Number 48 平成27年3月31日発行 東京国際大学の国際交流の充実と発展を目指して
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東京国際大学国際交流研究所 Bulletin of Institute of International Exchange, Tokyo International University NUMBER 48 平成27年3月31日発行 東京国際大学の国際交流の充実と発展を目指して 2014年9月15日、第1回公開講演会、中国、陕西师范大学の哈宝玉教授とトルコ、スレイマン・シャー大学のアドナン・アスラン教授による講演 (日本トルコ文化交流会との共催) ■目次 1.〔巻頭言〕 3.〔平成 26 年度科研業績報告〕 国際交流研究所の使命…………倉田 信靖 論文・研究ノート 出張報告書 2.〔研究員レポート〕 発展を続けるモンゴル経済: 4.〔随想〕 第2世代の新興国群との比較 世界は変動の季節を迎えたのか? …………平井 貴幸 …………塩尻 和子 ■目次 1.〔巻頭言〕 国際交流研究所の使命 ………………………………………………………………倉田 信靖 3 2.〔研究員レポート〕 発展を続けるモンゴル経済:第 2 世代の新興国群との比較 ……………………平井 貴幸 4 3. 〔平成 26 年度科研業績報告〕 2014 年度学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)(海外学術調査) 研究課題「変革期のイスラーム社会における宗教の新たな課題と役割に関する調査・研究」 【論文・研究ノート】 Adnan Aslan:‘An Islamic Religious Pluralism’ as a Ground for Interfaith Dialogue in the Context of New Theological Language of Fethullah Gülen …………………………………… 12 Mounira Chapoutot-Remadi:Tunisian Women during the transition’s days(2011-2014) …………… 28 Jonathan Magonet:Teaching Judaism to German and Japanese Christians: a comparative study …… 44 青柳 かおる:Early Embryos in Islamic Bioethics: A Comparative Study with Judaism and Christianity concerning Contraception, Abortion, and Embryonic Stem Cells ……… 53 阿久津 正幸:現代ジャワの二宮金次郎たち:伝統的倫理と地域共同体形成の比較研究…… 70 岩崎 真紀 :コプト・ディアスポラの発展 ――カナダのコプト・キリスト教徒移民を事例として―― ………………… 80 菊地 達也 :極端派(グラート)の伝統とアラウィー派 …………………………………… 95 塩尻 和子 :Japanese religions and the Interfaith Dialogue with Islam for the Peace-Building … 114 宮治 美江子:北アフリカ(マグリブ)の歴史と文化 女性たちの活躍を中心に ………… 121 吉田 京子 :12イマーム・シーア派のハディース観 ………………………………………… 126 辻上 奈美江:著書紹介:『イスラーム世界のジェンダー秩序 ――「アラブの春」以降の女性たちの闘い』 …………………………………… 134 【出張報告書】 池田 美佐子 ………………………………………………………………………………………… 136 植村 清加 ………………………………………………………………………………………… 136 塩尻 和子 ………………………………………………………………………………………… 137 四戸 潤弥 …………………………………………………………………………………………… 140 4.〔随想〕 世界は変動の季節を迎えたのか? …………………………………………………塩尻 和子 142 2 (巻頭言)国際交流研究所の使命 東京国際大学 理事長・総長 倉田 信靖 東京国際大学国際交流研究所(以下、国交研と略称)は、昭和 54 年(1979 年)の開設以来、事 務組織を大学の外部に置いていたが、今から 7 年前に暫定的に早稲田キャンパス内に移転し、2011 年 4 月から大学第 1 キャンパス内に定めた。 また、国交研の所長は、2 年ごとに理事長の指名によってご就任いただいている。高橋宏学長補佐 (現学長)のあとを受けて、2011 年から塩尻和子所長のもとに活動をしている。 国交研は創立以来、36 年間にわたり、歴代の所長、関係者によって、その使命を果たしてきた尊 い歴史がある。さらに、これまで、国交研を側面から支えてきた財団法人昭和経済研究所の存在に感 謝したい。昭和経済研究所の活動には、長年に亘る調査、研究を誇る「アラブ調査室」、また栗林教 授を中心とするモンゴル研究組織などがある。 国交研はこれらの先行する研究機関との連携をはかりつつ、大学名に相応しい汎国際的な組織活動 を展開し、学際的な組織として、本学を発信基地に、世界を結ぶ掛け橋として発展することを期待す る次第である。 国交研は 2012 年 4 月には日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)(海外学術調査、2012 年度から 2015 年度)の研究拠点に採択された。それ以来、海外から高名な研究者を招聘して、年に 少なくとも 2 回の公開講演会を開催し、内輪では年 3 回の研究会を実施し、年度末には国交研の紀 要である『IIET 通信』を発行してきた。 今年度の海外からの招聘者については、6 月 28 日にロンドンからレオ・ベック大学前学長のジョ ナサン・マゴネット名誉教授を迎えて研究会を開いた。公開講演会は、9 月 15 日に「世俗社会にお ける宗教回帰―トルコと中国の事例から―」という共通テーマのもとで、トルコのスレイマンシャー 大学文学部長のアドナン・アスラン教授と、中国陕西师范大学中国西部边疆研究院の哈宝玉教授を招 聘して、日本トルコ文化交流会と共同で開催した。また 11 月 8 日はチュニス大学のムニーラ・シャ プトー名誉教授をお迎えして、「民衆革命下のチュニジアの女性たち」と題して、本学の早稲田キャ ンパス、マルティホールにおいて公開講演会を実施した。 さらに本年度は、5 月 10 日、11 日に日本中東学会第 30 回年次大会を本学第 1 キャンパス 6 号館 で開催するにあたり、国交研は実行委員会事務局本部として、この記念すべき第 30 回大会を 300 余 人の出席という大盛会へと導いた。 本学は今年度、「英語学位プログラム(E-track)」を開始するなど、名実ともに「国際大学」にふ さわしい新制度が順調に展開しており、すでに大きな成果をあげている。ますます学術的な国際化が 進展する本学の研究機関として、国交研がさらに発展していくことを、期待する。 3 研究員レポート 発展を続けるモンゴル経済:第 2 世代の新興国群との比較 東京国際大学非常勤講師・東京国際大学国際交流研究所研究員 平井 貴幸 はじめに 近年,世界から注目を集めている新興国群がある。それは,コロンビア,インドネシア,ベトナム, エジプト,トルコ,南アフリカ共和国の頭文字をとって CIVETS(シベッツ)と呼ばれる。ブラジル, ロシア,インド,中国の 4 カ国,いわゆる BRICs(ブリックス)に次ぐ,第 2 世代の新興国として経 済発展が期待されている国々なのであるが,そこにはモンゴルは含まれていない。 しかし,モンゴル経済が高い成長率を維持しつつ拡大してきたことはよく知られている。世界銀行 の最新データによると,モンゴルの実質 GDP 成長率は 2011 年に 17.7%,2012 年に 12.3%,そして 2013 年に 11.8%と高成長率が継続している。経済成長率ばかりに関心を向けることは一概によいと はいえないが,それでも急成長を遂げている国々の動向を把握することは重要であろう。以下では, モンゴルと CIVETS の近年のマクロ動向を基礎的な経済指標によって比較・確認することにしたい。 1.経済基盤としての人口 マクロ経済動向を概観する際,重要な指標として「人口」が挙げられる。これは,総需要が主に国 内の人口によって生み出されるためである。ただ一般に,一国経済は国際貿易などの対外的な取引を 行っているため,外国国民から派生する需要にも注意しなければならない。ここで,各国の人口規模 とその増加率を表 1 に示す。 表 1 人口の推移 出所:World Bank, World Development Indicators より作成。 注:ここでの増加率とは 2000 年から 2013 年までの年平均増加率。 4 モンゴルの人口は,同じアジア圏に属するベトナムの約 30 分の 1,インドネシアの約 90 分の 1 で あり,その規模はかなり小さい。しかし,2000 年から 2013 年にかけて,それは約 1.3%で増加しており, CIVETS のそれと同水準である。もしこの傾向が持続するならば,モンゴルの人口は 2018 年には 300 万人を超えることになる。潜在的な内需の源泉である人口の増加が,今後の国内総生産(GDP)の拡 大につながる可能性は大きいといえよう。 2.国内総生産(GDP)と物価水準 表 2 は,毎年の財・サービスの市場価格を用いて計測された名目 GDP の推移を示したものである。 2000 年から 2013 年にかけての年平均増加率を見ると,モンゴルのそれは 20%と最も高い。ただ,名 目 GDP は物価変動の影響を考慮していないため,それを除去した実質 GDP の推移を表 3 に示すこと にする。 表 2 名目 GDP の推移 出所および注:表 1 に同じ。 表 3 実質 GDP 指数の推移 出所および注:表 1 に同じ。 5 2000 年を 100 とした指数で 2013 年を見ると,中国の 3.4 倍に次いで,モンゴルが約 2.8 倍となり, これは新興経済群に比して高い数値であるといえる。また,モンゴルの対前年の実質成長率が,過去 3 年,突出して高いことも確認できる。 次に,物価水準の変化を見てみよう。GDP デフレーター指数と消費者物価指数の推移を表 4 に示す。 前者の年平均増加率は,CIVETS に比してモンゴルのそれは高い。また,後者ではベトナムやエジプ トと同水準の増加率を示していることがわかる。 表 4 物価関連指標の推移(2000 年= 100) 出所および注:表 1 に同じ。 3.ドル表示の一人当たり GDP 表 5 は,人口一人当たりのドル表示による GDP の推移を示したものである。2013 年におけるモン ゴルのそれはアメリカの約 8%,日本の約 10%であり,インドネシアやエジプトと同水準となる。また, 2000 年を 100 とした指数で 2013 年を見ると,モンゴルのそれは 8.6 倍となり,CIVETS や BRICs の どの新興国よりも,一人当たりでみて,急速な成長を遂げていることがわかる。 表 5 一人当たり GDP の推移 出所:表 1 に同じ。 6 4.GDP の需要面:消費,投資および貿易 こうした急速な成長の背景にはどのような構造変化があったのだろうか。最初に GDP の需要面, つまり消費,投資,輸出入の動向をみることにしよう。 表 6 は消費支出・投資支出の対 GDP 比率の推移を示したものである。2013 年のモンゴルの投資支 出比率は約 44%と高い水準にあることがわかる。ほぼ同水準といえるのは中国のみであり,モンゴル・ 中国の高成長率は需要面では投資によって強く牽引されているといえよう。また,外国直接投資(FDI) の対 GDP 比率をみると,モンゴルのそれは約 19%と,圧倒的に高い数値を示している 1。CIVETS の 中ではベトナムのそれが最も高いとはいえ,2013 年で 5.2%に過ぎない。 表 6 GDP 需要面における消費・投資関連項目の推移(対 GDP 比,%) 出所:表 1 に同じ。 表 7 輸出入の推移(対 GDP 比,%) 出所:表 1 に同じ。 次に,国際貿易の対 GDP 比の推移を表 7 に示す。モンゴルは小国であるため,自国の生産だけで は内需に対応することは難しい。そのため,貿易依存度が高いことは当然といえよう。CIVETS の中 では,ベトナムの輸出,輸入の比率が高いことが確認できる。 1 FDI と GDP とは統計概念が異なるが,ここでは FDI の大きさを GDP という尺度で測った場合,どの程度の割合になるか ということを示すために用いている。 7 5.GDP の供給面:就業および産業の構造 次に,GDP の供給面について見てみよう。表 8,表 9 はそれぞれ就業構造と産業構造の推移を示し たものである。就業構造を見ると,モンゴルも新興国もほぼ総じて第 1 次産業の比率が高いことが一 つの特徴といえる。ただ,2005 年から 2012 年にかけて,その比率は減少傾向にあり,第 2 次・第 3 次産業への就業比率が増加している。ただし,モンゴルでは第 2 次産業への就業比率よりも第 3 次産 業へのそれが増加しており,これは,モンゴルの第 2 次産業が鉱業に特化していること,換言すれば, 製造業の発展が課題であることを示唆している。事実,産業構造の推移を表 9 で見ると,モンゴルの 製造業 /GDP 比率は 2012 年において 7.2%と,新興国の 2 桁台に比してかなり小さいことがわかる。 表 8 就業構造(100 万人,%) 出所:表 1 に同じ。 表 9 産業構造(対 GDP 比,%) 出所:表 1 に同じ。 6.マネーサプライの動向 これまでは,いわゆる「実物経済部門」に焦点を当ててきたが,ここではもう一つ別の側面,つま り「金融経済部門」について見ることにしよう。流通している現金,短期預金,そして定期預金の合 計を M2 と呼ぶ。この M2/GDP 比率は,「実物経済部門」と「金融経済部門」との大小関係を示す指 標であり,この推移を表 10 に示す。 モンゴルの M2/GDP 比率は 2005 年時点では約 38%,2008 年に低下したものの 2013 年には 54%ま 8 で増加している。金融部門は徐々に発展していることが示されている。ただ,CIVETS ではエジプト が約 79%,南アフリカが約 74%,そしてベトナムが約 117%となっており,モンゴルに比して高い 水準を維持している。つまり,モンゴルの金融部門は CIVETS に比して相対的にまだ遅れていること が示唆される。 表 10 M2 の推移(対 GDP 比,%) 出所:表 1 に同じ。 おわりに 以上簡単に世界から注目を集めている CIVETS との比較を通じて,モンゴルのマクロ経済趨勢を概 観した。これまでの議論を総括すると,モンゴルは第 2 世代の新興国と呼ばれる CIVETS と同等,あ るいはそれ以上の発展段階にあるといえる。しかし,豊富な地下資源のみに特化しているモンゴルが, 投機的な市場として注目されるということのみであってはならないことは確かであり,より付加価値 を生み出す産業部門の振興が急がれているといえるであろう。 参考文献・参考資料 ・ 平井貴幸(2014)「新しい第 2 世代新興国としてのモンゴル国の経済」,『日本とモンゴル』(日本モ ンゴル協会)第 48 巻第 2 号,96-102 頁。 ・ 平井貴幸,栗林純夫(2013)「継続するモンゴルの経済成長」,『日本とモンゴル』(日本モンゴル協 会)第 47 巻第 2 号,52-60 頁。 ・ World Bank(2014)Mongolia Economic Update December 2014. ・ Statistical Office of Mongolia, Mongolian Statistical Yearbook(各年版)。 9 附表 参考として,モンゴル統計局『モンゴル統計年鑑』(各年版)より作成した関連統計を以下に付加 する。 附表 1 モンゴルの名目 GDP と産業構造 附表 2 モンゴルの財政規模 10 附表 3 モンゴルの牧畜関連指標 附表 4 モンゴルの鉱工業生産 11 科研業績報告 2014 年度学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)(海外学術調査) 研究課題「変革期のイスラーム社会における宗教の新たな課題と役割に関する調査・研究」 論文・研究ノート ‘An Islamic Religious Pluralism’ as a Ground for Interfaith Dialogue in the Context of New Theological Language of Fethullah Gülen Adnan Aslan Professor, Dean of Faculty of Humanities and Social Sciences, Süleyman Şah University In this presentation, I would like to first point out some historical exclusivistic attitude of Christianity. Then I will enumerate some of the Quranic principles with regard to the issue of religious pluralism as propositions, which aim to suggest an account of ‘Islamic pluralism’. I will formulate these propositions by depending on the Quranic verses and arranging them in order, from those, which suggest a pluralistic attitude to those which suggest an inclusivist attitude. A Historical applications of these principles were taken into consideration. After that I will offer a ground for ‘new theological language’ in the context of writings of Fethullah Gülen. We, Muslim intellectuals, need to be aware of the fact that we live in societies, which are not constituted by Islamic cultural dynamics. In such a socially constructed world, on the one hand we need to manage to be remain spiritually intact as Muslims; on the other hand we need to initiate and engage in communication with the adherents of other faiths. In this paper, I am not able to explicate all the modern social, cultural and institutional forces that socially threaten the spiritually intact Muslim. This is another issue and needs a special study. My task here, in this paper, is to explore the potential of Islam and Islamic culture to develop a feasible ground for establishing inter-faith dialogue and communication. In the Middle Ages, the relationship between religions was often in a hostile atmosphere; for instance Christians’ conflict with Muslims had often ended in the battlefield. Christian theological argument with regard to the ‘heathen world’ and ‘heretics’ at that time was orchestrated by the Church. Such attitudes not only separated Christians and non-Christians but also Catholics and heretics. As a consequence, the motto ‘Extra ecclesiam nulla salus’ (there is no salvation outside the Church) became a central principle of the Catholic Church. In the Middle Ages, a Christian theology of religions was dominated by exclusivism, that is, all people, [whatever race, colour or religion] must be Christian if they are to be saved. For instance, in the decree of the Council of Florence in 1438-45 it was stated: No one remaining outside the Catholic Church, not just pagans, but also Jews or heretics or schismatics,