方その東の Serrinha ブロックにも塩基性・超塩 ブ (Chapada Diamantina 地域)を被う原生代前期~原生 基性層状岩体が貫入する。また Medrado 岩体はクロマ 代中期の Espinhaco 超層群と深成岩類、およびこれら イト鉱床を産する。Silva(1985)は、両者は同一のマ

ラ ̃ ジ を覆う原生代中期~後期のプラットフォーム堆積物で グマ分化作用により形成されたものとしたが、化学組 ル 金 ある Saõ Francisco 超層群(もしくは Bambui 層群) 成の違いおよび Caraiba´ 岩体の年代が 2.58Ga、 属 よりなる(図 7)。 Medrado 岩体の年代が 2,085Ma を示しており、異なっ 鉱 Saõ Francisco クラトンの基盤は、クラトン北東部 た起源を持つ(Oliveira et al., 2004)。 物 資 Bahia 州 El Salvador 市から Saõ Francisco 川にかけて 市周辺の基盤岩類は形成・発達の時 源 の一帯および 州 Belo Horizonte 市周辺に 代が北東部の Gaviao´ ブロックに類似する。一帯は の 魅 分布する。更にこれら基盤を被って原生代中期から後 と呼ばれる大規模な BIF を産することから 力 期のプラットフォーム堆積体が分布する。 “鉄の四角地帯”(Quadrilatero´ Ferrifero)と称される´ Saõ Francisco クラトン北東部では、太古代の地質体 (図 9)。“鉄の四角地帯”は、太古代の TTG 起源の片 ― は、東から Serrinha ブロック、Jequie ブロックおよび 地 ´ 麻岩、ミグマタイト、塩基性・超塩基性層状岩体、グ 質 Gaviao´ ブロックに区分される(図 8)。Serrinha ブロ リーンストン、トーナル岩~花崗岩質貫入岩からなり、 構 ックは、3.5 ~ 2.9Ga の片麻岩、ミグマタイト、角閃岩等 これらを覆って原生代前期の非活動的大陸縁辺部堆積 造 2 発 より、Jequie´ ブロックは、3.0 ~ 2.7Ga のグラニュライト、 物である Minas 超層群が分布しており 7,000km の広が 達 表成岩等より、Gaviao´ ブロックは、2.9 ~ 2.8Ga の片麻 りを持つ。特にグリーンストン、トーナル岩~花崗岩 史 岩―角閃岩、TTG(トーナル岩、トロニエム岩、花崗 形成時期は Rio das Velhas 造山運動(2.78-2.7Ga)と呼 と メ 閃緑岩の頭文字をとったもので、カリウムに乏しくナ ばれており、古い TTG 起源の 2 次地殻が形成された。 タ トリウムに富みイットリウムや重希土に枯渇しストロ 2.75 ~ 2.66Ga には Ribeiraõ dos Motos 塩基性・超塩基 ロ ジ ンチウムに富む。高温のプレートの溶融によって形成 性岩が貫入した。Minas 超層群には BIF(Itabirite)、 ェ された)起源の片麻岩およびグリーンストン等よりな マンガン鉱床を多産する。 ニ る。既述にように、このなかの灰色片麻岩のジルコン Tansamazonian 造山期に“鉄の四角帯”の南東側に ー の の U/Pb SHRIMP 年代で 3.4Ga、Sm/NdTDM モデル年 Mantiqueria 弧が形成され、更に海洋性島弧である 視 代で 3.7Ga という南米最古の年代が報告されている JequieJuiz de Fora Arc が付加した。これらは 630 ~ 点 (Cordani and Sato, 1999)。太古代の Serrinha ブロッ 490Ma に Aracuai 造山運動(Brasiliano 造山運動)を か ̃ ´ ら クと Gaviao´ ブロックの間には、原生代前期の構造帯で 受けた(Noce et al., 2007)。 ― ある I-S-C(Itabuna -Salvador-Curaca)ベルトが発達

̃ 基盤を被うプラットフォーム堆積体は Espinhaco 超 ̃ しており、グラニュライト相のトーナル岩、チャルノ 層群と Saõ Francisco 超層群からなる。Espinhaco 超 ̃ ック岩および塩基性・超塩基性層状岩体、表成岩およ 層群は、南北延長約 500km、東西 50 ~ 100km の び太古代の基盤岩(2.6Ga の角閃岩)よりなる。I-S-C Paramirim 渓谷に広がるオーラコーゲン型の堆積盆で ベルトは Transamazonian 造山運動(2.1-1.9Ga)によ の生成物で、太古代~原生代前期の花崗岩、片麻岩上 り形成されたとみなされている。 位に堆積する。またこの中に非造山型花崗岩が貫入す Oliveira et al.,(2004)によると、当地域の構造発達 る(図 7)。 史は次のように解釈されている。3.0 ~ 2.5Ga には、 Saõ Francisco クラトン西部(Contendas-Mirante リ Gaviao´´ ブロック、Jequie ブロックおよび Serrinha ブ ニアメントの西側)には、Rodinia 超大陸分裂後、原生 ロックに代表される TTG からなる大陸地殻が断片化 代後期の Brasiliano 造山運動前にクラトンを取巻くよ し海洋地殻が形成され、同時に表成岩が堆積した。 うに、泥質岩および炭酸塩岩からなる浅海のプラット 2.4 ± 0.05Ga には海洋地域で東向きのサブダクション フォーム堆積体および非活動的縁辺部の炭酸塩岩およ が起こり、カルクアルカリ岩バソリスが形成された び珪質砕屑岩が堆積した(Saõ Francisco 超層群)。こ (Caraiba´ グラニュライトの原岩)。2.3 ± 0.05Ga には、 の炭酸塩岩層(Vazante 層群)は 300,000km2 以上に亘 Transamazonian 造山運動により太古代のテレーンで って分布しており珪酸亜鉛鉱床および硫化鉛・亜鉛鉱 ある Gaviao´ ブロックと Serrinha ブロックが衝突し、I- 床の母岩となっている(Miri et al., 2005)。 S-C ベルトが形成された。2.2 ± 0.05Ga には Serrinha ブロックのリフティングにより背弧海盆が形成され、

26 2008.3 金属資源レポート (742) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 か ら ―

図7 Saõ Francisco クラトンの地質(Trompette,1994)

2008.3 金属資源レポート 27 (743) レ ポ

ー Caraiba ト 銅鉱床

ブ ラ Medrado ジ クロマイト鉱床 ル 金 Paramirim Aulacogen 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 図8 Saõ Francisco クラトン北部の地質(Silva et al., 2007 に加筆) 質 構 造 発 達 史 と (3)Saõ Luis、Rio´ de la Plata および Luiz Alves クラ 裂に伴って Laurensia 大陸と分離した南米大陸西縁の メ トン断片 構造発達史を構築する上で重要である。 タ Amazonian クラトン、Saõ Francisco クラトンのほ ロ ジ かに、小規模なクラトンの断片が分布する(図 6)。そ 4-2. Brasiliano 造山期構造帯 ェ の1つである Saõ Luis´ クラトンは、ブラジルの北東部 750 ~ 530Ma に起こった Pan-African 造山運動 ニ ー Belen´ と Saõ Luis´ 市の間に分布しており、TTG とグリ (Brasiliano 造山運動)により、Gondwana 大陸が形成 の ーンストンおよび後期のポタシック花崗岩に貫入され された。これに伴ってクラトンの再配置が行われ、ク 視 る。トーナル質花崗岩をはじめ多くの深成岩の年代値 ラトンの間に多数の構造帯が形成された。ブラジルで 点 か は 2.1 ~ 2.0Ga 付近に集中しており、西アフリカクラト は、Araguaia、Paraguai、Brasilia、Borborema、 ら ンの一部であったと考えられている(図 10)。 Aracuai、Ribeira、Dom Feliciano 構造帯が形成され、

̃ ´ ― Luiz Alves クラトンはブラジル南部 Santa Catarina アフリカでは(元は連続していた)、Trans-Sahara、 州、Parana 州に、Rio de la Plata クラトンはウルグア Mauritanide-Rockeilide、West Congo、Damaran- イからアルゼンチン Buenos Aires 州に分布する。両者 Katanga 等の構造帯が形成された(図 1 および図 10)。 の間には原生代後期に両クラトンとアフリカ Kalahari クラトンとの間で 850 ~ 650Ma(Ma とは“mega age” (1)Tocantins 構造帯 の略で百万年)に形成されたマグマ弧である Dom Tocantins 構造帯は Amazonian クラトンと Saõ Feliciano 構造帯が広がる。Luiz Alves クラトンはマイ Francisco クラトンに挟まれた構造帯で、Araguaia、 クロプレートの一部で 2.7 ~ 2.0Ga の高度変成岩からな Paraguai、Brasilia 構造帯をまとめた総称として使われ る。Rio de la Plata クラトンはいくつかのブロックに分 る(図 11)。Amazonian クラトンと Saõ Francisco ク 散して分布するが片麻岩、トーナル質花崗岩、ミグマ ラトンは Atlantica 大陸、Colombia 大陸、更に タイト、角閃岩、片岩、マイロナイト等から構成され Rodinia 超大陸の一部を構成していたが、Rodinia 超大 る。これらは 2.2 ~ 1.9Ga、1.7Ga(Transamazonian 造 陸の分裂に伴い両クラトンの間には海洋地殻が形成さ 山期)および 0.75 ~ 0.6Ga(Brasiliano 造山期)の年代 れた(Goianides 海)。Brasiliano 造山運動前に Saõ を示す。Rio de la Plata クラトンの地表分布は狭いが、 Francisco クラトンの西縁部では、非活動的大陸縁辺 ブラジル南部からアルゼンチンに広く伏在していると 部の陸棚若しくはその斜面堆積物およびそれらを覆う 推定されている。 炭酸塩岩~珪質の堆積体(Vazante 層群)が形成され アンデス帯にも Arequipa-Antofalla といった原生代 た。Goianides 海の拡大時期に Saõ Francisco クラトン の地質体が散在しており(図 6)、Rodinia 超大陸の分 側では Cana Brava、Niquelandia、Barro Alto といっ

28 2008.3 金属資源レポート (744) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 か ら ―

1:Aguas´ Claras, 2:Mutuca, 3:Capaõ Xavier, 4:Jangada/Samambaia, 5:Tamandua,̃ 6:Serra Capitao,̃ 7:Aboboras,´ 8:Pico, 9:Miguel Congo, 10;Alegria, 11:Fazendao,̃ 12:Timbopeda, 13:Capanema, 14:Gandarea, 15:(いずれも BIF) 図9 Saõ Francisco クラトン南部(鉄の四角地帯)の地質(Dardenne and Schobbehaus, 2000)

2008.3 金属資源レポート 29 (745) Phanerozoic cover rocks

lts ( not always individualized ) Be old s F tla ti A An nd s a Atla Phanerozoic Belts

Pan-African Brasiliano Fold Belts ( 700 - 600 Ma) polycyclic basement Chado レ Late Middle Proterozoic Belt ポ ⑭ Kibaran type ( -1250 Ma ) ⑱ West Africa Craton ⑬ Middle Proterozoic Fold Belt ー Namaqua type ⑮ Indian Craton ト Dharwar Craton Craton ( + Lower Proterozoic) ⑯ Congo Craton Shakleto Craton ⑥ ⑰ ⑫ ⑧ ブ ⑪ San Luis Craton ④ ⑩ ラ Saõ Francisco Craton ジ ① ⑤ Kaapval Craton ル ③ ⑨ 金 Luiz Alves Craton ⑲ ② ⑦ 属 21 ⑳ 鉱 Rio de la Plata Craton 物 資 源 の 魅 0 2000 Km. 力

― 1:Araguaia, 2:Paraguai, 3:Brasilia, 4:Aracuai, 5:Ribeira, 6:Borborema, 7:Dom Feliciano, 8:West Congo, 9:Damara, 10:Katanga, 11:Zambezi, 地 ̃ ´ 質 12:Mozanbique, 13:Nigeria-Cameroon, 14:Pharusian, 15:Oubanqudes, 16:Danomeydes, 17:Rokelides, 18:Mauritanides, 19:Namaqua, 20:Cape, 構 21:Gariep-Saldanian 造 図10 西ゴンドワナ大陸の太古代~原生代前・中期のクラトンと原生代後期造山帯(Trompette and Carozzi, 1994) 発 達 史 と メ タ た大規模な塩基性・超塩基性層状岩体が貫入した。 に形成された“tectonic collage”(構造コラージュ)と ロ ジ Goianides 海の東側、すなわち Saõ Francisco クラトン されており、小規模な太古代大陸地殻断片 ェ 側では、Goianides 海の海洋プレートの沈み込みによ (Transamazonian 造山期の残存体)、原生代前期~中 ニ ー り Goias̃ マグマ弧が形成された。両クラトンの接近に 期の片麻岩、原生代前期~後期の表成層、原生代後期 の より、Amazonian クラトンの東縁には南北延長 の造山期花崗岩からなる。東延長は大西洋を挟んでア 視 1,000km 以上に及ぶ Araguaia、Paraguai 構造帯が、 フリカの Nigeria-Cameroon 構造帯に連続する(図 10)。 点 か Saõ Francisco クラトンの西縁には Brasilia 構造帯が形 Borborema 構造帯は Trnasbrasiliano リニアメント、 ら 成された。北側の Araguaia 帯には、低~中変成度の Patos リニアメント、Pemambuco リニアメントにより、 ― 炭酸塩岩を含む泥質岩とオフィオライトと考えられて Medio´ Coreau Domain、 Northern Domain、 いる塩基性・超塩基性岩体が発達する。また太古代か Transversal Domain および Southern Domain の 4 つ ら原生代前期のミグマタイトおよび片麻岩をコアに持 のセクターに分けられている。 つマントルド・ナイスドームが発達する。一方 Medio´ Coreau Domain : Transbrasiliano Lineament の Paraguai 構造帯は、原生代後期の氷河期のリフト堆積 西側に位置する。 Transamazonian 造山運動以前 物とその上位に累積する非活動的大陸縁辺部の炭酸塩 (2.35Ga)の2次地殻、西アフリカの Nigeria Cameroon 岩および泥質岩からなる。Tocantins 構造帯のなかに (Trans-Saharan)構造帯に対比される原生代後期の表 太古代後期の花崗岩―グリーンストンベルトからなる 成層よりなる。 Crixa マシッフと太古代と原生代中期の花崗岩類、原 Northern Domain : Transbrasiliano リニアメントと 生代後期の高度変成岩(Anapolis-Itaucu´ コンプレック Patos リニアメントに挟まれた範囲で、原生代前期 ̃ ス)からなる Goias´ マシッフが存在しており、これら の基盤岩および Brasiliano 造山期の花崗岩類よりな はクラトンの断片と考えられている。 る。Saõ Jose´ do Campestre マシッフの中に太古代 の地質体が存在するとされていたが、Dantos et al., (2)Borborema 構造帯 (2003)は、3.00 ~ 2.69Ga の深成岩に貫かれる 3.25 南米大陸の最も東端部に位置し、400,000km2 の面積 ~ 3.181Ga の 2 次地殻中に、3.5Ga のジルコン U-Pb を占める(図 12)。構造線によりセクターに分断され、 年代、3.7Ga の Sm-NdTDM モデル年代を示す岩体の 西に収束するような扇型をなす。Brasiliano 造山期に 存在を明らかにしている。 West Africa、Congo-Saõ Francisco クラトンの集合時

30 2008.3 金属資源レポート (746) 50° S 48° S 46° S

12° S 12° S レ ポ ー ト

14° S 14° S ブ Crixas ラ ジ ル ̃ 金 Brasilia 属 鉱 16° S 16° S 物 資 Goiania 源

Paracatu の 魅 力 Vazante Phanerozoic ― Phanerozoic Basins 18° S Araguaia Formation 地 Neoproterozoic 質 Orthogneiss 構 Magmatic arc Araxá 造 Volcano-sedimentary sequences 発

Tres Marias Formation 達 Pium - Hi 史 Paraopeba Subgroup 20° S と メ Ibia Formation タ ロ Araxa Group Pirineus sintaxis ジ Felsic and mafic granulites and ェ orthogneisses ニ Meso/Neoproterozoic Paleo/Mesoproterozoic Paleoproterozoic ー Vazante Group Arai Group Volcano-sedimentary sequence の Santa Terezinha type 視 Paranoa Group Serra da Mesa Group Archean 点

Canastra Group Mafic-Ultramafic complexes - terranes か ら Estrondo Group Volcano-sedimentary sequences Greenstone belts ―

図11 Tocantins 造山帯の地質(Dardenne and Schobbenhaus, 2000)

Transversal Domain : Patos リニアメントと へと変化する。Pemambuco リニアメント沿いには Pemambuco リニアメントに挟まれた範囲で、 原生代後期の花崗岩類が貫入する。非活動的大陸縁 Brasiliano 造山運動を受けた 1.0 ~ 0.95Ga の火山 辺部は 750Ma、褶曲期は 630Ma、580 ~ 540Ma に後 岩・堆積岩層(Cariris Velhos 構造帯)が 750km 以 造山期花崗岩活動が生じたと考えられている。 上に亘って分布する。またこれに平行な島弧の要素 をもつ低変成岩および 600Ma の花崗岩類が存在す (3)Aracuai 構造帯(Mantiquera 構造帯) ̃ ´ る。Cariris Velhos 構造帯は、Rodinia 超大陸形成の Aracuai 構造帯は図 13 に示すように、アフリカの

̃ ´ 最後の時期を示しているものと考えられている。 West Congo 構造帯と対をなし、その東西および北を Southern Domain : Pemambuco リニアメントの南側 Saõ Francisco クラトンと Congo クラトンが取巻くよ に位置しており、Saõ Francisco クラトンの縁辺部の うな配置をなしており、Saõ Francisco、Congo クラト 造山帯をなす。非活動的大陸縁辺部堆積体である ンと Kalahari クラトン(Rio de la Plata、Saõ Luis´ Sergipano および Riacho do Pontal 構造帯は大陸側 Luiz Alves クラトン)の衝突により、その間にあった から外側に向かって、ダイアミクタイト・珪岩・泥 Adumaster 海が消滅するとともに Aracuai、Ribeira ̃ ´ 質岩・炭酸塩岩、火山岩・堆積岩層、深海性堆積物 構造帯が形成されたと考えられている。

2008.3 金属資源レポート 31 (747) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 図12 Borborema 造山帯の地質(Cordani et al.,2000) 質 構 造 発 達 Aracuai 構造帯の構造方向は NNE 方向で、南部の 造山型花崗岩からなる Borrachudos 岩体が形成され 史 ̃ ´ と Ribeira 帯に近づくと NNE から NE に変化する。両ク た。原生代中期から後期の拡張期になると、大陸内リ メ ラトンとの隣接部の地質は対称的で凹部に沿って分布 フトが更に拡大し、塩基性岩脈群や非造山型花崗岩が タ ロ する。また原生代後期に収束した Paramirim(ブラジ 貫入した(1.05Ga-900Ma)。 ジ ル)および Sangha(コンゴ)オーラコーゲンとも交錯 原生代後期に両クラトンおよび Aracuai-West Congo ̃ ´ ェ する(図 13)。Aracuai 構造帯は、Atlantica 大陸の分 盆地一帯で氷河堆積物の堆積が起こった。Macaubas ̃ ´ ニ ´ ー 裂と再集合の過程で形成されたと考えられている。 層群はその代表例で、氷河堆積物と海成層は、大陸リ の Aracuaĩ ´ 構造帯は、Transamazonian および フトから非活動的大陸縁辺部へ変化して行ったことを 視 Brasiliano 造山運動を蒙ったグリーンストンを伴う太 示している。分裂した Saõ Francisco クラトンと 点 か 古代の TTG 片麻岩コンプレックス、原生代前期の表 Congo クラトンの間(816Ma)には海洋地殻が発達し ら 成岩およびこれらの 2 次地殻が基盤をなしている。 た。クラトン縁辺で生じたサブダクションに伴ってカ ― Aracuai 構造帯北東端には Transmazonian-Eburnean ルクアルカリマグマ弧(G1 深成岩)が形成された。衝 ̃ ´ 造山運動で生じた Itabuna ベルトが発達する。原生代 突期(595-575Ma)には海洋地殻が付加するとともに I 前期の構造帯内側には角閃石片麻岩およびグラニュラ タイプ、S タイプの火成活動が生じた(図 14)。 イトが露出しており、その一つである Juiz de For コ ンプレックスは Transamazonian 期に海洋性島弧で形 (4)Ribeira 構造帯 成されたと考えられている。 Ribeira 構造帯は、Aracuai 構造帯の南部延長部にあ ̃ ´ Atlantica 大陸内部においてリフトが形成され、原生 たり、Rio de Janeiro 一帯のブラジル中部海岸地帯に

代前期から原生代中期にバイモーダル火山岩・堆積岩 分布する。Aracuaĩ ´ 構造帯とは地質体構成は同じであ

層よりなる Espinhacõ 超層群が形成された るが構造方向が NE-SW に変化するという違いがある。 (Espinhaco 大陸内リフト)。またこのリフト内には非 ̃

32 2008.3 金属資源レポート (748) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 1:cratonic boundary, 2:limit between external and internal tectonic 物 domain, 3:Archean Paleoproterozoic basement reworked during 資 Brasiliano-Pan African , 4:Neoproterozoic structural trend out- 源 lined by the regional ductile foliation, 5:zone of slivers of Neoproterozoic の oceanic lithosphere, 6:zone of remnants of the Neoproterozoic precolli- 魅 sional to syncollisional magmatic arc 力

図13 Aracuaĩ ´ 造山帯の地質(Pedrosa-Soares and ― Wiedememann-Leonardos, 2000) 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 か ら ―

1:Mantiqueira-Itabuna ベルト(M-1)、2 : Espinhaco 超層群(E)、 ̃ Borrachudos スイート、3 :マントルプルーム(MP)、塩基性岩脈群 (d)、Macaubas´ 層群(Mc)、West Congo 超層群(C)、4 : Salias 層群(S)、Paraiiba´´ do Sul Complex(PS)、5 :衝突前カルクアルカリ 質深成岩(G1)、6 :海洋地殻断片(v)、衝突期カルクアリカリ深成岩 (G1)、地殻アナテクシス相(G2)、7 :マグマアンダープレーティング、 S-タイプ深成岩(G4)、高 K カルクアルカリ I-タイプ深成岩(G5)

図 14 Aracuaĩ ´ 構造帯の発達史(Pedrosa-Soares and Wiedemann-Leonardo, 2000)

2008.3 金属資源レポート 33 (749) 5. ブラジルの金属鉱物資源 トンベルトに伴う造山型(グリーンストン型)金鉱床、 ブラジルの金属鉱床生成区は、現在の面で見ると図 Serra Navio マンガン鉱床および Imataca 地域の BIF 15 のようになるが、様々な時代に形成された地質体の といった噴気堆積性鉱床、塩基性・超塩基性貫入岩体 集合からなることから、以下地質体(地質年代)ごと に伴う Bacuri、Igarape do Beru のクロマイト鉱床、 に分解してみてみることにする。 非造山性花崗岩に関係した Mapuera 花崗岩類中の錫、 レ ニオブ、希土類、ジルコニウム鉱床などを産する。 ポ 5-1.クラトン ー 5-1-1. Amazonian クラトン ① Imataca 鉄・マンガン鉱床地帯(No.3) ト (1)北部 Amazonian クラトン(通称 Guiana 楯状地) (No は図 15 に示す鉱床生成区もしくは鉱床を示す) 北部 Amazonian クラトンには、Serra Lombarda、 ベネズエラの Aro 川から Orinoco デルタ間 510km Tararugalizinho および Vila Nova 花崗岩―グリーンス に亘って連続する Imataca コンプレックスのグラニュ ブ ラ ジ ル 80 W 70 W 60 W 50 W 40 W 金 Ciudad Bolivar 3 属 1 VENEZUELAdiam Georgetown Fe,Mn 4 鉱 Au Paramaribo 2 mineral 物 Nb,Th,REE Au 5 Cayenne Orinoco River Province/district 資 SURINAME French Guiana 源 GUYANA の COLOMBIA Selected mineral 6 8 deposit 魅 7 Au,Mn,Cr Nb,REE,Th 力 Sn Negro River Belem ECUADOR Manaus ― Amazonas River PERU Sao Luis 地 15 U,P,O Tapajos River 質 13 Xingu River Fe,Mn,Au 17 構 12 Au Cu( Ni) 16 Nb,Ta mag Be,Sn Au 造 14 W

発 Recife Madeira RiverPorto Au(Zn,Pb,Cu) Cu,Ni,Co 達 Velho Cu 18 21 Araguaia River P,O 20 史 9 Sn 23 19 10 S BRAZIL Au diam Au と Au 25 O 22 BOLIVIA 31 Ba Cr メ asb 24 Au 34 32 Pb,Zn 11 26 1-Quebrada Grande 10 28 Salvador タ Ni Sao Francisco River Au,Cu 33 27 Cuiaba Au Au ロ 2-Cerro Impacto mag Fe,Ti,V(Pt) 44 Brasilia 30 Au U 29 3-Imataca gra ジ 35 Au Sucre ェ 4- Pastora-Barama-Mazaruni Zn,Pb diam Fe,Mn 36 O 38 Li,Be,gem ニ 5-Paramaka Belo 39 43 37 Horizonte ー 6-Villa Nova Campo 40 Grande 4 Fe の 7-Pitinga Ni,Co,Mn,Au Cu,Au 視 8-Seis Lagos PARAGUAY 20 S Bana River Paraguai River Pb,Zn 点 9-Rondonia Ba(Ag) 42 か Rio de 10-Alto Guarope Asuncion Janeiro Curitiba ら 11-Alto Jauru ― 12-Alta Floresta 31-Almas -Dianopolis 13-Tapajos 32-Canabrava (Minacu)

14-Carajas 45 33-Niquelandia/Barro Alto ´ 46 Au 15-Itataia 34-Crixas Au Cu,Pb,Zn 16-Jose de Alencar 47 35-Morro de Ouro( Paracatu) URUGUAY 17-Serido(Borborema) ARGENTINA 36-Morro Agudo/Vazante

18-Serrote de Lage ( Arapiraca) Buenos 37-Rocinha -Lagamar 30 S Aires Montevideo 19-Rio Itapicuru 38-Diamantina 20-Rio Curaca 39-Brasil Oriental (Eastern Brazil) 21-Rio Jacurici/ (Campo Formoso) 40-Quadrilatero Ferrifero 22-Jacobina/Itapura (Miguel Calmon) 0 500 km. ( Iron Quadrangle) 23-Irece 41-O'Toole /Morro do Ferro 24-Chapada Diamantina 42-Vale do Ribera 25-Boquira 43-Urucum-Mutun(Corumba) 26-Jacare/Fazenda (Brumado) 44-Cuiaba-Pocone 27-Serra das Eguas(Brumado) 45-Lavras do Sul 28-Riacho de Santana 46-Minas do Camaqua/Santa Maria (Cacapava do Sul) 29-Pedra Azul 47-San Gregorio 30-Lagoa Real

80 W 70 W 60 W 50 W 40 W 30 W

図15 ブラジル鉱物資源分布(Dardenne and Schobbenhaus, 2000)

34 2008.3 金属資源レポート (750) ライトベルトに伴って BIF(縞状鉄鉱層)を産する。 ③Cerro Impact ・ Seis Lagos カーボナタイト鉱床 コンプレックスの原岩は 3.7 ~ 3.4Ga の年代を示し、砕 (No.2) 屑岩、化学的沈殿岩、カルクアルカリ岩質の陸成火山 Cerro Impact は、ベネズエラ国境近くの Bolivar 州 岩および貫入岩からなる。これらは 2.8 ~ 2.7Ga にグラ でレーダー画像解析により環状構造が発見されたもの ニュライト相から角閃岩相の変成作用を受け、正片麻 である。新鮮なカーボナタイト岩体は確認されていな 岩、パラ片麻岩、グラニュライト、チャルノック岩、変 いがニオブ、トリウム、バリウムなどの異常からカー レ 成BIF になっている。BIF はコンプレックスの 1 % > ボナタイトと推定されている。近隣の Quebrada ポ を占め、厚さは数 cm から 200m に及ぶ。そのなかで Grande キンバライトと同時期だとすれば 710Ma とな ー Cerro Bolivar、San Isidro といった BIF の大規模鉱床 る。一方 Seis Lagos カーボナタイトは、3 つのカーボ ト が存在する。それぞれの開発前の規模は、Cerro ナタイトパイプからなる。資源量は 39 億 t、Nb2O5 品 Bolivar 鉱床で鉱量: 1,855 百万t、Fe 品位: 63 %、 位は 2.81 %と推定されている。 San Isidro 鉱床で鉱量: 11,700 百万t、Fe 品位: ブ 44 %であった。BIF は磁鉄鉱および赤鉄鉱を主体とす ④ Bacuri(Igarape´ do Breu)クロマイト鉱床(No.6) ラ ジ る。鉄に富む層は、石英と変成作用を受けた鉄に富む Bacuri(Igarape´ do Breu)クロマイト鉱床は、 ル 鉱物からなり、Algoma タイプも存在するが Superior Macapa´ の西に位置しており、Villa Nova 層群の中~ 金 タイプが主体をなす。 高度変成岩中に貫入する Bacuri 塩基性・超塩基性層状 属 鉱 Imataca コンプレックス中の厚さ約 500 mのミグマ 貫入岩体に産する(図 17)。同コンプレックスは 物 タイト質片麻岩、角閃岩、グラニュライト層中にマン Transbrasilian 造山期に角閃岩相の変成作用を覆って 資 おり、角閃岩、蛇紋岩、透角閃岩、クロマイトを含む。 源 ガンの二次的濃集層が挟在される。個々のマンガン層 の の厚さは 10m> であるが走向方向に 20km 以上連続す 初生的には沈積起源の層状構造を示しており、化学組 魅 る。成因については火山起源、非火山起源モデルが提 成的にも層状岩体の特徴を持つ。平均幅 12 mのクロミ 力

唱されている。 タイト層は塩基性岩と超塩基性岩の境界部に産し、11 ― 個の鉱体が知られている。幅 3m 以下のクロマイト層は 地 ② Pitinga 錫鉱床地帯(No.7) 超塩基性岩中にも存在する。開発前の鉱量は 9 百万t 質 構 Pitinga 地域は Guiana 楯状地の南端部、マナウス市 で、1989 年~ 1997 年の間に 2 百万 t が採掘された。 造 の北約 300km に位置しており、Agua Boa および 発 Maderia 花崗岩マシッフに関係した Zn、Ta、Y、REE 達 史 とNa3AlF6(cryolite)が存在する(図 16)。これらの花 と 崗岩は地殻上部で形成された非造山型 メ 花崗岩と考えられている。年代は 1.8Ga。 タ ロ 錫鉱化作用は Agua BoaAgua Boa マシ ジ ッフ(ラパキビ、黒雲母、トパーズ花 ェ ニ 崗岩)に関係したものと Maderia マシ ー ッフ(ラパキビ、黒雲母、曹長石花崗 の 岩)に関係したもの2つのタイプに分 視 点 けられる。前者は後マグマ期の熱水活 か 動に伴って形成された雲母―トパーズ ら 石英―電気石―錫石脈でアラナイト、 ― ジルコン、蛍石、菱鉄鉱、ベリル、閃 亜鉛鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱を伴う。後者 のうち曹長石花崗岩に伴われるもの は、錫石、ジルコン、コロンバイト― タンタライト、パイロクロア、ゼノタ イム、クリオライトからなる鉱染状鉱 床で厚さ 30m の風化部分で品位が高 くなる。本鉱床は 1970 年代末に発見 され、漂砂、風化残留鉱床を採掘した。 ブラジルは 1990 年世界最大の錫生産 国で、その生産量の 90 %を Pitinga か ら生産した。

図 16 Pitinga の地質(Dardenne and Schobbenhaus, 2000)

2008.3 金属資源レポート 35 (751) ⑤ Serra do Navio マンガン鉱床(No.6) ⑥Pastora-Barama-Mazaruni および Paramaka 地帯の Serra do Navio 鉱床は、ブラジル北東端 Amapa 州 金鉱床(No.4、5) Macapa 市の北約 195km に位置する。1963 年~ 1997 Guiana 地域では 20 世紀に漂砂鉱床から約 150t の金 年までに約 30 百万t、Mn 品位: 35 ~ 38 %の鉱石が を生産した。これから推定すると、残存する金量は 採掘された。同鉱床は、強い変形・変成作用(角閃岩 700t と見積もられている。Pastora-Barama-Mazaruni レ 相)を受けた Villa Nova 層群(2.2Ga)の火山岩・堆積 地帯(ベネズエラ)および Paramaka 地帯(スリナム、 ポ 岩層に伴われる。N30°W 方向に 10km に亘って分布す 仏領ガイアナ、ブラジル)は Guiana 地域のグリーンス ー る。マンガンに富む層は石墨片岩に挟在され、 トンベルトの中で最も重要な産金地帯である。グリー ト queluzite タイプの初生鉱は 50 ~ 90 %の菱マンガン鉱 ンストンベルトは大西洋岸に沿って約 1,500km にわた を含み、Mn 品位は 19 ~ 36 %になる。低品位ゾーン って分布する。グリーンストンベルトはソレアイト質 では tefroite、spessartite、rodonite といったマンガン 塩基性火山岩、ソレアイト~カルクアルカリ質玄武 ブ 珪酸鉱は gondite になっている。深さ 100m に及ぶラ 岩・安山岩・デイサイト・流紋岩、タービダイト起源 ラ テライト化により珪酸鉱は cryptomelane、pyrolusite、 グレイワッケ・火山砕屑岩・化学的堆積岩・泥質岩、 ジ manganite といった酸化鉱に変化しており、Mn 品位 含マンガン・鉄堆積物、チャート、炭酸塩岩からなる。 ル 金 は36~52 %に上昇している。カナダのジュニアカン ほとんどの金鉱床は浅い環境で形成されたもので大規 属 パニーである Ecometals は、2008 年 1 月ブラジルの 模なせん断帯近傍の延性―脆性変形作用を被った岩石、 鉱 Alto Tocantins と Serra do Navio 鉱床の共同探鉱に合 特に火山岩を主要な母岩としている。石英中に自然金、 物 資 意したと発表した。 黄鉄鉱、四面銅鉱、黄銅鉱、斑銅鉱、モリブデナイト、 源 灰重石、閃亜鉛鉱として産する。ベネズエラの El の 魅 Callao 鉱床などではアンケライトの存在や母岩に 30m 力 以上にも及ぶ炭酸塩化が見られる。母岩は炭酸塩化の 他に強い珪化、絹雲母化およびプロピライト化を覆っ ― 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 か ら ―

図17 Bacuri の地質(Spier and Filho, 2001)

36 2008.3 金属資源レポート (752) ている。ブラジルの Serra Lombarda 層群はグリーン に伴う金鉱床、Alto Jaura 地域の金、火山性塊状硫化 ストンベルトのなごりである角閃岩、黒雲母片岩、 物鉱床、Rondonia^ 地域の錫鉱床などを産する。 BIF、チャートを含む片麻岩を母岩とする熱水性鉱脈 タイプの特徴を持つ。 1)Carajas´ 地域(No.14) Guiana 楯状地では大規模な延性せん断帯は知られて 1969 年 6 月 Para´´ 州南西部に位置する Carajas 地域 いないが、最大のせん断帯は Transamazonian 造山期 において、US Steel のブラジル子会社である CMM レ に形成された仏領ガイアナ北部の Sillon Nord-Guianas (Companhia Meridional de Mineracoes)の地質専門家̃ ポ ̃ で、いくつかの重要な金鉱床はこのせん断帯に関係し Breno Augusto dos Santos に率いられた探査チームに ー ている。このせん断帯はスリナムからガイアナにまで より大規模鉄鉱床が発見された。これを皮切りに、マ ト 伸びる。この地域の金鉱床を胚胎するグリーンストン ンガン、銅、ニッケル、金、クロム・白金、タングス 中の全ての火成岩・堆積岩は複数回の延性変形作用を テンといった鉱床が相次いで発見され、Carajas´ 地域 受けている。そのうち最初の変形が Transamazonian は、世界でも類を見ない鉱物資源の宝庫となっている。 ブ 造山期のもので、主な金鉱床はこの時期に形成された 当地域は、太古代の Rio Maria 帯(南側)と ラ ジ と考えられている。 Itacaunas´ せん断帯(北側)に区分される(図 18)。 ル Pastora-Barama-Mazaruni 地域の主な金鉱床は、ガ Rio Maria 帯は Amazonian クラトンの核部を占めてお 金 イアナの Omai(4.2 百万 oz)、ベネズエラの Las り、3.0 ~ 2.8Ga の Rio Maria 花崗岩―グリーンストン 属 鉱 Cristina(8.6 百万 oz)、Lo Increible および Botanamo コンプレックス、2.98 ~ 2.90Ga の Andoriahas 表成層 物 である。Paramake 地域の主な金鉱床はスリナムの および 2.87Ga の Rio Maria 型花崗閃緑岩からなる。 資 源 Cross Rosebel(2.4 百万 oz)、仏領ガイアナの Paul Itacaunas´ せん断帯では、基盤はグラニュライトから の Isnard(2.2 百万 oz)、Camo Caiman(1.1 百万 oz)、 なる Pium コンプレックス(~ 3.0Ga)、ミグマタイト 魅 Yaou(0.8 百万 oz)、Dorlin(0.35 百万 oz)、St. Elie、 およびトーナル岩~トロニエム岩質片麻岩からなる 力

ブラジルの Salamongone/Laborrie Siboa(0.35 百万 oz) Xingu´ コンプレックス(2.87Ga)からなる。これらを ― などである。 Carajas´ ベーズン(リフト)で形成された火山岩・堆 地 積岩層からなる Rio Nova 層群および Itacaunas´ 超層群 質 構 ⑦ Amapari 金鉱床(No.6) (Igarape´ Salobo、Igarape´ Pojuca、Graõ Para、および´ 造 Amapari 金鉱床は、Guyana 楯状地の 発 南東端の Serra do Navio の東約 12km で 達 史 AngloGold によって発見された。NNW-SSE 系 と の左ずれ高角せん断帯の支配されたグリーン メ ストンベルトタイプの Vila Nova 層群の火山 タ ロ 岩・堆積岩層中に産するスカルンタイプの金 ジ 鉱床に分類されている。金鉱化作用は、熱水 ェ 図19の範囲 ニ あるいは交代作用を受けやすくかつ鉱液の浸 ー 透を受けやすい炭酸塩岩、角閃岩およびカル の クシリケイト岩を母岩としている。金は黄鉄 視 点 鉱および磁硫鉄鉱の構造に関係している。そ か のほかに黄銅鉱、閃亜鉛鉱、硫砒鉄鉱、方鉛 ら 鉱および白鉄鉱を伴う。初生鉱化作用は N-S ― 方向に 7km に亘って分布する。風化帯および 酸化帯の鉱量は 1 百万 oz、Au 品位は 2.13g/t と見積もられている。

(2)南部 Amazonian クラトン(アマゾン河 以南) 南部 Amazonian クラトンには、Rio Maria グリーンストン花崗岩ベルトに関係した金鉱 床、Carajas´ 地域の Itacaiunas´ 超層群、Aguas´ Claras 層群中の Igarape´ Bahia/Alemao、̃ Salobo、Sossego、Crsitalino、118、Aguas´ Claras、Breves といった酸化鉄銅金鉱床、 Azul マンガン鉱床、Carajas´ 鉄鉱床、塩基 性・超塩基性層状岩体の風化残留鉱床(ラテ ライトニッケル鉱床)である Onca-Puma、 ̃ Verhelmo および Jacare´ 鉱床、Alto Floresta、 Tapajos、Alto´ Guapoe´ 地域のグリーンストン 図18 Carajas´ 地域の地質概要(Dardenne and Schobbenhaus, 2000)

2008.3 金属資源レポート 37 (753) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 質 構 造 図 19 Carajas´ 地域の鉱床分布(Castro et al., 2004 に加筆) 発 達 史 と メ Igarape´´ Bahia 層群)が不整合に被う。Itacaunas 超層 Carajas´ 山塊の南で東西方向に断続して分布しており、 タ 群は Carajas 地域の全ての酸化鉄銅金鉱床の母岩とな Onca、Puma、Jacare および Vermelho ラテライトニ ´ ̃ ´ ロ ジ っている。Itacaunas´ 超層群に見られる変形・変成作用 ッケル鉱床の母岩となっている。 ェ は、2.7Ga に起こった左横ずれ延性走向移動運動 ニ ー (WNW-ESE 方向)および 2.58Ga に起こった Cinzento- ① Igarape´ Bahia/Alemaõ 銅・金鉱床 の Carajas´ 左横ずれ延性~脆性運動に関係している。 Igarape´ Bahia/Alemaõ 鉱床は、N4 鉄鉱床の西約 視 Itacaunas´ 超層群は、2.68Ga の浅海性堆積物からなる 50km に位置しており、太古代の変火山岩・堆積岩層 点 ´ か Rio Fresco/Aguas Claras 層に被われる。2.74Ga には である Igarape´ Bahia 層群中に産する酸化鉄銅金鉱床 ら Sossego、Cristalino 花崗岩類、2.57Ga には Plaque、Old´ である。Igarape´ Bahia 層群は上部と下部に区分され、 ― Salobo といったアルカリ~アルミナ質花崗岩類が貫入 下部は BIF を含む塩基性火山岩からなり、上部は中性 した。また 2.76 ~ 2.65Ga には Jacare、Onca、Puma、 ~酸性火山砕屑岩、チャートおよび BIF を挟在する砕

´ ̃ Vermlho、Luanga といった塩基性・超塩基性層状岩体 屑岩からなる。上部層と下部層の間に幅約 100m の熱 が貫入した。1.88Ga には Central Carajas´ や Yung 水角礫岩層を挟在する(図 21)。酸性火山砕屑岩の Salobo といった非造山型花崗岩類が貫入した(図 18 Rb/Sr 年代で 2,350Ma が、塩基性グラノファイアーで および図 19)。層序・火成活動と金属鉱床(ラテライ 2,577Ma が報告されている。 トニッケル鉱床を除く)の関係を図 20 に示す。 Igarape´ Bahia 鉱床は 1975 年に金鉱床として発見さ 銅鉱床は、Igarape´ Bahia/Alemao、Sossego、Salobo、̃ れ、Acampamento、Acampamento Norte および Furo 118、Gameria、Cristalino および´ Aguas Clarsa 鉱床が知 Trinta の 3 鉱体からなる。2002 年までに約 100t の金 られている。Aguas´ Claras 鉱床以外は Itacaunas´ 超層 を生産して終掘した。本鉱床は図 21 に示すように半円 群の様々な岩石を母岩とする酸化鉄銅金鉱床である。 状に下部の塩基性火山岩と上部の砕屑岩層との境界部 これらには金、希土類、ウランを伴う。当地域の代表 の熱水角礫岩中の鉱染鉱として産する。地表下 200m 的な酸化鉄銅金鉱床の比較を表 1 に示す。Aguas´ 付近までは酸化帯で金の富化と銅の溶脱が起こってい Claras 鉱床は、1.88Ga の非造山期花崗岩である る。熱水角礫岩は母岩の様々なクラストから構成され、 Central Carajas´ 花崗岩に伴って形成された石英脈に伴 硫化物は黄銅鉱を主としそのほか斑銅鉱、藍銅鉱、輝 う銅・金・タングステン・錫鉱床である。Serra 銅鉱、モリブデナイト、輝コバルト鉱、黄鉄鉱等を含 Pelada 金・白金鉱床もこの時期に形成された。 む。また蛍石、含希土類、炭酸塩鉱物、モナズ石、鉄 2.7 ~ 2.6Ga に貫入した塩基性・超塩基性岩は、 重石、ヘッサイト、閃ウラン鉱、エレクトラム、自然

38 2008.3 金属資源レポート (754) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 図 20 Carajas´ 地域の層序と金属鉱床(Castro et al., 2004) 質 構 造 発 達 史 銀を含む。角礫岩には多量の磁鉄鉱と鉄緑泥石を含ん 斑銅鉱と輝銅鉱は、磁鉄鉱を 50 %以上含む BIF、黄銅 と でおり、硫化物の沈殿前に鉄の交代作用があった 鉱は FeSiO2 成分に富む BIF に濃集する。金は磁鉄鉱、 メ タ (Ponze´ et al., 2000)。希土類元素の濃集は磁鉄鉱および 黄銅鉱、輝コバルト鉱およびサフラン鉱中に産する。 ロ 炭酸塩岩質クラストに見られ、平均で 0.7 % > である。 風化帯が地表下 50m に及んでおり、ここでは、金は ジ Alemaõ 鉱床は 1996 年に Acampamento Norte 鉱体 0.4 ~ 11.4ppm に濃集している。希土類、ウラン、フッ ェ ニ の西側深部で発見された銅・金鉱床で、鉱量 1.7 億t、 素にも富む。1977 年に発見され、2006 年から開発が進 ー 銅品位: 1.5 %、金品位: 0.8g/t と発表されている。 められており、2010 年から操業を開始する予定である。 の 視 本鉱体は Igarape´ Bahia 鉱床と異なり、幅 40m にも及 鉱石のフッ素含有量が高いことから、Cominco の開発 点 ぶ塊状の硫化物鉱体を含み、また泥質岩中には層状~ した CESL 湿式精錬法で回収される予定である。鉱床 か レンズ状鉱体、脈状鉱体も産する。 の規模は Carajas´ の中では最大で、資源量: 12 億t、 ら Cu 品位: 0.86 %、Au 品位: 0.5g/t と発表されている。 ― ② Salobo 銅・金鉱床 Salobo 鉱床は、Igarape´ Bahia/Alemaõ 鉱床の北約 ③ Sossego/Cristarino/118 銅・金鉱床 30km に位置し、太古代の BIF、角閃岩および珪岩を Sossego、Cristarino および 118 鉱床はいずれも 挟在する変グレイワッケからなる Igarape´ Salobo 層群 Carajas´ 地域の南部に位置しており、Sossego 鉱床が 中に産する酸化鉄銅金鉱床である。これらは 2.76Ga の 1996 年に、Cristarino および 118 鉱床が 1998 年に発見 角閃岩相の変成作用および 2.55Ma のせん断作用を受 された。火山岩・堆積岩層である Itacaunas´ 超層群 けている。また 2.57Ma の花崗岩および 1.88Ma の石英 (~ 2.76Ga)に貫入した閃緑岩・石英閃緑岩に伴って形 閃長岩の貫入を受けている。更に角閃岩~緑色岩相に 成された酸化鉄銅鉱床である。 相当する温度の熱水変質作用を受けている。鉱床は、 Sossego 鉱床は、Itacaunas´ 超層群と Xingu コンプレ 変グレイワッケ中に挟在される BIF に伴って産する ックス(~ 2.8Ga)のトーナル岩、トロニエム岩および が、せん断作用によりレンズ化しており西から東にか ミグマタイトを境する WNW-ESE 方向のせん断帯に沿 けて A ~ D に区分されている(図 22)。硫化物(銅・ って分布しており花崗岩、グラノファイヤー質花崗岩、 金)鉱化作用は、鉱染~塊状で主に珪質な鉄鉱層に存 斑れい岩および変珪長質火山岩を母岩とする。Pista- 在し、品位は磁鉄鉱の量に比例する。変グレイワッケ Sequeirnho-Baiano と Sossego-Curral の 2 鉱体からなる には硫化物鉱化作用は存在しない。鉱石鉱物は斑銅鉱、 (図 23)。これらは、広域的なソーダ変質(曹長石―赤 輝銅鉱、黄銅鉱および少量のイルメナイト、モリブデ 鉄鉱)を被っており、更に塊状の磁鉄鉱(・燐灰石) ナイト、銅藍、閃ウラン鉱、輝コバルト鉱からなる。 を伴うナトリウム・カルシウム変質(アクチノ閃石に

2008.3 金属資源レポート 39 (755) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 ´ か

ら Carajas 地域の酸化鉄銅金鉱床の特徴(Monteiro et al., 2007) ― 表1

40 2008.3 金属資源レポート (756) 富む)を伴う。これらに重複するカリ変質(黒 雲母、カリ長石)からなる。Sossego-Curral 鉱 体は、初期の弱い曹長石変質とそれに引続くソ ーダ・カルシック変質を受け、角礫岩を形成し た脆性変形時期に生じたカリ変質を伴う。硫化 物は、まずカリ変質作用の時期に晶出し、引続 レ く方解石・石英・緑簾石・緑泥石変質作用時期 ポ に主要部が晶出した。Pista-Sequeirnho-Baiano ー 鉱体は変形作用を被っているが、Sossego-Curral ト 鉱体には変形は見られない。硫化鉱物は黄銅鉱、 黄鉄鉱と少量の磁鉄鉱、シーゲン鉱(CoNi2S4)、 針ニッケル鉱(NiS)からなる(Monteiro et al., ブ 2007)。本鉱床は 2004 年 6 月に操業を開始した。 ラ ジ Sossego の鉱量は 245 百万 t、銅品位: 1.1 %、 ル 金品位: 0.28g/t、Cristalino の鉱量は 2 億 t、銅 金 品位は 1.6 %、金品位 0.25g/t、と推定されてい 属 鉱 る。 物 資 ´ 源 ④ Aguas Claras 銅・金鉱床 の ´Aguas Claras 鉱床は、N4 鉄鉱床の南西約 魅 20km に位置しており、N20 ~ 40 °E、70 °NW 力

のせん断帯および正断層に伴っている。前期 ― の錫石および灰重石を含む塊状の石英脈、後 地 期の黄銅鉱、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱、磁硫鉄鉱、 質 構 閃亜鉛鉱、黄錫鉱、輝コバルト鉱、輝蒼鉛鉱、 造 方鉛鉱を含む角礫化した含金石英脈からなる。 発 ´Aguas Claras 層群を切るせん断帯、正断層に 達 図 21 Igarape´ Bahia/Alemaõ 銅・金鉱床の地質(Villas 史 and Santos, 2001) 関係する。金、銅、錫、タングステンの起源 と は、1.88Ga の非造山型花崗岩である Carajas´ メ 花崗岩と考えられている。資源量: 9.5 百万t、 タ ロ Au 品位: 2.43g/t と推定されている。 ジ ェ ニ ⑤ Pedra Preta タングステン鉱床 ー Pedra Preta タングステン鉱床は 1.88Ga の非 の 造山型花崗岩に関係した灰重石鉱床で火山岩・ 視 点 堆積岩層からなる Itacaunas´ 超層群を切る か N80 °W, 90 °の石英脈に伴われる。石英、灰重 ら 石のほかにトパーズ、白雲母、電気石、黄鉄鉱、 ― 磁硫鉄鉱および黄銅鉱を伴う。灰重石はまた強 珪化した母岩にも産する。鉱量は 322,753t、 WO3 品位は 1.03 %と見積もられている。

⑥ Vermelho ラテライトニッケル鉱床 Vermelho 鉱床は、Sossego 鉱山の東方約 15km に位置し、太古代の Xingu コンプレック スに貫入した 2.7Ga の塩基性・超塩基性層状岩 体を原岩とするラテライトニッケル鉱床で 1974 年に発見された。ニッケルはリモナイト鉱 (Ni : 1.2 %)とガーニエライトとスメクタイ ト鉱からなる粗粒のサプロライト(Ni : 2.0 %) に濃集する(図 24)。2005 年 7 月に開発が承認 されている。鉱量は 44 百万 t、ニッケル品位は 1.5 %と公表されている。 図 22 Salobo 銅・金鉱床の地質・地質断面(Villas and Santos, 2001)

2008.3 金属資源レポート 41 (757) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 図 23 Sossego 銅・金鉱床の地質(Monteiro et al., 2007) の 魅 力

― 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 か ら ―

図 24 Vermelho ラテライトニッケル鉱床プロファイル(Dardenne snd Schobbenhaus, 2000)

⑦ Onca-Puma ラテライトニッケル鉱床

̃ リドタイト、斑れい岩からなる。鉱床は Onca 鉱床と同 ̃ Onca-Puma 鉱床は Carajas 地域の南西に位置し、 ̃ ´ 様に蛇紋岩のラテライト化部に分布しており、 太古代の Xingu コンプレックスに貫入した 2.7Ga の塩 10km × 1km × 5.1m の規模を有する。地化学探査に 基性・超塩基性層状岩体を原岩とするラテライトニッ より輝岩、アノーソサイトで Au、PGE の異常が確認 ケル鉱床である。Onca と Puma は約 16km 離れた別の されている。鉱量(Onca + Puma): 109 百万 t、Ni ̃ ̃ 鉱床である。Onca 岩体は東西延長 25km、厚さ 3.5km 品位: 1.8 %。カナダの CANICO が 2001 年から探査 ̃ で南に 40 ~ 50 °で傾斜しており、ダナイト、ペリド を行っていたが 2006 年 2 月 CVRD が CANICO を買収 タイト、輝岩、斑れい岩からなる。鉱床は蛇紋岩のラ した。CVRD は 2006 年から建設を開始しており、 テライト化部に分布しており、18km × 1km × 4.1m 2008 年第 4 四半期から生産を開始することになって の規模を有する。Puma 岩体は東西延長 25km、厚さ いる。 3km で南に 30 ~ 40 °で傾斜しており、ダナイト、ペ

42 2008.3 金属資源レポート (758) ⑧ Jacare´ ラテライトニッケル鉱床 Jacare´ 鉱床は、Puma 鉱床の西北西約 80km に位置しており、Onca-Puma 鉱床と同 ̃ 様に太古代の Xingu コンプレックスに貫入 した 2.7Ga の塩基性・超塩基性層状岩体を原 岩とするラテライトニッケル鉱床である。 レ Jacare´ 岩体は、南北延長 18km、厚さ 2.5km ポ で東西両サイドを N-S 系断層で切られる、ダ ー ナイト、ハルツバージャイトおよび斑れい岩 ト からなる。Carlon ほか(2006)によると、 鉱床は珪質ラテライト(Ni : 0.8 %)、鉄質 ラテライト(Ni : 1.1 %)およびニッケルサ ブ プロライト(Ni : 1.7 %)からなる(図 25)。 ラ ジ 資源量: 430 百万 t、Ni 品位: 1.33 %と見積 ル もられている。本鉱床は 1970 年代に発見さ 金 れ、CVRD が一時期探査を行ったが撤退、 属 鉱 2000 年 Anglo American が探鉱権を取得し 物 探鉱を行っている。 資 Carajas 山塊の南で東西に断続する塩基 源 ´ の 性・超塩基性層状貫入岩体のラテライト化 魅 は、母岩の特徴に加え、準平原化、断裂の発 力

達、風化により深部まで及んでおり、ラテラ ― イトニッケル鉱床形成の好条件が揃っていた 地 と言える。 質 構 造 ⑨ Luanga クロマイト・白金族鉱床 発 Luanga クロム・白金鉱床は、Carajas´ 地 達 史 域の東に位置しており、Itacaunas´ 超層群に と 貫入した 2.76Ga の Luanga 塩基性・超塩基 メ 性層状岩体を母岩とする。本岩体は、かんら タ ロ ん岩、ハルツバージャイト、ノーライトから ジ なり、1.85Ga の変成・熱水作用を被って透角 ェ ニ 閃石、滑石、蛇紋石等に変化している。玄武 ー 岩マグマの結晶分化作用により形成されたと の 言われており、クロマイトは、輝岩とかんら 視 点 ん岩の遷移帯で晶出しており、厚さ 1m で延 か 長 1km に亘って確認されている。塊状~鉱 ら 染状で沈積したかんらん石と斜方輝石がクロ ― マイトの間隙を充填する。Cr2O3 は 25.53 ~ 42.53 %で Niquelandia 岩体のものより低い。 白金族鉱物は、braggite および sperrylite と してクロマイト、珪酸塩鉱物およびニッケル 砒素鉱物中に産する。クロマイト中の総白金 族量は 2.785ppm、Pt/Ir は 24.2 と報告され ている(Girrardi et al., 2006)。

⑩ Serra Pelada 金・白金族鉱床 図 25 Jacare´ ラテライトニッケル鉱床の地質(Carlon et al., Serra Pelada 鉱床は、Carajas´ 地域の東に 2006) 位置しており当地域で唯一炭酸塩岩に関係し た金・白金鉱床である。1980 年代初期に 4 万人に及ぶガリンポが集まって風化残留鉱床 の金を採掘したことで有名になった。1980 年~ 1984 年に 32.6t の金が採掘された。その 中には 62kg のナゲットが含まれていた。風 化帯は地表下 300 ~ 350m 以深に及んでお

2008.3 金属資源レポート 43 (759) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 地 質 構 造 発 達 史 と メ タ 図 26 Serra Pelada 金鉱床の地質・地質断面(Villas and Santos, 2001) ロ ジ ェ ニ ー り、調査は酸化帯内部で終わっている。金鉱床は、Rio ⑪ Azul マンガン鉱床 の Nova 層群を被う低変成作用を受けた Rio Fresco 層群 Azul マンガン鉱床は、N4 鉄鉱床の西約 15km に位 視 ´ 点 (1882 ± 5Ma)の炭酸塩岩(変シルト岩、炭酸塩岩質 置しており、海洋プラットフォームで堆積した Aguas か 変シルト岩、脱カルシウム化ドロマイト質大理石)お Claras 層群下部(2.645Ga)の泥質岩中に産する堆積鉱 ら よび幅 5 ~ 50m のジャスペロイド層を母岩としている 床である。鉱量: 65 百万 t、MnO2 品位: 75 %と言わ ― (図 26)。下盤の炭酸塩岩はドロマイト質大理石で、こ れている。 れに閃緑岩が貫入する。石英・緑泥石のほか方解石・ 電気石・黄鉄鉱・黄銅鉱を伴う変質作用は変シルト岩 ⑫Carajas´ 鉄鉱床 の葉理構造と交錯する脈および角礫岩の基質として産 Carajas´ 鉄鉱床は、2.75Ga の Itacaunas´ 超層群 Garo する。鉱体は横臥褶曲のヒンジ部に発達する。鉱化作 Para 層群中に胚胎する BIF(縞状鉄鉱層)で、上位と 用を伴う炭酸塩岩は、非晶質炭素、石英、セリサイト、 下位の火山岩層の間に産しており、ジャスピライトか カオリナイト、赤鉄鉱、針鉄鉱、マンガン酸化物およ らなる(図 27)。ジャスピライトは赤鉄鉱/磁鉄鉱とジ び僅少の硫化物、電気石、緑泥石、磁鉄鉱からなる。 ャスパーの互層からなり、スランプ、脱水ノジュール またパラジウムが合金(Au : 94、Ag : 3、Pd : 3) などの様々な堆積構造が見られる。REE パターンは上 および鉱物(atheneite、potarite)として産する。ま 下の塩基性火山岩と同じパターンを示すことから、リ たプラチナは isoferroplatinum として産する。金も合 フト環境の火山―堆積岩活動に伴って形成されたと考 金および直径 4 ~ 60mm の単体として産する。褶曲と えられている。火山岩に伴われる点はアルゴマ型に類 断層で擾乱を受けた変堆積岩は鉱液の通路として重要 似するが、地球化学的には Eu の正異常および銅およ な役割を果たした。特に褶曲のヒンジ、角礫岩、断層 び亜鉛の異常を示し、スペリオル型とも違った特徴を は金をトラップする適当な場となった。初生鉱石の金 持っており、Carajas´ タイプと称されることもある。 量は 30t(+)程度で、白金族については不明である。 ラテライト化によるジャスピライトのシリカの溶脱に

44 2008.3 金属資源レポート (760) レ ポ ー ト

ブ ラ ジ ル 金 属 鉱 物 資 源 の 魅 力

― 図 27 CarajasN4´ 鉄鉱床の地質断面(Clout and Simonson, 2005) 地 質 構 造 発 達 史 より赤鉄鉱が濃集し Fe 品位が 60 %を越す。鉄鉱層の 石、黄鉄鉱化に特徴付けられる変質帯中の高品位鉱脈 と 厚さは 400m に及び中央部の Serra Norte 鉱床(N1、 あるいは鉱染状鉱として産する。ストックワークタイ メ N2、N3、N4、N5、N6、N7 鉱体)と南部の Serra Sul プは Tele Pires 貫入岩体に存在するが、広域的なリニ タ ロ 鉱床、東部の Serra Leste 鉱床が知られている。鉱 アメントあるいはせん断帯に支配されている。 ジ 量: 180 億t、Fe 品位: 60 ~ 67 %である。2006 年 Peixoto de Azevedo 地域では、金鉱化作用は珪化、 ェ ニ には 81.7 百万tの鉄鉱石を生産した。 緑泥石化、セリサイト化、緑簾石化、プロピライト化 ー 珪化、緑泥石化、セリサイト化、緑簾石化、プロピラ の 2)Carajas´ 地域以外の鉱床地帯 イト化に特徴付けられる NNW-SSE および WNW-ESE 視 点 ① Alta Floresta 金鉱床地帯(No.12) 系のせん断帯および引張構造部に存在する。Teles か Alta Floresta 地域は、図 6 に示す Ventuari-Tapajos´ Pires 地域の金鉱化作用は花崗岩バソリスに関係してお ら ベルト(1.9-1.8Ga)の南部および Rio Negro-Juruena り、せん断バンド中の鉱染および石英脈中の硫化物に ― ベルト(1.8-1.55Ga)の北部にまたがる地域をさす。1.9 伴って産する。石英、緑簾石、緑泥石、黄鉄鉱を伴う ~ 1.8Ga の花崗岩・モンゾナイト質深成岩、花崗岩・ 熱水変質帯を伴う。酸性火山岩中の鉱染~ポケット状 トーナル岩質片麻岩、片岩、塩基性―超塩基性岩から の黄鉄鉱も伴う。Cabeca 地域では、金鉱化作用は複数 ̃ なる基盤およびこれらを覆うカルクアルカリ岩質火山 回の圧砕作用を受けた火山岩・堆積岩層を母岩とする。 岩類(Teles Pires 火山岩類)、1.8 ~ 1.5Ga の大陸性リ Alta Floresta 地域には金鉱床のほかに Toles Pires フトの堆積物(Beneficente 層群)、1.4 ~ 1.2Ga の陸成 火山活動に関係した低変成火山岩類中に多金属鉱床 層である Dardanelos 層アルカリ玄武岩からなる。 (Au、Ag、Cu、Pb、Zn)を産する。Serra do 金鉱床地帯は Cachimbo グラーベンに沿って約 Expedito ではせん断帯の交錯部に塊状の多金属鉱床を 500km 以上に亘って広がる。Alto Floresta 地域の金鉱 産する。Moreru 地域では熱水変質を被った酸性火山 床は、せん断帯中の石英脈、ポーフィリーあるいは鉱 岩中に鉱染状~塊状鉱床を産する。Terra Preta 地域 染タイプ、ストックワークタイプに分類される。せん では Beneficente 層群中の砂岩、泥質岩、炭酸塩岩中 断帯中の金鉱床は、数 km の幅を持つ NW-SE 系延性 に厚さ 7 ~ 12m、銅品位 0.35 %の黄銅鉱、斑銅鉱を含 せん断帯に関係しており、数十本から数百の含金石英 有する鉱化ゾーンが発達する。 脈を有する。代表例は Paraoba 鉱床で金量は約 4.3t と 見積もられている。ポーフィリーあるいは鉱染状タイ ② Tapajos´ 金鉱床地帯(No.13) プはカルクアルカリ花崗岩に関連しており、代表例は Tapajos´ 地域は Ventuari-Tapajos´ ベルト(1.9- Serrinha do Matupa´ 花崗岩(1.87Ga)で、絹雲母、長 1.8Ga)に属し、原生代前期(>2.0Ga)の Cuiu-Cuiu´ ´ お

2008.3 金属資源レポート 45 (761) よび Jacareacanga 変成帯の片麻岩、ミグマタイト、花 れている。これら金鉱床はカリ長石/セリサイト/緑泥 崗岩、角閃岩および緑色岩相の変成作用を受けた火山 石変質に関連していること、微弱ではあるが方鉛鉱、 岩・堆積岩よりなる。さらに 2.0 ~ 1.9Ga のカルクアル 閃亜鉛鉱、黄銅鉱を伴うこと、赤鉄鉱・氷長石を伴う カリ岩質でラパキビ組織を有する Parauari 花崗岩に貫 こと、初生アルナイト、硫砒銅鉱および四面銅鉱が欠 入される。これらを引張テクトニック期に形成された 如することから低硫化系および高硫化系金鉱床の特徴 レ Iriri 層群(1.89-1.87Ga)の中性~酸性の陸性火山岩が を有する。また深成岩関連型金鉱床の特徴も持つ。 ポ 覆うとともに非造山型花崗岩である Maloquinha 岩体 低品位であるが Abacaxis 花崗閃緑岩および Jutai´ ・ ー (1.87-1.80Ga)が貫入する。また Ingarana はんれい岩 Saõ Jorge のストックワーク状の金を伴う硫化物鉱化 ト (1.90-1.89Ga)が貫入する。これらを覆って 作用はポーフィリー環境で形成されたことを示唆して Beneficente 層群が堆積し、1.69Ga の Crepori 塩基性シ いる。Tapajos´ 地域で採掘された金の 90 %以上は漂砂 ルおよび Cachoeria Seca 塩基性・超塩基性岩体が貫入 鉱床からで、1959 年~ 1996 年の産金量は 159t が記録 ブ する。 されている。 ラ Tapajos´ 金鉱床地帯はブラジルで最も広い金鉱床生 アルカリ岩~サブアルカリ岩質の後期の Maloquinha ジ 成区で Maloquinha 貫入岩以前の基盤中に産する。金 花崗岩は F、Zr、REE、Y、Sn、Cu、Au の異常を示す。 ル 金 鉱化作用のスタイルは、石英脈中と鉱染もしくはスト 属 ックワークに分けられる。さらに石英脈中のものは、 ③ Alto Guapore´ 金鉱床地帯(No.10) 鉱 黄銅鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、磁硫鉄鉱、モリ Alto Guapore 金鉱床地帯は、ボリビア国境付近の 物 ´ 資 ブデナイトを伴う塊状から櫛形の石英中および構造的 Sunsas´ ベルトに位置する。同ベルトは 1.2 ~ 1.0Ga の 源 空隙を充填した石英中に存在するもの、セリサイト― 非活動的大陸縁辺部および内陸の Aguapei´ リフト(オ の 魅 黄鉄鉱、カリ長石、緑泥石―緑簾石―方解石変質帯中 ーラコーゲン)を形成した後、Laurencia と Atlantica 力 に存在するもの、浅所での脆性断層形成時期に貫入し 大陸の衝突により Gurenville 造山運動(Sunsas´ イベン た脈状のもの、各種花崗岩質岩に貫入した石英脈に伴 ト)を受けた地帯でもある。Sunsas イベントにより ― ´ 地 われるといった特徴を持っており多様性に富む。これ N20W の右横ずれセンスを持つ引張せん断帯が形成さ 質 ら鉱脈型の鉱化作用の時期は、ほぼ同時期で、 れ、Aguapei´ リフトにも影響を与えた。金鉱化作用は、 構 Maloquinha 貫入岩と同時期もしくはそれ以降と考えら Aguapei´ 層群の堆積岩と基盤の花崗岩―片麻岩との境 造 発 達 史 と メ タ ロ ジ ェ ニ ー の 視 点 か ら ―

図28 Rondonia^ 錫鉱床地帯の地質(Dardenne and Schobbenhaus, 2000)

46 2008.3 金属資源レポート (762) 界部付近に発達する。金鉱石は石英、黄鉄鉱、自然金 期の Li 雲母・曹長石花崗岩に伴う鉱染状黄錫鉱・コロ からなり磁鉄鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱、硫砒鉄鉱を伴う。 ンバイト・タンタライト、ペグマタイトに伴うトパー 金鉱化作用は珪化、緑泥石化、セリサイト化を伴う熱 ズ・ベリル・黄錫鉱・コロンバイト・タンタライト、 水変質作用を覆っており、変質作用の時代は 960 ~ グライゼンに伴う黄錫鉱、石英脈に伴う黄錫鉱・鉄マ 910Ma を示す。鉱床はいずれも小規模で品位は Au : ンガン重石、銅・亜鉛・鉄硫化物として産する。1995 0.6 ~ 20g/t である。Alto Guapore´ 金鉱床地帯の金資 年までに 220,000t の錫を生産している。2000 年時点で レ 源量は 90t 強と推定されている。 Bom Futuro および Santa Babara´ 地帯で 7,500t/年の ポ 錫を生産している。 ー ④ Alto Jaura 金鉱床地帯(No.11) つづく(以下 5 月号) ト Alto Jaura 金鉱床地帯は Riob Negro-Juruena ベルト (2008.1.31) (1.8-1.5Ga)に位置しており、Alto Jaura グリーンスト ンベルトの一画を占める。グリーンストンベルトは下 ブ 位から塩基性・超塩基性火山岩、酸性火山岩および堆 ラ ジ 積岩が塁重し、これらにトーナル質深成岩が貫入する ル (2.0-1.7Ga)。金鉱床として唯一 Cabacal 鉱床が知られ 金 ̃ ている。Cabacal 鉱床は島弧環境で形成されたチャー 属 ̃ 鉱 トを挟在するグリーンストンベルトに存在する。この 物 鉱床には、せん断帯中のもの、火山性塊状硫化物タイ 資 源 プおよびトーナル岩中のものの3つの鉱化スタイルが の 知られている。トーナル岩中のものは、黄銅鉱、黄鉄 魅 鉱、磁硫鉄鉱、白鉄鉱、閃亜鉛鉱、キューバ鉱、方鉛 力

鉱、モリブデナイトから構成され鉱染、縞状、脈状、 ― 角礫状および塊状と多様な形態を示す。また Se、Te、 地 Au-Bi および Au-Ag を含む。Cabacal 鉱床の資源量は 質 ̃ 構 金 1.9 百万 oz、銀 0.6 百万 oz、銅 43,000t と記録されて 造 おり、一部が採掘されたが現在鉱山は閉山されている。 発 達 史 ⑤ Arapuanã 火山性塊状硫化物鉱床 と Arapuanã 鉱床は前記 Alto Jaura 金鉱床地帯内に位 メ 置する。Karmin Exploration 社の HP によると、鉱床 タ ロ は Alto Jaura グリーンストンベルト中の Arapuanã 火 ジ 山岩・堆積岩層の珪長質・塩基性火山岩を母岩として ェ ニ おり、Arex および Ambrex 鉱化帯ほか数個からなり、 ー 下位のストックワーク鉱と上位の塊状鉱からなる。鉱 の 石は黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱お 視 点 よび重晶石からなる。胚胎層の厚さは 1km、延長 9km か に亘って広がっており、鉱化帯の規模は、Ambrex で ら 1,050m × 400m × 150m、Arex で 1,400m × 200m × ― 60m。資源量は Ambrex で精測資源量: 18,322 千 t、 Zn : 4.03 %、Pb : 1.52 %、Cu : 0.09 %、Au : 0.18g/t、概測資源量: 3,528 千 t、Zn : 2.54 %、Pb : 1.00 %、Cu : 0.58 %、Au : 0.25g/t、Arex で精測資 源量: 9,380 千 t、Zn : 2.54 %、Pb : 1.00 %、Cu : 0.58 %、Au : 0.45g/t、概測資源量: 2,145 千 t、 Zn : 2.54 %、Pb : 1.02 %、Cu : 0.51 %、Au : 0.60g/t と見積もられている。

⑥ Rondonia^ 錫鉱床地帯(No.9) Rondonia^ 錫鉱床地帯は、Rondonia-San^´ Ignacio ベル ト(1.5-1.3Ga)内にあり、1.3 ~ 0.9Ga に起こった Sunsas-Aguapei 造山運動に関係した Sao Lourenco-

´ ´ ´ ̃ Caripunas ラパキビ花崗岩および Rondonia^ 花崗岩に関 係して形成された(図 28)。前者は造山期に先立つ引 張期に、後者は造山運動から離れた場で形成されたと 考えられている。錫鉱化作用は、一連の花崗岩活動末

2008.3 金属資源レポート 47 (763)