更新日:2021/7/9 調査部:舩木弥和子 石油・ガス輸出国への転身を目指すスリナム ~TotalEnergies/Qatar と Chevron が浅海鉱区を落札~ (出所:LatAmOil、Platts Oilgram News、International Oil Daily、BNamericas 他)

 スリナム国営石油会社 Staatsolie が浅海 8鉱区を対象とする鉱区入札を実施した。Block 5、Block 6、 Block 8 の 3 鉱区に 10 件の入札があり、Block 5 を Chevron が、Block 6 と Block 8 を TotalEnergies と のコンソーシアムが落札した。

 スリナム沖合では、2020 年に Apache と TotalEnergies が Block 58 で 3 坑の探鉱井を掘削し、油層を 確認したことから、探鉱が活発化している。TotalEnergies とApache はその後、Block 58 でさらに探鉱 井 1 坑を掘削し、油・ガス層を確認した。両社は、2025 年の生産開始を目指し、評価作業も実施して いる。Block 58 の東に位置する Block 52 では、/ExxonMobil が 2020 年 10 月より試掘を行 い、良好な結果を得た。一方、 は 2021 年第 1 四半期に Block 47 で試掘を行ったが、商業 量の油・ガスを確認できなかった。Shell は Kosmos Energy よりスリナムの探鉱鉱区の権益を取得し、 2022 年中に試掘を行う計画だ。

 石油会社は、スリナムの良好な地質状況、低い生産コスト、有利な契約条件に惹かれ、スリナムでの 探鉱に積極的になっていると考えられる。英国のコンサルタント会社 Xodus Group によると、スリナム は 2030 年までにガスの輸出国になる可能性があるという。スリナムでは、原油のみを輸出しているガ イアナとは異なる形で開発が進む可能性があり、動向を注視していきたい。

1.浅海鉱区入札で TotalEnergies/Qatar Petroleum と Chevron が鉱区取得 2021 年 6 月 18 日、スリナムの国営石油会社 Staatsolie は、ガイアナとの境界に近い 8 つの浅海鉱区 を対象とする鉱区入札 SHO Bid Round 2020/2021 の結果を発表した。SHO Bid Round 2020/2021 は、 2020 年11 月16 日に開始され、2021 年4月30 日に入札が締め切られていた。Block 5、Block 6、Block 8 の 3 鉱区に 10 件の入札があり、Block 5 を Chevron が、Block 6 と Block 8 を TotalEnergies と Qatar Petroleum から成るコンソーシアムが落札した。Staatsolie と落札企業は、現在、これらの鉱区について生 産物分与契約を締結すべく、手続きを進めている。

– 1 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

図 1 浅海鉱区入札 SHO Bid Round 2020/2021 の対象鉱区 出所:https://www.staatsolie.com/en/news/most-favorable-bids-for-shallow-offshore-blocks/

TotalEnergies とQatar Petroleumから成るコンソーシアムが落札した Block 6および Block 8は、Apache と TotalEnergies が掘削した探鉱井 4 坑すべてで油層を確認した Block 58 の南に隣接する鉱区だ。水深 が 30 メートルから 65 メートル、面積は両鉱区併せて約2,750 平方キロメートルとなっている。権益保有比 率は、両鉱区とも、TotalEnergies が 40%、Qatar Petroleum が 20%、Staatsolie が 40%で、TotalEnergies がオペレーターを務める。TotalEnergies は、Block 6 および Block 8 において、その可能性を確認するた めに 3D 地震探鉱を実施するとしている。 Total(2021 年 5 月 28 日に TotalEnergies に名称を変更)と Qatar Petroleum は、Toqap というジョイント ベンチャーを立ち上げ、Total が保有していたガイアナの Orinduik block と Kanuku block の権益のそれ ぞれ 25%を Toqap に引き継がせている。ガイアナ政府は 2021 年 3 月にこれを承認した。ExxonMobil が 2015 年以降掘削した坑井で相次いで油層を確認し、現在日量 12 万バレルを生産し、2026 年には日

– 2 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

量75 万バレルを生産する計画の Stabroek block の南および南西に Kanuku block と Orinduik block は位 置している。TotalEnergies と Qatar Petroleum は、今回の鉱区取得によりガイアナでのパートナーシップ をスリナムまで広げることに成功したと言えよう。 TotalEnergies は、有望な堆積盆地において低コストで開発できる石油資源を探鉱するという戦略を推 進しており、今回の鉱区取得は同社のコア・エリアである Guyana-Suriname basin における同社の探鉱鉱 区獲得の能力を示すものであるとしている。

図 2 TotalEnergies が保有するスリナムおよびガイアナの鉱区

出所:https://www.totalenergies.com/media/news/press-releases/suriname-totalenergies-expands-its-presence-two-new-shallow-water

一方、Qatar Petroleum にとって、Block 6 および Block 8 の権益獲得はスリナムへの初進出となる。同 社社長兼 CEO でカタールのエネルギー大臣である Saad Sherida Al-Kaabi 氏は「今回の成功は、

– 3 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

Guyana-Suriname basin における当社のプレゼンスを高め、Qatar Petroleum の中南米におけるプレゼン スをさらに強化するものであり、当社の国際的な成長の野望の実現に向けた新たな成功の一歩となる」と 述べている。Qatar Petroleum は、2018 年 1 月 31 日実施のメキシコの鉱区入札ラウンド 2.4 で Perdido Area の 4 鉱区を含む 5 鉱区を、同年 3 月実施のブラジルの第 15 次ライセンスラウンドで ExxonMobil と 組み Santos basin や Campos basin の有望 4 鉱区を、2019 年 4 月実施のアルゼンチンの沖合鉱区入札 で ExxonMobil や Shell などと組んで 7 鉱区に札を入れ、5 鉱区を落札するなど、積極的に中南米諸国の 有望な沖合鉱区への参入を進めている。 Block 6 の南に隣接する Block 5 については Chevron がオペレーターを務める。Chevron と Staatsolie の出資比率は今のところ公表されていない。 なお、Chevron は2012 年6月に Kosmos Energy よりスリナム沖合の Block 42 とBlock 45 の権益の50% を取得しファームインした。2016 年には、Hess に Block 42 の一部権益をファームアウトし、Block 42 につ いては 3 社が等しく権益を保有することとなった。そして、2018 年 6 月に Block 45 で Anapai‐1 号井、10 月に Block 42 で Pontoenoe‐1 号井を掘削したが、商業量の油ガスを発見することはできなかった。 なお、スリナムは 2023 年に鉱区入札を実施するため、3D 地震探鉱を実施するとしている。

2.最近のスリナムでの探鉱などの状況 スリナムは陸上で少量の石油生産を行っているものの、隣国ガイアナの Stabroek block で ExxonMobil が 2015 年以降、Liza 油田など相次いで油層を確認、仏領ギアナでも Tullow Oil が Zaedyus 井で石油を 確認したのに比べると、大きな探鉱成果を上げることができずにいた。ところが、2020 年に入り、Apache と Total が沖合 Block 58 で掘削した 3 坑の探鉱井でいずれも油層を確認し、ガイアナと並ぶ探鉱のホッ トスポットとして、注目を集めるようになった。(「スリナム:Apache と Total、沖合 Block 58 で大規模な炭化 水素の埋蔵を確認」参照) この 1 年間の主な探鉱などの状況を中心に、以下にまとめた。

(1)TotalEnergies/Apache:Block 58 で探鉱と並行し開発へ向けて評価作業実施 Block 58 で掘削した探鉱井 Maka Central‐1 号井、Sapakara West‐1 号井、Kwaskwasi‐1 号井で、それ ぞれネットペイ 123 メートル、79 メートル、278 メートルの油層、コンデンセート層を確認した Apache と Total は、2020 年9 月に、ドリルシップ Noble Sam Croft を用いて水深 725 メートルの海域で Keskesi East

– 4 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

‐1 号井の掘削を開始した。そして、2021 年 1 月には、同井で 58 メートルの油層と 5 メートルの天然ガス 層を確認し、試掘作業を継続していると発表された。同鉱区で 4 番目の油・ガス層確認となったが、3 月9 日付の声明で両社は、貯留層の圧力が上昇したため Keskesi East‐1 号井の掘削を停止し、Noble Sam Croft ドリルシップを現場から離脱させることが明らかにされた。 2021 年5 月時点では 2 基のリグが同鉱区内で稼働しており、評価作業と併せて、探鉱井 Bonboni を掘 削する計画であるという。なお、Total は 2021 年 1 月 1 日に Apache からオペレーターを引き継いだ。 今後の開発・生産については、Total が 2021 年 3 月に、Block 58 で 2025 年に商業生産を開始するこ とを計画しているとした 1。また、Apache は 2021 年 5 月に、同鉱区の最終投資決定について、選択肢は たくさんあり、ガイアナのように FPSO を用いる可能性も視野に入れているが、何かに着手するのは時期 尚早であるとしている。そして、仮に 2022 年に最終投資決定がなされたとしたら、2025 年には生産が開 始できる可能性があるとした 2。Staatsolie も 5 月に、Total と Apache は、2021 年中に同鉱区の開発に関 する最終投資決定を行いたいと考えており、すでに同鉱区の開発計画を策定し始めているとしている。 2025 年に生産が開始されれば、Maka Central での最初の油田発見からわずか 5 年後のこととなり、 ExxonMobil がガイアナ Stabroek block で発見からわずか 4 年半後の 2019 年12 月に Liza 油田の生産を 開始したことを彷彿とさせる、驚異的なスピードでの生産開始となる。IHS Markit も、Block 58 は 2026 年 に日量約 65,000 バレルで原油生産を開始し、2030 年には生産量を日量 330,000 バレル以上に引き上 げると予想している 3。 なお、Rystad Energy によると、Total と Apache が掘削した最初の 3 坑による石油・ガスの発見量は石 油換算で 13.9 億バレルになるという 4。

(2)Petronas/ExxonMobil:Block 52 で試掘、良好な結果を得る Petronas/ExxonMobil は、2020 年 10 月より Block 58 の東に位置する Block 52(面積 4,749 平方キロメ ートル)で試掘井 Sloanea-1 号井を掘削(掘削長 4,780 メートル)、評価中で詳細なデータは明らかにされ ていないが、良好な結果を得たと同年 12 月に発表した。そして、今後、さらに評価作業を進めて埋蔵量 を測定するとした。

1 LatAmOil, 2021/3/11 2 Bnamericas, 2021/5/7 3 IHS, 2021/6/25 4 Platts Oilgram News, 2020/11/17 – 5 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

Petronas は 2013 年 4 月に Block 52 を取得した。その後、2020 年 5 月に、ExxonMobil が同鉱区の権 益 50%を取得してファームインした。Petronas が同鉱区のオペレーターを務めている。ExxonMobil はス リナムではこのほかに、2017 年 7 月に、、Hess とともに Block 59 の PS 契約を締結、3 社が等しく 権益を保有している。一方、Petronas はスリナムでこのほかに Block 48 の権益 100%、Block 53 の権益 30%を保有している。 IHS Markit は、TotalEnergies/Apache とPetronas/ExxonMobil が発見した5油田の損益分岐点を、バレ ル当たり 38 ドルから 70 ドル程度と見ている 5。

図 3 スリナムおよびガイアナ主要鉱区図 各種資料を基に作成

5 IHS, 2021/6/25 – 6 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

(3)Tullow Oil:Block 47 で試掘も、商業量の油・ガスを確認できず Tullow Oil は 2021 年第 1 四半期に、ドリルシップ Stena Forth を用いて、Block 47 の水深 1,856 メート ルの海域で試掘井 Goliathberg Voltzberg North-1(GVN-1)号井の掘削を行った(掘削長 5,060 メートル) が、同年3月に商業量の油・ガスを確認することなく、掘削を終了したことを明らかにした。GVN-1号井は 良質な貯留層に遭遇したが、原油はわずかしか検出されず、閉鎖、放棄されることとなった。 GVN-1 号井は、Block 47 で掘削された 2 坑目の試掘井である。1 坑目の試掘井 Tanager-1 号井でも 炭化水素が確認されたが、Tullow Oil は2020 年末に、近隣の他の坑井との関連性がない限り、非商業的 な発見に分類するとした。一方、パートナーの Ratio Petroleum(イスラエル)は、Tanager-1 号井について 楽観的な見方をしている。 Tullow Oil は 2010 年に Block 47 の PS 契約を締結した。2017 年に Ratio Petroleum が同鉱区の権益 の 20%、2018 年に Pluspetrol(アルゼンチン)が権益の 30%を取得し、ファームインしている。

(4)Shell: Kosmos Energy よりスリナムの鉱区権益取得、試掘を計画 Kosmos Energy は、2020 年9 月に、サントメ・プリンシペ、スリナム、ナミビア、南アフリカ沖のフロンティ ア探鉱鉱区の権益を、1 億ドルの契約一時金で Shell に売却することに合意したと発表した。Shell は、こ れらの鉱区で掘削された最初の 4 坑の試掘井で商業規模の油・ガス田の発見があった場合には、さらに 5,000 万ドル(上限 1 億ドル)を Kosmos Energy に支払う義務を負う。 Kosmos Energy はスリナムでは Block 42 の権益の 33.33%と Block 45 の権益の 50%を保有しており、 Shell は、この取引によりスリナムの非常に有望な盆地への参入が可能となったとしている。 同年 12 月に、この取引は完了した。 Kosmos Energy は、2018 年に Block 42 で試掘井 Pontoenoe‐1 号井を掘削したが、商業量の油・ガスを 確認できず、次に同鉱区で掘削予定であった試掘井 Walker‐1 号井の掘削を 2019 年以降に延期してい た。Shell はこの Walker‐1 号井の掘削を 2022 年中に行う計画である。

終わりに 石油会社各社は、スリナムの良好な地質状況からスリナムでの探鉱に興味を示していると考えられる。 米国地質調査所(USGS)が、ガイアナ、スリナム、仏領ギアナの沖合と一部陸上を含む Guyana basin の 埋蔵量のポテンシャルは原油 150 億バレル、天然ガス 40 兆立方フィートとするなど、スリナムの地質ポテ

– 7 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

ンシャルを高く評価する機関は多い。 また、生産コストが極めて低いことも、スリナムへの石油会社の関心を高めている理由の一つだろう。 スリナムで活動中のメジャーは、スリナムで生産される原油は、生産コストが低いため、原油価格がバレ ルあたり 30~40 ドルでも採算がとれる見通しだとしている。また、Rystad Energy は、スリナムの損益分岐 点をバレルあたり 45 ドルとしているが、技術の進歩によりこの値は下がると予想し、最終的には、 Guyana-Suriname basin 全体でバレルあたり 25 ドルになると見ている。 さらに、スリナムが石油会社に対し有利な契約条件を提示していることも、石油会社がスリナムでの探 鉱に興味を持つ一因となっていると考えられる。生産分与契約の契約期間は、中南米の他の地域では 20 年から 25 年であるが、スリナムでは 30 年とされている。ロイヤリティーは一般的に 10%から 15%であ るが、スリナムでは一部の鉱区で 6.25%とされるなど低く設定されている。 このような理由から、スリナムでの探鉱は引き続き安定したペースで行われると考えられる 6。 英国のコンサルタント会社 Xodus Group は、スリナムが 2030 年までにガスの輸出国になる可能性があ るとの報告を行った。Xodus Group によると、スリナム沖合では、ガイアナ沖合で発見されているよりも多 くの随伴ガスおよび非随伴ガスが発見されており、その回収可能量は約 29 兆立方フィートであるという。 このガスの開発を進めることで、10 年後にスリナムは LNG、CNG、または南米北部へのパイプラインガス の輸出を実現できる可能性があるというのだ。LNG 輸出については、陸上に液化設備を建設するか、浮 体式の設備を利用するか、どちらも可能性のある選択肢であり、決定するまでにはまだ時間がかかるだ ろうとしている。そして、陸上に液化設備を建設する場合は、許認可や用地の確保などの問題から、最大 で10 年かかるとした。一方、浮体式の施設であれば、スケジュールを短縮することはできるが、液化能力 が限られることになるとしている。いずれにせよ、どちらも技術的な課題を抱えているため、望ましい選択 肢を決定するためにはさらなる技術的作業が必要であるという 7。 ガイアナでは、生産された原油を輸出し、随伴ガスについては現時点では再圧入しており、将来的に は国内で発電用に利用することを計画している。スリナムでは、原油とガスを輸出するというガイアナとは 異なる形での開発が進む可能性があり、動向を注視していきたい。

以 上

6 Petrostrategies, 2021/3/4 7 World Gas Intelligence, 2021/6/30 – 8 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。