資源開発環境調査 フィジー諸島共和国 Republic of the Islands

目 次

第 1 部 資源開発環境調査 1. 一般事情 ·································································· 1 2. 政治・経済概要 ···························································· 2 3. 鉱業概要 ·································································· 3 4. 鉱業行政 ·································································· 6 5. 鉱業関係機関 ····························································· 20 6. 投資環境 ································································· 20 7. 地質・鉱床概要 ··························································· 24 8. 鉱山概要 ································································· 26 9. 新規鉱山開発状況 ························································· 26 10. 探査状況 ································································ 27 11. 製錬所概要 ······························································ 28 12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況··························· 30

第 2 部 地質解析 1. 地質・地質構造 ··························································· 31 2. 鉱床 ····································································· 41 2-1. 鉱山・鉱徴地 ··························································· 41 2-2. タイプ別・時代別分布の特徴 ············································· 49 3. 鉱床胚胎有望地域 ························································· 51

参考(統計、法律、文献名、URL等) ········································ 53

第 1 部 資源開発環境調査 1. 一般事情 1-1. 面積 18,333Km2 1-2. 人口 85.4 万人(00 年フィジー政府統計局) 1-3. 首都 スバ(16.5 万人 96 年調査) 1-4. 人種 フィジー系(51%)、インド系(44%)、その他(5.0%) 1-5. 公用語 英語。フィジー語、ビンディー語 1-6. 宗教 キリスト教(52.9%)、ヒンズー教(38.1%)、イスラム教(7.8%) 1-7. 地勢等 フィジーは、約 330 の島からなる島嶼国で、主要な島は,首都スバのある 島 と 島で、2000 年現在の人口は約 80 万人である。人口の 51%をフィジー系、44% をインド系が占めている。インド系住民は、19 世紀末に砂糖プランテーションの労働者と して移民してきたインド人が残留したものである。 フィジーはもともと英国の植民地であったが、2 度のクーデターを経て 1987 年に独立し、 政治形態は主権民主主義制を採用している。当初、Ratu Sir Kamisese Mara 首相による暫 定政権が樹立され、1992 年 5 月に最初の総選挙が実施された。 先住系フィジー人とインド系フィジー人の人種対立が顕在化しており、2000 年 5 月のク ーデター騒動のように、社会、政治問題となっている。クーデター後、政治的な混乱が生 じたが、最高裁は 97 年憲法は合法であるとし、2001 年 8 月に総選挙が実施され、Laisenia Qarase 首相が率いる新政権が樹立され、現在も Qarase 政権が続いている。

第 1-1 図フィジー諸島位置図(外務省ホームページ)

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第 1-2 図 フィジー諸島図(The World Factbook 2004)

2. 政治・経済概要 2-1. 政体 共和制 2-2. 元首 ラトゥ・ジョセファ・イロイロ大統領(Ratu Josefa Iloilo) 2-3. 議会 上院(32 議席)、下院(71 議席) 2-4. 政治概況 1999 年の総選挙でチョドリーが初のインド系首相に就任。2000 年にフィジー系の政治 的優位を主張するスペイト率いる武装勢力が議会を占拠する事件が発生したが、軍が行政 権を掌握して憲法を廃止しイロイロ、セニロリ暫定正副大統領が就任した。裁判所の暫定 政権の違法判決もあり、再度選挙が行なわれ、政権も安定をした。その後、労働党の含め た内閣の組閣を巡って混乱が続いている。 2-5. 主要産業 観光、砂糖、衣料 2-6. GDP 19 億ドル 一人当たり 2,308 ドル 2-7. 通貨 フィジードル 2-8. 為替レート 1US$=1.6499(2005/02 現在) 年末 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 1US$= 1.9658 2.1858 2.3089 2.0648 1.7221 (International Financial Statistics 2004)

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2-9. 貿易 (2002、フィジー準備銀行) 輸出 579 百万ドル:衣料、砂糖、金、魚類 輸入 946 百万ドル:機械、輸送機械、食料品 対日貿易(2003、通商白書) 輸出 40 百万ドル:魚介、砂糖、木材 輸入 44 百万ドル:自動車、機械類 2-10. 経済概況 主要産業は、砂糖生産を主軸に、観光、服飾産業が経済を支え、この他に、鉱業、林業、 水産業、軽工業(履物、食用油)等がある。1999 年までの経済は比較的順調であった。主要 輸出品は、砂糖、金、水産品、木材、ココナッツオイル等で、主要輸出先は、オーストラ リア(26%)、英国(24%)等となっている。砂糖きび産業は、Lome Convention と Sugar Protocol(現 Cotonou Agreement)により EU 向けに優遇価格で輸出され、フィジー経済に大 きく貢献している。また服飾産業も順調である。 鉱業は GNP の 3%、労働市場の 2%を占めている。国土の 83%は先住系のフィジー人が所有 し、9%が国有地となっている。GDP 成長率は、クーデターのあった 2000 年の-1.8%を除き、 比較的高い成長率を達成しており、2001年は 7.1%、02 年は 5.1%であった。一人当たり GDP は 4,133 米ドル(2002 年)である。

3. 鉱業概要 3-1. 鉱業事情 金属鉱物資源の開発は Vatukoula 鉱山(金)のみで行われている。同鉱山は、Emperor Mines 社(本社シドニー)が所有し、従業員 1,600 人を雇用するフィジーでも最大規模の民 間企業であり、輸出金額の約 6%を占めている。また、探鉱活動としては、Emperor 社の Tuvatu 鉱山(Vatukoula 鉱山近く)、Mt. Kasi 鉱山等において金の探鉱が行われている他、日鉄鉱 業㈱がビチレブ島南部の Namosi で銅の探鉱を行っている。また、2003 年には Millenium Resources(豪)が金の探鉱を開始した。 3-2. 生産統計 MRD(鉱物資源局)によると、フィジーにおける金鉱石及び金の生産量は、第 3-1 表の とおりである。また、金及び銀の輸出量、輸出金額は第 3-2 表のとおりである。96 年から 98 年にかけて Mt. Kasi 鉱山において金の生産があったが、それ以外の期間も含めて、フ ィジーの金及び銀の生産のほとんどは Vatukoula 鉱山によるものである。

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第 3-1 表 フィジーの金生産量(MRD)

年 鉱石生産 (t) 金 (oz) 金 (kg)

2003 528,089 113,138 3,519

2002 504,616 119,766 3,725

2001 520,575 123,340 3,836

2000 532,888 122,076 3,797

1999 610,417 142,349 4,427

1998 690,382 120,831 3,758

1997 1,110,848 150,177 4,671

1996 818,994 146,270 4,549

1995 588,205 112,387 3,495

1994 607,028 113,688 3,536

1993 426,636 121,753 3,787

1992 1,517,451 120,606 3,751

1991 498,833 87,775 2,730

1990 586,212 128,941 4,010

1989 626,949 133,137 4,141

1988 561,108 128,696 4,002

1987 502,068 87,369 2,717

1986 491,380 83,976 2,612

合計 12,537,673 2,156,275 67,063

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第 3-2 表 フィジーの金及び銀の輸出量及び輸出金額(MRD)

年 金輸出量 (kg) 金輸出金額 ($M-FJ) 銀輸出量 (kg) 銀輸出金額 ($M-FJ)

2002 3, 829 81.9 1, 901 0.604

2001 3, 836 75.1 1, 974 0.621

2000 3, 842 72.2 1, 474 0.490

1999 4, 420 78.3 2, 125 0.696

1998 3, 758 70.7 1, 787 0.622

1997 4, 672 74.1 2, 653 0.600

1996 4, 607 79.4 1, 758 0.430

1995 3, 476 58.5 1, 574 0.368

1994 3, 500 62.6 1, 405 0.339

1993 3, 712 65.8 1, 080 0.224

1992 3, 105 50.9 877 0.166

1991 2, 810 47.7 484 0.092

1990 4, 115 74.2 774 0.174

1989 4, 212 75.6 1, 046 0.265

1988 4, 302 86.1 994 0.289

1987 2, 868 51.3 814 0.186

1986 2, 951 38.5 530 0.095

1985 1, 888 22 441 0.089

1932-84 117, 721 208.3 40, 876 1.997

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4. 鉱業行政 4-1. 鉱業政策 フィジー政府は、鉱業の発展と管理が国家の社会繁栄に貢献すると考え、鉱業セクター の発展を積極的に支援している。フィジー政府の鉱業政策は、鉱業法及び規則(Mining Act and Regulations, Cap. 146)に基づいており、土地鉱物資源省鉱物資源局(MRD:Mineral Resource Department)が、鉱物資源の探査、開発を総合的に所管している。 鉱業法が対象とする鉱物は以下のとおりである。 貴金属 金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、これらと同等なもの及びこれら を含む鉱石。 貴石 アンバー、アメジスト、ベリル、キャッツアイ、ダイヤモンド、エメラルド、ガーネッ ト、オパール、ルビー、トルコ石、その他同等な鉱物。 工業原料 アスベスト、粘土、バライト、ベントナイト、チャイナクレイ、フーラー土、石墨、石 膏、大理石、雲母、硝石、リン鉱石、パイプ白土、カリウム、塩、硫黄、滑石、その他 放射性鉱物 ウラニウム、トリウム(含有量 0.05%以上) 石炭 石炭これに類似するもの 金属鉱物 アルミニウム、アンチモニー、砒素、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、銅、 鉄、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、錫、タングステン、バナジウム、亜鉛、 その他の鉱物及びこれらを含む鉱石 さらに、MRD は、採石法(Quarries Act, Cap. 147)及び火薬法(Explosives Act, Cap. 189)の所管官庁である。採石法は、鉱業法が対象としない粘土、砂、砂利、その他の岩石 資源を対象としているが、これらの資源は土地所有の一部となっており、鉱業法対象の鉱 物資源と法律上の扱いが異なっている。 鉱物資源に対する行政的な管理は、鉱物資源担当大臣の総合的政策管理のもとに、鉱山 局長(Director of Mines)が行う。鉱山保安監督官は、鉱業法及び規則、採石法に基づき、 監督業務を行う。 鉱山局長の責任は、これらの法律における規制を適用する場合に、労働安全及び環境保 護に関してグッドプラクティスを確実に実行させることである。

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4-2. 鉱業政策の基本原則 鉱業政策の基本は、埋蔵鉱物資源は国家の所有であると同時に、フィジー国民の生得権 (birthright)であり、政府がその生得権の管理者であるというコンセプトである。した がって鉱物資源を管理者とするフィジー政府は、環境に配慮し社会的に容認できる開発方 法、ならびに利害関係者間の開発コストと公正な利益分配を保証するための規制メカニズ ムを取入れている。 また、鉱物資源の開発は私企業によることが基本であり、鉱物探査権および開発権を企 業に授与している。したがって、政府は鉱物資源開発者が、プロジェクトの計画段階から 全体に至るまで、社会・環境・経済的な分野にわたる利益に対し配慮することを求める。 政府は、鉱物セクターの開発が、コミュニティーに対し便益をもたらすと同時に、さま ざまな問題を提起してきたこと、ならびに住民の直接参加が長期間におよぶ良好な関係の 中心であることを認識している。住民の直接参加とは、特定の小規模ビジネスへの機会提 供や、社会インフラストラクチャーの開発等であり、このような関係は、探査の早い段階 で開始され、鉱山の閉山まで持続されなければならない。基本的には、資源プロジェクト のデベロッパーは、計画と開発において、協調的かつ参加的な対応を求められる。 また、政府は、投資の促進、ならびに投資家リターンの最大化のための環境創出を担う ことの重要性を認識している。このために、政府はマクロエコノミクス政策を実行してき た。たとえば、MIGA への参加、投資環境ステートメントの策定、非課税インセンティブの 設定などがあり、政府はこれらの政策を同時的に推進している。 また、政府は、民間投資が、鉱業開発リスク、地質ポテンシャル、財政政策、政治的安 定性等を考慮して行われることを認識している。そのために、政府は低投資コスト、競争 性、投資家リスク、投資家リターンに配慮した政策を導入している。 4-3. 基本政策 鉱業投資のインセンティブにとっては、リスク管理と投資のリターンバランスが重要で ある。このためにフィジー政府は国際競争性のある相関的政策のパッケージを模索してい る。その中で、投資の促進と、様々なマーケット環境のもとでのフィジー国民への正当な リターンという 2 つの目的を達成することを目標としている。政策フレームワークは、鉱 業特有のニーズと税制との調和を反映するものとなっている。 政府の鉱業税制パッケージの基本は、事業者の営利的な操業を可能とするもので、鉱物 資源を大きな障害なく営利的に開発できるような環境を提供することである。このために 課税のタイミングや課税範囲等のマイナーな項目は、特定鉱種のマーケット、市況を考慮 して設定される。 国外事業者は、通常その本籍国からの様々な課税義務を負っているが、フィジー政府は、 本籍国での課税より先行して課税を行わない。

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以上のような基本的政策パッケージの範囲外でも、政府は特定のプロジェクトへの当時 インセンティブに対して柔軟に対応する。こうした特定の投資インセンティブの要求は、 最終 FS 調査段階で明示される必要がある。フィジー政府は、一般的にプロジェクトライフ 全体に対する措置ではなく、プロジェクトの初期段階における暫定的あるいは移行的緩和 措置についての支援をする。 鉱業税制は、他の経済セクターに適用される一般税制システムから独立しているわけで はないが、鉱業の特殊性を考慮している。例えば、鉱業には鉱業ベンチャー資本(もしく は融資)の集約性、金属市場の周期性、開発以前の長期間にわたる探査、FS 調査実施のコ スト負担等の特徴があり、これらの要素が鉱業税制パッケージでは考慮されている。鉱業 税制は包括的パッケージであり、個々の独立した法律の寄せ集めではない。 フィジーでは、未開発鉱物資源は国家が所有するが、こうした鉱物資源の開発は、私企 業が行うものであり、企業には、完全かつオープンな鉱物資源へのアクセスが認められて いる。政府は、いかなる資本参加や、プロジェクトであれ直接的な参加を行わない。 フィジーの探鉱開発の管理システムは開放的かつ公平である。基本的には、承認された 開発計画に沿った実行能力を政府に示すことができるすべての事業者に対し、探査権と採 掘権が付与される。重複する申請者がある場合、先願主義により権利が与えられる。現行 の鉱業政策は、国内及び外国の探査、採掘に関係する投資家の鉱物発見及び開発のための 権利を保護し支援している。鉱物保有権に対する投資家の権利、タイトルの確実性はフィ ジーの鉱業法及び規則に明示されている。MRD が、これらの権利の管理に関する責任官庁 である。 権利保有者は、注意義務(due diligence)を遂行し、探査に要求されたアクティビテ ィを積極的かつ精確に実行するとともに、鉱業法に則り適宜総合的に報告しなければなら ない。このことは、開発プロジェクトに繋がる権利の継承権の保全のためにも必要である。 一定期間の経過後、権利保有者は、対象地域の一部の放棄を求められる。 フィジー政府は、適法な探査事業者のフィジー国内での活動を推奨するが、投機的ベン チャーを排除する。 鉱業に関する紛争の調停は、鉱業アピール委員会(Mining Appeals Board)で行われる。 この結果は最高裁判所の審理にも採用される。 4-4. 探鉱と採掘の手続き 4-4-1. 探査及び採掘に関する権利、ライセンス及びリースの種類 鉱山局長は、担当大臣の同意のもとに下記の権利、ライセンスをグラントすることがで きる。フィジーの鉱区設定状況を第 4-1 図に示す。 (1) 探査 ・探査権 Prospector’s Right 申請条件:21 歳以上の個人 期間:1 年

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面積:所有者又は占有者に通知した土地、 権利内容:鉱物の探査、下草刈り・伐木、たて孔・ピット掘削、水の使用 ・探査ライセンス Prospector’s License 申請条件:探査権保有者 期間:5 年(更新可) 面積:400ha 以内 権利内容:探査権と同じ、機械/プラントの設置可、運搬路の設置可 ・特別ライセンス Special Prospecting License 申請条件:探査権保有者 面積:1,300ha 以上 権利内容:申請者と鉱業管理者との間で協議した特別な協約及び条件 (2) 採掘 ・採掘許可 Permits to Mine 申請条件:探査権または探査ライセンス保有者 期間:2 年(1 回につき 1 年間更新可) 面積:貴金属 40ha 以下、それ以外 128ha 以下 権利内容:採掘 ・採掘リース Prospector’s License 申請条件:探査権、探査ライセンス、採掘許可のいずれかの保有者 期間:5 年以上 21 年未満まで 面積:貴金属 40ha 以下、それ以外 128ha 以下 権利内容:採掘 ・特別採掘リース Special Prospecting License 権利内容:申請者と鉱業管理者との間で協議した特別な協約及び条件 (3) その他 ・特別サイト権 Special Site Rights 申請条件:探査権、探査ライセンス、特別探査ライセンス、採掘許可、採掘リース、 特別採掘リースのいずれかの保有者 期間:鉱業管理者の裁量によるが、個々の権利の範囲内 面積:水源―ダム、貯水池の建設に十分な広さ、通路―最短かつ十分な長さがあり 幅 5m 以上 10 以内、ジェネラルサイト―10ha 権利内容:道路以外の通路については鉱業管理者の裁量により追加権利許可可能、 水源の利用、機械設置、廃石/尾鉱廃棄、炉の建設 ・道路アクセスライセンス Road Access Licenses 申請条件:探査権及び採掘許可、採掘リースのいずれかの保有者 権利内容:権利保有土地以外でのアクセス道路の建設

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これらの権利、ライセンスあるいはリースに対する申請に対する審査基準は以下のとお りである。 ・地質調査の専門的技術力と実行能力、探鉱分野における過去の業績、ならびに計画 を実行するためのファイナンス能力を含めた企業の財務状況。 ・必要なフォームが適切に記入され、MRD に提出された時に、審査プライオリティが 決まる。

第 4-1 図 フィジーの探査・採掘鉱区設定状況(04 年 6 月現在)

4-4-2. 探査権の取得 探査を行う事業者または個人は、探査権(期間 1 年)を取得し、これを更新するか、よ り長期の探査が可能な探査ライセンスに切り替える。探査権の申請資格は 21 歳以上の個人 とされており、国籍の制限はない。これらの探査の権利を取得することにより、フィジー において探査のために開放されている土地にある鉱物資源を探査することができる。

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探査規模が大きいか探査期間が長期化する場合、探査ライセンスを申請することができ る。探査ライセンスの申請は、探査権の保有者でなければならない。探査ライセンスの申 請内容に特別な条件が必要な場合、特別探査ライセンスを取得する必要がある。探査ライ センス及び特別探査ライセンスは、通常 1 から 5 年間にわたりグラントされる。特別探査 ライセンスの指図書(terms and conditions)は、ライセンス保有者と鉱山局長との合意 によって更新が可能である。この合意を行う際に、鉱山局長は、申請書に示された地質調 査計画の適切性、最低支出経費を含むクライテリアを考慮する。 指定されたライセンスの条件が満たされている場合には、探査ライセンスの延長が通常 は可能である。探査ライセンスの延長は、通常 1 年単位でなされるが、それ以上の期間が 認められる場合もある。延長は最初の申請書で適用されたのと同じ条件に従うものである が、延長する場合、最低限の探鉱費用が、延長されるごとに増加していくことが期待され る。 「マチュアーな地域(mature areas)」、つまり既存調査が集中的に行われている場合、 または既知の鉱徴地が対象である場合、申請者は 2~3 年にわたる探査ライセンスを申請で きる。「マチュアーな地域」における、探鉱権の認可を審査する際、担当大臣は、以下の 2 つのファクターを公平に考慮する。 ・プレ F/S 調査実施の能力の有無 ・鉱山開発の可能性の有無 フィジー政府は、フィジーにおける探査事業の実施を促進することに大きな関心がある。 しかし、鉱山開発の見込みのある地域における、投機目的での探査ならびに短期間でのプ ロジェクト売却による利益出しを行う企業の進出は望んでいない。 4-4-3. 探鉱から開発への移行 鉱業法で規定された探査権、探査ライセンス、特別探査ライセンスは、一定の条件を満 たせば採掘に関する権利に移行することができる。採掘に関する権利として、採掘許可、 採掘リース、特別採掘リース、特別サイト権がある。 採掘許可は、探査権または探査ライセンスの保有者が、採掘可能な資源の存在を証明で きる場合に申請できる。採掘権の期間は 2 年間であるが、1 年ごとに更新が可能である。 大規模なプロジェクトの場合、採掘許可をリース、または特別採掘リースに変えることが できる。採掘リースの期間は 5~21 年間である。 探査から採掘への移行は、採掘に関する鉱山局長と権利保有者の間で同意された様々な 条件と調和した形で行われる。採掘リースの発行は、以下の 2 つの条件を満たさねばなら ない。 ・プロジェクトの実行可能性を証明する総括的 FS 調査報告書の提出。FS 調査は、詳細 な経済性評価、環境影響調査(Environmental Impact Assessment)を含むこととする。 ・開発に関係するすべての利害関係者の一般的原則、責任及び義務を取決めた開発協定 書(Development Agreement)の締結。開発協定書は、通常、権利保有者、フィジー政府及

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び開発地域住民の代表者との協議によって作成される。一般的に、新しい鉱業プロジェク トは、政府と権利保有者との間での特別協定(Executive Agreements)として扱われる。 4-4-4. 事業終了後の情報開示 全ての探査権、探査ライセンス、採掘許可、採掘リースの保有者は、規定された必要条 件をみたす報告を行わなければならない。現在ライセンスを取得している地域の情報及び データは非公開であるが、探査あるいは採掘に関する権利が放棄または抹消された場合に は、これらのデータは政府の所有となり、MRD を通じて一般に公開される。 4-5. 持続可能な発展政策 フィジー政府の鉱業政策の基本は、開発事業の持続的発展性のい確保である。持続可能 な鉱物開発プロジェクトとは、効果的なコミュニティーの参加を組み入れ、法人組織とし ての意思決定過程における投資利益の公平配分の保証、社会―環境インパクトの適正評価 とそのインパクトの低減化を行うものである。 環境政策は、国家的な環境政策に関する環境省(Department of the Environment)及 び鉱物セクターの監督官庁である MRD が所管する。 現在実施されているモニタリング及びコンプライアンスプログラムの目的は、フィジー のい容認可能な社会―環境基準と環境負荷低減技術への必要性に対応するために、実用的 な政策を採用することにある。フィジー政府は事業者に対し、負荷低減のための手段を講 じるだけではなく、決められた排出レベルに従うことを強調している。また、投資家が、 最も費用対効果の高い方法で環境負荷を削減する方法を、政府の承認のもとにフレキシブ ルに選べるようになっている。 フィジー政府は、環境モニタリングへの自己管理アプローチ(self-regulatory approach)を推奨している。政府は、社会―環境基準を設定し系統化する一方で、鉱業セ クターとともに、事業者がこのような基準に合致するか、もしくはそれよりも高水準に達 するような実務コードの開発を進めている。 フィジー政府の環境政策は、“汚染者負担の原則”(polluter-pays-principle)を基 本としている。事業者は、個人または地域社会のライフスタイルや収入が、採掘の社会― 環境インパクトによって相対的に悪影響を受けた場合、補償責任を持つことになる。さら に、事業者は、必要とされる環境対策とリハビリテーション活動に伴う全てのコストにつ いて、探査の初期段階から採掘の終了後まで、責任を課せられる。 フィジー政府は、採掘の環境―社会への負のインパクトを防止する、もしくは最小限に するための予防策をとることを事業者に要求する。重大もしくは再生不可能なダメージと なるような明白なリスクがある場合や、採掘開発において科学・技術的に不確実な部分が あれば、フィジー政府は予防措置(precautionary abatement)/緩和措置(mitigation measures)をとることを要求する。このような措置が命令された場合、事業者はワースト シナリオを提出しなければならない。

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4-6. 土地使用政策と権利の保全 事業者は、鉱業権に加えて、土地リースを受けなければならない。フィジーの土地は、 ネイティブランド(Native Land、フィジー全体の 83%)、国有地(Crown Land、銅 9%)、 フリーホールランド(銅 8%)に分類される。鉱業権と土地リース(もしくは土地タイトル) は、そのリース契約の中で明記されている特定の土地での特定の活動を行う権利を、事業 者に与えている。 権利の保全が鉱物セクターの投資家にとって、最重要事項であることを、政府は認識し ている。このため政府は、1990 年憲法と Land Transfer Act (Cap. 131)の双方に明記され ている投資家の土地権利を確実に履行している。土地リースそのものは、法的拘束力があ り、権利の保全を保障している。 事業者は、長期にわたる土地所有者との良好なコミュニケーションが、探査と採掘操業 に関係する、土地紛争を最小限にするということを認識しなければならない。土地が限ら れている島々では、土地獲得、表層かく乱、伝統的土地使用への制限に対する補償金の支 払いに関する、土地所有者の不満が、長期間にわたる採掘操業に対し大きな障害となるこ とがありえる。鉱山開発に先駆けて、事業者は、権利の損失と地表の現状変更に対する補 償支払いに関する地域住民との見解の一致を、適切な方法で得る必要がある。 補償交渉は適切な代理人を通じ、MRD との協議を行いながら進められなければならない。 補償交渉における、事業者を支援するネイティブランドトランスボード(Native Lands Trust Board)、政府土地開発局(Government’s Lands Department)の主な役割は、プロ ジェクトそのものの実効性を失うことなく、現在及び将来の土地の所有者の利益を最大化 するように交渉を促進することである。 未開発の鉱物資源は国家に帰属し、採掘ロイヤリティは政府に支払われ、それから土地 所有者に分配される。事業者は、鉱物資源開発に対するロイヤリティと、土地所有者の権 利の損失、土地ダメージ、復元工事に対する補償金とは別のものであると認識しなければ ならない。それぞれをどのように決めるのかについてのガイドラインは、鉱業法、ネイテ ィブランドトラスト法(Native Land Trust Act, Cap. 134)、クラウン土地取得法(the Crown Acquisition of Lands Act, Cap. 135)で定められている。 鉱山開発に必要とされている土地を、正当な手続きを経ることなく、土地所有者との自 主的な合意によって獲得することはできない。 4-7. 住宅、社会、地域的インパクトに関する政策 開発途上国では、中・大規模の開発事業は、大きな社会・文化的インパクトを伴うこと が多い。フィジー政府は、実行性のある社会調停政策の創出は、投資家、政府、地域のパ ートナーシップから生まれると認識している。パートナーシップの条件は、プロジェクト の初期段階から明確に定義される必要がある。また、社会・文化的なインパクトを最小限 にし、計画が徐々に進むようにデザインされなければならない。

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大きな開発プロジェクトの社会的インパクトに立向かうことは、政府と事業者の連帯責 任である。事業者は、コミュニティーと直接関係を維持しながら、社会的イニシアティブ をとるような企業戦略を持たなければならない。社会的調整プログラムを積極的に進めて いくことになるが、これには事業者の直接的な参加と資本投入が必要であると、政府は考 えている。 4-8. 労働と雇用政策 鉱業による雇用はそれほど多くはないが、フィジー政府は鉱業セクターにおける雇用政 策が重要であると考えている。鉱業セクターにおける雇用は、比較的賃金が高く、熟練労 働者にとっては魅力的である半面、高賃金が生む賃金インフレ現象を引起こす可能性もあ る。政府としては、高賃金がもたらす利益の最大化、その悪影響の緩和、事業者の地元住 民雇用の促進のために、積極的な職業訓練プログラムを推進することを希望している。 フィジーは、自由団体交渉システム(free collective bargaining system)なので、 事業者が、国家の賃金政策と賃金制限条項になるべく近づくことが望ましい。フィジーで は、効果的な賃金交渉調停手続きが確立されており、フィジーの労働規制に包括的に組込 まれている。 フィジー政府では、労働政策は、労働省(Department of Labour)が所管し、労働関連 法規は以下のとおりである。 ・Employment Act (Cap. 92) ・Workmen’s Compensation Act (Cap. 94) ・Trade Unions Act (Cap. 96) ・Trade Unions (Recognition) Act (Cap. 96A) ・Trade Disputes Act (Cap. 97) ・Wages Councils Act (Cap. 98) 4-9. インフラ政策 大規模鉱業プロジェクトは、実質的なインフラへの投資を必要とする。こうした投資は、 プロジェクトの採算性に大きく影響することも多い。基本的には、フィジー政府は、こう した特定のインフラに投資を行わないが、社会全般にとってベネフィットのある多目的な インフラ整備への参加には積極的に取り組む。このような政府の参加の条件は、ケースバ イケースである。 鉱業プロジェクトに伴うインフラは、既存インフラの技術的仕様に合致することが望ま しい。基本的な技術仕様を定めた法律は以下のとおりである。 ・Electricity Act, (Cap. 180) ・Housing Act (Cap. 267) ・Ports of Authority of Fiji Act (Cap. 181) ・Roads Act (Cap. 175) ・Sewerage Act (Cap. 111)

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・Telecommunications Act (Cap. 173) ・Water Supply Act (Cap. 89) 鉱業プロジェクトのインフラは、可能な限り、既存のインフラとの互換性があり、フィ ジー国内の一般的なサプライヤーによって維持管理可能なものでなければならない。プロ ジェクトインフラが、採掘リース地域外に及ぶ場合、国家政策に基づいて、これらのイン フラへの公共的アクセスが可能でなければならない。 すべてのインフラ計画の作成は、フィジー政府内の所管官庁との充分な協議によって行 われなければならない。政府と事業者とのインフラ開発のための密接な連携が、既存イン フラとの互換性を確保し、事業者に現実的な価値判断を提供すると、政府は考えている。 4-10. 探査と採掘 4-10-1. 探鉱から開発への移行 フィジーの鉱業の歴史は、1868 年に Vitu Levu の Navua River 沿いで金が報告されたこ とに始まり、その後個人、小規模採掘事業者によって開発が行われた。 金が最初にフィジーから輸出されたのは 1932 年のことである。これは、Vanua Levu 島 Yanawai に位置する Mt. Kasi で採掘された金であった。1932 年から 1946 年にかけて、Mt. Kasi での採掘では、一部地下採掘に伴う大規模オープンカットによって行われた。Mt. Kasi 鉱山では、1946 年の閉山までに、鉱石生産量は約 265kt(金品位 7g/t)、産金量は 1,803kg であった。 また、1932 年には Vitu Levu 島 Tavua 近郊で経済的な鉱床が発見され、Vatukoula 金鉱 山として開発され、後 Emperor Gold Mining Company Limited が買収して操業を行った。 また、Emperor 社はカルデラ周辺の小規模採掘業者を買収した。 その後数年間に他にも多くの金鉱床の発見があったが、Mt. Kasi と Vatukoula 鉱山が、 主要金鉱山であった。 4-10-2. 鉱業法の変遷 フィジーの鉱業法の歴史は、鉱物セクターの発展を促進・規制するための最初の Mining Ordinance が制定された 1908 年に遡る。Mining Ordinance は、探査業者、採掘業者が必要 としていた権利の保護、排他的な探査、開発権を含んでいた。同時に、土地所有者の財産 権と公共の利益を保護するものであった。また、鉱物資源の賦存する土地が投機家によっ て買占められることを防ぐものであった。 1908 年から、1965 年の間に、Mining Ordinance は 5 回にわたり改正された。1965 年の 改正では、鉱物資源の管理の所管を、Mining Board から Department of Mines(現在の MRD) の鉱山局長(the Director of Mines)に移管した。現行の鉱業法は、78 年に制定された もので、85 年に改定された。現在、鉱物資源局は、他の政府政策との適合性を確実にする ため、鉱業法の見直し作業に入っている。 フィジー鉱業法の基本的な目的は、大きく以下の 3 点である。 ・フィジーにおける鉱物資源の開発を促進するとともに規制する。そのために、鉱物資

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源は効率的な方法で開発され、全体として多くの利益がコミュニティに還元されると いうことを事業者に確認させる。 ・探査開発事業者に対する一定期間の権利確保を保障する。 ・土地の所有者への適切な補償を提供する。 4-11. 鉱業分野での国際協力 フィジー政府は、豪州及び日本と鉱業分野における国際協力事業を進めている。 1997 年に豪州国際開発局(AusAID)の援助によりフィジー全土の広域物理探査が行われた。 このために豪州地質調査局(AGSO、現 Geoscience Australia)が 97 年 4 月から 8 月にか けて、空中物理探査の監督業務を行った。この結果、フィジー全土について 50 万分の 1、 ヴィチレブ、ヴァヌアレブ、ヤサワ、ラウ北部、カダウ及びモアラについては 25 万分の 1 の地質・物理データが作成され公表されている。 日本政府は、国際協力事業団と金属鉱業事業団による資源開発協力基礎調査を行ってい る。90~92 年にヴィチレブ島、95~97 年にヴァヌアレブ島において、広域衛星画像解析、 重力探査及び精査域内での地質調査・地化学探査・試すい調査を行った。2002~03 年にか けて、ヴィチレブ島南部を中心に環境ベースライン調査を実施した。また、フィジーを含 む周辺のマーシャル、ミクロネシア、トンガ等の各国の経済水域内に賦損する深海底鉱物 資源を対象にした南太平洋深海鉱物資源調査が 85年からSOPAC事務局と共同で進められて いる。このために金属鉱業事業団は、調査船第二白嶺丸を毎年各国海域に派遣して調査を 行っている。 4-12. 探鉱開発に関する情報 フィジーで探査、開発を行う企業は、その事業の終了後に、得られた情報、データを政 府に提出することが義務付けられている。MRD はこれらの情報を MRD Library にオープン ファイルとして保管している。これらの情報はライセンス番号によって検索することがで きる。MRD はこれらの情報のデジタル化も進めている。 フィジーの探査開発に関する情報源として、下記の出版物がある。 The Exploration & Mineral Digest (MRD) MRD が作成する季刊の探査、鉱業関連情報で、季刊で発行されている(年間購読料 F$ 48)。 Metallic Mineral Deposit of Fiji (Memoir 4, 1995, MRD) フィジーの全金属鉱物資源鉱床の産状及び特徴について解説(196 ページ、F$ 20)。 Bibliography of the Geology of Fiji (12Volumes) (MRD) 1983 年以降の企業による特別探査ライセンス(SPL)に関する報告レポート。 Database Catalogue (MRD) 探査、物理探査、鉱区にかかる詳細情報を dBase 形式で提供する。 Annual Review of Exploration and Mining (Mining Journal 社) Mining Journal 社の年次報告。

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Asia Money, Special Supplement on Fiji (September 1993, Asia Money) Asia Money 誌のフィジーに関する特別付録。 4-13. 土地管理 4-13-1. 土地所有権 フィジーには、正確な土地登記システムがあり、良好な投資環境の一つとなっている。 また、ネイティブランドを扱う公的機関であるネイティブランドボード(Native Lands Trust Board: NTLB)があり、ネイティブランド管理が行政システムとして確立している。 ネイティブランドは、フィジー全体の 83%を占め、原住民系フィジー人が所有しており、 Native Lands Trust Act (Cap. 134) によって、NLTB を通じ所有者が管理を行っている。 ネイティブランドは、特定の目的についての所有者の同意があれば、一定期間のリースが 可能である。リースカテゴリーは、その期間および条件によって異なる。リース権の売買、 譲渡、変更を行う場合 NLTB の同意が必要である。リースコストは年間借料(yearly rental payment)と separate lease または premium cost からなる。当該事業者がネイティブラン ドにある場合、事業者は直接 NLTB と契約することができる。 フィジーの国土の 7%は国有地(Crown Lands)である。国有地は、ネイティブランドと 同様に売買できない。国有地は、土地局長(Director of Lands)が、Crown Lands Act (Cap. 132) に基づいて管理している。 フリーホールランドは、全国土の 10%を占める。フリーホールランドは Land Transfer Act (Cap. 131) によって管理されている。 鉱業法上、ネイティブランド、国有地、フリーホールランドは同等に扱われている。原 油その他の未開発鉱物資源は、国家の所有とされ、土地所有権とは分離されている。 現在操業中の Emperor Mines Limited の Vatukoula 鉱山はフリーホールランドにある。 また探鉱活動が行われている Mt. Kasi プロジェクト(Pacific Islands Gold NL)はネイ ティブランドにある。 4-13-2. 土地所有者の権利 事業の開始する場合、探査及び採掘の権利保有者は、その旨をその土地の所有者もしく は占有者に通知しなければならない。その土地がネイティブランドである場合には、探査 実施者は、NLTB とその土地の所在地の Commissioner of the Division にも、通知のコピ ーを送付しなければならない。Commissioner は、探査実施者に土地所有者との関係につい て助言を行う。 4-13-3. 土地所有者の異議申立て 権利保有者の活動に異議がある場合には、土地所有者または占有者が、その異議の内容 を鉱山局長に提出する。鉱山局長は、権利保有者に対し、直接的に指導できる。また、必 要に応じ、友好的な関係が回復されるまで、当該土地での活動を中止するように権利保有 者に指示することができる。

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4-13-4. 土地所有者への補償 補償金の支払いは、以下の 2 つの場合がある。 (1)土地に永久的なダメージを与える場合、土地所有者に対して補償する。 (2)土地の表層部分についての権利保有者、たとえば、住民、占有者、リース権保有者に 対して補償する。 どちらのタイプの補償においても、補償内容は、当該地域の地下資源の価値との関連で 決めてはならない。鉱業法に定められているように、土地所有者への補償は、ロイヤリテ ィとは別問題であることも留意しなければならない。 補償金の支払い義務は、ライセンスのタイプによって異なる。探査権と探査ライセンス においては、補償内容は、土地所有者と NLTB との交渉を通じて決定される。最近では、NLTB は、地表賃借の価値についての補償を設定している。 鉱業法及び規則によって定められた遵守事項、ならびにリースやライセンスに付与され ている特別条件を確保するために、事業者は、現金またはボンドを鉱山局長に預託しなけ ればならない。その金額は、地表ダメージに対する補償金として支払われるべき金額相当 額とする。 4-13-5. クローズドエリアと保護地域 大臣は、鉱業法に基づき、フィジー全土の鉱物資源に関して、保護地域、特定クローズ ドエリア、または採掘の禁止や制限を命令することができる。鉱業法には、探査、採掘に 対するランドクローズのレベルが記載されている。また、大臣の許可に基づき鉱山局長、 特定条件下で係る地域における探査、採掘を定めることができる。 クローズドエリアや保護地域の設定の目的は、特定の鉱物資源や特定の地域を開発から 守ることにある。こうした制限には、将来にわたる場合、特別な開発のための保存を目的 としている場合、ならびに土地所有者や当該地域の住民の居住権の侵害を回避することを 目的としている場合等がある。 投資家は、このような特別な鉱物資源や地域に対して、限定的排他的探査・採掘権 (limited exclusive prospecting and mining rights)を申請することもできる。こうし た排他的な権利は、開発事業に対し、確実な保全のために規制及びコントロールを行いな がら、限定的な開発を許可するものである。多くの場合、こうした限定的な権利は、埋蔵 鉱物の将来的な開発を可能とする国家資源埋蔵量(National Resource Endowments)を確 保するために行使される。この結果、一般的には、こうしたクローズドランドや規制対象 地域においても、大臣による特別な条件を付与することで、探査を行うことが可能となっ ている。

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4-14. 環境政策 4-14-1. フィジー持続的発展法案(Fiji’s Sustainable Development Bill) 環境保護に関することは、環境関連法規であるフィジー持続的発展法案によって定めら れることになっている。この法案は、環境省によってまとめられている。この法案によっ て現在の政策および原則が形式化されることになる。 4-14-2. 鉱業セクター特別政策 政府は、鉱業開発の国家的発展への経済効果を認めるとともに、これが社会環境に与え る影響についても認識している。 環境省は、国家の環境政策の所管官庁として、鉱業プロジェクトが社会環境に与える全 ての影響を評価するフレームワークを提供する環境影響評価プロセスを規定している。 開発事業者は、このプロセスによって要求される全ての情報及び評価内容を、鉱業部門 を所管する MRD に提出しなければならない。 事業者は、予測される影響を特定するとともに、鉱山に関連した環境への排出に対し、 適切な国際基準に準拠する対策方法を提案しなければならない。また、事業者は、環境監 視プログラムの選択及び環境に配慮した設計に対して、技術的正当性を説明しなければな らない。 鉱業協会は、政府と協議しながら、会員企業が環境実行コード(environmental code of practice)を策定し、許容可能な環境基準を定めることとする。さらに鉱業協会は、会員 企業が環境実行コードを確実に遵守するような自己管理メカニスムを導入することを求め ることとする。 事業者は、ベストプラクティスを確保するために、払戻し条件付銀行保証を提出しなけ ればならない。保証金の額は、プロジェクトに関わるリスクの要素に従って、MRD が定め る。 事業者は、その事業によって、健康、環境、収入等の面で被害を被った個人あるいは自 治体に補償金を支払うこととする。補償金の額は、政府が、被害程度を考慮し、事業者、 ならびに補償金を受ける個人または自治体と協議をした上で、決定する。補償金の決定は、 鉱物資源の価値ではなく、被害の程度によって定められるものとする。 事業者は、鉱山操業中は常に、積極的なリハビリテーションを行うこととする。政府は、 こうした取組みが、最終的にはリハビリテーションコストの総額を引下げることができる と考えている。政府の予防原則に基づき、鉱山閉山時のリハビリテーションに必要な十分 なファンドを確保するために、事業者は、閉山リハビリテーション基金(Mine Closure and Rehabilitation Fund)に出資しなければならない。しかし、政府は、プロジェクトによっ ては、完全な原状回復が不可能な場合もあることを認識している。

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5. 鉱業関係機関 土地鉱物資源省鉱物資源局(MRD:Mineral Resource Department)が、鉱物資源の探査、 開発を総合的に所管している。 鉱物資源に対する行政的管理は、鉱物資源担当大臣の下、鉱山局長(Director of Mines) が行なう。鉱山保安監督官は、鉱業法および規則、採石法に基づき監督業務を行なう。

6. 投資環境 6-1. 投資政策ステートメント(Investment Policy Statement: IPS) 政府は産業投資促進のために、貿易投資公社(The Fiji Islands Trade And Investment Bureau)が投資政策ステートメント(Investment Policy Statement: IPS)を策定してい る。IPS は、以下のとおり、投資政策の原則として、政府の新しい方向性を明示している。 全経済の全分野での投資を促進する。 投資促進は、政府主導ではなく市場主導で行うこととし、政府は規制ではなく支援によ って投資促進を図る。 法的セーフガードとして、あるいは社会的な理由による規制が必要である場合、透明性 の高い政策によって対処する。 IPS は投資家の広範囲にわたる関心事項を網羅している。その範囲は、投資促進と助成、 投資インセンティブ、投資家に対する保証、投資認可手続き、政府のインフラ開発政策な どがあげられ、以下のルールを明文化する作業が進められている。 ・海外投資の承認 ・海外投資のファイナンス ・海外投資家のフィジー国内での資金調達 ・資本と利益の還元 ・M&A ・外国人の雇用 ・投資インセンティブと所得税優遇措置 ・輸出インセンティブ(VAT の払戻し)と輸入関税優遇措置 ・国産品と国内サービスの保護 ・プロジェクト許可と優遇措置申請手続き この作業が完了すれば、関係規則は、フィジー貿易投資委員会(Fiji Trade and Investment Board)から入手可能となる。 6-2. 外国投資家の扱い 外国からの投資は、フィジーの経済成長において大きな役割を果たすと期待されるので、 政府は、フィジーにおける外国人投資家および国内事業家の投資全般の向上を図る。政府 はフィジーでの立地に適するすべてのプロジェクトを支援することとし、以下のような、 明確で広範にわたる目標を設ける。

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投資は、フィジーの経済及び社会発展に資する。 多くの地方における投資機会を提供する(特に JV による資源開発事業)。 輸出促進。 地元住民に対する職業訓練と雇用の促進。 生産効率の向上。 労働市場や道路インフラ等の効率的使用 フィジー政府が外国投資家に求めることは以下のとおりである。 プロジェクトへの適切な資本投資を確保すること(負債/資本比率が 3:1 より大きいこ と)。 ローカル資産に対する適切な価格評価を行うこと。 フィジー準備銀行(Reserve Bank)から、利益及び配当の外国送金の許可をとること(主 として税務処理及び統計処理のため)。 フィジー準備銀行から、フィジーへの有価証券投資について為替コントロールの承認を とること。 労働者の職業訓練を行うとともに、適切なポジションを与えること。 なお、外国投資家による、フィジー国内での経営資本獲得に対する規制はないが、国内 投資家にのみ参入が限定されている分野がある。しかし、このような政策は、規制緩和の 方向で検討されている。 6-3. 鉱業部門における投資インセンティブ 鉱業分野において、外国投資家の関心は、フィジーにおける探査及び開発に関する鉱業 法の透明性の高さと権利保全である。フィジーは、探査及び開発に関する権利が鉱業法に おいて明確に認められている。 フィジー政府は、外国投資企業が投資を行う場合、当該企業が適切な地質及びフィージ ビリティーの情報を有しているという点について審査を行い、審査、開発に関する許認可 を行う。 6-4. 投資家の権利とその保証 フィジー政府は、探査と開発を行う企業の基本的な投資リスクを認識している。政府の 役割は、フィジーへの投資安全性の確保及び良好な投資環境の創設にあると考えている。 フィジー憲法(90 年)は、投資家に投資のギャランティーを与えている。これは、憲法で 除外されている(または最高裁で設定された)特定の条件を除いて、財産(採掘権を含む) の強制接収を禁止しているもので、セクション 9 に記されている。 フィジーは多国間投資保証機構(Multilateral Investment Guarantee Agency: MIGA) に調印している。MIGA は世界銀行の一部で、開発途上国に対する外資直接投資フローの増 加促進のために、政治リスク保証の提供等を行っている。補償の対象となる政治的リスク として、戦争、市民暴動、為替、不正行為、契約の不履行等が含まれている。さらに、フ ィジーは国際商工協会(International Chamber of Investment Disputes)のメンバーで

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もある。 6-5. 税制と優遇措置 政府は、輸出産業への投資を推進するために、支援的な投資環境を確立する。現在のと ころ、政府による投資は、産業によって必要とされるインフラ整備に向けられている。税 制と優遇措置制度は、より国際競争力のある投資環境を投資家に提供できるために改革さ れつつある。すでに一部の改定が行われており、今後さらに新しい改革がなされている。 6-5-1. 一般投資優遇措置 生産量の 80%以上を輸出業者に対しては、租税優遇措置制度(Tax Free Factory Scheme を含む)が適用される。いくつかの二重課税協定(double taxation agreements)も調印 されたが、それによってフィジー政府により許可された課税免除や課税割引が、投資家の 居住する国における課税によって無効になることはない。こうした協定は、オーストラリ ア、日本、ニュージーランド、イギリス、韓国、マレーシア等と調印されている。さらに、 一般租税優遇措置(general incentives)は、すべての申請企業に与えられる。このよう な優遇税制には以下のような例がある。 ・関税割引(customs duty concessions) ・付加価値税還付(VAT refunds) ・源泉徴収税割引(withholding tax concessions) ・前倒し償却(accelerated depreciation) ・損失繰越(carry forward of losses) 6-5-2. 鉱業に関する税制 フィジーに投資することを希望する鉱業セクターの投資家は、Income Tax Act (Cap. 201) 及び Customs Tariffs Act, 1986 によって、フィジー政府からの産業特別課税割引 及び免税(industry-specific tax concessions and exemptions)を申請することができ る。このパッケージには以下のものが含まれる。 (1) ロイヤリティ(Royalty Tax) FOB 価格で課税される。税率は、ボーキサイト、鉄鉱石が 3%、その他全ての鉱物資源が 5%である。特例として、収益性が低いプロジェクトを持つ企業に対しては、優遇措置の必 要性を立証できた場合には、債務返済の初期における減免を申請できる。 (2) 輸出税(Export Tax) 金及びその他の金属鉱物の FOB 価格の 3%とする。しかし、ロイヤリティと輸出税の合計 が FOB 価格の 5%を上限とする。 (3) 関税(Customs Duties) 政府は Customs Tariffs Act によって課税される低率な輸入関税の導入を検討中である。 この新制度では、輸出向けの商品または生産品に対する、プライマリーあるいは中間イ ンプットについて関税が支払われる場合には、関税が還付される。この政策が施行され るまで、鉱山会社は鉱山事業に必要とされるほとんどの物品に対して、それぞれの税率

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で引き続き、輸入税(fiscal duty)を支払うことになる。 (4) 輸入税(Import Duty) 特殊措置、機会、重機及びスペア、化学薬品を含めたイニシャルキャピタル機器類の輸 入に対して、5%の輸入税が課税される。発電用燃料の税率は 10 セント/リットルである。 投資家は、関税優遇申請を関税局(Comptroller of Custom)に申請することができる。 対象となる物品は、フィジーの国益につながるもの(輸入された機械や装置、パーツ、材 料も含めて)、またはフィジーの経済的発展や産業の発展を促進するために使用されるも のである。 (5) 付加価値税(VAT) 税率 10%である。生産物の 80%以上を輸出する企業に対しては、通常は、10%すべてが還 付可能である。 (6) 法人税(Company Income Tax) 法人税レビューの一環として、政府は全企業に対して法人税率の引下げを提案している。 それまでは、居住企業の税率は 35%、非居住企業の税率は 45%である。 現在の所得税法(Income Tax Act)のもとでは、鉱山開発事業者が申請できる減税制度 がいくつかある。鉱山開発事業者は、その開発がフィジーの経済的発展に有益になること が見込まれる場合には、大臣が定める期間において、減税または納税猶予(Total tax holiday)を申請することができる。 有効な採掘権を持つ事業者は、全収入(全ての事業から得られた収入)から、フィジー において探査活動に支出した金額の全額を、行政長官(Commissioner)の裁量によって控 除することができる。もし収入が、鉱物の販売やそうした鉱物資源を開発する利権によっ て得られた場合、事業者は、鉱物資源のコスト、あるいは全収入を決定する利権(right in determinant total income)に相当する全額を控除できる。 (7) 減価償却(Depreciation) 採掘リースの取得または鉱物資源の開発、処理、精製及び販売のための鉱山開発を行う 企業が、フィジー国内において資本出資をする場合、通常の建物、工場、機械に対する減 価償却期間 8 年間の換わりに 5 年間の前倒し償却を申請することができる。 (8) 配当金(Dividend)、利子(Interest)、ノウハウ及びロイヤリティ源泉徴収税(Know-How and Royalty Withholding Taxes) フィジーの一般税法にしたがって、源泉徴収税が課せられる。しかし、協定国に対して は、利子、配当金及びロイヤリティに対して 10%から 20%の特別割引源泉徴収税 (Concessionary Withholding Tax Rates)が適用される。納税者は、減税/免税措置がフ ィジー経済の利益につながるとみなされた場合には、配当金、利子及びロイヤリティ源泉 徴収税の減税や控除を大蔵大臣に申請できる。

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7. 地質・鉱床概要 7-1.地質概要 フィジー諸島は、新生界の岩石から構成され、最古の岩石は、始新世後期~中新世中期 (40~36.5Ma)の玄武岩、デイサイト、石灰岩であり、中新世中期~後期にはガブロ、ト ーナライト、石英トーナライトからなる Colo 深成岩類が活動する。最新のものはロツマ島 ()及びタベウニ島()にみられる有史時代の(紀元前 20,000 年以降)火 山噴出物である。 8Ma ごろからは、玄武岩・安山岩・デイサイトの活動が、ビチレブ島(Viti Levu)の北 西で見られた。また中新世後期~鮮新世前期にはビチレブ島北部で、カルクアルカリの火 成活動が起きた。また鮮新世初め(5.6~3Ma)には、ビチレブ島北部でアルカリに富むシ ョショナイト系列の火山岩類が噴出した。3Ma 以降はアルカリ玄武岩の噴出がバヌレブ島 (Vanua Levu)の西部で見られる。 これらの火成活動に伴い、鉱脈、ポーフィリータイプ、スカルン、黒鉱の各鉱床が生成 された。この他の鉱床としては、地表付近で生成したボーキサイト、マンガン鉱床がある。 7-2. 鉱床概要 7-2-1. 黒鉱鉱床 黒鉱鉱床としては、Wainivesi、Wainikoro、Nakundamu(Undo)、Mouta が知られている。 Winivesi は、ビチレブ島の中新世の火山岩類中、Wainikoro、Nakundamu、Mouta はバヌア レブ島の漸新世前期の火山岩中に胚胎している。これらの鉱床は、銅・鉛・亜鉛以外に銀・ 金を含んでいる。以上の鉱床の中では、バヌアレブ島北部の Undo 半島の Undo Group、デ イサイト質火山岩類中に胚胎する Nakundamu 鉱床が最も大きいと考えられる。鉱床は、黒 鉱、黄鉱、珪鉱、石膏鉱よりなっている。鉱石鉱物は、黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、方鉛 鉱、硫砒銅鉱、斑銅鉱、重晶石が見られる。金・銀の品位は Au 1.5g/t、Ag 470 g/t 程度 である。 7-2-2. ポーフィリー銅金鉱床 1969~75 年にポーフィリー鉱床の探鉱が行われている。ポーフィリー鉱床はドロ (Tholo)深成岩の周縁相、あるいはそれに引き続く深成-斑岩活動に関連してみられる。 その生成時期は、8~12Ma より後期と考えられている。 ポーフィリー銅鉱床は、深成型と火山型の 2 つに大別される。 深成型鉱床として、Rama Creek や Wainivau があげられる。火山型よりも深所生成と思 われるもので、時代的にも異なり、古いものと思われる。ドロ深成岩の周縁相や接触部に 黄鉄鉱と少量の黄銅鉱(>斑銅鉱)が鉱染している。変質はプロピライト化(緑泥石―方 解石―緑れん石)が普遍的で、カリウム変質(黒雲母)が局所的にみられる。 火山型鉱床としては、Namosi、Sambeto があげられる。小規模なストック、プラグ、岩 脈などに伴われるもので、貫入岩類は深成岩が閃緑岩、トナル岩質であるのに対し、火山 型は、やや珪長質であり、アルカリ岩質である場合も認められる。鉱化変質は、これらの

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貫入岩と周辺の母岩にみられ、一部では浅熱水性金鉱床に移化すると考えられる。変質は、 一般に黄鉄鉱―プロピライト化であり、中心部では不規則にカリウム変質が見られる。鉱 化作用は、黄銅鉱と斑銅鉱が鉱染状をなし、金が浅部で多く含まれることが特徴である。 Namosi 地域では、安山岩類に石英閃緑岩質~デイサイト質斑岩がプラグ状に貫入し、3 つの鉱化域 Waisoi、Waivaka、Wainambama が主要なものとして知られている。そのうち Waisai では約 10 億 t(Cu 0.47%、Au 0.14g/t)の鉱量・品位が確認されており、金は銅品 位と相関性を有し、斑銅鉱とともに産出している。 7-2-3. 浅熱水性金鉱脈鉱床 フィジーには多数の浅熱水性金鉱脈鉱床が知られている。主なものは、ビチレブ島の Tuva Goldfirld 地域の Emperor 鉱床である。Emperor 鉱床は、ビチレブ島北部の中新世 Mba 火山岩類中の Tavua カルデラ縁部に存在している金―テルル鉱床である。母岩はほぼ水平 な構造をもつかんらん石玄武岩溶岩、粗面岩質玄武岩火砕岩、粗面岩質安山岩岩脈などで ある。鉱床内には多数の割れ目が発達するが、鉱化割れ目は、北西系急傾斜鉱脈、緩傾斜 鉱脈、破砕鉱脈の 3 タイプの鉱脈であり、それぞれ重要な含金鉱脈(品位 Au 7~22g/t) を形成している。変質は、鉱脈際でカリ長石―雲母―石英変質、外側で緑泥石―炭酸塩変 質である。鉱石、脈石鉱物は石英、黄鉄鉱、テルル鉱物、自然金、閃亜鉛鉱、硫砒鉄鉱、 黄銅鉱、四面銅鉱、方鉛鉱、方解石、雲母などである。流体包有物の研究から、300~160℃ で生成されたと推定され、沸騰現象があったと考えられている。同位体等の研究から、マ グマ水が上昇途中に、母岩の玄武岩の下に存在するバツコロ層から鉱石成分を抽出して鉱 液濃度を高め、その熱水がカルデラ壁に発生した割れ目に集中的に流入し、主として沸騰 により鉱石を沈澱したと考えられている。 7-2-4. 酸性硫酸塩型金鉱床 このタイプの金鉱化地域としては、バヌアレブ島の Yanawai 地域があげられ、ここの Mt. Kasi は最大のもので、32 年以降 46 年までに Au 7.6g/t の鉱石を 261,000t 生産した実績が ある。 母岩の変質はプロピライト質で、緑泥石、方解石、黄鉄鉱、セリサイト、緑れん石を主 とし、鉱床は石英・重晶石脈とされている。鉱床はナワテ統のカルクアルカリ安山岩中に 産し、円形の火山構造の周縁部に位置する北西方向急傾斜の断層に沿って発達している。 鉱床の直接の母岩は、断層の上盤側に発達する上方に開いた扇状の角礫化帯で、最大幅 25m の含金強珪化部を含んでいる。変質は中心に珪化、明ばん石化、重晶石化を伴い、周辺部 に粘土化変質が認められる。鉱石鉱物としては、自然金、黄鉄鉱、黄銅鉱、四面銅鉱、硫 砒銅鉱が認められる。品位は平均 Au 7g/tであるが、高いところでは Au 92g/t に発達する。 この高品位部は重晶石・明ばん石化変質で特徴付けられる角礫パイプの上部に存在してい る。

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7-2-5. 酸性硫酸塩型金鉱床 過去において、Suva の 20km 西の Waimanu 川で砂金がとられている。 7-2-6. 酸性硫酸塩型金鉱床 近年、北フィジー海盆で熱水の噴出と硫化物、硫酸塩からなるチムニーが発見された。 この鉱床は、多くの点で黒鉱鉱床との類似点がみられている。ここには現在活動的な「ホ ワイトスモーカー」と活動を停止した硫化物チムニーがある。活動的なチムニーは上部が 硬石膏、下部は硫化物(白鉄鉱、黄鉄鉱、ウルツ鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、コベリン)から なる。ここでは、日本の黒鉱のような大量の重晶石や方鉛鉱がみられることはなく、玄武 岩が海嶺性の玄武岩の性質を持っていることと関連していると考えられている。

8. 鉱山概要 金属鉱物資源の開発は Vatukoula 鉱山(金)のみで行われている。 8-1. Vatukoula 鉱山 位置:Suva 150km W シェア:Emperor Mines 社(本社シドニー) Durban Roodepoort Deep 社(19.8%) ANZ Nominees 社(14.65%) National Nominees 社(10.39%) オペレータ:Emperor Mines 社 Tavua 火山のカルデラ縁辺部に位置するエピサーマル金鉱床で、鉱山開発は 1936 年から 始まったが、Emperor 社が 50 年代から採掘を開始している。採掘は、3 本のたて坑(Philip、 Smith 及び R1-Cayzer)と斜坑(Emperor)から行われている。鉱床は Tavua カルデラの南西部 に位置するが、R1-Cayzer 坑はカルデラ内部に位置する。鉱石を浮遊選鉱、焙焼、酸リー チングを経て処理し、CIP によって金の回収を行っている。2002 年の金生産量は 131,175oz(キャッシュコストは 222.9 米ドル/oz)であった。 Emperor 社は、Vatukoula 鉱山拡張計画を進めている。拡張計画では、今後 3 年間で鉱 石生産を 80 万 t/y、金生産量を 180 千 oz と、現在より約 40%増産する。2002 年 6 月現在、 鉱物資源量は 17.517 百万 t(Au 7.452g/t)、鉱石埋蔵量は 7.86 百万 t(Au 4.33g/t)である。

1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 金生産量(oz) 121,780 108,306 124,810 146,310 113,589 131,175 生産量は Mine Search による。

9.新規鉱山開発状況 なし

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10. 探査状況 フィジーでの探鉱が行われているプロジェクトは、Tuvatu、Mt. Kasi 等がある。フィジ ーにおける最近の探鉱支出、探鉱鉱区面積、探鉱ライセンス数の推移は以下のとおりであ る。 探鉱支出 鉱区面積 ライセンス数 年 百万フィジードル km2 1995 3.69 279.5 25 1996 7.13 390.4 33 1997 12.11 490.8 39 1998 4.13 586.6 49 1999 4.02 374.5 35 2000 2.5 219.5 33 2001 3.97 329.5 39 2002 6.46 404.9 42 ・フィジー鉱物資源局資料による

10-1. Tuvatu 位置:ビチレブ島 Tuvatu(Nadi 25km) シェア:Emperor Mine 社 100% 鉱種:金 フェーズ:Advanced Exploration 1987~95 年に Geographic 社が探鉱を行い、1995 年に Emperor Mine がオプション権を 取得した。1997 年に FS がスタートしたが、1998 年中頃から探鉱計画が縮小された。資源 量は 1.64 百万 t(Au 8.5g/t)。2002/03 年は地質調査、トレンチ調査等が行われた。 10-2. Mt. Kasi 位置:バヌアレブ島 Savusavu 南西 70km シェア:Pacific Island Gold 社 100% (Burdekin Pacific 100%) Range Resources 社(Royalty) 鉱種:金 フェーズ:FS エピサーマル金鉱床で、32 年より操業されていた。1990 年に Pacific が Newmont より 買収したが、1998 年 6 月に操業が停止された。1996/97 年の金生産量は 24,496oz であった。 その後探鉱は行われたが、2000 年のクーデターで探鉱活動は大幅に縮小された。現在の資 源量は 3.665Mt(Au 2.56g/t)、埋蔵量 1.624Mt(Au 3.2g/t)である。Burdekin 社は 2004 年 当初より探鉱を再開する計画がある。 10-3. Udu Base Metal 位置:バヌアレブ島北東端 シェア:Udu Resources(100%、オペレータ)(未上場)

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鉱種:銅、鉛、亜鉛 フェーズ:Advanced Exploration 鉱床は 1950 年代に発見され、60~70 年代に日本企業によって採掘された。閃亜鉛鉱、 方鉛鉱、黄銅鉱からなる黒鉱タイプの塊状硫化鉱床で、一部酸化帯も発達する。1987~91 年に Noranda と Geographic 社が探鉱を行った。資源量は 3.837 百万 t(Cu 2.23%、Zn 1.48%) である。Udu 社は、地質レビューを行っており、探鉱を進める計画がある。 10-4. Namosi 銅プロジェクト 位置:ビチレブ島 Namosi(スバ北西 50km) シェア:日鉄鉱業(100%、オペレータ) 鉱種:銅、金 フェーズ:Advanced Exploration 日鉄鉱業は、ナモシ鉱区を 2001 年 1 月に国際競争入札で取得し、探鉱活動を開始した。 対象鉱区には、大規模なポーフィリーカッパー銅金鉱床であるワイソイ鉱床(Cu 0.43% 、 Au 0.14g/t、可採鉱量 9.5 億 t)が前鉱業権者によって発見報告されているが、開発に至っ ていない。日鉄鉱業は、本地域での開発を目的として、ワイソイ鉱床を中心に地質精査、 グリッド地化学探査、物理探査(TDIP)等を行っている。2002/03 年には試すい調査を含め た探査を継続している。

11. 精錬所概要 なし

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鉱山製錬所位置図

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Ud

操業鉱山 Fiji-Au-Vatukoula(Emperor) Vatukoula (Emperor) Suva 北北西 90km Nadi から Tavua まで道路沿い 87Km 南緯 16 度 56 分南、東経 177 度 49 分東 探鉱開発 Fiji-CuAu-Namosi Namosi ビチレブ島 Namosi(Suva 北西 30km 道路沿い約 60Km) Fiji-CuPbZn-Udu(Nukundamu) Udu(Nukundamu) Fiji-CuZnAu-Wainivesi Wainivesi Tailevu, Viti Levu 島 コロバウの北西 13Km 精錬所・休廃止鉱山なし

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12.わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 海外地質構造調査(実績) ¾ 2001~2003 年度 ナモシ 資源開発協力基礎調査(実績) ・資源開発調査 ¾ 1990~1992 年度 ヴィチレブ ¾ 1995~1997 年度 ヴァヌアレブ ・環境基礎調査 ¾ 2002~2003 年度 ヴィチレブ島南部

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第 2 部 地質解析 1. 地質・地質構造 1-1. 地質概要 フィジー諸島は、新生界の岩石から構成され、最古の岩石は、始新世後期~中新世中期 (40~36.5Ma)の玄武岩、デイサイト、石灰岩であり、中新世中期~後期にはガブロ、ト ーナライト、石英トーナライトからなる Colo 深成岩類が活動する。最新のものはロツマ島 (Rotuma)及びタベウニ島(Taveuni)にみられる有史時代の(紀元前 20,000 年以降)火 山噴出物である。 8Ma ごろからは、玄武岩・安山岩・デイサイトの活動が、ヴィチレヴ島(Viti Levu)の 北西で見られた。また中新世後期~鮮新世前期にはヴィチレヴ島北部で、カルクアルカリ の火成活動が起きた。また鮮新世初め(5.6~3Ma)には、ヴィチレヴ島北部でアルカリに 富むショショナイト系列の火山岩類が噴出した。3Ma 以降はアルカリ玄武岩の噴出がヴァ ヌアレヴ島(Vanua Levu)の西部で見られる。 これらの火成活動に伴い、鉱脈、ポーフィリータイプ、スカルン、黒鉱の各鉱床が生成 された。この他の鉱床としては、地表付近で生成したボーキサイト、マンガン鉱床がある。

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1-2. 地質層序 1-2-1. 始新世及び漸新世 フィジー諸島において、前期第三紀の岩石は、ヴィチレヴ島、ママヌザ諸島(Mamanuca) 及びヤサワ諸島( islands)のみにみられる火成岩類及びそれらの再堆積物で、少 量の炭酸塩岩を狭在する。岩石の時代は始新世から漸新世に及び、Hathway and Colley (1994)は、これらをヤブナ層群(Yavuna Group)及びワイニマラ層群(Wainimara Group) としている。 ヴィチレヴ島南東部に分布するヤブナ層群は、粗粒火山砕屑岩ユニットを狭在する玄武 岩質枕状溶岩、少量のデイサイト質凝灰岩及び角礫岩、さらに後期始新世から漸新世にか けての礁性石灰岩よりなる(Cole 1960; Hathway and Colley 1994)。また、巨大なトー ナライト岩体(ヤブナ岩株)、小規模なはんれい岩質ポッド及びドレライトの岩脈が貫入 しており、Hathway and Colley(1994)はこの貫入活動のフェーズを 35Ma から 27Ma にか けての南フィジー海盆(South Fiji Basin)の拡大に伴うヤコブ弧の分離に関連づけた。 貫入岩体について、ヤブナトーナライトから 33~34Ma(McDougall 1963; Whelan et al. 1985)、はんれい岩質ポッドから 35Ma の年代値が得られている。 ワイニマラ層群は、ヴィチレヴ島の南西部、ヤブナ層群の南側に分布する。これはヤブ ナ層群とは異なったシーケンスをもつ枕状溶岩で、薄層の半遠洋性堆積岩及び酸性凝灰岩 類の狭在を伴う。時代は最末期漸新世を示す(Bronnimann 1980; Zaninetti 1980a-b)。 また、ママヌザ諸島及びヤサワ諸島南部のワヤ(Waya)の枕状溶岩、火砕岩及び石灰岩 はワイニマラ層群と類似したシーケンス及び年代を示す。 1-2-2. 前期及び中期中新世 ヴィチレヴ島における前期及び中期中新世の岩石はワイニマラ層群にみられ、島の中央 部、南西部及び北東部に分布する。ヴィチレヴ島中央部における年代測定値の信頼性はあ まり高くなく、ワイニマラ層群の時代は始新世から漸新世の一部といえるのみ(Rodda 1967)だが、唯一信頼できる古生物学的なデータ(Rugless 1983a)及び Ar-Ar 放射年代 (Whealan et al. 1985)は前期~中期中新世を示す。ヴィチレヴ島南西部の石灰岩岩体は 前期中新世の時代を示し(c. 19Ma)、北東部の石灰岩は中期中新世の時代を示す(c. 14Ma)。 地質は主に浅海性の粗粒な角礫岩及び火山角礫からなり、まれに凝灰岩を伴っている。組 成は玄武岩質からデイサイト質に及ぶが、火山の中心を確認するのは困難である。溶岩の 高い割合は噴火の中心付近を示している。デイサイト質から玄武岩質の組成を示す初生火 山岩類はサブラ火山岩類層群(Savura Volcanic Group)中にみられ、ヴィチレヴ島の南東 部に分布する。その時代は前期~後期中新世と推定されるが、確証は得られていない。

ヤサワ諸島及びママヌザ諸島には確実に前期~後期中新世とみられる岩石が分布する (Rodda and Lum 1990)。これらは、ワイニマラ層群と類似しており、岩種は枕状溶岩及 び角礫岩、デイサイト溶岩及び石灰岩に及ぶ。ヤサワ―ママヌザ列の古期岩石は以前から

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ワイニマラ層群に対比されると考えられている。また、ヴィチレヴ島及びヤサワ―ママヌ ザ列の古い岩石は沸石相~緑色片岩相の変成作用を被っている。 ラウ諸島()において最も古い岩石はラウ火山岩類層群(Lau Volcanic Group) 及びフツナ石灰岩(Futuna Limestone)と呼ばれ、後者の古生物学的な時代はおよそ 12Ma を示す。最も古い K-Ar 年代値は、輝石安山岩溶岩を測定したもので、14.55Ma±0.29Ma を 示す(Whelan et al. 1985)。 1-2-3. 中期及び後期中新世―ゾロ造山期(Colo orogeny) 中期中新世の最後期から後期中新世の大部分にかけては造山活動の期間であり、ワイニ マラ層群に褶曲及び断層作用が及んだ。 ヴィチレヴ島の南部及び中央部において始新世及び中期中新世の地層はわん曲した帯状 に分布する。分布帯は ENE から WNW 方向に向きが変わり、その曲がりにおおよそ沿って褶 曲変形をしている。いくつかの褶曲の核は伸張した深成岩体で、ゾロ深成岩類(Colo Plutonic Suite)と呼ばれている。この状況から Band(1986)は、貫入岩体の活動を造山 運動同時とした。褶曲と深成岩体との関係はよくわかっておらず、褶曲が真に地殻の短縮 によって引き起こされたのか、あるいは、深成型のドーム上を覆ったのか決定するには、 さらなる研究が必要である。主な岩種はトーナライト及びはんれい岩で、周縁部にトロニ エマイト、閃緑岩及び角閃石安山岩-微閃緑岩が卓越する。厳密な意味での花崗岩はほとん どなく、わずかに、貫入岩に関連した酸性火山活動がみられる。ヴィチレヴ島のより深く 侵食された箇所において、粗粒な深成岩体がよくみられることから、深成岩体はヴィチレ ヴ島南部及び中央部の大部分について深成岩体が基盤になっていることを支持している。 ヴィチレヴ島の‘基盤’をなしていると思われる。空中磁気探査のデータは、ヴィチレヴ 島南部及び中央部の大部分について深成岩体が基盤になっていることを支持している。 ゾロ深成岩体の信頼できる最も古い年代値は、ヴィチレヴ島中央部ワイニマラ岩株の 12.46±0.51Ma である(Whelan et al. 1985)。最も若い岩株の年代値は、K-Ar 年代測定 の信頼性の問題から確かではないが、ヴィチレヴ島南部のコロレブ岩株(Korolevu Stock) は、おそらく 7Ma よりも若い値を示す(Rodda and Lum 1990)。 ゾロ造山運動に続いて、フィジー諸島域には最初の実質的な陸地が形成された(Rodda and Lum 1990)。急激な隆起は、おそらく、深成岩体のアイソスタティックなドーミング に関連している。その隆起によって深成岩類の激しい浸食及び急激なルーフの削はくが引 き起こされた。深成岩体の砕屑物を多量に含む礫岩層準が、ある深成岩体の脇に位置し、 それらの化石動物群は 6.5~7.0Ma の年代を示す。

1-2-4. 後期中新世から現世(Recent) フィジーでは、ゾロ造山期の終焉に続いて、6.5Ma から 2.5Ma にかけて広範囲に及び大 規模な火山活動が起こった。 ヴィチレヴ島における後期中新世の火山活動は、東南東部においてメンドロウスズ層群

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(Medrausucu Group)中のカルクアルカリ火山岩類の噴出によって始まった。初生安山岩 類はナモシ(Namosi)地域に卓越し、巨大なカルデラを形成したと思われる。この地域か ら、特に東側へ離れるに従い、特徴的な相は、火山砕屑及びその二次的な堆積岩類へと変 化する。これらがメンドロウスズ層群と呼ばれている。同時期に、ヴィチレヴ島の西部に おいても小規模だが類似したカルクアルカリ岩質の活動が起こっている。この火山活動に よる堆積は広範囲に及ぶ。堆積物は、同時期の火山活動の中心部に加えて、より古いワイ ニマラ-ゾロ‘基盤’の侵食によってもたらされている。多くの堆積物は小規模なプルアパ ートベーズンに堆積している。この構造は、フィジーの後期中新世における走向移動的な 構造運動に関連している(Hathway 1993)。これらの堆積岩類及び同時期の火山岩類はナ ンディ(Nadi)、トゥバ(Tuva)、ナボサ(Navosa)、ブズ(Cuvu)、及びラ堆積岩類層 群(Ra Sedimentary Groups)からなる。これらのすべての層群は、ワイニマラ層群及びゾ ロ深成岩類を不整合に覆い、多くの箇所で、その基底部にワイニマラ層群及びゾロ深成岩 類の居礫や大礫を含んでいる。 前期鮮新世までに、火山活動の中心はヴィチレヴ島の北方へ移動した。この活動は、主 にショショナイト質及びカリウムに富んだカルクアルカリ岩の噴出を伴っており、いくつ かの重要な火山活動の中心部を形成した(例えば、タブア(Tavua)、ラキラキ(Rakiraki)、 ブンダ(Vuda))。火山岩及び同質火砕岩は、コロイマブア(Koroimavua)及びバ火山岩 類層群(Ba Volcanic Groups)と呼ばれる。溶岩、角礫岩及び海底-陸上どちらの火砕岩の 堆積物についても、ヴィチレヴ島の西側では、一般に、アルカリ岩質あるいはショショナ イト質の組成を示す(Ibbotson 1967; Dickinson et al. 1968; Colley 1974)。しかし、 東へ向かうにしたがい、よりソレアイト質あるいはカルクアルカリ岩質の特徴を示すよう になる(Seeley and Searle 1970)。 ヴィチレヴ島では、前期鮮新世になってもかなりの隆起が起こっていた。おそらく、ア イソスタシー運動の継続及びトランスプレッショナルな構造運動のためと思われる。タブ ア火山には標高 880m に枕状溶岩が分布し、火山全体が北へ 10 度傾いている。 バ型の火山活動の東進により、ラマイビティ諸島()において独立及 び複合火山が形成された。これらの岩石学的なタイプ及び化学組成はバ火山岩類層群と相 関があり、放射年代測定は、5.0~3.5Ma の値を示した。Coulson(1976)は、より大きな 島々(例えば、オバラウ島()、ガウ島(Gau))において、いくつかの噴火活動の 中心部を発見した。そこでは、カルデラの発達により、いくつかの火山下部におけるモン ゾナイト質貫入岩の存在が明らかとなっている。これは、バ-コロイマブア層準にみられる アルカリ質の小規模な貫入岩体と類似している(Colley 1974)。ラマイビティ諸島におけ る岩種の変化は、塩基性岩のソレアイト質、カルクアルカリ岩質、ショショナイト質及び アルカリ質な組成に及んでいる。また、主に陸成の火山岩類からなり、いくつかの島では 層序の基底部に枕状溶岩がみられる。 ヴァヌアレヴ島の火山活動は、後期中新世に始まった。この時期、島の北東部ではウン

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ドゥ火山岩層群(Udu Volcanic Group)が、中央部ではナテワ火山岩層群(Natewa Volcanic Group)が噴出した。ウンドゥ層群は、溶岩、角礫岩及び凝灰岩からなる。凝灰岩の上位は 軽石質となっており、主に海成である。岩石はソレアイト質組成で、安山岩から流紋岩に 及ぶ。ナテワ層群は島のほとんどの‘基盤’を形成している。主に海成のソレアイト質塩 基性安山岩組成の火山岩類及び火砕岩類及で、まれにデイサイト及び流紋岩のユニットが 含まれる。二次堆積物の分布は規制されており、火山間の小規模なベースンにみられる(例 えば、ドゥレケティベースン(Dreketi Basin))。放射年代及び化石動物群年代は部分部 分の値しかないが、層群全体では 7.5Ma から 3.5Ma までの年代値を示す。ウンドゥ火山岩 類層群の非常に限られた放射年代値は信頼でき、それは 7.0Ma 前後の値を示す。ヴァヌア レヴ島の中央部において、ナテワ層準は、ナラロ火山岩類層群(Nararo Volcanic Group) 中の酸性安山岩の小規模な貫入を受けている。層序の関係から前期~中期鮮新世と思われ る。ウンドゥ-ナテワ層群は全て海成層である。主な火山活動の段階が休止した後おそらく 中期鮮新世に、全島に及ぶ急激な隆起が起こったと思われる。これは、前期鮮新世の枕状 溶岩及び海成の火砕岩堆積物が、現在、標高 900m 以上の地点に見られることによる。 ヴァヌアレヴ島西部では、主な上昇段階の後、海洋島弧組成のアルカリかんらん石玄武 岩の噴出が起こり、シツラ(Seatura)楯状火山を形成した(Coulson 1971; Hindle 1976)。 主に陸成層からなるこの玄武岩類は、ブア火山岩類層群(Bua Volcanic Group)と呼ばれ、 3.3Ma~2.9Ma の年代値をもつ(Hindle and Colley 1981)。 年代はより若いが、類似したかんらん石玄武岩がヴァヌアレヴ島の東部(スバスバ火山 (Suvasuva Volcano))及びコロ諸島(islands Loro)、タベウニ諸島にみられる。コロ 諸島は、陸成のアルカリ玄武岩及び岩滓丘からなり、2.3Ma から 1.0Ma の年代値を示す (Coulson 1975; Whelan et al. 1985)。タベウニは、かんらん石玄武岩溶岩及び岩滓丘 からなり、750,000 年から 2,050 年前の年代値を示す(Whelan et al. 1985; Frost 1974)。 Rickard(1966)は、島の延長方向に走る NE-SW 系の割れ目帯に沿う、少なくとも 120 の保 存状態のよいコーンについて記載した。 ラウ諸島では、後期中新世の 10Ma から 5.4Ma にかけてラウ火山岩類層群(younger part) が噴出した。岩石は、主に様々な角礫岩で、組成は、玄武岩から輝石-角閃石安山岩を経て、 デイサイト及び流紋岩まで変化する。これらのシーケンスは陸上及び浅海底において噴出 及び堆積したことを示している。前期~中期鮮新世、およそ 4.5Ma~2.5Ma にかけて、ラウ 諸島の北側の島にて玄武岩質の火山活動が起こった。これらの玄武岩類(玄武岩類及び同 質砕屑岩類)は、コロンバサガ火山岩類層群(Korobasaga Volcanic Group)を形成し、通 常、溶岩及び角礫岩からなり、まれに、塩基性安山岩、角閃石安山岩及びデイサイトの噴 出岩及び貫入岩が含まれる。2.2Ma 頃から、ラウ諸島の主に北側のいくつかの島において、 アルカリ玄武岩のマゴ火山岩類層群(Mago Volcanic Group)が噴出した。これらの岩石は、 ブア(Bua)、コロ及びタヴウニの玄武岩類とよく似た組成を示す。最終的には、ラウ諸島 全体を、様々な年代のトカラウ石灰岩層群(Tokalau Limestone Group)の石灰岩が、中期

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中新世最後期から後期鮮新世までの火山岩類を覆っている。 ヤサワ諸島の大部分は、ゾロ造山運動が減少した時期に、海底での活動が卓越する玄武 岩質な火山活動により形成された。同島の層序には、玄武岩質枕状溶岩、角礫岩及び同質 火砕岩が多くみられるが、デイサイト、安山岩及び石灰岩のユニットも重要である。ある 島では、はんれい岩質岩床及び玄武岩質岩脈の貫入がよくみられる。年代値は 8.3Ma~ 5.6Ma を示す。7Ma 以降、ヤサワ諸島では大規模な地殻の短縮が発生した。ワヤにおける後 期中新世の地層は、褶曲して非対称的な向斜構造となっている。褶曲及び衝上断層はヤサ ワ諸島において、他の多くの島でもみられる。 カンダブ島(Kandavu)は島全体が火山で、主に、角閃石及び黒雲母を含む陸成の粗粒斑 状安山岩類からなる。玄武岩質集塊岩が、列島の東端にみられ、玄武岩岩脈が安山岩類を 切っている。放射年代値は、3.4~0.36Ma を示し(Whelan et al. 1985)、若い年代値は 列島の西端の試料から得られた。 1-3. 地質構造 ヤブナ層群の岩石(後期始新世~前期漸新世)は、古メラネシアン弧(prto-Melanesian arc)の名残と考えられている。ヤブナ岩株の軸に平行な多くの岩脈が存在することは、ヤ ブナ弧塊の時代における重要な地殻の伸張を示している。ヤブナ地塊の南に分布するワイ ニマラ層群の岩石は、より若い島弧(漸新世最後期~中期中新世)を形成している。その 軸はヴィチレヴ島の南~中央部を通り、ママヌザ-ヤサワ諸島へと延びている。小規模な半 地溝のシンガトカベースン(Singatoka Basin)は、ヴィチレヴ島の南西部において、ヤブ ナ及びワイニマラ弧塊を区切っている。 中期~後期中新世にかけてのはんれい岩及びトーナライトの貫入であるゾロ深成岩体は、 主にワイニマラ弧の岩石に貫入し、ゾロ造山活動の変形フェーズに影響を与えている。 50,000 分の 1 の古い地質図の多くは、背斜構造の核の中に造山期同期の貫入岩を示してい る。しかし、より最近の研究は(Hathway 1988)、中期~後期中新世にかけての圧縮的な 構造運動の程度・範囲に疑問を投げかけた。Hathway (1988)は、ヴィチレヴ島南西部の 多くの褶曲構造を、ほとんどのゾロ岩株の貫入より後の時代とした。Whelan et al. (1985) もまた褶曲構造は、おそらく深成岩のドームを覆っているとした。Colley(1975a)は、鮮 新世におけるヴィチレヴ島中央部の深成活動に関連したアイソスタティックなドーミング の重要性を、以下の理由を元に強調している。 ・地下深部までの侵食が起こったことを示す粗粒の深成岩類が島の中央部に分布するが、 深成岩のルーフ帯は、島の外延部に沿って露出している。 ・強くわん曲した断層が、ワイニマラ層群を変位させている。 ・タブア火山は、北側に焼く 10 度傾斜している(Rodda 1976)。 ・ヴィチレヴ島西部にある中新世から鮮新世にかけての侵食台地及び段丘は、はっきりと 傾いている(Dickinson 1972)。 ヴィチレヴ島の地殻の厚さは 30km と推測されており(Robertson 1967)、彼は、空中磁

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気探査データが支持しているように、もし、ゾロ深成岩体がヴィチレヴ島南部の基盤のほ とんどを占めているなら、本質的にダイアピル及びアイソスタシー運動が予測されるとし た。 最近の研究により(Hathaway 1988; Rodda and Lum 1990)、後期中新世(7Ma 以降)に、 圧縮-トランスプレッションのフェーズが確立された。Rodda and Lum(1990)は、ヤサワ 諸島の後期中新世の岩石に褶曲、過褶曲及びおそらく衝上断層があるとした。彼らは、仮 に、このことを北フィジーベースン(North Fiji Basin)の拡大及びヤサワ諸島のヴィチ レヴ島に向かう回転に関連づけた。最近のヤサワ諸島における古地磁気の研究は、最大 120 度の回転を示した(J.Gascoyne pers. Comm. 1991)。ヴィチレヴ島南西部において、Hathway (1998; 1993)は、後期中新世の堆積層(例えば、トゥバ層群、ナンディ堆積岩類層群) に強い変形作用を認め、この変形を走向移動の構造運動によって引き起こされるトランス プレッションに関連づけ、さらに、おそらく北フィジーベースンの拡大に関連があるとし た。トランスプレッションは、小規模なプルアパートベースン及び‘フラワー’構造を形 成すると思われる。そのため、ゾロ造山運動は、後期中新世におけるダイアピリック-アイ ソスタティックな調整及び構造運動の結果とみなせるだろう。 岩石の断層及び断裂は、広範囲にかつ局所的には強く分布している。便宜的な空中写真 を補完して SLAR 及び SPOT 画像から、より詳細な解析が可能となっている。断層や断裂の 位置は、主に、写真や画像の解析による。現地では、主要な断層でさえ見つけるのは難し いためである。断層パターンの試み(例えば、Green and Cullen 1973; Colley 1976b)は、 広域スケールでの構造的な傾向を反映する重要な方向を明らかにしている。 ・NE 断層系;タベウニ方向(Taveuni trend)。ハンター破砕帯(Hunter Fracture Zone) の走向を反映している。 ・NNW 断裂系;ロマイヴィティ方向(Lomaiviti trend)。ヴィチアツ海溝(Vitiaz Trench) 及びラウベースン(Lau Basin)中のペギー海溝(Peggy Ridge)の走向を反映している。 ・E-W 断裂系。フィジー断裂帯の走向を反映している。 JICA-MMAJ が行ったヴィチレヴ島の SLAR 画像解析(1991)は、上記の方向の重要性を確 認した。彼らは、1,060 のリニアメントを解析し、二つの重要な方向を記録している。ENE ~NNE(タベウニ方向)及び NNW~NW(ロマイヴィティ方向)、そして、弱い E-W 系である。 また、ワイニマラ-ゾロ弧に、リニアメントはより集中しており、多くの断裂は鮮新世以前 のものであることを示唆している。

地表で断層を観察することは難しいが、フィジーには、主要な構造方向を反映するいく つかの特徴がある。まず、NE 方向は、タベウニにおける割れ目帯が一直線になり、その北 への伸びがリンゴールド諸島()に及ぶことで示される。この NE 方向はウ ンドゥ半島(Udu Peninsula)の走向、ヴィチレヴ島における Sovi-Yalavou 及 び Wainikoroiluva 断裂系の走向、さらに、ヴィチレヴ島北部の火山が一直線になることによ

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っても示される。次に、ロマイヴィティ方向(Lomaiviti trend)はロマイヴィティ諸島の 走向、ヴァヌアレヴ島西部の Seatura Caldera の伸張変形、ヴィチレヴ島北東部における 火山の並びにより示される。また、E-W の断裂系は、ヴァヌアレヴ島において最もよく観 察される。そこでは、Nayarabale 及び Mariko 断層帯が、島を主要なブロックに区切って いる。後の時代の横ずれがサブサブ湾(Savusavu Bay)及びナテワ湾(Natewa Bay)のプ ルアパートによる菱形ベースンを形成した。 後期中新世から鮮新世にかけてのフィジーの構造は、不確かな部分もあるが、北フィジ ーベースン及びラウベースン(Lau Basin)拡大、さらにフィジー断裂帯におけるトランス フォーム/拡大軸の挙動に関連がある。JICA-MMAJ(1991)による SLAR リニアメントの解析 は、以下の最大水平圧縮応力の方向を推定した。 ・後期中新世の ENE から ESE。 ・中新世最後期の NW から NNE。 ・中期鮮新世以降の ENE から ESE。 これらの方向を広域的な運動と関連づけることも可能だが、偶然一致していることも考 えられる。後期中新世における主に E-W 方向の圧縮応力は、北フィジーベースンの拡大に 関係があるだろう。拡大開始の信頼性の高い年代は、8Ma から 6Ma 間である(Rodda 1993; Hamburger and Isacks 1987; Falvey 1987)。拡大は、ヤサワ諸島における後期中新世の 岩石類の変形、及び走向移動運動に伴う NE 及び NW の共役断層系により説明される。 中新世から鮮新世にかけてのフィジー断層帯におけるトランスフォーム運動及び拡大は、 主に N-S 圧縮をもたらし、およそ 5.0Ma から 3.5Ma にわたるヴィチレヴ島の 21 度から 31 度に及ぶ反時計回りの回転を説明できる(James and Falvey 1978; Cassie 1978; Inokushi et al. 1992)。 中期鮮新世以降、最終的に E-W 圧縮応力に戻り、これは、おそらく 3.5Ma から 2.5Ma 間 に開始したラウベースンの拡大と関連づけられるだろう(Malahoff et al. 1982; Colley and Hindle 1984)。さらに、これにより NE 及び NW の共役断裂系を説明できる。

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2. 鉱床 2-1. 鉱山・鉱徴地 2-1-1. ヴィチレヴ島 (1) ラキラキ鉱徴地 Beta Ltd が本鉱徴地で低硫化型の金鉱化を調査している。Bituturalagi 4300E, Qalau における試錐で、Au 6.64g/t の品位が 3m、Au 0.63g/t の品位が 11m 補足された。白色粘 土化帯及び含金石英脈からなる。地表で局部的に Au 品位が数十 g/t を示す部分が認められ た。中波長高重力異常の中心に環状構造、カルデラ構造、ドーム構造、陥没構造当が集中 して分布している。 (2) エンペラー鉱山 タブアカルデラ縁部及び中心部に位置し、N~NW 系断層に充填した鉱脈からなる鉱脈型 金鉱床である。ボナンザで Au 50g/t、鉱床全体で Au 7.5g/t の品位を有する。中波長高重 力異常の中心分にある陥没構造の周縁部に位置している。 (3) キングストン鉱山・トゥバトゥ鉱徴地周辺 高温のポーフィリー・システムに低温の浅熱水性変質がオーバープリントし、高品位の Cu-Au 鉱床を形成している。中波長高重力異常の中心部に位置する。 トゥバトゥ鉱徴地は Au 5.4g/t の品位で 1.3Mt の鉱量が確認されている。Vuda、Sabeto 鉱徴地では 12,145m の RC 試錐を行った。Taitei 鉱徴地では Au 1.2g/t で 240,000t の鉱量 が確認されている。 (4) ナモシ地域 フィジー最大のポーフィリー銅型大規模低品位鉱床で、鉱量 9.5 億トン、品位 Cu 0.47%、 Au 0.16g/t、カットオフ品位 Cu 0.3%である。 (5) ミストゥリー鉱山~フェディス鉱徴地 ミストゥリー鉱山は NNE 方向の断層中に発達する石英-褐鉄鉱脈で、最高品位は Au 0.16g/t、Ag 15.9g/t、Pb 28.2%、フェディス鉱徴地は白色粘土化帯に発達し、Au 4.9g/t で 92 万 t(カットオフ品位 Au 2.0g/t)を確認している。 (6) コロイサ 重晶石、ゴッサン及び石英脈を含み、Cu 異常を示す 1×1.5km の鉱化域である。チップ で Au 3.8g/t、Ag 176g/t、As 100ppm、ボーリングで Cu 0.14~3.55%、Au 0.09~1.2 g/t の品位が得られた。 (7) ワイニベシ鉱山 塊状硫化物鉱床であり、最高品位で Cu 7.18%、Pb 3.64%、Zn 36.97%、Au 27.5g/t、Ag 796g/t と高い値がえられているが、現在までに確認されている規模は小さい。 (8) ヌク、ナジレンガ、クレ、ナトゥアレブ、クラ ゾロ深成岩に関連深部に形成されたと考えられた深成型斑岩銅鉱床であり、深部で鉱床 の発達が期待されているが、現在までに得られた地表徴候は弱い。変質はセリサイト-緑泥

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石化変質、プロピライト化変質が一般的である。 (9) ナサブクリーク 鉱徴は狭いが、品位が高い。最高 Au 0.3g/t、Cu 12%の品位が得られている。 (10) バ西地区 MMAJ が調査を実施し、中波長高重力異常の分布が確認され、空中写真からは環状構造が 抽出された。変質はプロピライト化変質が一般的である。南部は低酸化硫黄系浅熱水性金 鉱床の賦存が期待され、北部は珪化帯に伴う高酸化硫黄系浅熱水金鉱床が期待される。ナ タロワ変質帯で試錐により着鉱幅 18.10m で Au 0.176g/t(幅 1m で Au 0.52g/t を含む)が 捕捉された。

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2-1-2. ヴァヌアレヴ島 (1) コロイソナ変質帯 同変質帯は珪化、角礫化、オパール化を主体とする。Au、As 異常が断層沿いで顕著であ る。露頭で Au 0.69g/t、転石で Au 1.30g/t の分析値が得られている。 (2) マウント・カシ西 最大幅 80m の珪化、角礫化、粘土・黄鉄鉱帯が存在する。石英脈・珪化作用には金鉱化 作用を伴い、最高で Au 16g/t、Ag 7g/t、Pb 1.32%、Zn 4.82%、Cu 0.37%の分析値が得ら れている。 (3) マウント・カシ Yanawai Goldfield 地区に位置する。1996 年に Pacific Islands Gold NL により 50 年ぶ りに操業が開始された。鉱化作用は 10km2 におよぶ。1932~1946 年には露天掘り採掘で 261,000t(Au 7.6g/t)の鉱石が生産された。既採掘対象鉱床は石英・重晶石脈で幅 12m 延長 300mで下方に30m連続している。鉱床を伴う断層の上盤側に角礫化帯が発達している。 平均品位は Au 7g/t、Ag 0.6g/t、角礫パイプ上部で Au 92g/t であり、鉱床下部では最高 Cu 7.2%、Zn 37%、Pb 3.6%のベースメタルが認められた。鉱量は堅岩部 382,000t(Au 3.21g/t、 cut-off 1.0g/t)、風化残留部で 443,000t(Au 2.34g/t、cut-off 0.6g/t)である。 (4) ワインダムンダム マウント・カシの北東 1.4km に位置する。石英・炭酸塩鉱物・硬石膏・鉄-マンガン酸化 物からなる鉱脈からなり、主脈は幅 0.5~1.5m、延長約 200m、東方の脈は断続的に約 500m 連続している。走向延長 20~80m の平均で Au 4.67~18.9g/t、試錐は 3m 幅で Au 約 7g/t の品位が得られ、地表付近の鉱量は 250,000t(Au 2~5g/t)と推定されている。 (5) タヴェア カルデラ中の変質帯(径 1km)であり、転石試料で Au 74g/t、露頭から Au 0.1~2.6g/t の分析値が得られている。 (6) ナンドゥリ プロピライト化変質、珪化作用、2 条の石英脈、最高品位 Au 97.6g/t、一部試料で Cu 1.09%、 Pb 1.85%、Zn 1.53%を示す。試錐では最高 6.2m 幅で Au 6.47g/t の結果を得ている。 (7) ヴェニネベシ 詳細は不明である。規模は小さいが鉱化は強い。ポッド状の塊状硫化物で、21 試料の平 均値は Au 4.2g/t(最大 23g/t)、Ag 645g/t、Cu 1.05%、Pb 0.81%、Zn 4%を示した。 (8) マタイランバサ Bucaisau Caldera の縁部に位置する。石英脈を伴う珪化が認められている。鉱脈部は黒 鉱鉱床のフィーダーゾーンまたはポーフィリーの周縁部と考えられている。珪化岩の品位 は Cu 1.5~2%、Au 10g/t(最高)及び Ag 600g/t を示す。また、褐鉄鉱・ジャロサイト転 石で Cu 3~19%、Zn 12~13%、Au 9g/t(最高)を示した。 (9) ゾンゲロア

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Bucaisau Caldera の中に位置する。3×5km にわたり Au の強異常が認められる。鉱脈部 は黒鉱鉱床のフィーダーゾーンまたはポーフィリーの周縁部と考えられている。珪化は数 m~80mに及ぶ。変質はイライト-カオリナイト変質を主体とする。つかみ試料で最大 Cu 7%、 Zn 24%、Au 33g/t の分析値が得られた。トレンチでは 3m 幅で Au 1.38g/t の品位が得られ た。 (10) モウタ 黒鉱型鉱床で、塊状硫化鉱、鉱染状鉱からなる。珪化・粘土化が強く、深部では硫化鉱 の鉱染が顕著である。現在のところ小規模な鉱体のみ確認されている。富鉱部で Cu 14~ 30%、Ag 490g/t、Au 3.1g/t の品位が得られている。 (11) ヌンブ・ゴッサン 4,000m3 にわたりゴッサン礫が散在。Cu 0.25%(最高)の分析値を示す。珪化作用、角礫 化作用を主体とする。ゴッサンの下は強珪化岩が分布し、4~10%の硫化物を含む。熱水角 礫パイプが存在している可能性もある。 (12) ジリニアウ地区の鉱徴地 ギリヤンガヒル、東ギリヤンガ、ヴィヌブリッジ等の鉱徴地からなる。NE 系断層と環状 構造に規制された高硫化型の浅熱水性金鉱床である。変質鉱物はカオリン-ディッカイト- イライト-ジャロサイトである。 ギリヤンガヒルではトレンチにより 54m 幅で Au 2.24g/t、18m 幅で Au 3.78g/t、試錐で 60m 幅で Au 1.24g/t の低品位ゾーンを補足している。鉱量は 130 万 t で、品位は Au 1.53g/t (cut off 0.5g/t)と推定されている。 ヴィヌブリッジでは石英脈が 1000×900m の範囲で胚胎しており、チャンネルサンプリン グでは最高 16m 幅で Au 1.92g/t、試錐で 58m 幅で Au 1.17g/t の鉱化帯が補足された。

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2-1-3. その他 (1) Solodamu、Muani 鉱徴地 Suva の南方の Kadavu 諸島の Solodamu、Muani 鉱徴地では、試錐で浅熱水性の鉱化を捕 捉しており、鉱化を伴う構造性の石英脈が約 800m 連続している。 (2) 鉱徴地 ヴィチレヴ島東方の Lomaiviti Group の Nairai では金-テルル異常を捕捉し、地表のチ ップサンプルから最大 Au 1.3g/t の分析値が得られた。 2-2. タイプ別・時代別鉱床分布の特徴 2-2-1. 黒鉱鉱床 黒鉱鉱床としては、Wainivesi、Wainikoro、Nakundamu(Undo)、Mouta が知られている。 Winivesi は、ビチレブ島の中新世の火山岩類中、Wainikoro、Nakundamu、Mouta はバヌア レブ島の漸新世前期の火山岩中に胚胎している。これらの鉱床は、銅・鉛・亜鉛以外に銀・ 金を含んでいる。以上の鉱床の中では、バヌアレブ島北部の Undo 半島の Undo Group、デ イサイト質火山岩類中に胚胎する Nakundamu 鉱床が最も大きいと考えられる。鉱床は、黒 鉱、黄鉱、珪鉱、石膏鉱よりなっている。鉱石鉱物は、黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、方鉛 鉱、硫砒銅鉱、斑銅鉱、重晶石が見られる。金・銀の品位は Au 1.5g/t、Ag 470 g/t 程度 である。 2-2-2. ポーフィリー銅金鉱床 1969~75 年にポーフィリー鉱床の探鉱が行われている。ポーフィリー鉱床はドロ(Tholo) 深成岩の周縁相、あるいはそれに引き続く深成-斑岩活動に関連してみられる。その生成 時期は、8~12Ma より後期と考えられている。 ポーフィリー銅鉱床は、深成型と火山型の 2 つに大別される。 深成型鉱床として、Rama Creek や Wainivau があげられる。火山型よりも深所生成と思 われるもので、時代的にも異なり、古いものと思われる。ドロ深成岩の周縁相や接触部に 黄鉄鉱と少量の黄銅鉱(>斑銅鉱)が鉱染している。変質はプロピライト化(緑泥石―方 解石―緑れん石)が普遍的で、カリウム変質(黒雲母)が局所的にみられる。 火山型鉱床としては、Namosi、Sambeto があげられる。小規模なストック、プラグ、岩 脈などに伴われるもので、貫入岩類は深成岩が閃緑岩、トナル岩質であるのに対し、火山 型は、やや珪長質であり、アルカリ岩質である場合も認められる。鉱化変質は、これらの 貫入岩と周辺の母岩にみられ、一部では浅熱水性金鉱床に移化すると考えられる。変質は、 一般に黄鉄鉱―プロピライト化であり、中心部では不規則にカリウム変質が見られる。鉱 化作用は、黄銅鉱と斑銅鉱が鉱染状をなし、金が浅部で多く含まれることが特徴である。 Namosi 地域では、安山岩類に石英閃緑岩質~デイサイト質斑岩がプラグ状に貫入し、3 つの鉱化域 Waisoi、Waivaka、Wainambama が主要なものとして知られている。そのうち Waisai では約 10 億 t(Cu 0.47%、Au 0.14g/t)の鉱量・品位が確認されており、金は銅品 位と相関性を有し、斑銅鉱とともに産出している。

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2-2-3. 浅熱水性金鉱脈鉱床 フィジーには多数の浅熱水性金鉱脈鉱床が知られている。主なものは、ビチレブ島の Tuva Goldfirld 地域の Emperor 鉱床である。 Emperor 鉱床は、ビチレブ島北部の中新世 Mba 火山岩類中の Tavua カルデラ縁部に存在 している金―テルル鉱床である。母岩はほぼ水平な構造をもつかんらん石玄武岩溶岩、粗 面岩質玄武岩火砕岩、粗面岩質安山岩岩脈などである。鉱床内には多数の割れ目が発達す るが、鉱化割れ目は、北西系急傾斜鉱脈、緩傾斜鉱脈、破砕鉱脈の 3 タイプの鉱脈であり、 それぞれ重要な含金鉱脈(品位 Au 7~22g/t)を形成している。変質は、鉱脈際でカリ長 石―雲母―石英変質、外側で緑泥石―炭酸塩変質である。鉱石、脈石鉱物は石英、黄鉄鉱、 テルル鉱物、自然金、閃亜鉛鉱、硫砒鉄鉱、黄銅鉱、四面銅鉱、方鉛鉱、方解石、雲母な どである。流体包有物の研究から、300~160℃で生成されたと推定され、沸騰現象があっ たと考えられている。同位体等の研究から、マグマ水が上昇途中に、母岩の玄武岩の下に 存在するバツコロ層から鉱石成分を抽出して鉱液濃度を高め、その熱水がカルデラ壁に発 生した割れ目に集中的に流入し、主として沸騰により鉱石を沈澱したと考えられている。 2-2-4. 酸性硫酸塩型金鉱床 このタイプの金鉱化地域としては、バヌアレブ島の Yanawai 地域があげられ、ここの Mt. Kasi は最大のもので、32 年以降 46 年までに Au 7.6g/t の鉱石を 261,000t 生産した実績が ある。 母岩の変質はプロピライト質で、緑泥石、方解石、黄鉄鉱、セリサイト、緑れん石を 主とし、鉱床は石英・重晶石脈とされている。鉱床はナワテ統のカルクアルカリ安山岩中 に産し、円形の火山構造の周縁部に位置する北西方向急傾斜の断層に沿って発達している。 鉱床の直接の母岩は、断層の上盤側に発達する上方に開いた扇状の角礫化帯で、最大幅 25m の含金強珪化部を含んでいる。変質は中心に珪化、明ばん石化、重晶石化を伴い、周辺部 に粘土化変質が認められる。鉱石鉱物としては、自然金、黄鉄鉱、黄銅鉱、四面銅鉱、硫 砒銅鉱が認められる。品位は平均 Au 7g/tであるが、高いところでは Au 92g/t に発達する。 この高品位部は重晶石・明ばん石化変質で特徴付けられる角礫パイプの上部に存在してい る。 2-2-5. 砂金鉱床 過去において、Suva の 20km 西の Waimanu 川で砂金がとられている。 2-2-6. 深海熱水性鉱床 近年、北フィジー海盆で熱水の噴出と硫化物、硫酸塩からなるチムニーが発見された。 この鉱床は、多くの点で黒鉱鉱床との類似点がみられている。ここには現在活動的な「ホ ワイトスモーカー」と活動を停止した硫化物チムニーがある。活動的なチムニーは上部が 硬石膏、下部は硫化物(白鉄鉱、黄鉄鉱、ウルツ鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、コベリン)から なる。ここでは、日本の黒鉱のような大量の重晶石や方鉛鉱がみられることはなく、玄武 岩が海嶺性の玄武岩の性質を持っていることと関連していると考えられている。

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3. 鉱床胚胎有望地域 ナモシ地域は、ヴィチレヴ島中央部、Suva の北西 30km に位置し、20 世紀初頭に斑岩型 銅(金)鉱床が発見された。1970 年代より、豪州を始めとする各国の鉱山会社・探鉱会社 による探鉱活動が行われた。日鉄鉱業株式会社は、フィジー政府による国際公開入札に応 札した後、2001 年 1 月に本地域における特別探鉱ライセンスを取得し、以降探鉱活動を行 ってきた。 2003 年度には、ワイソイ東鉱床・ワイソイ西鉱床含むワイソイ地域を対象とした調査が、 金属鉱業事業団の海外地質構造調査および日鉄鉱業株式会社の自主探鉱により実施された。 ワイソイ地域の地質は、下位より後期漸新世~中期中新世のワイニマラ層群、中期中新 世~鮮新世のメンドゥラウスズ層群およびこれらを貫く貫入岩類からなる。 ワイニマラ層群は、ワイソイ東鉱床周辺の地表部に分布している。既存試錐孔では緑泥 石化により暗緑灰色~緑灰色を呈し、玄武岩質安山岩組成の凝灰岩~凝灰角礫岩を主体と する。メンドゥラウスズ層群は、ナモシ基底礫岩・安山岩質火山砕屑岩・安山岩溶岩から なり、本地域の地表に広く分布し、下位のワイニマラ層群とは不整合の関係である。貫入 岩類は、角閃石閃緑岩・石英閃緑斑岩・石英斑岩からなり、本地域の鉱床関係火成岩と考 えられている。 ワイソイ西・東鉱床を通じて、ENE-WSW 系の大規模な断層・断裂が発達し、これらの地 表部に強珪化・粘土化変質(主にセリサイト±緑泥石)が発達しいている。ワイソイ西鉱 床では NNW-SSE~NW-SE 方向の断層に沿って閃緑斑岩が分布し、地表で観察される石英脈の 卓越方向は主として NW-SE 方向である。 地表部は、広範囲にわたり、石英-セリサイト変質を被る。セリサイト変質帯の周辺部で は、緑泥石-緑簾石変質で特徴付けられるプロピライト変質が見られる。地下深部では、カ リウム変質、フィリック変質、プロピライト変質、粘土化変質および珪化変質に区分され、 アドバンスト・アージリック変質は認められない。 ワイソイ鉱床はメンドゥラウスズ層群とワイニマラ層群に貫入する閃緑斑岩・石英閃緑 斑岩・石英斑岩により形成されたと考えられる斑岩銅(金)鉱床であり、ワイソイ東鉱床 および西鉱床の範囲は、最大で東西 3km、南北 2km の大きさを持つ。主たる硫化鉱物は、 黄鉄鉱・黄銅鉱・斑銅鉱であり、少量の輝水鉛鉱を伴う。ワイソイ鉱床で 1990 年代前半に 探鉱活動を行っていた Placer Pacific Exploration Ltd(1996)は、平均品位:Cu 0.43%、 Au 0.14g/t、カットオフ Cu 0.3%として 9 億 5,000 万トンの鉱量を計上している。また、 日鉄鉱業株式会社は、ワイソイ東鉱床で銅換算品位 0.67ECu(Cu 0.57%、Au 0.20g/t)、 カットオフ品位 ECu 0.40%で、鉱量 9,730 万トン、ワイソイ西鉱床で銅換算品位 0.62%ECu (Cu 0.53%、Au 0.18g/t)、カットオフ品位 0.35%ECu で鉱量 2 億 4,700 万トンと試算して いる。(田中ほか、資源地質、54(1)、1~12、2004、「フィジー諸島共和国ナモシ地域 ワイソイ鉱床の銅探鉱とその成果」)。

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資料(統計、法律、文献名、URL 等) ・平成 10 年度鉱山開発プロジェクト評価調査報告書 南太平洋島嶼地域(1999 年 3 月 金 属鉱業事業団) ・平成 13 年度海外地質構造調査報告書 フィジー・ナモシ地域(2002 年 3 月 金属鉱業事 業団) ・フィジー諸島共和国の資源開発環境(2004 年 2 月 金属鉱業事業団 資源情報センター) ・フィジー諸島共和国ナモシ地域ワイソイ鉱床の銅探鉱とその成果(2004 年 田中ほか、 資源地質 54(1)) ・Fiji government Online: http://www.fiji.gov.fj/ ・Fiji Islands Bureau of Statistics: http://www.spc.int/prism/country/fj/stats/ ・Fiji Mineral Resource Development: http://www.mrd.gov.fj/ ・Fiji Culture Guide: http://www.fiji-travel.com/culture.html ・The Fiji Islands Trade And Investment Bureau: http://www.ftib.org.fj/

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