魚 類 学 雑 誌 総 説 ・Review 48(2):75-91
Total Page:16
File Type:pdf, Size:1020Kb
魚 類 学 雑 誌 総 説 ・Review 48(2):75-91 カ ラ イ ワ シ類(Elopomorpha)を 中 心 と した 下 位 真 骨 類 の 系 統 井 上 潤 上 宮 正 樹2 1〒164 -8639中 野 区 南 台1-15-1東 京 大 学 海 洋 研 究 所 2〒260 -8682千 葉 市 中 央 区 青 葉 町955-2千 葉 県 立 中 央 博 物 館 (2001年3月15日 受 付;2001年5月16日 改 訂;2001年5月21日 受 理) キ ー ワ ー ド:下 位 真 骨 類 の分 類 体 系,カ ラ イ ワ シ類 の 単 系 統 性,レ プ トケ フ ァ ル ス 幼 生,ミ トゲ ノ ム Jun G. Inoue* and Masaki Miya. 2001. Phylogeny of the basal teleosts, with spe- 魚 類 学 雑 談 cial reference to the Elopomorpha. Japan. J. Ichthyol., 48 (2): 75-91. Japanese Journal of Ichthyology Abstract Higher-level relationships of the basal teleosts are reviewed, with par- TheIchthyological (c) Societyof Japan 2001 ticular reference to the monophyly and interrelationships of the Elopomorpha. Since Greenwood et al. established in 1966 the Elopomorpha on the basis of eight putative synapomorphies, many authors have discussed validity of their mono- phyly through comparative observations of osteology, ontogeny, microstructure of spermatozoa, and physiology. Such circumstantial evidence have remained contro- versial, because none of them have reconstructed their phylogeny using character matrices derived from both morphological and molecular data. The same is true of long-standing controversy over phylogenetic positions of the Elopomorpha among major basal teleostean lineages, many authors simply demonstrating their "views" in the form of cladograms with putative synapomorphies until quite recently. Con- sidering their morphological heterogeneity (from very primitive elopomorphs to highly derived eels) and ancient origins that presumably goes back to over a hun- dred million years ago, we concluded that corroboration of monophyly and deter- mination of the phylogenetic position of the Elopomorpha should be based on comparisons of longer DNA sequences from many purposefully-chosen species. Recent development of a PCR-based approach for sequencing the fish mitochondr- ial genomes would be the most promising candidate for providing such data within a short period of time and they have actually resolved the latter problem in a recent study. *Corresponding author: Ocean Research Institute , University of Tokyo, 1-15-1 Minamidai, Nakano-ku, Tokyo 164-8639, Japan 骨 類(Teleostei)は 脊 椎 動 物 の 中 で も 最 も 多 (Lepisosteidae)や ア ミ ア(Amia calva),そ し て 他 の 真 」様 化 し た グ ル ー プ で ,38目,426科,4064 化 石 種 が 単 独 で,あ る い は さ ま ざ ま な 組 み 合 わ せ 属 に 位 置 づ け ら れ る23,500を 超 え る 種 く現 生 魚 類 で 真 骨 類 の 姉 妹 群 候 補 と し て あ げ ら れ て き た の お よ そ96%を 占 め る)か ら 構 成 さ れ て い る(J. (Gardiner et al.,1996).こ の 莫 大 な 多 様 性 を も つ 真 Nelson, 1994).い く つ か の 異 論 が あ る と は い え 骨 類 の 系 統 学 的 研 究 が 盛 ん に な っ た の は,PH. (Kumazawa et al.,1999を 参 照),真 骨 類 の 起 源 は 化 Greenwood, D. E. Rosen, S. H. Weitzman, G. S. Myers "Phyletic 石 記 録 に 基 づ き 三 畳 紀 後 期 の お よ そ2億2千 万 一2 ら4名 の魚 類学者 に よる記念碑 的論 文 億 年 前 に ま で 遡 る こ と が で き(Carroll, 1988),そ の studies of teleostean fishes, with a provisional classifi- 単 系 統 性 に つ い て は 数 多 く の 形 態 形 質 に よ り確 証 cation of living forms" (Greenwood et al., 1966) が出 さ れ て き た(dePinna, 1996).ま た,ガ ー の な か ま 版 された後 の こ とであ るが,そ れ以前 に も分 類群 76 井上 潤 ・宮 正 樹 間の進化的関係 (evolutionary relationships )が樹状 れ ら れ て い る 系 統 関 係(Patterson and Rosen,1977) 図 を用 い て表現 され,新 た な分 類体 系 を提示 す る が,あ た か も既 成 事 実 で あ る か の よ う に 分 類 体 系 際 の論 拠 と して用 い られて きた(た とえ ばRomer, に組 み込 まれて い ったの で あ る (Fig. 1; J. Nelson, 1945). 1984, 1994; Lauder and Liem, 1983; Maisey, 1986; この よ うな初期 の真骨 類高 次分 類体 系 で は,原 Helfman et al., 1997). 始 的 な体 制 か ら中間的 な段 階 を経 て最 も進歩 的 な こ う し た 系 統 分 類 学 上 の 大 き な 概 念 枠 の 変 更 と 体 制 に至 る とい う,一 連 の進 化 的 段 階 群(evolu- と も に,Greenwood et al.(1966)の 研 究 が 多 く の 魚 tionarygrade)を 認 識 す るこ とに よ り分類 群 の存 在 類 学 者 に と っ て 衝 撃 的 で あ っ た の は,カ ラ イ ワ シ が正 当化 されて きた(松 原[1955:1-59]の 総説 を参 類 と い う こ れ ま で に な い 新 た な 分 類 群 が 実 質 上 何 照).そ の影響 は分 岐学 の理論 が英 語 圏で発表 され の 前 触 れ も な く設 立 さ れ た こ と で あ ろ う.こ の 分 た(Hennig, 1966)後 も色 濃 く残 って お り,た とえ 類 群 に は,当 時 広 く 受 け 入 れ ら れ て い たRegan ば真 骨類 の分類体 系 を機 能形 態 学の視 点 か ら再 構 (1929)の 分 類 に お い て,等 椎 類(Isospondyli)に 含 築 しよう と したGosline (1971: 95)は,便 宜的 な も ま れ て い た カ ラ イ ワ シ 自 と ソ トイ ワ シ 亜 自,異 肩 の であ る とこ とわ ってい る とは いえ,真 骨 類 を低 類(Heteromi)に 含 ま れ て い た ソ コ ギ ス 亜 自,無 足 位 群 (lower group), 中位 群 (intermediate group), 類(Apodes)に 含 ま れ て い た ウ ナ ギ 自,そ し て 緩 体 そ して高位群 (higher group) に大 きく分 け,あ たか 類(Lyomeri)に 含 ま れ て い た フ ウ セ ン ウ ナ ギ 自 な も下位 の グル ープ か ら上位 の グル ープが直接 進 化 ど,成 魚 の 形 態 が き わ め て 異 質 な 原 始 的 真 骨 類 が して きたか の よ うな解 説 を行 っ てい る.真 骨類 の 含 ま れ て い た の で あ る.彼 ら は,こ の カ ラ イ ワ シ 莫大 な多 様性 を体 系 的 に認識 す るた め には この よ 類 に 共 通 す る 特 徴(major trends)と し て8つ の 形 質 うな分 類 も便 利 で はあ ったが,分 類体 系 は単系 統 を あ げ た が,仔 魚 期 に レ プ ト ケ フ ァ ル ス(lepto- 群 (monophyletic group) 同士 の姉妹群関係 (sister- cephalus)と 呼 ば れ る 柳 葉 状 の 幼 生 を も つ と い う 点 group relationships) を表現 すべ きだ という分岐学 を 除 い て,す べ て の メ ン バ ー に 共 通 す る 形 質 は な (=系 統 体 系 学;Wiley, 1981)の 概 念(Hennig, 1966; か っ た(詳 細 に つ い て は 後 述).こ の こ と も あ り, Wiley, 1981)が 広 ま る に つ れ て,側 系 統 群 (para- Greenwood et al.(1966)に よ る カ ラ イ ワ シ 類 の 設 立 phyletic group) を排除 し単系統群 を支持する研 究 は,仔 魚 期 の 形 質 が 高 次 分 類 群 を 認 識 す る 一 つ の ス タイルが魚 類体 系学 で は大 きな潮流 となった(G . 手 が か り と な っ た 例 と し て 大 き な 注 自 を 集 め(た と Nelson, 1989). え ば 沖 山,1980; Smith, 1984),仔 魚 分 類 学 の 権 威 この よ うな流 れの 先 駆 け とな っ たの がGreen- で あ っ た 故E.H.Ahlstromの 業 績 を 称 え る 記 念 シ ン wood et al.(1966)に よる革新 的 な真 骨類 分類 体系 ポ ジ ウ ム(Moser et al., 1984)で は,各 分 類 群 の 稚 の発表 で あ った.彼 らの研 究 におけ る最 も大 きな 仔 形 態 を 基 に し た 系 統 関 係 が 中 心 的 課 題 と し て 取 成 果 の一 つ は,そ れまで等椎 類 (Isospondyli; Regan, り上 げ ら れ る ほ ど に ま で な っ た. 1929)や ニ シ ン 類 (Clupeiformes; Berg, 1940) と一括 こ の よ う に,カ ラ イ ワ シi類 はGreenwood et al . して呼 ばれ て きた原 始 的 な真 骨類 の一群が,実 は (1966)の 先 駆 性 を 象 徴 す る 存 在 と も い え る 分 類 群 側 系統 的 なグル ー プであ る こ とを骨 格系 や筋 肉系 で あ る.し か し な が ら 一 方 で,カ ラ イ ワ シ 類 の 存 な どの比 較解剖 学 的 デー タに基 づ き明 らか に した 在 は 厳 密 な 系 統 学 的 検 証 を 経 ず に,無 批 判 に 分 類 点 で あ ろ う.こ の下位 真骨 類 の分類 に関す る彼 ら 体 系 に 組 み 込 ま れ て き た と も受 け 取 れ る.さ ら に, の見解 は,分 岐 学理論 の普及 に ともないす ぐさま 解 決 済 み と さ れ て い る 下 位 真 骨 類 の 系 統(G.Nel- Greenwood et al.