Kishidaia117 号「千葉県で採集したクモ類」の訂正 ………….………
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KISHIDAIA Bulletin of Tokyo Spider Study Group No.118, Feb. 2021 ─ 目 次 ─ 池田健一:関西で確認された野外におけるクモ類の捕食例 …….......…………................………...….. 1 須黒達巳:Twitter を用いたヨダンハエトリ Marpissa pulla の分布調査の試み …................…….…. 7 馬場友希・村田遼大・松本吏樹郎・高田まゆら: ハネナシヒメバチ属の一種によるウヅキコモリグモの卵のうへの寄生 ...................… 12 平松毅久:シロオビカラカラグモ Zoma dibaiyin -生活史覚え書き- ………..................…..…….. 14 平松毅久:「このクモを探せ !! 」の明日はどっちだ ?! No.7 -オノゴミグモ- …...............………..… 24 信太理央:日本産 Mallinella 属による野外および飼育下における数例の捕食観察例 ....................... 28 鈴木佑弥:このクモをさがせ No.08 ムナアカナルコグモ ............................................................ 33 鈴木佑弥:“昼行性”円網グモ類の夜食に関する予備観察 .......................................................... 38 鈴木佑弥:スズミグモは造網時にヨコ糸張り方向を切り替える ...................................................... 46 鈴木佑弥:キジロオヒキグモの季節消長について ....................................................................... 50 遠藤鴻明:普通種リスト Ver. 2020 ......................................................................................... 58 長井聡道:メスを狩ろうとしたヤマヤチグモ雄 .......................................................................... 65 谷川明男:ミナミコモリグモとハテコモリグモ .......................................................................... 68 長野宏紀:ヤンバルキムラグモの胸内板の腹突起の数と付着する筋肉の付着位置 ........................... 71 DRAGLINES 林 俊夫:ツシマトリノフンダマシを群馬県で採集 ................................................................. 74 谷川明男・勝山礼一朗:東京都におけるブンゴキムラグモの発見 ..…………......…….……….......... 74 谷川明男・新海 明:九州でのキムラグモ類の分布上限 …........................................................ 75 谷川明男:キムラグモ類のオスがいっぱい …………...........................…………......................... 77 馬場友希・島野智之:沖縄島と与那国島で採集されたクモ ………..........…..…..................………. 79 坂本龍生・馬場友希:東京都におけるイソハエトリの記録 ...…………….………................………. 80 馬場友希・盛口 満:沖縄島におけるホムラハエトリの初記録 ................................................... 81 釣舟富紀子・馬場友希:宮城県からのヒゲナガツヤグモの初記録 …….............................…….…. 82 松木伸浩・三田村敏正・馬場友希:福島県初記録のヒカリアシナガグモ …................................… 83 中島 淳・馬場友希:ヘリジロハシリグモによるオタマジャクシの捕食 ………….............………… 84 松島良介・鈴木佑弥:ナガコガネグモによるシマゲンゴロウの捕食事例 …….........................…... 85 鈴木佑弥:イエユウレイグモがシボグモ雄およびジグモ雄を捕食 …....…………….................…… 86 鈴木佑弥:クモによるイトトンボ類の捕食事例 ……………………...................…................…….. 87 鈴木佑弥:網上におけるジョロウグモ雌同士の闘争行動 ……………….................…………...…….. 88 鈴木佑弥: Kishidaia117 号「千葉県で採集したクモ類」の訂正 ………….………................…….. 89 池田健一:モエギザトウムシのヒメツユムシ捕食例 ………............................…................…….. 90 田中一裕:北海道におけるマダラヒメグモの初記録 ................................................................. 91 雄介・稲畑憲昭:和歌山県串本町でオオヒラタザトウムシ西日本亜種を採集 ......................... 92 雄介・藤本博文:小豆島 (香川県) におけるゴホントゲザトウムシの追加記録…..……….…….. 94 西 風太:京都府におけるアシマダラヤリグモの記録 ............................................................... 95 遠藤鴻明:Kishidaia No.117, Aug. 2020 「奄美大島で採集されたクモ」についての訂正とお詫び . 96 田谷昌仁・細谷 淳・遠藤鴻明:アマサギが捕食したクモ ........................................................ 96 嶋田順一:埼玉県で採集・観察された気になる蜘蛛 ................................................................. 98 嶋田順一:マダラヒメグモの網に残っていた虫達 .................................................................... 99 野口奨悟:佐賀県におけるマイコフクログモの記録 ................................................................... 100 長井聡道:コノハサラグモの網を確認 ..................................................................................... 101 平松毅久:ユアギグモ Patu kishidai Shinkai 2009 の観察記録 ................................................ 103 芹田凌平:高知県でホシミジングモを採集 ............................................................................. 104 芹田凌平:高知県でミナミハヤテグモを採集 ........................................................................... 105 石田裕一・野村昭英:北海道でジョロウグモ Trichonephila clavata を確認 ……………………….... 106 中谷優介・松元音旺・相知紀史:宮崎県におけるオオクマコブヌカグモの発見 ............................ 107 相知紀史・信太理央:鹿児島県肝属郡でオオジョロウグモとヤマシログモを採集 .......................... 108 鈴木佑弥・藏滿司夢・古崎敦也:奄美大島においてマレーゼトラップにより採集されたクモ ......... 109 馬場友希・久末 遊:福岡県で採集されたクモ …….....………….…………….................................. 111 馬場友希・田中幸一:島根県の水田で採集されたクモ ................................................................. 115 菅波洋平:東北 3 県 (岩手・宮城・山形) の土壌から採集されたクモ類 ……….……................. 119 菅波洋平:新潟県の土壌から採集されたクモ類 ……….......................................……................… 123 辻 雄介・久末 遊:福岡県におけるゴホントゲザトウムシの採集記録 ....................................… 127 久保田直:福岡県三里松原の樹上性ササラダニ類 …………………………………………................. 130 奥村賢一:2020 年 11 月に佐渡島で採集したクモ類 .................................................................. 137 新海栄一:東京都産クモ類 ..................................................................................................... 141 馬場友希:長野県上田市の椀子ヴィンヤードで採集されたクモ ……………...……………................. 212 鈴木佑弥・寺田昂平:奥多摩で採集したクモ .............................................................................. 221 鈴木佑弥:茨城県北部で採集したクモ ................................................................……................ 226 鈴木佑弥・芹田凌平:沖縄島で採集したクモ ............................................................................. 230 鈴木佑弥・芹田凌平:西表島で採集したクモ ............................................................................. 237 鈴木佑弥・松島良介・向峯遼・渡辺黎也:北海道で採集したクモ ................................................. 245 芹田凌平:奄美大島で採集したクモ ......................................................................................... 258 芹田凌平:加計呂麻島で採集したクモ ...................................................................................... 263 芹田凌平:高知県で採集したクモ III ........................................................................................ 266 KISHIDAIA, No.118, Feb. 2021 関西で確認された野外におけるクモ類の捕食例 池 田 健 一 クモ類は陸上生態系および土壌生態系で捕食者としての役割が知られている.しかし,被 食者の具体的な分類群が明らかなクモ類の捕食例についてまとまったものは湯淺 (1939 ) がある程度で,池田 (2020 採集更新) でも一部の種に限られており,普通種であっても記 録は少ないと思われる.そこで,筆者は関西を中心に観察してきたクモ類の撮影記録のうち, 具体的な分類群が明らかである捕食例についてここに報告する.クモ目の学名および配列は 谷川 (2020 ) に従った.「データ」の項では撮影地点,続けて括弧内に確認個体数を示した. 撮影はすべて著者による.「備考」では同定の根拠となった点や著者が確認した地点の様子 や,全てではないと思われるが,確認できた文献上の捕食例などを記した. 1. マダラヒメグモ♀ Steatoda triangulosa (Walckenaer 1802) によるクロゴキブリ Periplaneta fuliginosa Serville 1839 幼虫の捕食 【データ】奈良県奈良市三碓1丁目 (1♀, 2015.05.28 ) 【備考】住宅内の窓の額縁の突出部分の下の隙間に営巣し,撮影されなかったが,巣の下に クロゴキブリ幼虫の死骸が多数あり,卵嚢も見られた.撮影個体では主要な餌となっていた と考えられる.外来種で,奈良県奈良市では荒川 (2011 ) に本種の分布記録が既にある.文 図 1.マダラヒメグモ.左:卵のう,右:♀と卵のう 1 献では日本では未同定のダンゴムシ類,昆虫類の例があり (千田 2016 ),アメリカではア リなどの昆虫,ドクイトグモを含むクモ,タカサゴキララマダニ属の一種 Amblyomma americanum ,オカダンゴムシ科の例 (Guarisco 1991 ),Ummidia 属の一種の例 (Horner & Russell 1986 ),ヒアリの例 (MacKay & Vinson 1989 ) がある. 2. ジョロウグモ♀ Trichonephila clavata (L. Koch 1878) によるコアオハナムグリ Gametis jucunda (Faldermann 1835) の捕食 【データ】奈良県奈良市中町 (1♀1♂, 2014.09.26 ) 【備考】落葉広葉樹林の林縁に雌雄ペアで見 られた.文献では同翅亜目,ハエ目,ハチ目, コウチュウ目,クモ目の捕食比率を示した例 があり(Miyashita & Shinkai 1995 ),トン ボ目の捕食例もある ( 東 京 蜘 蛛 談 話 会 2017 ).被食者の種名が示されているものと しては,ウスタビガの例 (城本・桜谷 2004 ), チャバネアオカメムシの例 (野口 2020 ) が ある. 図2.ジョロウグモ♂♀ 3. クロガケジグモ♀ Badumna insignis (L.Koch 1872) によるヨツスジトラカミキリ Leptura ochraceofasciata ochraceofasciata (Motschulsky 1861) の捕食 【データ】兵庫県神戸市西区 (1♀, 2010.07.20 ) 【備考】住宅の灯火下のインターホンに営巣していた個体で,ヨツスジトラカミキリの死骸 を確認された.死骸の脚などはばらばらになっ ていた.その他にも灯火に集まる昆虫を捕食し ていたと思われる.外来種で,兵庫県では姫路 市,加西市,豊岡市で本種の分布記録がある (山本 1992 ).日本ではショウジョウバエ,大 きいハエ,ゴキブリの例があり (後藤 1978 ) , オーストラリアではハエ目,柔らかいコウチュ ウ目,蛾類などの多様な昆虫を捕食する 図 3.クロガケジグモ♀ (Hawkeswood 2003 ). 2 4. ワ カ バ グ モ ♀ Oxytate striatipes (L. Koch 1878) によるセリシマキモンハバチ Pachyprotasis serii Okutani 1961 の捕食 (ヤマモモ葉下面) 【データ】奈良県奈良市中町近畿大学奈良キャンパス (1♀, 2013.04.08 ) 【備考】セリシマキモンハバチの同定は Okutani (1961 ) を参照した.キャンパスの 植栽のヤマモモで見られた.東京蜘蛛談話会 (2017 ) ではサクラの蜜腺に集まるオオクロ バエやトビイロケアリ等をさかんに捕食する とあり,他にクワハムシの例 (湯淺 1939 ), ハナアブ科の例 (小野 1996 ),オオシロカネ グモの例 (高津 2004 ),ヤマトシジミの例 (宇式 2017) がある. 図 4.ワカバグモ♀ 5. カニグモ属の一種♀ Xysticus sp. によるヒゲナガハナノミ♂ Paralichas pectinatus (Kiesenwetter 1874) の捕食 (クサイチゴ葉上面) 【データ】奈良県奈良市中町近畿大学奈良キャ ンパス (1♀, 2014.05.20 ) 【備考】ヤミイロカニグモ X. croceus Fox 1937 かチュウカカニグモ X. ephippiatus Simon 1880 か ア ズ マ カ ニ グ モ X. insulicola Bös. & Str. 1906 と考えられる. 日中湧水を水源とする小規模な棚田から発生 したヒゲナガハナノミを抱えていた.ヤミイロ カニグモでは様々な昆虫,アズマカニグモでは 図 5.カニグモ属の一種♀ ヨツボシケシキスイの例がある ( 湯 淺 1939 ). 6. アサヒエビグモ♂ Philodromus subaureolus Bös. & Str. 1906 によるカゲロウ目の 一種 Ephemeroptera gen. sp. の捕食 【データ】京都府舞鶴市字余部下 (1♂, 2014.07.08 ) 【備考】壁面で夜間灯火に飛来していたカゲロウ目の一種を抱えていた.文献ではチャノミ ドリヒメヨコバイの例がある (Kosugi 2001 ). 3 7. ヤサアリグモ♀ Myrmarachne inermichelis Bös. & Str. 1906 によるユスリカ属の一 種♂ Chironomus sp. の捕食 【データ】大阪府堺市東区白鷺町 1 丁 (1♀, 2017.04.07 ) 【備考】ヤサアリグモでは光沢があり胸部の盛り上がっていることから本種とした.ユスリ カ属は交尾器により同定される (日本ユスリカ研究会 2010 ).マンションの壁面で見られ た個体で,夜間の灯火に飛来したと思われるユスリカ属を日中抱えている様子が確認された. 文献では微小な昆虫,特に葉裏に潜む蚊等を捕食するとされる (小松 1936 ). 8. デーニッツハエトリ幼体 Plexippoides doenitzi (Karsch 1879) によるクロバネキノコ バエ科 Sciaridae Gen. sp. の捕食 (ソメイヨシノ幹上) 【データ】奈良県奈良市中町近畿大学奈良キャ ンパス (1 幼体, 2013.09.21 ) 【備考】伊藤 (1977 ) のクロバネキノコバエ科 と翅脈が一致したところから本科とした.植栽 のソメイヨシノで見られた.文献ではコシロカ ネグモの例 (高野ら 1976 ),オウギグモの例 (平松 1991 ),キハダカニグモ♀亜成体の例 (池田 2005 ),ムネグロサラグモの例 (鈴木 図 6.デ-ニッツハエトリ幼体 2019 ),ニホンヒメグモの例 (芹田 2020 ) が ある. 9. カラスハエトリ♀ Rhene atrata (Karsch 1881) によるモリチャバネゴキブリ Blattella nipponica Asahina, 1963 幼虫の捕食 (ヤブ ツバキ葉上面) 【データ】奈良県奈良市中町近畿大学奈良キャ ンパス (1♀, 2015.07.02 ) 【備考】キャンパス内の植栽のヤブツバキで見 図 7.カラスハエトリ♀ られた. 引用文献 荒川 真 2011 .奈良県産のムロズミソレグモとマダラヒメグモ.くものいと , 45: 14–17. 4 後藤岳志 1978 .クロガケジグモの生活.Atypus, 71: 40–43. Guarisco, H. 1991. Predation of two common house spiders upon medically significant pests. Transactions of the Kansas Academy of Science 94, 79–81. Hawkeswood, T. J. 2003. Spiders of Australia: an introduction to their classification, biology and distribution. 264 pp. Pensoft, Sofia. 平松毅久 1991 .デーニッツハエトリに捕食されたオウギグモ.Kishidaia, 62: 21. Horner, N. V., & Russell, D. 1986. Ummidia trapdoor spider caught in a Steatoda web (Araneae: Ctenzidae, Theridiidae). Journal of Arachnology, 14: 142. 池田博明 2005 .2014 年度観察採集会報告 藤沢市新林公園のクモ.Kishidaia, 107: 47–60. 池田博明 2020 年 3 月 15 日最終更新.クモ生理生態事典 2019 (編集中).http://spider.art.coocan. jp/studycenter/Dic11.html . 伊藤修四郎