航空宇宙技術 -論 文- Vol. 14, pp. 53-58, 2015

*1 超小型衛星 STARS-II のミッション計画と運用結果 Planned Mission and Operation Result of Nano-Satellite STARS-II

能 見 公 博*2 Masahiro NOHMI

Key Words: Nano-satellite, Tether, Space Experiment, Operation Result

Abstract: STARS-II was launched on 28 February 2014, as one of piggy-back satellites by the H-IIA rocket. It had been developed in Kagawa University. STARS-II consists of Mother Satellite (MS) and Daughter Satellite (DS) connected by Electro Dynamic Tether (EDT). MS deploys EDT having DS at its end. DS is a tethered space robot, and it has one arm whose end is attached to the EDT. Main missions are follows: (1) Electro Dynamic Tether (EDT) deployment by gravity gradient, (2) gathering electrical current by EDT, (3) Attitude control by arm link motion under tether tension by gravity gradient, (4) Tether deployment and retrieval by tether tension control. Unfortunately, STARS-II mission could not achieved perfectly. However, the STARS-II condition can be inferred by telemetries through CW beacons and the change of orbit. This paper describes the planned missions and reports the operation results.

1. は じ め に この研究開発は,近年注目を集めている超小型衛星 2)を 現在,寿命の尽きた衛星,ロケットの残骸などの宇宙ゴ 用いた宇宙実験により進めている.これまでに,2009 年 1 ミ問題が深刻化しており,その数は既存のゴミの衝突によ 月に打ち上げた香川衛星 KUKAI では,親子衛星,テザー り増加していくと予測されている.そして,継続的な宇宙 衛星(5m/非導電性),ロボット衛星の特徴を持ち,これ 利用のためには,ゴミ除去は緊急かつ重要課題であるとし らの技術実証に成功した 3-6).さらに 2010 年 8 月の観測ロ て世界的に認識され始めている 1).香川大学では次に説明 ケットによる 10 分間の宇宙実験において,テザー張力を利 する宇宙ゴミ除去方法を提案し,研究開発を行っている. 用したロボット制御実験に成功した 7).提案する宇宙ゴミ 地球周回軌道上においてテザー(導電性ワイヤ)を伸展, 除去法に次に必要な技術は,テザー長距離伸展およびテザ その先端に連結されるロボットにより宇宙ゴミを捕獲,テ ー電流発生である.その技術実証を主ミッションとして, ザーに電流を発生させて地磁場によるローレンツ力を推力 超小型衛星 STARS-II の開発を計画した. として軌道高度を降下し,大気圏に突入させ燃え尽きさせ 2. STARS-II 計 画 るものである(第 1 図参照). 第 2 図に STARS-II イメージを示す.SATRS-II は 2013 年 2 月 28 日に,GPM を主衛生とする相乗り衛星の一つと して,H-IIA ロケットにより軌道高度 407 km,軌道傾斜角 65 度の軌道に投入された.STARS-II は親子衛星であり, 親機と子機は導電性テザーで繋がれている.親子結合状態 では,テザーは親機に収納されており,親機に搭載される ブレーキ装置によりテザー伸展速度を減速する.また,子 機はテザー張力を利用した姿勢制御が可能なテザー宇宙ロ ボット機能を持つ.質量および寸法の計画値(EM 製作前) は次の通りである.

親衛星 質量: 4.2 kg 寸法: 160 x 160 x 253 mm 子衛星 質量: 3.8 kg 寸法: 160 x 160 x 158 mm 第 1 図 宇宙ゴミ除去法の提案 (寸法は,パドル等の突起物を除いた値)

* 1©2015 日本航空宇宙学会 平成 27 年 1 月 13 日原稿受付 *2 静岡大学大学院工学研究科機械工学専攻

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機が宇宙側に位置する重力傾斜安定とする計画であり,親 機は背面(テザー伸展方向の反対側)に,子機はパドルを 利用して上面(テザー伸展方向)を向く位置に GPS アンテ ナを配置する(第 4 図参照).第 4 図右側に GPS の地上試 験結果例を図に示す.地上において衛星の姿勢を変えて長 時間受信することにより,受信不可能な状況が発生しない ことを確認した.

第 2 図 STARS-II イメージ

以降に主要ミッション計画に関連する概要,および特徴 的な搭載機器について述べる. 2.1 重力傾斜を利用したテザー伸展 STARS-II では 300 m テザーを地球方向に伸展し,重力が傾斜しているこ 第 4 図 GPS アンテナ配置と受信試験結果 とを利用して安定状態とする.軌道上の重力傾斜を利用し たテザー伸展は,国内初の実験となる.ここで大きな課題 2.2 導電性テザーによる電流発生 STARS-II では,導 はリバウンド(残留張力による跳ね返り)の抑制である. 電性テザーとして被覆の無い電線(ベアテザー)を用いる. 目標長さ到達後に制動力(ブレーキ)をかけるが,リバウ ベアテザーによる電流発生は世界初となる.ベアテザーは ンドはテザーが絡むなどの事象を引き起こす可能性がある. テザー全体で電子を収集できるため,テザー端で収集する そこで,リバウンド抑制を考慮した制動力制御(張力制御) 従来手法と比較して効率的であると考えている.第 5 図に を行い,安定状態とする.テザーは毛糸玉方式で収納され STARS-II の導電性テザーシステムを示す.重力傾斜安定状 ており,スプール(毛糸玉の芯)を引き抜き,バネ力によ 態において,軌道運動により導電性テザーが地球磁場を横 り地球方向にテザー伸展初速度(計画値 3 m/s)を与える(第 切ると誘導起電力が発生する.ベアテザーの高電位部分に 3 図参照).この方式において,伸展抵抗は地上計測値と おいて,宇宙空間のプラズマから電子を収集し,テザー端 して 2 gf 程度である.そして伸展終了時(計画値 300 m 伸 の子衛星から電子を放出すると電流が発生する(予測値 展)は,リバウンドを回避するリール機構による制動力制 数 mA).電子放出装置はフィラメントを加熱することに 御(設計値~100 gf)により減速させ,地球方向に重力が よる方法を用いる.そして日照時および日陰時について, 傾斜していることを利用して安定状態とする. 誘導起電力,テザー電流,電子放出電力データを取得する. さらにローレンツ力の発生を評価するために,テザー両端 衛星の相対位置,および姿勢データを取得する.

第 3 図 テザー伸展機構概要図 第 5 図 テザー電流収集装置概略図

テザー伸展の挙動データは GPS による親子各位置を取 2.3 その他の特徴的搭載機器 子機はテザー宇宙ロボ 得する.また,角速度/磁気センサ/カメラ画像による姿 ットであり,第 6 図に示すアーム機構を搭載している.テ 勢データを取得する.STARS-II は,親機および子機それぞ ザーはアーム先端に繋がれており,アームは二自由度の関 れに GPS 受信機を搭載しており,位置を計測することが可 節を持っている.この関節は作動歯車の原理により動作し,

能である.テザー電流発生実験のため,子機が地球側に親 図に示すように0 および1 入力により,0 および1 の方向

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にアームを動かすことができる.STARS-II では,テザーが となった.また,親機 CW は打ち上げ直後では微弱電波で 重力傾斜安定状態に,重力傾斜力による張力を利用して姿 あったが,3 月 4 日以降に明瞭な電波となった. 勢制御を行う.これまでに,観測ロケット実験などにより 親機の CW 信号について,3 月 3 日午後 5 時台のパスま 姿勢制御の効果は検証してきているが,重力傾斜により発 では電子系データを含んでいたが,3 月 4 日午後 4 時台以 生する張力は非常に小さく,その状態での姿勢制御検証を 降のパスでは含んでいなかった.ロケット分離直後に正常 目的とする. シーケンスで起動した場合,電子系は起動せずにパドル(ア ンテナ)展開されるが,電子系が起動するとパドル展開は 実施しない.このことから,ロケット分離後にパドル展開 はできておらず,3 月 3 日午後 5 時以降に衛星は再起動し てパドル展開を行ったと推定される. 以上の結果から,アンテナ性能が良い子機(フィルムア ンテナ搭載)はパドル(アンテナ)が展開されていない状 態でも電波送信が可能であったが,太陽光発電は十分では 第 6 図 テザー宇宙ロボット機構 なく時間経過とともに電波が弱くなったと推定できる.さ らに,子機はフィルムアンテナを搭載した複雑な機構のパ また,STARS-II の子機は新しいアンテナ(フィルムアン ドルであるため,正常なパドル展開に失敗したため太陽光 テナと呼ぶ)を搭載することとしている.フィルムアンテ 発電が十分に行われなかったものと推定される.親機はパ ナは,KUKAI に搭載した太陽パドルアンテナ 4)(SPA: Solar ドルアンテナを搭載しており,3 月 3 日~4 日の間にパドル Paddle Antenna)を改良したものであり,パドル両端からフ (アンテナ)展開が行われ,その後明瞭に電波受信が可能 ィルムを扇形に展開し(第 7 図左参照),そのフィルム面 となったと推定される. にアンテナを這わせるものである.フィルム上に自由にア ンテナを配置できる特徴を持ち,全天型指向性を持ち,テ ザーに絡む可能性が少ない.親機は KUKAI と同じ SPA(第 7 図右参照)とし,両者の通信を比較する.

第 8 図 STASR-II のロケットからの放出写真

第 1 表 打ち上げ直後の衛星状態

第 7 図 アマチュア無線通信アンテナ

3. 運 用 結 果

H-IIA 23 号機は 2014 年 2 月 28 日 3:37am (JST)に打ち上 げられ,主衛星および副衛星を順次放出していった.第 8 図はロケットからの STARS-II 放出の写真である.第 1 表 に打ち上げ直後の衛星状態について示す. 打ち上げ後,香川大地上局における初回のパスは同日 2 月 28 日 5:13am - 5:23am (JST)であった.このパスでは子機 CW を捉えたが,親機 CW を捉えることはできなかった. 同日午後 6 時(JST)台のパスで,国内アマチュア無線局から 親機 CW 捕捉の情報が入った. 第 2 表に打ち上げ後 5 日間の CW データを示す.薄橙は ロケット分離直後は,子機 CW が明瞭に受信できていた 子機,薄緑は親機のデータを示し,斜体字は正確に判読で が,徐々に電波が弱まり,翌日以降はデータ解析が不可能 きない信号を示す.各記号(一行目)は次の通りである.

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第 2 表 軌道投入後 5 日間の CW データ

のパス(4 月 26 日 10:58am (JST))では CW を受信,直後 JST: 受信日時(14mmddhhkk のパス(4 月 27 日 1:02am (JST))では CW が受信できなか →2014 年 mm 月 dd 日 hh 時 kk 分) ったことを確認している.大気圏再突入は,H-IIA 23 号機 Call Sign: コールサイン の相乗り衛星 7 基の中で最も早く,テザーが伸展された可 (JR5YDY: 親機,JR5YDX: 子機) 能性が大きいことを意味している.なおテザー伸展につい No: CWの行数(M2, M4, M6:親,R2, R4, R6:子, ては,次節で詳細に述べる. は電子系起動時に送信される) 4. 運 用 解 析 time*: 電子系内部時刻(秒) RSSI: 受信強度 4.1 CW データ解析 子機の CW データにおいて,time Vg: 太陽電池発電電圧 (16 進数表示)は正常にカウントしている.また,太陽電 Vs: 機器供給電圧(電圧変換前) 池電圧は 67~6B ⇒ 8.1~8.4 V,太陽電池電流は 0A~0C ⇒ Is: 機器供給電流(総合) 0.30~0.36 A を示し,発電力が小さいことが分かる.子機 Rn*: コマンド受信回数 はフィルムアンテナ(透明ではある)が太陽電池を覆って Cn*: 通信系リセット回数 いるために(第 9 図参照),発電力が不足したと推定され Vc: 通信系電圧 る.さらに,運用状態を表す S3 において,0 DB の値はパ Ve: 電子系電圧 ドル(アンテナ)展開が行われていないことを示している. Vm: カメラ系電圧 通信系および電子系電圧は,FF=5 V であり起動しているこ Vb: バッテリー電圧 とを表している. S1,S2,S3*: 運用状態

*電子系起動時に送信される電子系データ

パドル(アンテナ)展開後に,香川大局からコマンド送 信を試みた.子機は CW が送信されていないため,その結 果を確認することができていない.また親機は,電子系起 動のコマンドが受信されたことは確認できたが,電子系起 動時に送信されるデータは確認できず,また電子系起動コ 第 9 図 フィルムアンテナ収納・展開状態 マンド以外に対する衛星からの応答はなかった.これより 親機の電子系に不具合が発生しているとの結論に達したが, 親機の CW データにおいては,time が子機のカウント量 原因確定には至っていない. より少なく,また 1403011742 においてリセットされている. その後,2014 年 4 月 26 日 15:32am (JST)に STARS-II は さらに,1403041631 以降は電子系起動時に送信される電子 大気圏再突入をしたと推定される.香川大局において直前 系データが送信されず,電子系電圧がゼロであるため,「電

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源リセット」においてパドル展開が行われたと推定される. 4.2 軌道降下解析 低軌道衛星の軌道降下は,空気抵 第 10 図に親機 CW データから算出した太陽電池電圧, 抗によるところが大きく,質量に対する表面積比 供給電圧,バッテリー電圧を示す.CW は常時送信してお Area-to-mass が大きく影響する.H-IIA 23 号機の相乗り衛 り,地上局上空通過時に受信するため,データはサンプル 星では,STARS-II の軌道降下が最速であったことを評価す 的に取得できることから,横軸は時刻順とはなっているが るため,第 3 表に STARS-II の各状態(パドル収納,パド 時刻ではない.太陽電池電圧は太陽光照射時には 8 V 以上 ル展開,テザー伸展),および他の相乗り衛星(各開発機 であり,日陰時にはほぼ 0 V である.またバッテリー電圧 関からの情報)の Area-to-mass を示す.Area-to-mass の計 は 7 V~8 V の間であることから,電力収支に問題はない. 算結果より,テザー伸展が行われていない場合は,50kg 衛 なお供給電圧は,太陽光照射時は太陽電池によりバッテリ 星よりは降下速度が大きいが Cubesat よりは小さく,テザ ー電圧以上の電圧を供給でき,日陰ではバッテリー電圧を ー伸展が行われている場合は相乗り衛星の中で降下速度が 下回っていることが分かる. 最速となると予測できる. 第 11 図は親機 CW データから算出した電子系電圧およ び供給電流を示す.地上からの電子系起動のコマンドを送 第 3 表 H-IIA23 号機相乗り衛星の Area-to-mass 信すると,電子系電圧が 5 V となり,電子系が動作するた Satellite Area-to-mass [m2/kg] めに供給電流が 350 mA 程度となった.電子系 OFF のコマ STARS-II 0.0065 (max.) Paddle stowed ンドを送信すると,電子系電圧は 0 V となり,供給電流も 0.0028 (min.) 減少した.供給電流は通信系消費電流も含んでおり,CW 0.0149 (max.) Paddle deployed 送信などにより変動する.これらのことから,電子系起動 0.0078 (min.) のコマンドは正常に受信できている.しかしながら、電子 0.0433 (max.) 300m tether 0.0398 (min.) deployed** 系は正常動作ではなく, 未送信かつ電子系へのコマン CW Shindai-sat* 0.0069 50kg ドに応答しなかった.これより電子系が不具合を発生して Teikyosat* 0.0052 50kg いることが推定される. ITF-1* 0.0115 Cubesat INVADER* 0.0178 Cubesat OPUSAT* 0.0215 Cubesat K-Sat2* 0.0173 Cubesat *Based on information from developers **Considering satellites attitude by gravity gradient

第 12 図に space-track.org8)から入手した Two line elements (TLE)を用いて算出した H-IIA 23 号機の相乗り衛星に関す る軌道高度の変化を示す.この結果より,STARS-II の軌道 高度変化が一番大きく,さらに打ち上げ直後の数日の変化 は小さく,その後大きく変化していることが分かる.すな わち,パドル展開が行われたと同時に,テザーが伸展され たことが推定できる.

第 10 図 太陽電池発電,機器供給,バッテリー電圧

第 12 図 H-IIA 25 号機相乗り衛星の軌道高度

第 11 図 C&DH システムの供給電圧と消費電流 第 13 図にテザー伸展長さによる Area-to-mass を用いて数 値計算を実施した軌道高度変化を示す.STARS2 TLE は

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TLE (Two Line Element)から計算した高度である.STARS2 参 考 文 献 AM 0.0*の 0.0*は Area-to-mass の値であり,第 4 表に示すテ ザー長さに対応する.この結果より,Area-to-mass = 0.043 1) Nishida, S., Kawamoto, S., Okawa, Y., Terui, F., and Kitamura, S.: m2/kg において,TLE 情報と一致することが分かる.第 4 Space Debris Removal System Using a Small Satellite, Acta Astronautica, 65, 1-2 (2009), pp. 95-102. 表に各テザー長さにおける Area-to-mass の値を示す.なお, 2) Nakasuka, S.: Students’ Challenges towards New Frontier – Enlarging 重力傾斜を考慮した時に最大となる衛星面積は 0.010 Activities of UNISEC and Japanese Universities, Paper No. m2/kg としている.これらの結果から,テザーは 300m 伸 2008-Keynote-01v, 26th International Symposium on Space Technology 展(搭載テザー全長)されたと推定される. and Science 2008, Hamamatsu, Japan, June 1-8, 2008. 3) 能見公博: 香川衛星KUKAIの超小型テザー伸展システム軌道上実 験,日本機械学会論文集 C 編,75,760 (2009),pp. 3144-3151. 4) 能見公博,山本健志,糸瀬 理,斎藤 隼: 超小型親子衛星 KUKAI のロケット分離機構,日本機械学会論文集 C 編,76,765 (2010), pp. 1036-1042. 5) 能見公博: 超小型ロボット衛星の開発と軌道上動作実証,日本機 械学会論文集 C 編,76,770 (2010),pp. 2515-2521. 6) 能見公博,大井克己,詫間 哲,苧側正明: アマチュア無線通信用 の超小型衛星搭載用太陽電池パドルアンテナ,航空宇宙技術,9 (2010),pp. 37-42. 7) 能見公博,谷川 準,細田貴之: 観測ロケット実験におけるテザー 宇宙ロボットの姿勢制御解析,航空宇宙技術,11 (2012), pp. 23-28. 8) Space Track, 2014.06.01, URL: https://www.space-track.org/auth/login

第 13 図 テザー長さによる軌道効果比較計算 (By JAXA Aerospace Research and Development Directorate)

第 4 表 テザー長さによる Area-to-mass の値 Tether length 0 270 290 300 320 360 Area-to-mass 0.010 0.040 0.042 0.043 0.045 0.050

4.3 天文台による光学観測 STARS-II プロジェクトで は,2 基の衛星が軌道上において分離すること,各衛星が 10 cm 以上の大きさであることから,地上からの光学観測 により 2 基の衛星を撮影できる可能性があることを考え, 日本全国の天文台に撮影協力を依頼した.各地天文台が連 携することによる超小型衛星の光学観測は,初めての試み である.24 カ所の天文台に協力を承諾して頂き,合計で 12 (a) うすだスタードーム撮影(静止画) シーン,15 枚の撮影に成功した.第 14 図に撮影例を示す. 撮影では 2 基を確認することはできなかったが,予測より も明るく写っていたことから,テザーが伸展されている可 能性が示唆された.

5. お わ り に

本論文では,STARS-II の計画および運用結果について述 べた.宇宙デブリ除去の基礎実験を目的とした衛星であっ たが,実運用では親機はメインマイコンの不具合,子機は 電力不足により正常な動作を行うことができなかった.し かしながら,軌道降下解析および地上からの望遠鏡観測に より,テザー伸展ミッションは実施されたことを推定した. これらの宇宙実験結果は,今後の当該分野の研究開発に役 立つものと言える. (b) 富山天文台撮影(動画のスナップショット) STARS-II の開発において,JAXA 研究開発本部にはテザ ー・収納機構の提供,およびテザー挙動解析,静岡大学山 第 14 図 天文台ネットワークによる地上観測 極研究室には電子放出装置およびテザー電流解析にご協力 頂いた.ここに謝意を表す.

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