<<

KJFC (九谷ジャズファンクラブ )会報 www.kjfc.info

GROOVY VOL. 48 2009.4.25

CONTENTS

〔女性ヴォーカルの美味しいところを〕 JOANIEJOANIE- ---S.T.S.T. 1 喫茶茶会記レコードコンサートより 〔連載〕 ハービー・ハンコック研究・第15回 高木 信哉 666 楽曲分析~解説 田中 裕士 ハービー・ハンコック研究 第3回補足 - 唐沢 寧寧寧 SOUL TLAIN Vol.10 M.T. 15 気まぐれジャズマン第28回 水戸守敬一郎 161616 エジプト・レポート M.S.M.S.17171717 KJFC TOPICS 171717 RED GARLANDの魅力について 第第第 282828 回回回 紅紅紅 我蘭堂 181818 例会レポート 202020 JOANIEJOANIE----S.T.S.T. T.S. 他他他 表紙及び本文中イラスト制作(一部ロゴマーク除く)・・・・・水戸守敬一郎 ※無断転載はかたくお断りいたします。 印刷・製本:文京堂 東京都文京区本駒込 111-1---10101010----4444 電電電話 電話話話030303- 03 ---394139413941----45084508 H20.9.7 喫茶茶会記レコードコンサート JOANIEJOANIE----ST.ST. Vol.3 「女性ヴォーカルの美味しいところを」

本日は私の女性ヴォーカルレコード遍歴をたっぷり聞 James に嵌ったことが、大きな転機となりました。この いてください。 ジョニの蒐集過程で梅が丘「ノスタルジアレコード」金 この道にのめり込んだきっかけは、大学時代よく遊び 子玄太郎氏と知り合いました。彼のヴォーカルの好みと

に押しかけていた札幌のコレクター「中村公彦さん」の は相通じるところが多々あり、色々と秘蔵の盤を紹介し

ALTEC A7 ハウスにて。夏の真夜中 Julie London の て貰いました。(店で話に花が咲き過ぎて、傍に停めてい

Liberty 盤「All Through The Night 」を聞かせてもらい、 た車をレッカーされたこともありました。4年ほど前に ジュリーの声と、絡みつく Bud Shank のアルトに痺れた 忽然と店を閉めて業界を去った時はショックでしたね。)

ことを、はっきり覚えています。また、オリジナル盤と また、西荻窪(その後中野)にあった「PAL 」にもよ

云うものの存在を認識したのもこの盤で、今になって考 く通い、Tina Louise の Concert Hall 盤はここで仕入れ えてみると私にとって非常に罪作りな(?)瞬間だった ました。(因みにヴォーカルに滅茶苦茶詳しいこの店長、

のかも知れません。 本業は太鼓たたき。何と今をトキメク松尾明氏です。こ (ちなみに彼は私より4歳年上、C.McRae ・F.Sinatra の縁で MAYA ちゃんのCDはインディーズ時代から愛聴

を中心としたヴォーカル全般のコレクターとして、その しています) 筋では著名でした。またチューンナップされたオーディ 本格的にヴォーカルを集め始めたのは、H5故郷札幌 オシステムの音も素晴らしく、当時群雄割拠していた札 へ転勤と同時に自宅(自室)を建ててからです。専用の

幌市内のジャズ喫茶のレベルを大幅に凌駕し、部屋には レコード棚を造付けたこともありますが、この年発売さ

多くの人が入替り出入りしてまさにサロンの様相。ジャ れたジャズ批評誌 No.77 ・78 [ 女性シンガー大百科 ズ批評誌 No.59 [ジャズ・レコード蒐集学] では Vol.1/2] の影響が甚大で、この本片手に札幌「 Disc

F.Astaire ・F.Sinatra 紹介に健筆を奮っています。ポリド Evans 」「Beverly Records 」を徘徊するだけでは飽き足 ールの B.Holiday ・Verve 盤 10 枚組 Box セット発売時に らなくなり、Tarragon. Mole . Jeff Barr. Sally

も資料を提供、担当の岡村融さんが大通西 13 丁目の中村 Warner. そして L.Leavitt 等の海外オークションに手を

ハウスを訪れたこともあった様です。彼は残念ながら病 出し始める始末。コレクションの骨格はこの 5 年間の札 に倒れ、H13 若くして亡くなりましたが、遺品の ortofon 幌勤務時代に出来上がりました。(その後、H10 以降は

「SPU-AE 」カートリッジ・レコードの一部は、某店経 家族を自宅に残して、都合 11 年間 単身赴任の旅烏生活 由私が受け継いで大切にしています。本日持参の です….( 涙))

C.Shepherd / Vanilla は彼が当時新譜で購入していたも 現在「LP盤」をほぼ蒐集終わった、私の愛する歌姫

のです) たちは

私が初めて買ったオリジナル廃盤は、S54 入社後7年 Joanie Sommers /// Julie London /// Joni James

間を過した大阪勤務時代、今は閉店した梅田・阪急東通 Ann Burton /// Rita Reys /// Carol SloanSloanee /// 「LPコーナー」にて。Julie London の傑作「Julie is Her Beverly Kenney

Name 」モノラル盤が第1号。元の所有者がジャケット Doris Day /// Rosemary Clooney /// Helen Merrill

を恋人へのラブレター代わりに使ったらしく、彼女への Irene Kral /// Abbe Lane / Connie Stevens / イラストが裏面に書き込みされていました。 Sue Rainy その後仕事が忙しくなりまた狭い社宅暮しも相俟って、 そ の 他 Nara Leao / Francoise Hardy /

VIDEO/LD/ CDに現を抜かしていた暗黒の時代が長く Sissel Kyrkjebo 続き、ヴォーカルにもご無沙汰でしたが、平成になった Gitte Haenning / Sachiko Nishida 等々 頃の東京勤務時代「吉祥寺某氏の著作」の影響で Joni CD時代の新しいところでは 1 Janet Seidel / Carol Kidd / CClairelaire Martin / Rigmor 1.1.1. Lynn Taylor Gustafsson / Stacy Kent Ernie Kovacs presents Buddy Weed and introduces

Laura Fygi / Lisa Ekdahl / EmilieEmilie----ClaireClaire Barlow / Lynn Taylor(Coral CRL57043)

Connie Evingson 等の新譜も常に追いかけています。 AAA-A---22 Warm Kiss And Cool Heart この名前を通観していただくと、私の好みは大体お察 AAA-A---55 I5 I’I ’’’veve Got An Invitation To A

しいただけるかな?と思います。明るく、しっとり、そ dance して囁くような「声質」の歌い手が大好きです。いがら BBB-B---22 Was That The Human Thing To Do

っぽい声、クドクド持って回る、シャウト・スキャット BBB-B---44 ItIt’’’’ss Funny To Everyone But Me

中心の駕鳴りたてる歌い方の人は、白人であっても好み からは外れます。その意味で、黒人の歌手は不得意です。 Lynn Taylor singsingss I see your face before me

(しかし Ethel Ennis / Carmen McRae / Natalie Cole (Grand Award G.A.33G.A.33----367)367)

/ Marge Dodson / Barbara McNair 等は好きです) AAA-A---11 I See Your Face Before Me そして、このレコードを包むジャケットにも強い思い AAA-A---22 Then II’’’’llll Be Tired of You

入れを持っています。三人の「J様」は Mono 盤/Stereo AAA-A---33 ItIt’’’’ss All Yours 盤両方のみならず、10 吋・7吋・シングル・SP・ジャ BBB-B---11 Thief In The Night

ケ違い(日本プレス)・オープンリールテープ・ミュージ BBB-B---22 High And Low ックシートに至るまでも蒐集の対象にしています。特に 可憐な美声に魅せられた親爺様方が昔から騒いでいた

私のハンドルネーム「愛しの Joanie Sommers 」は数多 人です。コーラル盤は4曲のみ参加。十数年前日本盤が くある日本盤別ジャケLP/シングルの入手は完了し、 特典レコードとして復刻されました。グランアワード盤

米盤シングルがあと4枚残すのみ。しかし最近全く見た は素晴らしい内容ですが、録音レベルが高すぎるのか、

ことがないショット写真スリーブ付スペイン盤シングル 歪が感じられるトラックがあります。これも 15 年程前に

を、懇意にさせてもらっている「ふらんすのおっちゃん」 多分 Fresh Sound 系列からLP/CDが復刻され、最近 (澤野商会の弟さん)経由で2種類入手し、また一人で興奮 は話題の LP Time より紙ジャケCDが発売されてます。

しています。 Billy Butterfield (tp) のソロも秀逸です。

さて、前置きが異常に長くなりました。今日のプログ 2.2.2. Ilene Woods

ラムはご案内の通り、前記「三人のJ様」他の Big Name Walt DisneyDisney’’’’ss Cinderella (Disneyland Records (?)ではなく、あくまでも私の好みの盤を集めてみま WDLWDL----4007)4007)

した。ひとりひとりの歌手の情報はジャズ批評等の内容 AAA-A---11 Main Title “““Cinderella“CinderellaCinderella””””

以上のものは持ち合わせていませんし、英語の歌詞もほ BBB-B---22 So This Is Love とんど判りません。また、所謂「ジャズ・ヴォーカル」

の範疇からは外れることもあるかもしれませんし、白人 ItItIt’It ’’’ss Late (Jubilee JLP 1046) ヴォーカルの大物、アニタ・オデイ、クリス・コナー、 AAA-A---11 ItIt’’’’ss a Blue World

ペギー・リー、リー・ワイリー辺りも余り持ち合わせが BBB-B---11 While We ‘‘‘re‘re Young

無く、出てきません。しかし、私がこよなく愛する「蒼」 BBB-B---22 If You Were Mine 「赤」の Rosemary Squires 究極の女性ヴォーカル BBB-B---33 I3 I’I ’’’mm Old Fashioned Lynn Taylor シンデレラ ヴォイス Ilene Woods (さ ディズニーのアニメ映画「シンデレラ」の主人公の声 てこのフレーズのネタは……)を中心に、素敵な歌姫た 優を務めた女性で、サントラの中で大活躍しています。 ちのヴォーカルに時間の許す限りお付き合いください。 自己名義のジュビリー盤はジャケットが素敵で人気盤で

すが、ジュビリー特有のノイジーな「砂盤」が多く、要 2 注意です。因みに東芝の特典レコード国内盤はこの粗悪 4.4.4. ApriAprillll Stevens

な盤からレコードダビングしている様です。本日持参の Teach Me Tiger! (Imperial

ジュビリー盤のコンディションはまずまずです。(梅が丘 LP9118)

にて入手しました) AAA-A---11 Do It Again AAA-A---22 Teach Me Tiger

3.3.3. Rosemary Squires My Love Is a Wanderer (MGM E3597) A Very Special Time ( センチュリー 20EL6001 ・・・Pink

AAA-A---11 My Love Is a Wanderer Vynil)

BBB-B---44 Lazy Moon AAA-A---11 Once Upon A Very BBB-B---55 My Wayward Heart Special Time

BBB-B---66 I6 I’I ’’’llll Get By AAA-A---22 I Remember

AAA-A---33 With You II’’’’mm Born Again/Could It Be Magic Something to Remember Me By (EMI CLP1832) 十代よりお色気路線でスマッシュヒットを放っていた

AAA-A---44 If I Had You 彼女、なかなか悩ましい声です。しかし四十路後半に突 AAA-A---55 EverythingEverything’’’’ss Coming Up 然現れた日本企画のセンチュリー盤は、解説の大滝譲司

Roses 氏も熱筆を揮われていますが、疲れた親爺たちへの最高

BBB-B---11 What a Little Moonlight の「癒しヴォーカル」です。私はこのピンクのカラーレ Can Do コードをターンテーブルに乗せるだけで、疲労回復の特

BBB-B---22 All Too Soon 効薬になります。兄貴ニーノ・テンポのテナーもいい味 BBB-B---33 The End of Love Affair を出していますよ。絶対お勧め、大好きなレコードで

す!!

EverythingEverything’’’’ss Coming Up Rosy (EMI CLP1669) BBB-B---11 Day In,Day Out 5.5.5. Connie Stevens

BBB-B---22 I Proud My Heart Into a Conchetta (Warner Bros. W1208)

Song BBB-B---44 On A Slow Boat To China BBB-B---33 Have You Met Miss Jones BBB-B---55 Too Young

AAA-A---11 Carioca BBB-B---66 Spring Is Here 50 年代から活躍を続けているイギリスの歌手です。70

歳を越えた今も現役で、CDも発売され、クラブ等で歌 Hilight of Connie Stevens っている様子が彼女のHPに載っています。私はジャズ (((東芝音楽工業 BRBRBR-BR ---71417141 ・赤盤)))

批評の巻頭カラーページに魅せられ、八方手を尽くして BBB-B---22 Too Young(Another Version)

自分のものにしました。三枚のLPはジャケの背景の色 BBB-B---33 Hey,Good LookinLookin’’’’ をとって「蒼のローズマリー」・「金?」・「赤のローズマリ BBB-B---44 LetLet’’’’ss Do It

ー」と呼ばれています。特に「赤」は一旦 Beverly にて BBB-B---55 I CanCan’’’’tt Help It

手に入れたステレオ盤から、Tarragon のオークションに BBB-B---66 Dancing In The Dark てモノラル盤に買い替え、長年の愛聴盤となっています。 テレビ映画「ハワイアン・アイズ」出演等、女優とし

MGM 盤はポリドール国内盤が、EMI の2枚は抜粋盤が ての活躍が日本では知られています。マリリン・モンロ

C5 レコードから再発されています。 ーの晩年をモチーフにした映画の主役もしていました。

とろけるようなハニーヴォイスは何ともいえない趣があ ります。東芝ベスト盤の素晴らしいジャケは、中野 3 Broadway にあった「PAL」の奥座敷に掲げてあり、 AAA-A---88 Anything Gose いつも指を咥えて眺めていました。ヤフオクで一度見か もう一人 女優が本業の歌手、最近もCDが出ていま

けましたが、とんでもない値段になり、半ば諦めかけて す。

いた一昨年のとある夕暮れの日、今は閉店した高田馬場 8.8.8. Diana Trask

DISK FUN の壁に発見!即座に剥ぎ取って、苦節十数年 Diana Trask (Columbia CL1601)

やっとこ入手しました。嬉しさの余りジャケをコピーし AAA-A---11 It Might As Well Be Spring て、なんと自作の紙ジャケCDまで作ってしまい、松尾 AAA-A---22 Little Girl Blue

さんと MAYA ちゃんにも奉納しました。Nat King Cole

の十八番「Too Young 」の台詞入り Version の囁きにも痺 Diana Trask on TV (Colu(Columbiambia れます。 CS8505)

AAA-A---33 Love Is The Sweetest Thing 6.6.6. Debbie Reynolds ややシャウト気味の唄い方が鼻

Debbie (Dot DLP3191) につくトラックもあります。まずは

AAA-A---11 Love is a Simple Thing ジャケ写真を堪能してください。オ AAA-A---22 S2 S’S ’’’posinposinposin’’’’ ーストラリア出身の彼女、同郷のラナ カントレル・そ

AAA-A---33 You WonWon’’’’tt Be Satisfied してジャネット サイデルも好きです。

Tammy and 11 other great folk hits (Dot DLP3492) 9.9.9. Priscilla Paris

AAA-A---11 Tammy Priscilla loves Billy (Happy Tiger あの名作映画「雨に唄えば」のキ HT1002)

ャシー・セルダン嬢です。パーティ AAA-A---11 Just Friends

ーへの出張踊り子として大きなケー AAA-A---22 HeHe’’’’ss Funny That Way キの中から飛び出してくるシーンは何度観ても素敵です。

北京オリンピック開会式の口パクではありませんが、映 The Paris Sisters sings everything under the

画の最後でキャシーが影武者から真のスターになるシー sun!!!(reprise RR----6259)6259) ンもウルウル。 究極の金髪ジャケ! 甘い声も魅

力です。 以下の歌手はジャケット中心にアットランダムに札幌よ り空輸して来ました。短時間で、さわりを出来るだけご 10.10.10. Sandy Stewart

紹介します。(レコードは札幌にて保管し、定年後にたっ My Coloring Book (Colpix CP441) ぷり聴くことにしています・東京ではCD中心の生活) BBB-B---55 Ivy Rose

BBB-B---66 Red Sails in the Sunset 7.7.7. Cybill Shepherd 人気若手ピアニスト Bill Charlap

Vanilla (Peabody PSPS----102)102) のお母さん。最近2人のデュエットCDが発表されまし

BBB-B---11 ’’’S’S Woderful た。清らかな歌声が好きな盤です。 メンフィスのローカルレーベルから。 ピアノは地元の大物 F.Newborn 。 11.11.11. Lucy AnnAnnAnn Pork

Lucy Ann Pork with Dave Pell Octet Cybill does itit………… ………to …to Cole Porter (Trend TL1008)

(Paramount PASPAS----1018)1018) AAA-A---22 Imagination 4 AAA-A---33 But Beautiful 16. Carole Simpson SinginSingin’’’’ and SwinginSwingin’’’’

Lucky Lucy Ann (Mode MOD LPLP----115)115) (TOPS Mayfair 9732 Yellow Vynil)

BBB-B---44 Time After Time AAA-A---55 This Could Be the Start of ストレートな唄い方が魅力。 Something Big

Eva Diana の描いたジャケット AAA-A---66 A Ship Sailed も素敵です。 ピアノ弾き語りの小粋なねえさんです。

12. Erin OOO’O’’’BrienBrien 17. Helen Ward

Songs from the heart of Erin OO’’’’BrienBrien ItItIt’It ’’’ss Been So Long (Columbia

(Coral CRL57194) CL6271)

AAA-A---11 My Foolish Heart AAA-A---11 ItIt’’’’ss Been So Long AAA-A---44 LoLoveve Letters AAA-A---22 You Brought a New Kind of

国立「Sings 」の壁にも飾ってあ Love to ME りました。 バンドシンガーです。バックはパーシー・ヒース楽団。

13. Carly Simon 18. Peggy King

My Romance (ARISTA ALAL----8582)8582) Wish Upon a Star

BBB-B---44 Bewitched (Columbia House Party series CL2549) BBB-B---55 Danny Boy BBB-B---11 Long Ago And Far Away Touch ・Film Noir と並ぶスタン これも、ジャケット鑑賞中心のレコ

ダード集。裏ジャケの写真が悩まし ードです。 いですね。 バックはまたもパーシー・ヒース楽

団。

14. Dolores Gray

Warm Brandy (((Capitol(Capitol TT----897897897)))) 19. Patricia Scot

AAA-A---55 How Long Has This Been Once Around The Clock (ABC(ABC----ParamountParamount ABCABC----301)301) Going On BBB-B---11 You Leave Me Breathless

AAA-A---66 Close Your Eyes BBB-B---44 Mad About The Boy これも悩ましいジャケです。低音 ジャケ写真はそれなりに円熟して

が魅力。 いますが、27 歳の頃の録音。

15. LuAnn Sims 20. Lola Albright

AAAtAt Separate Tables (Jubilee JGM1092) Lola Wants You (Kem LP101) Red Vynil

AAA-A---11 Separated Table AAA-A---11 A Man,A Man,A Man AAA-A---22 I Only Have Eyes For You AAA-A---22 Candy ジャケ写真がなんとなく小百合 何度見てもうっとりするジャケです。 さんに……。 大久保に短期間あったレビット レ

コードの開店セールに並んで買いました (了) 5 ハービー・ハンコック研究・第 15 回 (“Retrospective of The Music of Herbie Hancock”) 高木信哉 (((1975:“Head(1975:“Head Hunters”の2度目の来日公演でライブ録音実現 ))) HERBIE 1975 録音日 /タイトル /演奏者 (レーベル名)

1975. 5 Saturday Night Special / Norman Connors (Buddah) 1975. 6.28&7.1 Flood(洪水) /// Herbie Hancock (CB(CBS SSS///Sony)( 1115作目) 1975. 777 Man ---Child /// Herbie Hancock (Columbia)( 1116作目) 1975. 9 Jaco Pastorius (Columbia) 1975 Steppin’ / The Pointer Sisters (Blue Thumb) 1975 Huste To Survive / Les Mc Cann (Atlantic) 1975 Magical Shepherd / Miroslav Vitous (Warner) 1975 Safety Zone / Bobby Womack (United Artisits) 1975 Identity / Airto (Arista) 1975 Marching In The Street / Harvey Mason (Arista )

1975年の最大のトピックスは、30年に及んだベトナム戦 ニューヨーク・ジャズ・カルテット(ロン・カーター、フランク・ウ 争に終止符が打たれたことだ。 1月には、英国・保守党に エス(sax)、ローランド・ハナ(p)、ベン・ライリー(ds))が来日 初の女性党首としてサッチャーが就任した。 し、ライブ録音盤『ニューヨーク・ジャズ・カルテット・イン・ジャ 日本のジャズ界は、帝王マイルス・デイビスの1964年、1 パン』を残した。 973年に続く3度目の来日公演で幕が開いた。サックス奏者 一方ハービー・ハンコック及びフュージョンは最盛期を迎え がデイブ・リーブマンからソニー・フォーチュンに代わっていた。 ていた。ハービーのヘッドハンターズは、1976年6月、前年 1月22日~2月8日までで、14公演が敢行された。マイルス に続き2度目の来日を果たした。この公演も、すべて超満員 の体調は芳しくなったが、バンドの状態は最高だった。このと 札止めとなった。全国各地の公演は熱狂で迎えられ、興奮 きの模様は、二つのライブ・アルバム『アガルタ』(2/1 大阪公 の坩堝と化した。 演昼の部)と『パンゲア』(2/1 大阪公演夜の部)として、幸い さて6月28日の渋谷公会堂と7月1日の中野サンプラザ 世に出た。この日のコンサートは、特に夜の部が出色の内容 のライブは録音され、『洪水』(通算15作目のリーダー作)と となった。帰国後、マイルスはろくな休みもとらないままツア いう2枚組みのLPとなった。7月1日の中野サンプラザのライ ーに出ていたが、なんとハービーのヘッドハンターズの前座 ブを見たピア二スト、佐山雅弘は、こう語っている。「中野サ だった。ハービーは、若い黒人オーディエンスの心をしっかり ンプラザのライブは、後光が差すほど素晴らしかった。ハー 掴み、どこの公演地でも人気抜群であった。ツアーが進み、 ビーは流れている和声に対するインターバルとしてよりも、パ ハービーばかりが評価されることに、マイルスの機嫌は悪く レットから自分の知悉した色を選び出すように、楽器の或る なる一方であった。ロングアイラインドのホフストラ大学での ポイントからサウンド・カラーを引き出して、そこの空気に塗る コンサート前、ハービーはマイルスの楽屋に挨拶に訪ねたと のである。ここに至って、技術・知識・知性及び冷静さは感性 ころ、マイルスにこう一喝された。「ハービー、お前は俺のバ の裏地となって限りなく高いポジションに情熱を支える。曲が ンドのメンバーじゃない、俺の楽屋はバンドのメンバー以外 「アクチャル・プルーフ」(アルバムの2曲目に収録)に至って は立ち入り禁止だ!ここから出て行け!!」。そしてマイルス 興奮は極みに達した。スリリングなテーマ、コード。定期的に は、9月5日にセントラル・パークで行われたコンサートを持っ 出てくるバックリフの計算されたエフェクト。それを受けて て、一切の演奏活動から身を引いた。ここから6年間の引退 益々白熱するインプロビゼーション。パターンを刻みながら、 生活に入ったのだ。 フリーなリズム・ライン。絶頂に達すると身構えた刹那、剣が 1975年3月には、フレディ・ハバードがセクステットで来日 峰から取って返してウェイダウンされ、思わず腰が音を追う。 し、ライブ録音盤『閃光』(3/17 録音)を残した。同年4月には、 胸の中に燃えた炎で体を炙られながら、《これからジャズはこ 6 うなっていく》という確信をもった」。 まらないのが元気いっぱいのベニー・マウピンらヘッドハンタ 『洪水』は、ハービーとヘッドハンターズの圧倒的なパフォ ーズの面々である。そこでハービーと相談し、「ザ・ヘッドハン ーマンスの実態と魅力が凝縮された傑作である。アルバム ターズ」として単独での活動(ハービー抜き)をすることにした。 の最後の曲「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」は、まだ 「ザ・ヘッドハンターズ」は、今までに 4 枚の作品を残してい 誰も聞いたことのない新曲だった。この曲は、ハービーが日 る。 本公演から帰国した直後の9月に録音された通算16作目の それは、①『Survival Of The Fittest』(Arista 、1975 年録音) 新作『マン・チャイルド』の中の1曲だった。 :ベニー・マウピン(sax),ビル・サマーズ(perc),マイク・クラーク 『マン・チャイルド』のクレジットには、ヘッドハンターズの名 (ds),ブラックバード・マックナイト(g), 前は載ってない。あくまでハービー名義の作品となっている。 Zak Diouf(djembe),Baba Duru(bass drum),ハービー・メイソン 参加メンバーは、超豪華である。ハービー、盟友のウェイン・ (prec),ザ・ポインター・シスターズ ショーター(ss)、ソウルの超人気者スティービー・ワンダー (hca)に、“ヘッドハンターズ”からはベニー・モウピン(sax)、 ②『Straight From The Gate』(Arista,1977 年) ブラックバード・マックナイト(g)、ポール・ジャクソン(b)、マイ ③『Return Of The Headhunters!』(Verve,1998 年)=これには、 ク・クラーク(ds)、ハービー・メイソン(ds)、ビル・サマーズ ハービーも参加! (perc)、さらにはバド・ブリスボイス(tp)、ジェイ・ダバーサ ④『Evolution Revolution』(Basin Street,2003 年) (tp)、アーニー・ワッツ(sax)、ジム・ホーン(sax)、ガーネット・ ブラウン(tb)、ディック・ハイド(tuba)、ルイス・ジョンソン(b)、 それから 1975 年で忘れてならないのは、天才ベーシスト、 ヘンリー・デイビス(b)、ジェームス・ギャドソン(ds)以上総勢 ジャコ・パストリアスが衝撃のデビュー作『ジャコ・パストリアス 18名という物凄い布陣である。ウェイン・ショーターは、ソプ の肖像』を録音したことである(発売は 1976 年春)。ここにハ ラノ・サックスで4曲目の「バブルス」に参加。スティービー・ワ ービーが全面協力をしている。 ンダーは、ハーモニカで5曲目の「ステッピン・イン・イット」に さてジャコ・パストリアスは、1951 年 12 月 1 日に生まれ、 参加している。『マン・チャイルド』は、壮大な音楽絵巻とも呼 1987 年 9 月 21 日に 35 歳の若さで亡くなった。『ジャコ・パス ぶべき作品。ハービーが『ヘッドハンターズ』で始めたファンク トリアスの肖像』を録音したときは、まだウェザー・リポートに 路線に『スピーク・ライク・ア・チャイルド』で魅せたアンサンブ 参加してなかった。アルバムのプロデューサー、ボビー・コロ ルの美しさが融合している。ハービーが奏でるエレクトリック ンビー(BS&Tのドラマー)は、1975 年当時、EPICからレコ 楽器の数々もすっかり使いこなされ、楽器本来の持つ美しい ード制作を依頼されており、良い人材を探していた。BS&T 音がしかりと表現されている。また1曲目の「ハング・アップ・ の公演で、フォート・ローダーデイルに来ていたボビー・コロン ユア・ハング・アップス」は、日本公演で初披露された曲。踊り ビーは、海岸を散策中の美女、トレイシーに声を掛ける。彼 出したくなるようなご機嫌なリズムに乗って、ハービーの生ピ 女を歌手にしようと考えたが、彼女は「自分の夫はベーシスト アノが抜群のソロを取る。この躍動感こそハービーの魅力そ で、才能がある」といって、ジャコを紹介した。トレイシーは、 のものである。また『マン・チャイルド』では、ハービーは初の ジャコの最初の妻だったのだ。これがきっかけとなり、1 ヵ月 ポリシンセ、OBERHEIM 8-Voice を使用している。ハービーに 後、『ジャコ・パストリアスの肖像』を録音した。ジャコがウェザ よると、サンフランシスコで『マン・チャイルド』録音中に、ロサ ー・リポートに参加するのは、翌 1976 年のことである。 ンゼルスで『キー・オブ・ライフ』を録音中のスティービー・ワン さて『ジャコ・パストリアスの肖像』にハービーは、4 曲参加し ダーに電話したところ、受話器から 4 声のコードをベンドした ている。2 曲目の「カム・オン、カム・オーバー」はなんとボーカ 音が聴こえてきて、驚いたハービーは「何の楽器を使ってい ルにサム&デイブを迎えたグルーブ感満点のファンク・ナン るの?」と尋ねた。ところがスティービーはとぼけて教えてく バー。ここでは、ハービーのローズのソロが炸裂する。4 曲目 れない。仕方がないから、ロスにいるスティービーを訪ね、初 では、ジャコのオリジナル「クル」とハービーのオリジナル「ス めて OBERHEIM に触れ、感激し、自分の録音に使っていい ピーク・ライク・ア・チャイルド」が巧みにミックスされている。 かの許可を得た。スティービーは快く承諾してくれたが、『キ 疾走感溢れる「クル」と抑制された「スピーク・ライク・ア・チャ ー・オブ・ライフ』の録音にハービーが参加することがOKの イルド」が交互に演奏される。緊張感溢れる逸品である。ハ 条件だった。逆にスティービーは、『マン・チャイルド』に参加 ービーは、生ピアノでここ一番のソロを聴かせる。ジャコの大 してくれた。OBERHEIM 8-Voice の成果は、4 曲目の「バブル 胆なアレンジによる 12 人編成のストリングス・アンサンブルを ス」で聴ける。 バックに、ハービーが自由闊達に駆け上がっていく。8 曲目 の「チャ・チャ」は、ジャコのオリジナルで、ラテン・フレイバー すっかり有名になったハービーは大忙しの日々となった。つ が横溢するナンバー。ハービーは生ピアノで燃えるようなビ 7 ートを創出する。9 曲目はバラードの「忘れ去られた愛」。ハ 躍人気者となる。1978 年には、立派になったジャコをハービ ービーはストリングスをバックにしっとりとピアノを奏でる。ジ ーは自己のリーダー作『サンライト』に迎え、彼を大きくフィー ャコは参加してない。 チャーした「グッド・クエスチョン」を吹き込んでいる。 その後、ウェザー・リポート参加により出世したジャコは、一

【Actual Proof 楽曲分析~解説】 by 田中 裕士(Pianist)

収録アルバム Herbie Hancock / Flood Recorded: 1975 Live at 渋谷公会堂 6月28日 & 中野サンプラザホール 7月1日 Musicians Herbie Hancock : Acoustic Piano, Fender-Rhodes Electric Piano, Synthesizers Mike Clark : Drums Paul Jackson :Bass Bennie Maupin : Soprano and Tenor Sax, Saxello, Bass Clarinet and Flute Blackbird Mcknight : Guitar Bill Summers : Percussion

【70 年代ハービーの “ブラック・ファンク”5部作中で貴重なるライブ盤】

1973 年作品『ヘッド・ハンターズ』に始まり、1974 年『スラ 各アルバムに収録されている楽曲を綿密に研究~解析して スト』、1975 年『マン・チャイルド』、1976 年『シークレッツ』、 そ みると、個々に音楽的趣向がいささか異なることが解る。特 して本作 1975 年日本公演のライブ盤『Flood/洪水』の5作 筆すべきことは、このアルバムが前述の5アルバムの中で唯 品は、『70’s ハンコックのブラック・ ファンク5部作』 だと私 一のライブ盤であり、1975 年@日本公演の貴重な記録であ は確信する。この 4 年間に発表した上記5枚に及ぶ意欲作に るということである。LP 盤が廃盤になり、’90 年代半ば頃まで より、ハービー・ハンコックは(コアなジャズファンの枠組を超 なかなか CD 化されず、我々プロの演奏家やマニアの間での えて)広い意味でのブラックミュージックファン全般にその人 み高く評価され秘かに愛聴されていた音源なのだが、現在で 気を拡大し、不動のステイタスを築き上げたと言える。各作 は CD として簡単に入手できるようになったことは喜ばしいこ 品については一環したファンク音楽的指向がうかがえるが、 とである。

【ハービー35歳@その先進的音楽指向と偉大なる功績】

1967 年に John Coltrane というジャズ界の革命家―重鎮 実がある。『ハービーの音楽はジャズか?いやジャズではな が来世に旅立ち、ジャズ界は暗中模索期を迎えていた。コル い。ファンクか?―いや、コマーシャルな商業音楽だ。どうも トレーンが残した音楽的方法論・イディオムを道標とした ダンスミュージックらしいな』・・・というような、的はずれな会 McCoy Tyner をリーダー的存在に持つコアなジャズミュージ 話であったことは(諸先輩方からも聞いたことがあるし)察す シャンの若手達、そしてもう一方は、ジャズの音楽的ルーツ るにおよそ間違いのないことであろう。が、しかしー私はこの に根ざしながらも、よりコンテンポラリーなイディオムと進化を 浅薄な偏見性に対して、2010 年を目前に今さらながら声を大 求めた、Miles Davis 門下の若手ミュージシャン達。 (勿論、 にして反発反論したいのである。1970~80 年初頭、当時のア ハービー はその後者に属する演奏家であることは周知の事 メリカの黒人達の大多数が、その当時どのような音楽を求め、 実である) 愛好していたのか? ハービーは自身の持つ抜群のアンテ ―この、いわば派閥的な2つの流れが、以後の二大メインス ナでそのムーヴメントをいち早く察知し、ジャズとファンクを融 トリームとなっていった。 合することに成功した。さらにはより多くの聴衆・広範層との その当時(1970 年代)の様々な文献等を調査してみると解 音楽を通じた対話を確立し、次世代へのジャズの進化とニュ ることだが、いわゆる 『オークランド・ファンク』と呼ばれるグ ーイディオム、そして“美”を提示した。その功績、さらには後 ルーヴをジャズのイディオムと融合させた、そのハービー・ハ 生のミュージシャンに与えた影響を察すると、その実証はあ ンコックの達見性・ポピュラリティーは一部のコアなジャズファ まりにも大きく、比類無き偉大さであると私は確信している。 ンやプレイヤーからは批判されることになったという悲しい事 8 【Acutual Proof / 楽曲構造】

[Vamp] [A] というフォームで、それぞれ 4 小節+15 小 クランドファンクのエグゼクティヴミュージシャンだなぁと感動 節=計 19 小節が主題部となっている。 を覚えるのは恐らくピアニストの私だけではないであろう。 主題はファンクグルーヴの上で大変トリッキーなメロディが、 さて、ハービーのインプロヴィゼイションの内容についてはー ベニー・マウピンのフルートとハービーのピアノで提示される。 とにもかくにも圧巻の完勝!である。 ラスト3小節が、【5拍子→4拍子→3拍子】となっていることも 文面では語り尽くせないほど広範多岐に渡るジャズイディオ 興味深い。5+4+3=12 で4拍子記譜で3小節表記も可 ム、尽きることなく溢れ出る先進的アイデアの数々、群を抜く 能ではあるが、ハーモニックリズムとアクセントを思慮すると、 ピアノテクニック、ベースやドラムスとの絶妙なるインタープレ あえて変拍子記譜のほうが理解しやすいので、そのように記 イ(対話)、そして いかなる瞬間も美しさを目指す彼の抒情 した。 性―ロマンチシズム。・・・どれをとっても圧巻の素晴らしさ! 【※(5)・・・5拍、 ※(4)・・・4拍、 ※(3)・・・3拍 の意味であ である。 る】 ハーモニー(コードチェンジ)についても、いかにもハービーが 主題部提示の後、やはり 同じフォーム(形式)に乗っ取り、 好きそうな配置である。 ハービーのピアノインプロヴィゼイションが展開されてゆくが、 参考までに大まかなアウトラインのコードチェンジのみを記 これがあまりにも素晴らしく、私はまるでジェットコースターに しておく。 乗って猛スピードで走り抜いてゆくようなエクスタシーさえ感 【Chord Changes for Piano Improvisation】 じる。このアルバムは長年に渡り、何百回と愛聴しているが、 毎回とんでもない体験だと鳥肌が立つ。マイク・クラーク(Ds)、 ┃Cm7(11)┃Cm7(11)┃Cm7(11)Cm7(11)┃ ポール・ジャクソン(B)は微塵も軸がぶれることなく、強力なグ ┃G♭M7(♭5) on B♭ ┃A7 alt. ┃A7 sus4 ┃A7 sus4┃ ルーヴと躍動感溢れるリズムで、ハービーを支える。それは ┃E♭m7(♭5)┃E♭m7(♭5)┃AM7(9) ┃AM7(9) ┃ まるで極上の絵画を支える金の額縁のようだ。さすが、オー ┃※(5) E♭M7(♭5) on D┃※(4) F7 ┃※(3) F7┃

【ハービーの唱える、ジャズの定義そしてグローバリズム】

ハービーが、1970 年代当時の黒人・白人の区別的(差別 バルな進化発展を遂げて、その定義を拡張してきたわけだ 的)意識を越えて、よりグローバルな境涯に立ち、新しいジャ が、当研究論文でフォーカスされるべき論点ではないので、 ズイディオムを提示することを主眼としていたーという点で、 あえて割愛させていただく。 彼は利口で先進的であった。当時のアメリカ庶民層が求めて 最後に、深く敬愛するハービー・ハンコックのインタビューか いた音楽を(便宜上)ファンク や ニューソウル (ブラックコ ら、彼自身が切実に話してくれた提言を紹介して今回は終 ンテンポラリー)という言葉で呼ぶならば、それらもジャズと同 わりにしたい。 ― 『ジャズがなぜ世界中の人々の心をつ 様にブルースから発展してきた黒人ルーツの音楽であり、 かんできたのか? ―その理由は、人間の体験から生まれ 1970~1980・・・ と その時その時の “今” に相応しい黒 た音楽だからだ。それは、黒人の奴隷制度の体験に限った 人の新しい意識を反映した Black Music であったのだと確信 ものではない。ジャズは、奴隷という“毒”を、より素晴らしい してやまない。 ただし “ジャズ” という、いわゆる インター “薬”に変える、人間の生きる力から生まれたものなんだ。 ナショナルアートフォームとしての 「手法や手段」 としての (仏法における変毒為薬の意)』 (ハービーハンコック 意味―意義は、1990 年以降からさらなる国境を越え、グロー 談)

【Hang Up Your Hang Ups 楽曲分析~解説】 by 田中裕士(Pianist)

収録アルバム Herbie Hancock: Man-Child Recorded: 1975

Musicians Herbie Hancock : Acoustic Piano, Fender-Rhodes Electric Piano, Arp Odyssey, Pro Soloist, 2600 and String Ensemble Synthesizers, Hohner D6 Clavinet, Oberheim Polyphonic Synthesizer; 9 Mike Clark, Harvey Mason, James Gadson : Drums; Paul Jackson, Louis Johnson, Henry Davis : Bass; Wayne Shorter : Soprano Sax; Bennie Maupin : Soprano and Tenor Sax, Saxello, Bass Clarinet, Bass and Alto Flute/Blackbird McKnight, David T. Walker : Guitars; Bill Summers : Percussion; Bud Brisbois, Jay DaVersa : Trumpets; Ernie Watts, Jim Horn :Saxes and Flutes; Garnett Brown : Trombone; Dick Hyde : Tuba and Bass Trombone; Stevie Wonder : Harmonica; WaWaWahWa h Wah Watson : Guitar, Voice Bag, Maestro Universal Synthesizer System, Maestro Sample and Hold Unit. 【70 年代ハンコックの “ブラック・ファンク”作品】

1973 年作品『ヘッド・ハンターズ』に始まり、1974 年『スラス ックは(コアなジャズファンの枠組を超えて)ブラックミュージッ ト』、1975 年日本公演のライブ盤『洪水』、そして 1975 年本作 クファン全般にその人気を拡大し、不動のステイタスを築き 『マン・チャイルド』、最後に 1976 年『シークレッツ』の5作品は、 上げたと確信する。各作品については一環した指向がうかが 『70’s ハンコックのブラック・ファンク5部作』 だと私は思う。 えるが、よくよく研究してみると、個々に音楽的趣向がいささ この 4 年間に発表した上記5枚に及ぶ意欲作により、ハンコ か異なる。 【音楽的指向】

このアルバムは、まず大きな特色として、(※注1)オークラ ※注1:サンフランシスコ湾東岸に広がる地域、このエリア ンド・ファンクの影響を多大に受けたサウンド創りが特徴だと で70年代、黒人街があって、リズム&ブルースやアーバン いえよう。(ピアノ/キーボード奏者である)私が感じるに、ハ ブルースの温床になってきた。そうした伝統の中から、スラ ンコックの音楽的思考は、電子楽器(シンセサイザー、エレク イ&ファミリーストーン、タワー・オブ・パワーといった強烈な トリックピアノ等)の進化発展と共存共栄し、無限大の拡がり ファンクバンドが出現した。このオークランドにはジャズ、ロ を見せてきたと思う。具体的軌跡の1例としては、(※注2)オ ックのクラブが多数存在し、若手ミュージシャンが中心にな ーバーハイムを使い始めたのも、この1975年録音の同ア って地域独特の強烈なサウンドを創るムーブメントが当時 ルバムからである。当時にしては革命的発明であったオーバ あった。その音楽スタイルを、『オークランド・ファンク』と呼 ーハイムのようないわゆる Polyphonic Synthesizer の出現に ぶ。ちなみに、ハンコックが 1973~1976 年に起用した、マイ より、ハンコックはブラスセクションやストリングセクションの ク・クラーク(Ds)、ポール・ジャクソン(B)らも、オークランド・フ オーケストレーションを精巧に創り始める。 ァンク派の逸材ミュージシャンであった。 新しい楽器の出現が彼の創造意欲を駆り立て、そういった新 ※注2:“Oberheim” 1度に2音以上を同時に出せる しい挑戦が、今までにはなかった音楽的成果を遂げていると Polyphonic Synthesizer の有名ブランド。70年代当時に於い いえる。こういった思考・音楽的アプローチも、前述のオーク ては革命的名機であり、価格もかなり高価なものであった。 ランド・ファンクの美意識から受けた影響を、彼自身がさらに いち早く自身の音楽に取り入れ、使いこなしたのが、ハービ 発展進化させたものと言えるかもしれない。 ー・ハンコック、 故/ジョー・ザビヌルらであった。

【楽曲構造】

[A] [B] [C] [B] というフォームで、それぞれ8小節ず 使用され、Transition(トーナリティー転調)として、初めて つ、計32小節が主題部となっている。 [D] 部分が提示される。 ハーモニー的には(一部の Passing Chord を除いては)約 この[D]部分は、ピアノのインプロヴィゼイションに円滑 90%の部分が E7 Harmony のみで構築されている。E7 に進ます為の接続部という役割を果たし、E7 → G7 という はファンク・ミュージック全般で好まれるトーナリティー(調 短3度上へのトーナルセンター(調性基音)の移動に何ら違 性)で、察するにギターやベースの解放弦が響かせ易いと 和感すら感じさせることなく、エモーショナルにハービーの いうような意味に由来する伝統的流儀ではないかと思う。 インプロヴィゼイションへとなだれ込んでゆく。 “Hohner D6 主題部提示の後、やはり E7 Harmony のみで Vamp Clavinet” や “Oberheim Polyphonic Synthesizer” を駆使 (Groove 感を聴かせる役割のパート)が繰り広げられるが、 して、Groovy なバッキング・オーケストレーションを奏でてい その後次第にベニーマウピン(Sax) のインプロヴィゼイショ たハービーが突如 Acoustic Piano でインプロヴィゼイション ンに突入、心地良いサックスブローが続く。その後、主題部 を始めるのだが、ピアノの音が妙に新鮮に、一瞬まるで新 [C] [A] [B]という順序での24小節が Interlude として しい楽器のように響き出すのが不思議なハンコックマジック 10 とも言える。こういった使用楽器の使い分け、音色コントラ 響く。 ストの配色センスなどなど、まさに比類無きハンコックサウ こういった和声趣向は、ヘッド・ハンターズの頃からハンコック ンドのエクスタシーである。 が好んで使い、確立した独自のアイデアである。私が察する ピアノ・インプロヴィゼイション用に設定されたコードチェンジ に、ハーモニーのアイデアとしては、Miles Davis の音楽に、 は、(いくつかのカラーコード、パッシングコードが絶妙に使わ 発想の基盤があるのではないかと感じる。勿論、近代クラシ れており、それらの総てをコードシンボルとして書き記すこと ック音楽の和声概念からも彼は多くの知恵を取り入れている は至難)大まかな流れとして下記の8小節のループで展開さ が、本作品に於いては明確なるその影響は聞こえてこない。 れる。 【Chord Changes for Piano Improvisation】 トーナルセンター(ベース)が G 音にステイしているのだが、 ┃G7 sus4┃E♭M7 on G┃D♭M7(♭5) on G┃D♭M7(♭5) onG┃ 上声部に構築されてゆくハーモニーの推移が実に心地良く ┃G7 sus4┃E♭M7 on G┃A♭M7 on G ┃A♭M7 on G ┃

【Jazz 発 ~Black Funk 経由~ Fusion 行】

“Hang Up Your Hang Ups” -- 私が最初この楽曲を耳に は感じているのである。 した当時(17 歳くらいの少年だった)、とても難解怪奇に聞こ このアルバムの翌年 1976 年には “Secrets” 、そして 2 えたのは事実である。しかし、その楽曲(音楽)の構造や魅 枚組ライブ盤 “ニューポートの追想” を発表し、エレクトリッ 力、そして流儀を知るにつれ、とても理解が深まり親近感が ク・ハービー・ミュージックはさらに新しい方向へ躍進を遂げ 湧いた記憶は懐かしい想い出だ。今回、執筆するにあたり久 てゆく。そしてコンピュータ、サンプリングなどの時代の新技 しぶりに何度も聴き入ってみたが、ジャズ歴史に於けるハン 術とともに先へ先へと進化し、1983 年の歴史的傑作 コックの功績の偉大さとその意義を改めて感じ、再び鳥肌の “Future Shock” まで昇りつめてゆくのである。次なるハンコ 感動を覚えた。こういった(今から約33年前に)天才ハンコッ ックのヴィジョンは、ヒップホップ~ダンスミュージックであっ クが実験・創作・演奏した音楽が機となり、後に Cross Over, た。 Fusion, Black Contemporary などといった音楽の確立へと 繋がっていったことは、明確な音楽史(ジャズ進化の歴史)が 物語っている。後生の音楽への影響力を考えると、その価 値・意義の深さは世界遺産に匹敵するのではないかーと私

<<<アルバム<アルバムアルバム解説解説 by 高木信哉 >>> 『洪水 ライブ・イ ン・ジャパン ’75/Herbie Hancock』 1. Maiden Voyage で来日し、日本全国に旋風を巻き起こした。本作は、その 1 年 2. Actual Proof 後、ハービーのヘッドハンターズの 2 度目の来日公演を記録 3. Spank-A-Lee した貴重なライブ録音盤である。収録された 1 は『処女航海』 4. Watermelon (1965 年録音)、4 と 6 は『ヘッドハンターズ』(1973 年)、2 と 3 Man と 5 は『スラスト(突撃)』(1974 年)、7 は『マン・チャイルド』 5. Butterfly (1975 年 7 月録音:本作演奏時はまだ録音されてなかった) 6. Chameleon からセレクトされている。 7. Hang Up Your ハービーのヘッドハンターズの圧倒的な演奏と実力がたっ Hang Ups ぷり楽しめる傑作である。特に冒頭の「処女航海」~「アクチ ュル・プルーフ」へ続く怒涛の 2 曲メドレーが最高に素晴らしい。 Herbie Hancock(p),Bennie Maupin(b),Paul まずハービーがひとりで登場し、生ピアノで内省的だが心に Jackson(b),Mike Clark(ds), 沁みる美しいソロを取る。ハービーのピアノが会場の聴衆の Bill Sammers(perc),Blackbird McKnight(g) 心を満たし、最初の高みに達したところ(6 分 38 秒)で、リズム ハービー・ハンコックの通算 15 作目のリーダー作。ハービ セクションとベニー・モウピンのフルートが加わり、「処女航海」 ーは、1964 年、マイルス・デイビスと初来日を果たした。それ の綺麗なテーマ・メロディへ移行する。オリジナルの「処女航 から 10 年後の 1974 年、遂に自らのバンド、ヘッドハンターズ 海」はフレディ・ハバードのトランペットが素敵だったが、モウ 11 ピンのフルートも違う趣きでいい感じだ。次にモウピンなどの しく思います」と挨拶して、妖しい美しさを湛えた「バタフライ」 メンバーのソロへ移行するかなと思っていると、そうは進まず、 へ。ここでは、ハービーのフェンダー・ローズのソロが実に美し リズムはサッと速いアップ・テンポに変化する(7 分 58 秒)。ス い。 リリングなテーマ、格好いいリズム・パターン(定期的に登場 そしてシェケレ(ひょうたんに数珠玉を巻いたパーカッション) する)になる。そしてハービーのソロ(生ピアノ)がリズムに乗 に導かれて、テーマ曲「カメレオン」が始まる。これで聴衆の興 って、一気にヒート・アップしていく。バックのリズム・セクション 奮は、ピークに達した。これで終わりかと思われたが最後に は抜群の冴えを見せ、ハービーのソロは激しく絶頂に向かう。 未発表の新曲「ハングアップ・ユア・ハング・アアプス」を演奏 テーマに戻り、今度はモウピンのフルート・ソロ。待ちにまって した。シャープなギターにベースが絡みつき、自在に変化する の登場だけに素晴らしいソロを展開する。2 曲合計で、16 分 リズムに乗って、ハービーが疾走する。これが日本録音なの 半。あっという間の展開である。ハービー初期の大ヒット曲「ウ がとっても嬉しい。 ォーターメロンマン」(もちろんヘッドハンターズ・バージョンで ある)が始まると、手拍子が湧き上がる。モウピンのソプラノと ハービーのクラビネットがフィーチャーされる。次いでハービ ーが流暢な日本語で、「今日ここで演奏できますことを大変嬉

『Man-Child/Herbie Hancock 』 1. Hang Up Your ーハイムなど新しい電子楽器をどんどん取り入れ、それがま Hang Ups た新たな挑戦、新たな可能性を見出すという成果が生まれて 2. Sun Touch いる。 3. The Traitor 冒頭の「ハングアップ・ユア・ハング・アアプス」は、日本公 4. Bubbles 演(アルバム『洪水』に収録)で初お披露目された曲。まずギ 5. Steppin’ In It ターがりズムを刻み、そこへハービーのシンセとタイトなドラム 6. Heart Beat が加わる。ベニー・モウピンのサックス、ブラスセクションが加 わり、テーマを奏でる。再びギターに戻り、そこへベースが絡 Herbie Hancock(p), みつく。クラビネットを中心にリズムを繰り返しながら、マウピ Wayne ンの鮮やかなソロが進んでいく。インタールードを挟み込み、 Shorter(ss),Bennie 再びテーマが演奏される。そして 5 分 31 秒目から電撃的にハ Maupin(sax),Bud ービーの生ピアノのソロへ移行する。まるで新しい楽器のよう Brisbois(tp), に生ピアノが新鮮に響き渡る。なんて格好いいのだろう。私は、 Jay DaVersa(tp),Ernie Watts(sax),Jim 1976年6月、初めてニューヨークへ渡ったが、その当時、流行 Horn(sax),Dick Hyde(tuba), っていたのがこの曲とジョージ・ベンソンの『ブリージン』の「マ Blackbird McKnight(g),David T.Walker(g),Wah スカレード」だった。今でもこの 2 曲のどちらかを聴くと、当時 Wah Watson(g),Paul Jackson(b), のニューヨークの光景が蘇ってくる。そして 6 月 29 日、シティ・ Louis Johnson(b),Henry Davis(b),Mike センター・ホールで、ハービーの演奏する「ハングアップ・ユ Clark(ds),Harvey Mason(ds),James ア・ハング・アアプス」を生で聴いた。聴衆たちは熱狂して踊っ Gadson(ds), ていた。その音は、私の五感を刺激し、興奮した。そしてジャ Bill Sunners(perc),Stevie Wonder(hca) ズは新しい時を迎えたと深く脳裏に刻まれた。2 曲目の「サ ハービー・ハンコックの通算 16 作目のリーダー作。熱狂の日 ン・タッチ」では、ハービーのスタイリッシュなローズのソロが 本公演から帰国した直後の録音である。まさに壮大な音楽絵 聴ける。弾き過ぎず抑えたタッチが実に美しい。スタイリッシュ 巻とも呼ぶべき力作である。演奏メンバーもヘッドハンターズ の極みである。 のメンバーを核にウェイン・ショーター、スティービー・ワンダー 4 曲目の「バブルス」は、粘っこいギターとベースの心地よ など総勢 18 名もの凄腕たちが参加している。『ヘッドハンター い音から始まる。そこへウェイン・ショーターの天上の調べの ズ』から始まったハービーのファンク路線の冒険の頂点に立 ようなソプラノ・サックスが入ってくる。ソプラノとハービーのシ つ作品である。『ヘッドハンターズ』(1973 年)では、まだぎこち ンセが絡み合い、絶妙のハーモニーを奏でる。5 曲目の「ステ なかった部分もあったハービーの電子楽器の演奏も今や自 ッピン・イット」は、ベースがブンブン唸るリズムが強調された 由自在、変幻自在に操れるように進化している。またオーバ 曲。ここにスティービー・ワンダーがハーモニカで参加している。 12 ご機嫌なリズムに乗って、ハービーがローズのソロを奏でた 天才スティービー、見事である。 あと、抜群のタイミングと音でスティービーが入ってくる。ステ 以上 ィービーは、短いながらも印象的なソロを奏でる。さすがは、

ハービー・ハンコック研究・第3回補足(1963年分)

【「 King Cobra 」楽曲解説 by 唐沢 寧】

■録音DATA ション、パターンから開放された後半 12 小節が B セクション 1963年3月19日、 とすればわかりやすい。 アルバム名『 My Point Of View 』の3曲目 テーマメロディは、まさに曲名のとおりコブラが壺から出てく ■コード進行 るような、エキゾチックな雰囲気を tp tb ts の 3 管で醸し出し ている。 ・テーマ部 A セクションでは|Fm|Fm+5|Fm6|Fm7| のような進行に A section おいて、 C-C#-D-E♭といった基本的なクリシェラインを単純 |Fsus|Fsus| に聞こえさせないような配慮がなされており、同時にピアノの |Fsus|Fm+5|Fm6|Fm7| 基本リズムパターンも、同じコードを繰り返しているようで、実 |C7m|D ♭sus|B ♭m|E6 D ♭ G ♭sus| は 1 小節ずつ全て異なったコードを押さえている。 |Fsus|Fm+5|Fm6|Fm7| B セクションの 1~4 小節では、 E の combination diminish |Cm|D ♭sus G |F+11|E+5| scale を基本にしたメロディーに対し、ベースは B♭から短 3 度で下降していくのに対し、 5~8 小節では、ベースが G から B section 短 3 度で上昇するという組み合わせで展開する。 |B ♭+11 G7-9-13|E7+11 D|B ♭7+11|Gm6| 5~8 小節のメロディについては、他のスケールも想定できる |Gm6 B ♭+11|D ♭ A|F#m|F#7-9| が、ベースの短 3 度の動きから推測すると、あくまでも |Fsus|Fsus|Esus|Fsus| combination diminish scale を変形させている(5 th と♭7 が半音上がる)と解釈した方が良さそうだ。 ・アドリブ部 A section アドリブ部ではテーマのコード進行に手を加えてあるが、そ |Esus|Esus| の事により、テーマ部とアドリブ部では全く違う小節・コード進 |Fsus|Fm+5|G G ♭|Fm| 行のように聴こえてくる。 |D ♭|D ♭m+5 |B ♭m|E D ♭m G ♭sus| |Fsus|Fm+5|G G ♭|Fm| あくまでも私見ではあるが、各自のアドリブは、同アルバムの |D ♭|D ♭m+5 G|F |E+5 | 他の曲に比べて、なんとなく”やりずらそうな”気持ちで演奏し ているようにも感じられる。 B section 彼らのような名手であっても、この曲に関しては、自由自在に |B ♭+11 G7-9-13|E7+11 D|B ♭7+11|Gm6| アドリブを取るのが難しいコード進行であるという事でもある |Gm6 B ♭+11|D ♭ A|F#m|F#7-9| のではないだろうか。 |Fsus|Fsus| また、ソロは、各パート 1 コーラスずつしか取っていない。 |Esus|Esus| このことからも、この曲はコーラスを繰り返し、アドリブで発展 させるタイプの曲ではなく、考え尽くされたテーマのメロディと ■構成・ハーモニー・コード等について ハーモニーの構築美とアイディアに重点を置いている曲だと 構成については AABA といったようなオーソドックスなフォー 言える。 ムはとっておらず、大きく分けるならば、リズムセクションによ る基本リズムパターンが繰り返される前半 16 小節が A セク ■コンピング(バッキング) 13 テーマ部では 3 管のゆったりとしたメロディー・ハーモニーに 所々散りばめられている。 対し、ピアノはリズムセクションの一部として、 A セクションで は基本パターンを繰り返す。 B セクションからは combination diminish scale を発展させ、 3 管の複雑なハーモニーとかち合わないよう、低めのポジシ コードの縛りから解放されていく。その後、アルペジオを半音 ョンで、音数も抑え、同じリズムパターンを刻みながらも常に ずつ上げて行く定番フレーズの所でハーモニー面でもリズム 管のハーモニーとのバランスを大切に保っている。 面でも十分アウトし、緊張感を高めたところで、再び アドリブ部では、ドナルドバードのソロの時に、基本リズムパ combination diminish scale に戻り、 Fm →Em でソロを終 ターンを刻んでいるが、次のソリストになるに連れ徐々にそ える。 の縛りを緩めていき、自分のソロに突入する。 アルペジオを半音ずつ上げていく所では、ハービーのリズム 管楽器のバッキングに関しては、決め事が多い中でも、出来 が怪しくなりつつあるが、トニーの瞬時の対応により切り抜け る限り自由に、様々なバリエーションで対応してはいるが、ど る。 ちらかと言えばリズムとコード進行を追う事を念頭に伴奏して また、ピアノソロが終わり、アドリブ部の最後 2 小節( Esus ) いる様にも感じられる。 からテーマ部の Fsus へ切り替わるところで、ハービーはF sus を弾かず、 Esus でパターンを弾き続ける。そして、管が ■ピアノソロ Fsus でメロディーを吹き始めた瞬間、ハッと気づき指を止め A セクションでは、特別派手なアプローチはなく、基本的にコ た後、 Fsus へ切り替える。生々しい瞬間。 ード進行に沿ってソロを組み立てているが、どことなく緊張感 アドリブで展開するタイプの曲ではないにも関わらず、アドリ がただようのは、この曲のコード進行の特殊性によるものと ブ内容は綱渡りの様にスリリングである。 思われる。つまり、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰの組み合わせで出来ているよう なタイプの曲ではない。 また、そのような中でもハービー特有のキャッチーな歌心も

JAZZCAT-RECORD

インターネット専門店です。 レコード 3,500 枚以上を写真で掲載中 お店の感覚で捜せます。 ・ ジャズ中古レコード販売(ボーカルも充実) ・ YOKOHAMA-JAZZCAT レーベルより CD 発売 ・ 日本人アーチストの CD・レコード販売(直接アーチスト から依頼されています) ・ オーディオコーナー(売りたし・買いたし・求む) ・ 中古 CD 販売 http://www.jazzcat-record.com 〒220-0051 横浜市西区中央 2-1-13 明光中央ビル 202 TEL&FAX 045-312-4238 Email:[email protected]

14 SOUL TRAIN Vol.10 撮影:M.T.

15 気まぐれジャズマン 第 28回 水戸守敬一郎 〈福田繁雄先生が亡くなられて〉 グラフィックデザイナーで東京芸術大学の教授であった福田繁雄先生が 2009 年 1 月 11 日に 亡くなられた。 先生とは 1988 年の東京グラフィック・デザイナース・クラブの銀座の松坂屋での《ランドス ケープ展》のオープニングパーティーで、お会いし、パーティーでいっしょにお酒を飲んだ。僕の スター的な存在だった。 パーティーは立食で、先生はシャンパンの入ったコップをナプキンでくるんで持っておられて、な んだかキザだなと思った。 いつもはTシャツでパーティーに出席されるという先生は、この日はジャケットをはおっておられ た。司会に紹介されて、あいさつもされていた。 先生は胎児の頭が世界地図になっている、だまし絵のようなポスターを出品されていた。ちなみ に僕は半立体の、「清冽な流れまで」という作品を発表した。

先生は錯覚や遊び心を生かした、だまし絵、からくりなどを追求された。 ‘72 年にワルシャワ国際ポスタービエンナーレで金賞、’75 年にはポーランドの国際ポスター募集 で最高賞を受賞、’87 年にニューヨーク・アート・ディレクターズ・クラブ名誉の殿堂賞。’97 年 に紫綬褒章。日本グラフィックデザイナー協会会長などを努められた。

パーティーが終わり銀座の街に飲みに行こうと、UG・サトーさんと何人かがさそわれた。 僕もくっついていって、お話を聞きたいと思っていたが、先生がおっかない低い声で、 「ぞろぞろつれてくるなよ」 と言われたのを聞いて、ユニークで楽しい作品、老若男女誰もが納得できる、気さくな誠実なイメ ージとはかけはなれた、正直いやな奴だなと思った。 ――――福田繁雄先生のご冥福を祈ります。

16 エジプト・レポート

M.S.

KJFCの皆様、エジプトから無事に帰ってきました。 テロがあったりおなかをこわす人が多いという話で心配しながら行ったのですが、無事に帰ってきました。おなかをやら

れたのは1晩だけで済んで良かったです。 ピラミッドの写真を撮っていたら警官が寄ってきて、こんな格好で写真を撮

ってくれました。「親切なおまわりさん」と思っていたらしっかりチップを要

求されました。 チップで困ったのは観光地や飛行場、レストランなど殆どのトイレでチップが

必要な事でした。1ポンド日本円にして18円位ですが、チップ用の小銭を作

るのに苦労しました。

観光地は沢山の警官がライフルや小銃を持って警備しています。日本では見慣れないので怖い感じです。アブシンベル神

殿などに行く3,4時間の長距離のバスの移動は観光バスを一度に集めて警官の車が先導して行列を作って移動します。

途中は検問も沢山あり、そこでは現地の車を止めて観光バス優先で走りました。

中間の三泊は写真のようなクルーズ船でアスワ

ンからルクソールまで観光をしながらの移動で す。ホテルのようなツインの部屋が60室位ある

船で、快適でした。 夜はこんなベリーダンスのショウもありました。

エジプトの歴史的な建造物はやはり「凄い」のひとことです。 良く4000千年も前にこんな物を作れたものだと感心するばかり。

現地ガイドは日本には1ヶ月ほどしか来たことがないと言うのに、日本語が大変上

手で楽しく案内してくれました。本当に熱心に説明をしてくれるのに、こちらは不

勉強の為サッパリ頭に残らず大変申し訳ない気持でした。 37名の大人数のツアーですが、オシャベリなカミさんのお陰で楽しい旅行でした。

KJFC TOPICS

ホームページの訪問者が、通算 50,000 人になりました。 さて、その記念すべき訪問者は? 答えは、今号のトップにレジュメの掲載をしている、 JOANIE-S.T.さんでした。

17 RED GARLANDの魅力について 第28回 1977年 レコーディングの復活(1) 紅紅紅 我蘭堂

「ヘロー、ガーランドですが」 「大丈夫、大丈夫。ちゃんとしたスタジオで、しかる 「ヘローへロー。レッド、君か? ぼくが誰か分かる べきメンバーが集まってやれば、なんにも問題ないって。 かい? オリンだよ、オリン・キープニュースだ」 なぁレッド、昔マイルス(ディビス)と一日にとんでもな 「オリン? 本当に君か? 久しぶりだな」 い録音したじゃないか。それに比べれば今度はボクがゆ 「ハッハッハ、レッド、このくたばり損ないめ、元気 っくりしたスケジュールを組んでみるって。とにかく一 だったか」 度キャルフォルニアまで来てくれよ」 「ああ何とかやっているよ。でもオリン、急に電話を というような会話があったかどうかは定かでありませ くれて、いったいどうしたんだい?」 ん。あくまでも私の想像です。冒頭から私の個人的な思 「それそれ、そのことさ。レッド、ぼくがマイルスト い入れで申し訳ありませんが、今日は想像を中心にお話 ーン・レーベルを立ち上げたことは君も知っていると思 しさせていただきます。 うけど、今度ファンタジーの下で、また新しいレコード とは言え、このベテラン・プロデューサーのオリン・ 会社を始めるんだ。君にもぜひ吹き込んでほしいのさ」 キープニュースによってガーランドのレコーディングは 「レコード会社? 昔やっていたリバーサイドのよう 約 7 年ぶりに復活しました。ギャラクシー・レコードの な会社?」 コンセプトは「50 年代・60 年代にバリバリ活躍していた 「そうさ。昔の仲間に声を掛けたら、すごいメンバー が、その後のジャズ・シーンの変化おもにフュージョン が集まりそうだよ。ナット・アダレイ、トミー・フラナ などに対応できなくてくすぶっているベテランに機会を ガン、ジョニー・グリフィン、フィリー・ジョーの奴も 与えて、ハードバップ・リバイバルの風潮に便乗する」 いるし、アート・ペッパーもきてくれそうだよ」 ということであったと思います。悪いことではありませ 「う~ん、声を掛けてくれたのはうれしいけどさ。オ んし、実際ジョニー・グリフィンやトミー・フラナガン リン、もうボクは昔みたいに弾けないよ。レコードを作 などの名盤が数多くあります。 るなんてとんでもないよ」 ただしキープニュースがガーランドも引っ張り出した 「なに言ってるんだレッド。君がちゃんとライブをや ことには功罪があると思います。 っているのを知ってるよ。サンフランシスコのキースト さて結論からいうと、本当にオリン・キープニュース ーンに毎年出演していることは知っているし、ここに証 は余計なことをしてくれました。自分がレコード会社を 人もいるんだ。いま代わるよ」 興すときに昔馴染みのガーランドに声をかけるのは、ま 「ヘイ、レッド。元気か」 あ気持ちは分かります。せっかく引っ張り出したのだか 「その声はフィリーだな」 ら、いきなり 3 枚分もレコーディングさせたのも理解で 「そうさ、君のバックに座るのが一番似合うフィリ きるつもりです。ファンも待っているし、レコードも売 ー・ジョー・ジョーンズ様さ。なあレッド、もう一度レ れるからとコンサート・ツアーに連れていくのも商売抜 コードを作ろうよ」 きの友情だと思いましょう。次々と枚数をレコーディン 「でもフィリー、ドラムスは君が叩くとしてもベース グさせたのも人情として受け入れることはできます。 は誰かいるの? ポール(チェンバース)のような安心し でも、この 77 年からわずか 7 年後にガーランドは亡く ていられるベースマンは誰もいないでしょ」 なってしまいます。まだ 60 歳でした。レコーディングや 「任せろよレッド。オリンが今一番乗っている奴を用 コンサート・ツアーが寿命を縮めたとは言えませんが、 意しているって」 故郷で家族に囲まれながら、ひっそりと暮らし、たまに 「誰のこと」 気がおけないクラブなどで演奏できていれば、もっとも 「ロンさ、ロン・カーターだよ。レッド、君はロンと っと長生きしてくれたかもしれません。 演奏したことなかったよな。いいベースだよ」 「マイルスのバンドでやっていた奴だよな」 今回紹介するギャラクシーの 2 枚は、正直に言ってお 「そうさ。またオリンに代わるよ」 薦めできません。ガーランドの出来がよくないのです。 「レッド、オリンだ。とにかく一度話しを聞きに来て 原因はメンバーにあったと思います。久しぶりの録音だ くれよ。飛行機のチケットを送るよ」 から、ロン・カーターとフィリー・ジョー・ジョーンズ 「オリン、本当に無理だよ。キーストーンのライブは を配したというオリン・キープンニューズの気持ちは、 楽しくやっているけど、レコードは無理だよ」 痛いほどよく分かります。でもこれが「小さな親切、大

18 きなお世話」的に余分なことだったと感じています。ず 無理がありました。 っと第一線でバリバリ演奏しているプレイヤーと、半分 隠棲生活をしていたガーランドを組ませるには、やはり

CROSSINGS(GALAXY GXY-5106) RED GARLAND(p) RON CARTER(b) PHILLY JOE JONES(ds) 1977 年 12 月録音 SIDE 1 1)SOLAR 2)RAILROAD CROSSING 3)NEVER LET ME GO 4)OLEO SIDE 2 1)BUT NOT FOR ME 2)LOVE FOR SALE

当時のナンバーワンベーシストといえば、ロン・カー トロの後にいきなりロン ターだったのでしょう。事実ロンはこの後ギャラクシー のソロが出てきます。誰 でもレコードを作っていたはずですし、ドラムスにフィ のリーダー・アルバムだ リー・ジョー・ジョーンズを配したプロデューサーのオ か分からなくなります。 リン・キープニュースの、久しぶりのレコーディングへ ポール・チェンバースが 1969 年に亡くなっていたために の配慮も分かります。でも、ここではロン・カーターで 適当なベーシストがいなかったのでしょうが、サム・ジ はありませんでした。弾きすぎです。確かにこの時点で ョーンズか、大物すぎますがレイ・ブラウンはだめだっ のロンは第 1 級のバリバリでしょうが、ガーランドには たのでしょうか。私がオリン・キープニュースの立場だ 強すぎるベースシストです。何年も一線から引いていた ったら、もしかしてヨーロッパのニールス・ヘニング・ ガーランドに合うわけがないのです。またロンのソロ・ オルステッド・ペデルセンを連れてきたかもしれません。 パートが多すぎます。サイド1の2曲目はロンのオリジ 要はロン・カーター以外なら誰でもよかったです。ロン ナルだから仕方ないとしても、サイド2の1曲目はイン が悪いといっているのではありませんが。

RED ALERT(GALAXY GXY-5109) RED GARLAND(p) NAT ADDERLEY(COR) HAROLD LAND,IRA SULIVAN(ts) RON CARTER(b) FRANK BUTLER(ds) 1977 年 12 月 2 日録音 SIDE 1 1)RED ALERT 2)THEME FOR A TARZAN MOVIE 3)THE WHIFFENPOOF SONG SIDE 2 1)SWEET GEORGIA BROWN 2)STELLA BY STARLIGHT 3)IT'S IMPOSSIBLE これもキープニュースの失敗でした。それまで約10 いていくのがやっととい 年にわたって小さなクラブでピアノ・トリオ中心に演奏 う状態です。また新しい していたガーランドに、こんなバリバリのメンバーを集 アイディアを出したかっ めてハードバップをやれという方が無茶でしょう。少な たのでしょうが、どうも未消化に終わっている感じがし くても、やはりベースのロン・カーターだけはやめてほ ています。オリンの気持ちは痛いほど分かります。私が しかったです。キープニュースとしては、ガーランド復 もし仮にオリンの立場だったら、それこそソニー・ロリ 帰について回りを信頼できるメンバーで固めたかったの ンズでも引っ張り出してきてガーランドと共演さていた でしょうが、ホーン奏者はひとりくらいでよかったと思 のではないかと思います。 います。ホーン奏者にバリバリ吹かれてガーランドは付

私は 70 年代にジャズを覚えて、それこそレッド・ガーランドの 50 年代の名盤から 70 年代初頭のMPS盤、そしてこ の GALAXY 盤をほぼ同時に聴いてきました。その時に違和感を覚えたのは間違いありません。何というかガーランドが「借 りてきた猫」のように覇気がなく、演奏も溌剌としたところがないのです。 私がガーランドの演奏に期待していたノリノリのフレーズにわくわくする期待感や、次にどんな素晴らしいメロディが 出てくるかを待つ、心地よい緊張感が失われています。 この時まだガーランドは 55 歳になるかならないかでした。若い頃の麻薬とか飲酒の影響で本当に内臓でも悪かったの かもしれません。 繰り返しますがキープニュースとしては、友情とか好意そしてレコードが多少売れてくれたらいいという、ほんの少し のスケベ心でガーランドを呼んだのでしょう。それでこそ、かつてリバーサイド・レーベルで辣腕をふるい、ガーランド のレコードを 4 枚も作ったプロデューサーでしょう。でもわざわざナット・アダレイにミュート・トランペットを吹かせ て、かつてのマイルス・ディビス・クインテットを彷彿させる演奏をしなくてもよかったと思います。

19 RECORD CONCERT(例会)REPORT [2008年10月17日「映画館」]

レーベル特集第 222弾:「IMPULSE」

1.ON IMPULSE/SONNY ROLLINS(A-91 MONO) 2.THE LAST RECORDING/ALBERT AYLER(AS-9208 STEREO) 3.JOHN COLTRANE FEATURING PHAROAH SANDERS LIVE IN SEATTLE(AS-9202-2) 4.INTO THE HOT/THE GIL EVANS ORCHESTRA(SH-3009-10) 5.DUKE ELLINGTON & JOHN COLTRANE(A-30) 6.HEAVY SOUND/ELVIN JONES & RICHARD DAVIS(A-9160) 7.TODAY & TOMORROW/McCOY TYNER 8.ALFIE/SONNY ROLLINS(A-9111) 9.ARMAD JAMAL AT THE TOP(A-9176) 10.THE GREAT/LOREZ ALEXANDRIA(A-62) 11.DON'T TRY THIS AT HOME/MICHEL BREAKER 12.DESAFINADO/COLEMAN HAWKINS 13.YOU BETTER KNOW IT!/(A-78) 14.THE BLUES AND THE ABSTRACT TRUST/OLIVER NELSON 15.2 3 4/(A-20) 16.INCEPTION/ McCOY TYNER (A-18) 17.THE ARTISTRY OF HREDDIE HUBBARD(A-27)

今回のレーベル特集は、「IMPULSE 」。ジョン・コルトレーンだけでなく様々なジャズメンの演奏を楽しみました。この レーベルも奥行きが深いレーベルであると認識しました。

アナログにこだわる、銀座の老舗 「JAZZ COUNTRY 」

東京都中央区銀座6-2-6 TEL.03-3572-7684 営業時間:コーヒータイム PM0:00~5:00(土曜日のみPM2:00~) バータイム PM7:00~11:00 休み:日曜祝日(バータイムは土曜日も) 交通:営団銀座線、丸の内線、日比谷線「銀座」駅、JR「有楽町」駅他 メニュー:コーヒータイム 珈琲・紅茶 500 円、ビール 700 円 バータイム ボトル 8000 円(チャージ 3000 円)

20

[2008年10月25日「ジャズカントリー」]

担当 JOANIEJOANIE----S.TS.TS.TS.T SONNY CRISSCRISS、、、、そのその「「「光「光光光とととと影影影影」」」」をををを探探探探るるるる ソニー・クリス、、、彼、彼彼彼のののの姿姿姿姿がががが忽然忽然ととと私と私私私たちのたちの前前前から前から消消消えて消えて早早早 三十年以上ががが経が経経経ちましたちました。。。数年前。数年前ににに訪に訪訪訪れたれた札幌ののの老舗の老舗ジャズ 喫茶「「「ロンド「ロンド」」」の」ののの壁壁壁壁にはには、、、あの、あの皆皆皆が皆ががが待待待待ちちちち焦焦焦焦がれていたがれていた「「「’’’777777 年年年・年・・・幻幻幻幻のののの日本公演日本公演」」」を」ををを告告告告げるポスターがげるポスターが、、、決、決決決してして現現現れない現れない主主主 人公ののの到来の到来をずっと待待待ち待ちちち続続続続けているがけているが如如如く如くくく、、、、未未未未だだだだ貼貼貼貼られていられてい ました。。。 初初初めて初めて彼彼彼のアルトを彼のアルトを聞聞聞いたのは聞いたのは、、、例、例例例によってによって大学時代にい つも屯屯屯していた屯していた札幌「「「NIKA「NIKANIKA」」」」にてにて。。。山本。山本マスターがご自慢ののの JBL OLYMPUSOLYMPUS((((DRIVERDRIVER LELE----85858585////HORNHORN HLHL----91919191))))からから放放放ったの放ったの ははは、は、、、MUSEMUSE ののの新譜 の新譜「「「CRISSCRAFT「CRISSCRAFTCRISSCRAFT」。」。如何にもマイナーレーベ ルらしく金金金をかけていない金をかけていない黄色いジャケットのこのレコー ドドド、ド、、、一曲目一曲目ののの「の「「「THETHE ISLE OF CELIACELIA」」」」はははは安物安物アメリカンポルノのバックで流流流れる流れる様様様なブルージーなアルトで様なブルージーなアルトで始始始 まります。。。その。その切切切なく切なく咽咽咽ぶ咽ぶぶぶ音色音色ににに魅に魅魅魅せられせられ、、、クリス、クリス蒐集ののの虫の虫虫虫がががが蠢蠢蠢蠢くもくも、、、当時、当時ののの国内盤市場の国内盤市場には IMPERIAL 盤盤盤 ははは元は元元元よりより PRESTIGE 盤盤盤すら 盤すら影影影も影ももも形形形形もももも無無無無くくくく、、、、そのその後後後に後ににに輸入盤輸入盤ののの新譜の新譜でポツポツ入荷した MUSE 盤盤盤や 盤やややXANADU 盤盤盤 ををを聴を聴聴聴いていて我慢をしていました。。。しかし。しかし、、、今、今今今となってとなって考考考えると考えると一番憂いを含含含んだ含んだ、、、クリスの、クリスの絶頂期から私私私は私ははは入入入入 門門門した門した訳訳訳ですから訳ですから、、、ラッキーだったとも、ラッキーだったとも云云云えます云えます。。。 クリスの活動ははは’’’404040年代 のビパップ時代から、、、サイドメンとしての、サイドメンとしての録音もももCLEF 等等等に 等ににに結構残結構残されています。。。 所謂パーカー派云々々々の々ののの研究研究はパーカーを余余余り余りりり真面目真面目ににに聞に聞聞聞いたことのないいたことのない私私私には私には語語語るすべもありません語るすべもありません。。。しか。しか しししPRESTIGPRESTIGE/UP,UP E/UP,UP AND AWAY ののの日本 の日本ビクター盤解説ににに、に、、、かのかの村上春樹氏がこの件件件について件について的的的を的ををを得得得得たたたた記述記述ががが ありますのでご覧覧覧ください覧ください。。。彼。彼彼彼のミュージシャンとしてののミュージシャンとしての人生ははは金銭面は金銭面・メンタル面面面を面ををを含含含含めめめめ決決決決してして幸幸幸せであ幸せであ ったとは云云云えないようです云えないようです。。。一般的。一般的ななな人気な人気ががが出が出出出ててててWith Strings まで 吹吹吹き吹ききき込込込込んだんだ’’’707070年代 ががが実が実実実はははは一番輝一番輝いていた のかも知知知れません知れません。。。そんな。そんな状況から彼彼彼の彼ののの「「「「早早早早すぎるすぎる死死死」死」」」についてはについては色色色々色々々々なななな憶測憶測もあるようです。。。また。また口口口の口ののの悪悪悪悪 いいい輩い輩輩輩からはからは「「「能天気「能天気ななな音な音音音をををを吹吹吹吹きききき散散散散らすだけのらすだけの単調なチャルメラ・アルト」」」との」との陰口ももも叩も叩叩叩かれますかれます。。。しかし。しかし、、、 どう言言言う言ううう訳訳訳訳かかかか私私私私のののの周周周周りにはりには、、、決、決決決してジャズのしてジャズの巨人ではない彼彼彼をこよなく彼をこよなく愛愛愛でるファンが愛でるファンが沢山いるんですよ ねねね!ね!!! 本日はそんなソニー・クリスの「「「リーダー「リーダー作品」」」を」ををを中心中心にプログラムを組組組んでみました組んでみました。。。 ‘‘‘505050年代 ののの IMPERIALIMPERIAL3333部作部作・・・ PEACOCK 盤盤盤・ 盤・・・’’’606060年代渡仏時代 のののBRUNSWICK 盤盤盤 (((シングル (シングル盤盤盤を盤ををを含含含含むむむむ))))・・・・米国米国ににに戻に戻戻戻ってって ポップ路線にも近寄った PRESTIGE ののの7 の777枚枚枚枚・・・・’’’707070年代枯 れた魅力のののMUSE/XANADU ののの傑作 の傑作・そして最後ののの IMPULSE 録音 ををを通を通通通じてクリスじてクリス節節節の節ののの「「「「光光光光とととと影影影影」」」」をおをお楽楽楽しみください楽しみください。。。 以下のレコードリストは常常常に常ににに進化進化をををしをししし続続続続けけけけ、、、、素晴素晴らしいデーターを満載している Jazz Discography Project(http://www.jazzdisco.org/)Project(http://www.jazzdisco.org/)のののの労作労作ををを加工を加工しました。。。

William (Sonny) Criss

- His Alto- Anthology -

(1927.10.23 - 1977.11.19)

21

1. The Wailing (Norgran-MGN 1078)

Harry "Sweets" Edison (tp) (as) Jimmie Rowles (p) John Simmons (b) Buddy Rich (d) Los Angeles, CA, August 26, 1955

B-2 Broadway (Wood-McRay-Bird )11:54

本日最初の演奏は、バディ・リッチ スモールコンボのサイドメンとしての録音。 西海岸の御大リッチとは多くの共演がありますが、クリス27歳さすがに堂々と吹きまくっています。

2. Jazz - U.S.A. (Imperial-LP9006)

Sonny Criss (as) Kenny Drew (p) (g) Bill Woodson (b) Chuck Thompson (d) Los Angeles, CA, January 26,1956

A-1 Willow Weep For Me (A.Ronell) 3:50

B-3 Criss - Cross (B.Kessel) 5:00

クリスのワンホーンによる実質的な初リーダーアルバムです。地味なマイナーレーベル・インペリアル には3枚のリーダー作品とベスト盤 1 枚([Criss Cross 十文字] LP-9205 )を残しています。 西海岸の蒼々たる若手との共演でクリスのアルトは好調、ケッセルのギターもいい味を出しています。 (そういえば以後もサイドメンにギターが入った録音が結構あります)

3. Go Man! (Imperial-LP9020)

Sonny Criss (as) (p) (b) Lawrence Marable (d) Master Recorders, Los Angeles, CA, July 10, July 31, 1956

A-2 Memories Of You (Razof & Blake )3:50

A-4 How Deep Is The Ocean? (Berlin) 3:00

B-2 Blue Prelude (Jenkins-Bishop) 2:30

人気のゴー マン!です。 イタリア VESPA のスクーターに乗った男女のお洒落なジャケットも素敵 です。一時再発盤の写真からスクーターのスタンドが消えて話題になりました。クリスは吹きまくってい て、いい意味でも悪い意味でも一般的な「クリス節」の印象を決定付けたレコード。(サイドのローレン ス・マラブル、ソニー・クラークといえばあの Jazz-West 盤「テナーマン」でも二人は共演しています ね)

4. Sonny Criss Plays Cole Porter (Imperial-LP9024)

Sonny Criss (as) Larry Bunker (vib) Sonny Clark (p) Buddy Clark (b) Lawrence Marable (d) Radio Recorders, Hollywood, CA, August 26, October 3,1956

22

A-1 I Love You (C.Porter) 4:05

B-3 Just One Of Those Things (C.Porter) 2:47

B-4 What Is This Thing Called Love? (C.Porter) 5:40

‘56年の短期間に吹き込んだインペリアル三部作のラスト、コール・ポーター全集です。ソニー・ク ラークのピアノも快調です。

5. At The Crossroad (Peacock-PLP91)

Ole Hansen (tb) Sonny Criss (as) Wynton Kelly (p) (b) Walter Perkins (d) Chicago, IL, March, 1959

A-3 I Got It Bad (Webster-Ellington) 3:45

B-1 Sylvia ( Criss ) 7:20

インペリアルへのリーダー録音から 3 年経過、バディ・リッチバンドのメンバーとしてシカゴを訪れた クリスが、地元マイナーレーベル ピーコックへ久々のリーダー作を吹き込みます。契約の関係でジョー・ スコットの変名で参加したウイントン・ケリーとの共演が聴きものです。初期のクリス節もこのレコード あたりがひとつの絶頂期でしょうか?(ビニールの材質が悪く、若干バックノイズが入ります)

6. Blues Pour Flirter (Polydor [F] 27 004 , 7-Inch 45EP)

Sonny Criss (as) Henri Renaud (p) Michel Gaudry (b) Philippe Combelle (d) Paris, France, October 10, 1962

A-1 Mighty Low (M.Buckner) 3:46

A-2 Don’t Blame Me (J.McHugh) 2:45

’60 年代初頭、クリスは決して離れようとしなかったアメリカ西海岸から、フランスに渡り、短い期間で すが、心安らかな日々を過したようです。アルトの音色も少し力が抜けた感じがします。フランス・ブラ ンズウイック(ポリドール)のセッションは、’80 年代末フレッシュサウンドより2枚組 LP-BOX SET 「SONNY CRISS IN PARIS 」で全容が復刻されました。元々は LP 1枚と EP 2枚に分かれて発売され、同 じタイトルのインペリアル音源 EP が別に2枚発売されて、なかなかコレクター泣かせのセッションでした。 (この EP のジャケは流石いいセンスをしています。フレッシュ復刻でも LP サイズに引き伸ばして使われ ました。また、詳細データのコピーを添付しています)

7. Mr. Blues Pour Flirter (Brunswick [F] 87 519)

Sonny Criss (as) (p, org) Rene Thomas (g) (b) Philippe Combelle (d) Paris, France, April 22, 23,25,1963

23

A-5 Once In A While (M.Edward) 3:36

B-2 Day Dream (D.Ellington-B.Strayhorn) 4:35

B-4 God Bless The Child (B.Holiday-Herzog) 6:00

フレンチ・ジャズの若手との共演アルバム。長らくなかなか聴く機会がないレコードでしたが、フレッ シュの LP-BOX の他、最近廉価な CD 再発シリーズ「JAZZ IN PARIS 」の1枚として容易に手に入る様 になりました。アルバニタのオルガンも珍しいですね。

8. Blues Pour Flirter (Polydor [F]27 049, 7-inch 45 EP)

same personnel above Paris, France, April 22, 1963

A-1 Blues Pour Flirter,No.2 (S.Criss) 5:02

この表題に何度泣かされたことか! EP は同じ様なタイトルにも関わらず、ジャケットも中身も違う4 種類が出ています。今回のレジメ作成作業の中で、やっとその違いをはっきりすることが出来ました。Blues Pour Flirter は元々 Imperial 音源・ West Coast Blues の改題です。 この No.2 は全く別の曲です。

9. The Sonny Criss Memorial Album (Xanadu 200)

Sonny Criss (as ・ss*) (p) Clarence Johnson (b) Frank Butler (d) Los Angeles, CA, June 15, 1965

B-4 What's New? (Haggart- Bueke) 5:16

B-5 Ursula* (Criss) 2:44

クリスの死後から 7 年たった‘84 年に発掘された音源。B面の5曲はクリスがフランスよりアメリカに 舞戻った’65 年、当時プレスティジのプロデューサーだったドン・シュリッテンへの売り込みに持ち込んだ デモテープです。爾後20年近くたってシュリッテンが自身のレーベル・ザナドウから発表しました。クリ スがシュリッテンに認められ、プレスティジに数多くの吹き込みを開始するきっかけとなった記念すべき 録音です。’70 年代以降も活動を共にしたハンプトン・ホースも快調、私の隠れたる愛聴盤です。クリスは 珍しくソプラノサックスにも挑戦しています。

10. This Is Criss! (Prestige-PR7511)

Sonny Criss (as) Walter Davis Jr. (p) Paul Chambers (b) (d) Rudy , Englewood Cliffs, NJ, October 21, 1966

B-4 Skylark (H.Carmichel ) 5:04

プレスティジの第1作、この後都合アルバム7枚・ベスト盤1枚(The Best of SonnyCriss/Hits of the ‘60’s PR7742 )を発表しました。ディスコグラフィーで確認する限り、かのヴァン・ゲルダー・スタジ オに初めてクリスが足を踏み入れた録音です。

24

11. Portrait of Sonny Criss (Prestige-PR7526)

Sonny Criss (as) Walter Davis Jr. (p) Paul Chambers (b) Alan Dawson (d) Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, March 23, 1967

B-3 Smile (C.Chaplin) 4:40

ナット・キング・コールの十八番を奏でるクリスの音色に聞き惚れます。名手ポール・チェンバース 最 晩年の録音でもあります。

12. Up,Up And Away (Prestige-PR7530)

Sonny Criss (as) (p) (g) Bob Cranshaw (b) Lenny McBrowne (d) NYC, August 18, 1967

A-1 Up, Up And Away (J.Webb ) 5:32

「輝く星座」が懐かしいソウルコーラスグループ、フィフス・ディメンションのシングル盤が大ヒット したジム・ウエッブ作の名曲。Trans World 航空(TWA) の CM ソングとして流れた’67 年にクリスは早速 取り上げています。タル・ファーローのギターの爪弾きと、シダー・ウオルトンのピアノのユニゾンから 始まるイントロが印象的な演奏です。 このアルバム以降、ややポップな売れ線狙いの選曲が行われ、こ れが当時の真面目なファンがクリスを軽く見ることになった一つの原因かも知れません。しかしアルバム 全体を見渡すと、どれも真っ当なジャズ録音、私は大好きな LP です。

13. The Beat Goes On! (Prestige-PR7558)

Sonny Criss (as) Cedar Walton (p) Bob Cranshaw (b) Alan Dawson (d) NYC, January 12, 1968

A-3 Somewhere My Love (Lara's Theme) (Jarre ) 4:54

映画「ドクトル・ジバゴ」のテーマソングとして大ヒットした曲です。前作同様、当時の音楽環境に合 致しようとしている企画でしょうか。

14. Sonny’s Dream (Prestige-PR 7576)

Conte Candoli (tp) Dick Nash (tb) (tu) David Sherr (as) Sonny Criss (as, ss) (ts) (bars) Tommy Flanagan (p) Al McKibbon (b) Everett Brown Jr. (d) (arr, comp) Los Angeles, CA, May 8, 1968

B-3 Sandy And Niles (H.Tapscott) 5:24

プレステイジの5作目は一転して大編成の Tentet 録音です 副題はマイルスに対抗したのか「Birth Of The New Cool 」。ジャズメンは大編成の主役ソリストとして With Strings 物を切望する傾向があると何 処かで読んだ気がします。弦こそ入っていませんが、こんな企画が実現するのですから、クリスの過去の 4枚はそこそこのセールスを上げていたのでしょうか?

25

1115...Rockin’ In Rhythm (Prestige-PR7610)

Sonny Criss (as) Eddie Green (p) Bob Cranshaw (b) Alan Dawson (d) NYC, July 2, 1968

B-3 The Masquerade Is Over (Vrubel/Magidson-DeSylvia ) 5:47

このアルバムで取り上げているのはビートルズの「エリノア・リグビー」。然し、さすがに緩い演奏でこ れだけは戴けません。B 面最後のバラードをお聴きください。

16. I’ll Catch The Sun! (Prestige-PR 7628)

Sonny Criss (as) Hampton Hawes (p) (b) Shelly Manne (d) Los Angeles, CA, January 20, 1969

B-3 I'll Catch The Sun (McKuen) 5:34

プレステイジ7作目、最後の録音です。タイトルを直訳すると「太陽を我が手に!」でしょうか。 クリ スの当時の心境を代弁しているのかも知れません。旧知の西海岸のメンバーとのリラックスした演奏です。 レーベル自身のいい加減さが原因なのか、私の手元のLP盤のセンターラベルの題目は「California Screamin’ 」になっています。 この後、6年近くクリスはリーダー作の発表から遠ざかります。

21. Crisscraft (Muse-MR5068)

Sonny Criss (as) (p) Ray Crawford (g) (b) (d) Hollywood, CA, February 24, 1975

A-1 The Isle Of Celia (H.Tapscot) 10:29

本日の最後は何と言ってもこの曲と、初めから決めていました。「クリス節」の最高傑作だと思っていま す。’60 年代までの音色とは大きく変わり、真に唯一無比の境地に到達しています。サイドメンのソロ・サ ポートもクリスに触発され秀逸です。

17. Saturday Morning (Xanadu-105)

Sonny Criss (as) (p) Leroy Vinnegar (b) Lenny McBrowne (d) Los Angeles, CA, March 1, 1975

A-1 Angel Eyes (M.Dennis ) 5:29

旧友、そしてクリス最大の理解者、ドン・シュリッテンが立ち上げたザナドウ ・レーベルへの吹き込み。 「Crisscraft 」の5日後の録音です。このレコードのお陰で逆にザナドウの良いレーベルイメージを作り上 げたとも云えます。当時ジャズ喫茶の人気盤でした。

18. Out Of Nowhere (Muse-MR5089)

Sonny Criss (as) Dolo Coker (p) Larry Gales (b) Jimmie Smith (d) Los Angeles, CA, October 20, 1975

A-1 All The Things You Are (J.Kern) 4:00

26

立て続けに傑作を録音した’75 年の三作目です。「人跡未踏の地からの脱出」とのタイトルは、吹っ切れ たクリスの心境を具現化したような題目です。

19. Warm And Sonny (Impulse-ASD 9312)

Bud Brisbois, Charles Findley, Paul Hubinon (tp, flh) George Bohanon (tb) Lew McCreary (btb) Vince DeRosa (frh) Sonny Criss (as) Buddy Collette (ts, fl) Bill Green (bass sax, fl) Winterton Garvey, Harris Goldman, Janice Gower, William Henderson, Kares Jones, Carl LaMagna, Marcia Van Dyke, Kenneith Yerke (vln) David Campbell, Rollice Dale, Pamela Goldsmith, Paul Polivnick (vla) Ronald Cooper, Dennis Karmazyn, David Speltz (vlc) Richard Feves, Susan Ranney (contrabass) (harp) Clarence McDonald (key -1/3) Sonny Burke (key -4/7) Melvin "Wah Wah Watson" Ragin (g) Lee Ritenour (g -1/3) Dennis Budimir (g -4/7) Scott Edwards (b -1/3) (b -4/7) James Gadson (d) Eddie "Bongo" Brown (per) Los Angeles, CA, circa 1975

B-2 Memories (J.Bowen) 6:02

凄いメンバーを揃えた大作ですが、当時全く話題にすら上がらず、忽ちカット盤が投売りされていたの を記憶しています。クリスは必死に吹いているようですが…… 私は個人的にはこのレコードと次作の商業的 失敗がクリスの命を縮めたような気もしています。 (往年のインパルスとは同じレーベルとは思えない程の安直なジャケットです) 休憩時間にお聞かせします。

20.The Joy of Sax (Impulse-AS 9326)

Blue Mitchell (tp) George Bohanon (tb) Sonny Criss (as) Bill King, Ernie Watts (reeds) Sonny Burke (p) Patrice Rushen (el-p) Mitch Holder, Lee Ritenour (g) Henry Davis, Chuck Domanico, Scott Edwards (b) Eddie "Bongo" Brown, Esmond Edwards (per) unidentified horns and strings Los Angeles, CA, circa 1977

B-1 Stolen Moments (O.Nelson ) 6:28

クリスのラストアルバム。前作と同じ様なクロスオーバー仕立てになっています。ターンテーブルに載 る機会は殆ど無いのが正直なところです。クリスは何を考えこのレコードを吹き込んだのでしょうか。運 命の日は間も無く訪れます。

27

[2008年11月14日「映画館」] レーベル特集第 333弾:「ATLANTIC」

1.THE CLOWN/CHARLES MINGUS(ATL-1260) 2.ORNETTE!/ORNETTE COLEMAN(1378) 3.TRISTANO/LENNIE TRISTANO(1224) 4.THE COLTRNAEN LEGACY/JOHN COLTRANE(SD-1553) 5.ANN,MAN!/ANN RICHARDS(WPCR-25022《ATCO 33-136》) 6.THE GIMMY GIUFFRE 3/GIMMY GIUFFRE(AMJY-1282) 7.LIVE AT MONTREAL JAZZ FESTIVAL 1985/AHMAD JAMAL(81699) 8.WARNE MARSH/WARNE MARSH(1291) 9.WEDNEDAY CHILD/PATTY McGOVERN(1245) 10.SVENGALI/GIL EVANS(1643) 11.BACK LASH/FREDDIE HUBBARD(1477) 12.TONY FRUSCELLA/TONY FRUSCELLA(1220) 13.STRAIGHT AHEAD/DAVE FATHEAD NEWMAN(AMJY 1366) 14.EASY TO LOVE/ROLAND HANNA(ATCO) 15.CUMBIA & JAZZ FUSION/ CHARLES MINGUS(8801) 今回のレーベル特集はご存知「ATRANTIC 」でした。コルトレーンもあれば チャールス・ミンガスもたくさんあるということで、非常に懸念していたの ですが、ご覧のように多くのアルバムが集まりました。このレーベルもバラ エティに富んでいますし、とてもとても一日(一晩)では終わり切りません。 もう一度ぜひ特集を組みたいと思いました。

28

[2008年11月22日「ジャズカントリー」]

1日JAZZ喫茶マスター

今宵はマイナーモードで SwingSwing!!!!

担当 T.S. (1)Blues Iside Out / Fritz Pauer(p) 1978 Jimmy Woode (b) Tony Insalaco(ds) B1 Blues Iside Out B2 Terra Samba

(2)Seven Brothers / Arne Astrup(ts) 1989&1990 Paul Hindberg(cl) Louis Hjulmand(vib) Mogens Peterson(p) Fritz von Bulow(gt) Hans Sorensen(ds) Jorgen Johnbeck(b) A5 Give Me A Song To Remember

(3)Round About A Bass / Pierre Michelot(b) 1963 Roger Guerin(tp) Georges Grenu(ss) Pierre Gosez(ts) Maurice Vander(p) Christian Garros(ds) A2 Gavotte A3 Akkilino A4 Elephant Green

(4)Gride On / Bill Jennings(gt) 1960 Jack McDuff(org,p) Al Jennings(gt,vib) Wendell Marshall(b) Alvin Johnson(ds) A1 Gride On A3 Billin' And Bluin'

(5)The Last Session / Charlie Shavers(tp) 1970 Budd Johnson(ts,ss) Andre Persirny(p) Roland Lobligeois(b) Oliver Jackson(ds) B3 C.O.B.A.R.Blues

(6)the right side of Lefty Edwards(ts) Joe Messina(gt) Vance Matlock(b) Johnny Griffith(p) Ben Apling(ds) B2 Up "N" Adam B4 Griding Home

1

(7)Blue Sunday / Betty Bennett -Maria Cole(vcl) 1953,54 A3 There Must Be A Way B1 Time After Time

(8)Passion / Herb Jeffries(vcl) B4 Time On My Hands B5 As Time Goes By

(9)Vince Guaraldi(p)and the (tp) All Stars Buddy Collete(ts) Leroy Vinnegar(b) Stan Levey(ds) B2 Macedonia B3 Little David

(10)Swingin' in Paris / Gerald Dave Pochonet(ds) 1962 Sonny Grey(tp) Geo Daly(vib) Gerald Badini(ts) Dominique Chansonts(ts),Charlie Brareau(b) Henri Renaud(p) A1 Solute To Ray Bryant A2 Viva Fega

(11)Out Front / Clifford Scott (ts,as) 1963 Les McCann(p) Joe Pass(gt) Herbie Lewis(b) Paul Humphrey (ds) A1 Samba de Bamba B3 Out Front

(12)Battle of the Organs / Doc Bagby--Luis Rivera(org) Unknown Tenor, Rhythm Section B1 Tangerin B2 Fat Stocking

(13)Ensadinado / Fats Sadi(vib) 1966 Jimmy Woode(b) Francy Boland(p) Kenny Clarke(ds) A1 Night Lady B4 The Same

(14)A Swinging Affair / Charly Antolini(ds) 1989 Danny Moss(ts) Brian Lemon(p) Len Skeat(b) A2 Easy Does It A3 Indian Summer

(15)Benuine Duo / Dudley Moore (p) 1966 Pete McGurk (b) Chris Karan(ds) A3 Field Day For Shirley

2

A4 Straight Life

(16)The Bill le Sage--Ronnie Ross Quartet 1964 Ronnie Ross(bs) Bill le Sage (p,vib) Spike Heatley(b) Alan Ganley(ds) B2 The Cheaters B3 C Jam Blues B4 New Orleans

(17)The Bobby Donaldoson Group Bobby Donaldoson(ds) Irv Stokes(tp) Seldan Powell(ts) John Abney(p) Lou Gaskin(b) Fred Henry(bs) A. Williams(cl) E.Crumbley(tb) A1 Bash Dance B2 Blues For B3 Whiffenpoof Song

3

〔2008年12月19日「映画館」〕 レーベル特集第 444弾「EPIC (((&(&&& CBS)))」)」」」 1.WARM WOODS/PHILL WOODS 2.TUBBY THE TENOR/TUBBY HAYES 3.THE WARM SOUND/JOHNNY COLES 4.THE MIDNIGHT ROLL/HERB ELLIS 5.YEAH!/CHARLIE ROUSE 6.EASTWARD/GARY PEACOCK 7.JAZZ MESSENGERS 8.2 FEET IN THE GUTTER/DAVE BAILEY 9.WE PAID OUR DUES/CHARLIE ROUSE & SELDON POWELL 10.LIVE AT THE TRIDENT/DENNY ZEITLIN

レーベル特集も 4 回目を迎えて、レコードを持ち寄る会員の皆さんもだいぶ慣れてきたようです。なるべ く重複するのを避けるために事前にホームページの掲示板等で持参するレコードの情報交換を行うようにな りました。今回の「EPIC(CBS を含む)」も比較的安全な?レーベルではありました。写真で皆さんが掲げて いるLPレコードは、一見オリジナルの希少盤かと思われそうですが、国内盤が多いです。CDでも構いま せん。

〔2008年12月27日「ジャズカントリー」〕 今年の物故者を偲んで 1.BODY & SOUL/JOHNNY GRIFFIN 2.FEATURING ZOOT SIMS/DAVE MCKENNA 3.EXPOSURE/越智順子 4.WITH THE PRESTIGE JAZZ QUARTET/TEO MACERO 5.INVITATION/JACK WILSON 6.SO SORRY PLEASE/RONNIE MATHEWS 7.LET'S STAY TOGETHER/JIMMY MCGRIFF 8.BLUES/阿部克自 9.INVENTED IMAGE/CHRIS ANDERSON 10.RETURN OF GRIFFIN/JOHNNY GRIFFIN 11.THE KERRY DANCERS/JOHNNY GRIFFIN 32

12.GRIFFIN MEETS /JOHNNY GRIFFIN

毎年恒例の「今年の物故者を偲んで特集」ですが、今年(2008 年)はとにかくジョニー・グリフィンと越智 順子さんの印象が強かったです。しかしこの二人の他にも、例えばカメラマンの阿部克自さんを偲んでとか、 今回は多くの驚きがありました。

〔2009年1月16日「映画館」〕 レーベル特集第 555弾「PACIFIC」 1. THE GERRY MULLIGAN 2. SOLO FLIGHT/JAZZ WEST COST 505 3. LIKE BLUES/DON RANDI 4. THE REMARKABLE/CARMELL JONES 5. IN HIFI/CHICO HAMILTON 6. PICTURE OF HEATH/ & ART PEPPER 7. 2' EAST 3' WEST(GRAND ENCOUNTER)/JOHN LEWIS 8. STRUCTUALLY SOUND/BOOKER ERVIN 9. ON STAGE/BILL PERKINS 10. CRITIC'S CHOIS/PEPPER ADAMS 11.DON ELLIS

新年早々の例会でしたが、お題は「PACIFIC」。アメリカ西海岸にあった有名なレコード会社です。 けっして危ない内容のレコードはなく、むしろどこまでも明るい?ジャズらしいジャズが多いレーベルでし た。新年だけでなく皆さんの明るい表情が物語っています。とは言え、やはりジャズなので、たまには眉間 にしわを作って苦虫を噛み潰した顔で聴くジャズも聴いてみたいとは思いますが・…。でも例会で聴くジャズ はハッピーでもいいですね。それにしても一番右のオッサンは本当にしまらない顔だなぁ。

33

KJFC例会等の予定

ジャズスポット「映画館」 電話03-3811-8932

2009年5月15日(金)午後7時~午後10時 特集:レーベル特集(8)サヴォイ&リージェント (ひとり2枚の持寄り) 2009年6月19日(金) 午後7時~午後10時 特集:未定 2009年7月17日(金)午後7時~午後10時 特集:未定

「JAZZ COUNTRY」電話03-3572-7684

2009年5月23日(土)午後7時~午後10時 特集:「エアチェック音源」 担当:M.S.

2009年6月27日(土)午後7時~午後10時 特集:ヴィブラフォン 担当:Y.T.

2009年7月25日 (土) 午後7時~午後10時 特集:2ベース 担当:フィリー 城 ※特集は変更になる場合があります。ホームページでご確認ください 。

編集後記 ・今年もまた春がめぐってきました。皆様、お花見はお済みでしょうか。中国の漢詩でしたか「年々歳々花は同じように 咲くけれど、年々歳々人は同じではないな」というのがあったと思います。ジャズも同じですね。去年聴いた時と今年聴いた時では 感覚がまるで違います。ジャズという音は変わっていないのでしょうが、聴くこちらが変わっているのですね。KJFCも新入会の方も 増えて、例会もますます熱気を帯びてきて、そうなるとジャズもまた違った聴こえ方がします。面白いものです。 ・ だんだん 50 号が迫ってきました。小さな会の小さな会報ですが [50] という数字は、何となく誇らしく思います。今から記念の企 画を練っていますが皆さんもどうかアイディアをお寄せください。よろしくお願いいたします。 (紅)

一緒にジャズを楽しみませんか? KJFCは心からジャズを楽しむ人の集まりです。オタクはいません。むしろみんなで好きなジャズを勉強して、分か ち合っています。みんなジャズについての素人です。一度例会に遊びにきてください。あなたの好きなジャズが、必ず見 つかるでしょう。 《KJFC の主な活動》 ・ 毎月 2 回のレコードコンサートを主体にした例会(会費月額 500 円) ・年1,2 回自主ライブの主催 ・ 会報 GROOVY の発行 ・ホームページの運営など です。

34