インベントリー 第13号(2013/2014,2014/2015)
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ISSN 1347-5665 CONTENTS Foreword Future of Natural Resources lnventory Rescarch Shori Yamamoto 1 インベントリー インベントリー Articies Research Results and my Impression of Research Project for Agro-Environmental Information and Classification of Environmental Resources during recent ten years Shin-ichi Yoshimatsu 3 Screening procedure for soil disease based on descriptive epidemiology with data base Takeshi Osawa, Haruka Nagase and Seiya Tsushima 7 第 Research Topics in 2013/2015 13号 Challenge towards impact assessment considering different farming methods in agricultural LCA No. 13 2013/2014 Longlong Tang, Kazunori Kohyama and Ai Leon 15 Inventories 2014/2015 Open data catalog site NIAES VIC (Virtual Inventory Complex) 巻頭言 Takeshi Osawa 18 Citizen Science with ICT devices Takehiko Yamanaka, Takeshi Osawa and Yukinobu Nakatani 23 Research Museums 報 文 研究トピックス Soil monoliths; collected in recent years 20 Toshiaki Ohkura, Hiroshi Obara, Yusuke Takata and Kazunori Kohyama 30 16 Present Collection and Activities of Insect Museum 年3月 Yukinobu Nakatani, Shin-ichi Yoshimatsu and Hiraku Yoshitake 33 Additional specimens to Microorganism Museum in 2012 to 2015. インベントリー 研究標本館 Motoo Koitabashi, Shigenobu Yoshida and Seiya Tsushima 36 The use of Natural Resources Inventory Museum for Public relations Yuko Hayashi, Tatsuya Onodera and Toshihiro Kadosawa 39 付 録 NRIC Appendix in 2013/2015(April 2013 to March 2015) Available Web Information List of NRIC 42 Abstracts of the NRIC Seminar 44 Training: Soil Survey 50 農業環境インベントリーセンター Publications and Presentations 54 Research Cooperation and Exchange 79 Staff List 86 国立研究開発法人 農業環境技術研究所 Natural Resources Inventory Center 農業環境インベントリーセンター National Institute for Agro-Environmental Sciences NRIC/NIAES NRIC/NIAES インベントリー 第13号 平成28年度 Inventory No.13 2013-2015 目 次 巻頭言 農業環境インベントリー研究のこれから 山本勝利 ································································ 1 報文 農業環境情報・資源分類 RP の 10 年 吉松慎一 ································································ 3 データベースと記述疫学に基づいた土壌病害発生要因のスクリーニング 大澤剛士・長瀬陽香・對馬誠也 ············································ 7 研究トピックス 農業の LCA における農法別インパクト評価へのチャレンジ 湯龍龍・神山和則・レオン愛 ············································· 15 インベントリー 農業環境情報カタログサイト NIAES VIC (Virtual Inventory Complex) 大澤剛士 ······························································· 18 ICT を活用した市民参加型生物調査の模索 山中武彦・大澤剛士・中谷至伸 ··········································· 23 研究標本館 最近の土壌モノリスの収集状況 大倉利明・小原 洋・高田裕介・神山和則 ···························· 30 昆虫標本館の現状と取り組み 中谷至伸・吉松慎一・吉武 啓 ··········································· 33 微生物標本館への 2012-2015 年度分の標本追加 小板橋基夫・吉田重信・對馬誠也 ········································· 36 農業環境インベントリー展示館の広報活動への利用 林 裕子・小野寺達也・廉沢敏弘 ··········································· 39 付 録(平成 25 年度~平成 27 年度農業環境インベントリーセンター(NRIC)の取り組み) Web 公開情報 ·································································· 42 NRIC セミナー講演要旨 ·························································· 44 研修会:土壌炭素調査法検討会 ·················································· 50 研究成果の発表 ································································ 54 研究協力・交流 ································································ 79 在職者とその動き ······························································ 86 インベントリー:記入不要 巻頭言 農業環境インベントリー研究のこれから Future of Natural Resources lnventory Rescarch 山本勝利 Shori Yamamoto* 本年(平成 28 年/2016 年)4月、国立研究開発法人農業環境技術研究所(以下、農環研)は、国 立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、国立研究開発法人農業生物資源研 究所、独立行政法人種苗管理センターと統合し、新たな農研機構の1研究実施組織である農業環境 変動研究センターとして再出発します。それにともない、研究所内部の組織も再編され、農業環境 インベントリーセンターは、発展的に解消し、生態系計測研究領域その他の研究分野と融合した環 境情報基盤研究領域を農業環境変動研究センターの下に新たに設置することとなりました。そこで ここでは、これまでの農業環境インベントリー研究の成果を今後どのように発展させていけば良い のかについて、少し考えて見たいと思います。 農業環境インベントリーセンターは、平成 13 年(2001 年)4月に農林水産省農業環境技術研究所 が独立行政法人化すると同時に、その内部組織として設置されました。それから 15 年、独立行政法 人の中期計画(5ヶ年)を3期続ける中で、当センターが中心となって、農業環境インベントリー 研究の構築を目指してきました。センターの設立当初から「インベントリー(直訳すれば『在庫目 録』)という耳慣れないものをいかに多くの方に理解してもらうか」が最大の課題であると認識し (對島,2014)、農業環境インベントリーの整備、発信、活用に取り組んできました。具体的には、 インベントリーセンターの中核をなす土壌、昆虫、微生物に関する情報だけでなく、大気、気象、 水、生物等々農業環境をとりまく様々な情報を収集するとともに、多くの人が利用できるシステム を作ることを目的とした研究開発を進めてきたところです。 農業環境技術研究所では、農業環境を構成する土壌、水、大気等の環境資源、昆虫、微生物、動 物、植物等の環境生物、肥料、農薬等の農業資材に関する調査・観測・分析・モニタリング等のデ ータや手法、分類・特性・機能・動態予測等の知見、保全・管理等の技術に関する情報と標本を多 く蓄積していますが、これらは先輩諸氏が多年にわたり多大の労力と資金をつぎ込んで蓄積されて きたものです(浜崎,2002)。インベントリーセンターが設置されてからの 15 年間で、これらの情 報や標本について、多くの人が利用出来るようにデータベース化を進め、システムを構築して発信 してきました。その代表例が 2010 年に公開した「土壌情報閲覧システム」で、農業環境技術研究所 だけで無く、農林水産省、都道府県の多くの方が取得し、蓄積してきた情報をインターネットで公 開することにより、公開翌年に発生した東日本大震災からの復興という目的もあり、多方面の数多 くの方に利用していただいています。 インベントリー研究では、上記のような農業環境の構成要素に関するデータベースの整備・発信 *農業環境インベントリーセンター長 Director, Natural Resources Inventory Center インベントリー,第 13 号,p1-2 (2016) ― 1 ― - 1 - インベントリー 第 13 号(2016) インベントリー 第 13 号 (2016) と平行して、「農業環境を全体として概観するための統合化手法(上沢,2004)」を目指した研究 開発に取り組んできました。その一つが各種データベースをインターネット上で統合的に利用する ために 2011 年に公開した『gamsDB』と、それを発展させて本年構築した『NIAES-VIC』です。ま た、それらの情報を総合化して農業環境を全体として評価するための『エコバランス評価』にも取 り組み、ほ場スケールでエコバランス評価を行うためのマニュアルを作成しました。 このように、農業環境インベントリーセンター設置からの 15 年間で一定の研究成果をあげ、「イ ンベントリー」という言葉も定着しつつあるものと自負しているところです。ですが、残された問 題や、新たに取り組むべき課題も多いと認識しています。 その一つは「継続」に関わる問題です。これまでは、先輩諸氏が蓄積してきた知見や情報をデー タベース化し、発信することに重きを置き、その成果を、最新の情報通信技術やデータ解析手法を 活用することによって研究成果を生み出してきました。その一方で、フィールドでの地道な観測に よる新たな知見の蓄積については、予算的な制約もあり継続が困難になりつつあります。しかし、 はからずも東日本大震災により長期的な環境放射能測定データの重要性が認識さたように、今日の めまぐるしい農業環境の変動を的確に評価して対策に活かしていくためには、新たな情報や知見の 蓄積を継続し、将来の付託に応えることが重要です。また、わが国における農業環境に関する情報 センターとして今後もその役割を果たしていくためには、情報の発信を安定的に継続することが求 められます。厳しさを増す今日の情報セキュリティ環境への対応や、100 年後の利用にも応えうる情 報の維持等、今後は、安定的かつ継続的なデータの蓄積と発信を可能とするための効果的で効率的 な手法に関する研究開発を進める必要があると考えています。 他の一つは「ユーザー」に関する課題です。これまでの農業環境インベントリーは、農業関係者 の利用に応えるだけで無く、農業分野を代表して、他の分野や国民一般の利用に付すべく、情報の 整備と発信を続けてきましたが、農研機構との統合により、わが国農業の競争力強化への直接的貢 献が強く求められるようになると予想されます。平成 19 年の3法人統合案(農環研と生物研、種苗 管理センターの統合)の際には「知的基盤整備を進め、資源・情報の統合または一体的運用(谷山, 2009)」が求められましたが、農研機構との統合により知的基盤の農業分野での活用を今まで以上 に進める必要があります。特に今日、気候変動への対応を図る上での的確な予測や判断や、政府方 針である「攻めの農林水産業」に向けた ICT の活用。スマート農業構築が求められており、農業環 境に関する「情報」はますます重要性を増すと思われます。そこでの情報は、これまでのような農 業環境を構成する要素に関する情報だけでなく、農業生産技術や、農業経営、さらには農産物・食 品の流通や消費に関わる情報との連携(リンク)が求められることになると思います。それと同時 に、そのような農業生産や消費に関わる情報を含めた形で、農業以外の環境分野や、その他多くの ユーザーに向けた発信を続けていく必要があると思います。 今回の統合を良い機会として、農業環境インベントリーを農業、環境、さらには国民生活や地球 環境に重要な情報インフラと発展させていくため、さらなるご協力、ご支援ご鞭撻をお願いします。 引用文献 1)浜崎忠雄(2002):年刊誌「インベントリー」の発刊にあたって.インベントリー, 1, 1-2. 2)上沢正志(2004):インベントリーセンター3 年間の成果と今後の発展方向.インベントリー, 3, 1-2. 3)谷山一郎(2009):三法人統合後の農業環境インベントリー研究.インベントリー, 7, 1. 4)對島誠也(2014):農業環境インベントリーがますます重要になる.インベントリー, 12, 1-2. ― 2 ― - 2 - 報 文 農業環境情報・資源分類 RP の 10 年 Research Results and my Impression of Research Project for Agro-Environmental Information and Classification of Environmental Resources during recent ten years 吉松慎一 Shin-ichi Yoshimatsu * 1.はじめに 農業環境技術研究所(以下、農環研)は平成 13 年(2001 年)4 月に独立行政法人化すると同時 に第 I 期中期計画期間である 5 年が始まり、その後、平成 18 年(2006 年)4 月の第 II 期中期計画 期間の開始とともにリサーチプロジェクト(RP)制度が初めて取り入れられた。RP は当初 15 個 あったが、その後の変遷を経て現在の第 III 期中期計画期間(平成 23 年〜27 年度)には 10 個にな った。第 II 期の環境資源分類・情報 RP(途中から環境資源分類 RP)と農業環境リスク指標 RP(途 中から農業環境情報・指標 RP)の 2 つの RP がほぼ合体する形で第 III 期には農業環境情報・資源 分類 RP ができた。さらに第 II 期途中の平成 19 年 4 月に新設された化学分析・モニタリング RP が実施していた研究の内、放射能のモニタリングについても第 III 期の農業環境情報・資源分類 RP で取り扱うこととなった(図 1)。農環研の組織の変遷については「農業環境技術研究所 30 年史」 (平成 26 年 4 月発行)に詳しいので参照して欲しい。私は第 II 期後半の 2 年間(環境資源分類 RP)と 第 III 期の 5 年間(農業環境情報・資源分類 RP)の合計 7 年間、RP リーダーを勤めたので、 ここではこれまでの我々の RP の研究について私自身の感想も含めて、簡潔に振り返ってみたい。 本文に入るに先立ち第 II 期の研究内容や第 II 期から第 III 期への RP の変遷などに関してご教示 いただいた農環研の神山和則・元農業環境リスク指標 RP リーダー、木方展治・元化学分析・モニ タリング RP リーダーに感謝したい。 図1:農業環境情報・資源分類 RP の成り立ち *農業環境インベントリーセンター Natural Resources Inventory Center インベントリー,第 13 号,p3-6 (2016) - 3 - ― 3 ― インベントリー 第 13 号(2016) インベントリー 第 13 号 (2016) 2.RP について 先ず、RP とは何なのかである。上述した「農業環境技術研究所 30 年史」では“第 II 期中期計 画に基づく研究課題を推進するために、研究課題ごとにリサーチプロジェクト(RP)を設け、領 域・センターといった研究組織を横軸に、研究課題をプロジェクトとして推進する RP を縦軸にし た、マトリックス構造の組織運営とした。”とある。第 I 期はユニット・チーム・研究室、そして それらが所属するグループ、部やセンターが研究を担う単位であったが、第 II 期からは RP が研究 を直接担う単位となった。現在、農環研には 7 個の領域と 1 個のセンターがあり、研究員は基本 的にいずれかの領域・センターに所属している。我々の RP には現在全ての領域とセンターからの 研究員が研究に参画している。エフォートが 100%の方もいれば、10%程度の少ない方もいる。現 在 10 個ある RP の内、我々の RP はエフォート的にはトップツーの一つであり、30 名以上の研究 員が所属しており、これに加えて 3 名のポスドクも所属している。他の RP が例えば温暖化や生物 多様性などに特化しているのに対し、我々の RP は研究内容が多岐にわたっている。私は昆虫分類 学が専門なので、検索表で属や種を振り分けるが、我々の RP は他の RP が検索表で落ちた後に残 った雑多なグループ(いわゆる wastebasket)である。ちょっと横道にそれるが、土壌の分類学で も検索表を使って土壌大群、統群などを分けている。ここ 7 年間、私自身が RP リーダーとして土 壌の分類学にも深く(?)関わったことから、学んだことである。 3.我々の RP の研究と私の感想 我々の RP は第 III 期の 5 年間は 7 つのグループで研究を推進してきた。設計検討会や成績検討 会の前後あるいは 1 年を通してずっとこれらのグループと RP リーダーである私が打ち合わせを実 施してきた。特に年度の後半には毎年頻繁に打ち合わせや検討会の実施、あるいは報告書の作成 に関して各グループの研究員と相談することが多かったので、私自身の研究は年度の前半になる べく済ませる様に工夫してきた。私自身も研究職であるので、当然研究業績評価の対象となって おり、論文作成や学会発表も重要で、RP リーダーであり、一方で研究員であるという二足のわら じで本当に葛藤の 7 年間であった。 我々の RP は雑多なグループであると上段で述べたが、我々の RP の研究の中核をなすインベン トリー研究そのものが雑多な農業環境に関わる基盤情報を収集することから当然のことかもしれ ない。農業環境インベントリーセンターができたのが RP 発足のさらに 5 年前の平成 13 年 4 月の 第 I 期の始まりの年である。当時は「インベントリー」という言葉が未だ目新しいものであったが 15 年という年月を経て、農業環境研究にかなり馴染んできたのではないかと思う。 私が RP リーダーとして 7 年間務めた中で、包括土壌分類とエコバランス研究の研究マネージメ ントが最も印象深く脳裏に残っている。包括土壌分類では第 II 期の後半の 2 年間で、幾度となく 内部検討会を開催し、また、外部の方も参加してもらう検討会も何度か開催し、議論いただいた。 私もほぼ全ての検討会に参加し、勉強させてもらうとともに 2 年後に試案が完成することを目指 して日程を逆算しながら検討会を進めた。外部の方を招聘しての検討会では野外での現地検討会 で実際に土壌断面などを観察しながら議論したこともあり、私もそれに参加した。その結果、な んとか第 II 期の最終年である平成 23 年 3 月に「包括的土壌分類第 1 次試案」が完成し、農業環境 技術研究所報告第 29 号で公表することができた(図 2)。これにより日本全土を農地や林地の区 別無く統一的に分類する基準が完成した訳である。また、国際土壌分類への対応も可能になった。 このタイミングで包括的土壌分類第 1 次試案ができたことによって、次期である第 III 期の 5 年間 - 4 - ― 4 ― 報文:農業環境情報・資源分類 RP の 10 年 での包括的土壌分類第 1 次試案を反映させた日本全国の各都道府県別の 20 万分の 1 スケールの包 括土壌図の完成に繋がった。また、包括土壌図を補完する資料として、包括土壌分類準拠の「土 壌の写真集」をインベントリー別冊として平成 27 年度に発行できたので、一般の方にも“ある土 壌名の土壌”例えば褐色黒ボク土などが実際どのような土壌であるのかのイメージが簡易に分か る様になった(図 3)。 図2:農業環境技術研究所報告第 29 号 図3:インベントリー別冊「土壌の写真集」 総合的環境評価手法の開発、すなわち我々がエコバランス評価手法の開発とも呼んでいた研究