Stenosing Ureteritis in Two Boys with Henoch-Schonlein Purpura Nephritis: Case Reports
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Stenosing ureteritis in two boys with Henoch-Schonlein purpura nephritis: Case reports and review of the literature
Abstract 小児の Henoch-Schönlein 紫斑病(HSP) に合併する腎疾患は 16~50%と言われており、 頻度は少ないが stenosing ureteritis (SU)など重篤な合併症を引き起こす可能性があ る。今回我々は、SU が原因と思われる肉眼的血尿と腹痛を主訴に発症した HSP を2 例経験したので報告する。2例共に男児(6,4 歳)で、症状は凝血塊を伴う肉眼的血尿 (非糸球体性)と腹痛で始まり、その後紫斑が出現し HSP と診断した。早期の ultrasound では水腎症、腎盂粘膜の肥厚や尿管拡張を認めたため、HSP の S U合併 と診断し、連日の ultrasound で水腎症、尿管狭窄の程度を評価しながら、 Predonisolone (PSL)のみで症状を改善することが出来た。 SU 診断は、HSPN 由来の血尿により SU 症状がマスクされ、診断が遅れてしまう可 能性がある。不可逆的な腎機能障害を起こす SU 診断を遅らせないために、血尿合併 の HSP は発症初期から繰り返し ultrasound をすることが重要である。また SU 症状は 非特異的であるが、過去の extensive review を調べることで、SU の臨床特徴、治療法、 予後などを検討した。
Introduction Literature review では、SU 症例の多くが尿管狭窄の進行により外科的治療が必要で あったとの報告が多く、ステロイド単独効果症例の報告は少ない。今回我々は、SU が 原因と思われる肉眼的血尿と腹痛を主訴に発症した HSP 2例に対して、PSL 治療の みで尿管狭窄、肉眼的血尿、腹痛を改善できたためここに報告する。
Case 1 3 日前から嘔吐、腹痛、肉眼的血尿が続き近医で胃腸炎と診断されたていた6歳男児 が入院となった。既往として4歳時 UTI、VUR 両側Ⅲ度、5 歳時 VUR 不変のため両側 VUR 防止術(Cohen 術)を施行し逆流は消失した。その後両側水腎症1度は残存して いた。 入院時は体温、血圧正常であり、身体所見は 囲の圧痛を認める以外、紫斑、 関節痛など認めなかった。採血結果は以下;血算:WBC19570/ul、一般生化学:BUN 11.9mg/dl、Cr 0.39mg/dl、CRP 7.6、補体正常(C3,C4)、抗核抗体陰性、IgA 値正常、 尿所見;尿蛋白 300mg/dl, 尿沈渣:WBC281/ul、RBC4865/ul(非糸球体性)、尿生化 学(Ca/Cr0.1: normal 0.31 以下、β2MG 301mg/l)、血液培養・尿培養からは菌は生 育せず。血尿の原因として尿路結石も積極的に疑い、画像検査を行ったが結石を疑う 所見は認めなかった。入院時は尿路感染症、細菌性腸炎を疑いセフォチアム治療開 始した。入院 2 日目、尿沈査 RBC283.0/ul、WBC40.8/ul、末梢血 WBC13620/mm3、CRP6.3 と軽度改善したが、Dダイマー 10.2 と上昇、腹痛も持続して いた。入院 3 日目、左水腎症(SFU 2度)の悪化、両側尿管拡張と尿管壁肥厚の増悪 を認めた(図 1)。その後下肢に紫斑が出現し、経過から腹痛の原因は HSP に合併す る SU の可能性が高いと判断し、PSL1mg/kg/day で治療開始した。 ステロイド治療 2 日目、腹痛軽減し末梢血 WBC 7250/mm3、CRP2.3 と改善。DMSA 施行し、Uptake(Split) : L/10.4%(40%)R/15.7%(60%) (図 2) 、4 歳時の DMSA で認めか った uptake 低下を今回認めた(左腎の下極、右腎臓の上下に極集積低下あり)が、尿 培養陰性であり VUR によるものではなく、HSP にともなう uptake 低下と判断した。 ステロイド治療 4 日目、尿蛋白・潜血陰性、沈査 RBC0.8/ul、WBC1.3/ul、末梢血 WBC12490/mm3、CRP0.3 と改善を認めた。ステロイド治療8日目、左水腎症(SFU 1 度)改善、尿管拡張も消失、両側腎盂粘膜の肥厚も軽快していたため PSL0.8mg/day に減量した。ステロイド治療 12 日目、腹痛なく尿所見異常なし、末梢血 Cr0.47mg/dl と軽度高かったが、WBC12040/mm3、CRP0.03、BUN 18.2mg/dl、Dダイマー 0.6 と改 善認めたため退院となった。 退院後、腎盂粘膜の肥厚の改善と共にステロイドは漸減し、退院 1 ヶ月半後にはス テロイドを中止できた。ステロイド中止後も尿所見の異常、腎盂粘膜肥厚、尿管拡張を 認めることもなく経過良好であり、退院後施行した VCUG でも VUR は認めなかった。 しかし、退院 2 ヶ月後採血でも Cr0.48mg/dl(eGFR72%)、シスタチン C0.94(74.4%)と軽 度腎機能低下が残存していた。
Case 2 5日間続く嘔吐、腹痛、入院日から凝血塊を伴う肉眼的血尿を主訴に4歳男児が入院 した。既往歴はアレルギー性鼻炎、学校検尿(3 歳時)では尿異常は認めていない。 入院時は体温、血圧正常であり、身体所見は右側腹部に圧痛を認める以外、紫斑、 関節痛など認めなかった。検査所見は以下; 尿蛋白 300mg/dl, 尿沈渣 WBC139/ul、RBC31593/ul(isomorphic)、尿生化学(Ca/Cr 0.2: normal 0.41 以下、 β2MG 325mg/l)、血算:WBC 20310/ul、生化学:BUN 13.7 mg/dl、Cr 0.26 mg/dl、CRP 0.23、D ダイマ― 7.2、補体正常(C3,C4)、血液培養・尿培養からは菌は 生育せず。 入院して半日後から下肢紫斑が出現し HSP と診断した。入院時から血尿と蛋白尿に 加え、右腎盂粘膜肥厚、左水腎症(SFU 2 度)、左尿管拡張も認めたことから、HSP に SU 合併した症例と考えた(図 3)。 血尿があるため、尿路結石も疑い画像検査を行っ たが結石を疑う所見は認めなかった。腹痛に対しては PSL1mg/kg/day で治療を開始、 その後徐々に痛みは消失。PSL 開始 3 日目、尿沈渣: WBC4.3/ul、RBC126/ul と尿 所見は改善し、腎臓エコーでは左水腎は消失したが、両側腎盂粘膜肥厚と左尿管拡 張は残存していた。同日 DMSA にて Uptake(Split) ; L/R 20.4(48.9)%/21.3(51.1)%、左 腎下極よりの外側で集積低下を認め、HSP による集積低下と判断した。また左陰嚢浮 腫と精巣痛が出現し、精巣エコーでは左陰嚢壁の腫大、左精巣上体の腫大と血流増 加から精巣炎・陰嚢水腫と診断した。精巣痛と同時に腹痛も再増悪したため、ステロイ ド同量ではコントロール困難と判断、PSL1.5mg/kg/day まで増量して対応した。PSL 増 量後、腹痛、精巣痛は 3 日で消失、その後徐々に PSL を減量し、減量中は腹痛・精 巣痛は認めなかった。PSL 治療 15 日目、水腎症と尿管拡張消失、検査所見は以下; 尿沈渣 WBC4.9/ul、RBC2.7/ul、UP/Cr0.4、血算:WBC14000/ul、生化学:BUN 12.9mg/dl、Cr0.29 mg/dl、CRP0.03 以下、D ダイマー 0.7 と改善認めたため退院とな った。退院後も軽度蛋白尿(UP/Cr0.2~0.4)持続したが、urinary tract echo で異常 が無い事を2週間確認し PSL を中止、退院 2 ヶ月目には血尿、蛋白尿は消失し、腎機 能障害は認めていない。
Discussion SU は HSP の合併症であるが、これは尿管の血管炎の結果起こる。SU の組織学的 研究では、出血性、線維性、石灰化そして壊死性など様々な血管壁の変化が起こる。 過去 30 年の extensive review of the literature では、SU の症例報告は 14 有り、その うち半分以上の報告で、SU の一般的な presenting symptoms として Colicky flank pain and/or macrohematuria with blood clots があり、我々の経験した 2 症例と類似す る。 我々の経験した2症例とも男児であり、過去 review でも男性:女性 12:2 と男性が多 かった。当症例の症状は腹痛と肉眼的血尿から始まり、その数日以内に HSP 症状を 認めた。通常 HSPN 由来の血尿時期は、HSP 発症後平均 14 日目ぐらいと言われおり、 当症例の血尿は HSP 発症よりも前であり、典型的 HSPN の血尿時期とは異なり早い。 また血尿が非糸球体性であることからも、血尿の原因は HSPN ではなく SU による血尿 だと考えていた。そのため、入院時から尿路エコーを行い、水腎症、腎盂粘膜拡張、 尿管拡張などを早期から発見し、SU と診断することが出来た。Literature review では SUの発症時期は、入院時から 45 日以内(中央値:2 日目)と幅があるが、半数近くは 紫斑が出て HSP と診断される日か、もしくはその日から 2 週間以内であり、当症例と類 似する。 SU の合併頻度 0.1%は HSP の腎炎合併 16-50%と比べると明らかに低く、確率的 にも HSP に血尿を合併すると容易に腎炎由来の血尿と誤診しやすい。しかし、軽症例 は自然軽快例もあり、実際の SU 頻度は underestimate されている可能性がある。SU で尿路閉塞・壊死に気付かず尿管狭窄・閉塞が長期持続すると、外科的治療の時期 を逸して不可逆的な腎機能障害を残す可能性がある。 当症例の急性期 DMSA では 2 症例とも Focal に uptake が低下、血清 D ダイマー上昇、Case1 では血清 Cr 値が上 昇し AKI を併発、Case 2では精巣炎・陰のう水腫を合併していた。そのため両症例共 に HSP の活動性は高い、すなわち尿管の血管炎も通常より強い可能性がある。治療 としては尿管炎の炎症を抑える目的で、ステロイド治療を始め、完全尿路閉塞、尿管 壊死などの合併症を起こさず、PSL のみで尿管狭窄を改善できた。しかし、Case 1で は、初期の腎機能は正常で、PSL により尿管狭窄も改善したが、退院時に軽度腎機能 低下を残した。この急性期の両腎 DMSA uptake 低下を加味すると、腎機能低下は、 尿管炎による通過障害の長期持続の影響のみならず HSP 自体による腎機能障害の 影響の可能性もある。また当症例と同じく、Literature review の両側 SU 合併の 5 例 中全て水腎症残存か腎機能障害を残しており、両側 SU は特に長期的経過観察が必 要と考える。 Literature review では少数ではあるが当症例のように CS のみで SU が改善した報 告もあり、また自然軽快した症例も報告されている。しかし、一方では早期から胃腸や 尿路症状に対して CS 治療をおこなっていても、進行性に尿管狭窄を来たし外科的治 療を必要としている症例報告もあり、早期 CS 治療が SU を予防できるかは不明である。 Literature review では尿管狭窄が軽度から中等度で、UPJ より遠位端側であるとステ ロイドに対して反応性が良いとの報告が多い。しかし、最初 CS 治療で開始するも、そ の後外科的治療を要した症例は半数近くあり、継続的な echo 検査で症状の改善乏し ければ外科的治療への移行も時期を逸せず行わないと腎機能障害を残す可能性が ある。
Conclusion SU 症状は非特異的であるが、Literature review の SU presenting symptoms は当症 例と同じく、Colicky flank pain and/or macrohematuria with blood clots が多かった。 腹痛と肉眼的血尿(非糸球体性)を合併した HSP では、安易に腎炎由来の血尿と 判断せず、SU を鑑別するために、繰り返し腎尿路系エコーを行い水腎症、腎盂粘膜 肥厚、尿管拡張の有無を確認しながら PSL 治療を行う事が重要である。また SU では 両側・片側、内科的・外科的治療に関わらず、多くの症例が水腎症や腎機能障害を残 すことがあり、SU 罹患後は腎機能も含めた長期的観察が必要と考える。
図1.Case 1; 腎臓、膀胱、尿管エコー所見 腎長軸径:L 7.0cm 、R 7.3cm、腎実質の輝度亢進なし、両側水腎症(SFU:L2/R1)、 両側腎盂粘膜肥厚あり(L 2.6cm/R 2.1mm)、両側尿管拡張あり(下部尿管直径:L 0.6cm/R 0.5cm)、膀胱壁肥厚認めず。十二指腸粘膜肥厚認めず。 図 2. Case1; 急性期 <99m>Tc-DMSA (dimercaptosuccinic acid) Uptake(Split) : L/10.4% (40%) R/15.7% (60%) 左腎の下極、右腎臓の上下極に集積低下を認める。
図 3.Case; 2 腎臓、膀胱、尿管エコー所見 腎長軸径:L7.2cm 、R 6.5cm、左水腎症(SFU:2)、右腎盂粘膜肥厚あり(0.5cm)、左 下部尿管拡張あり(直径:L0.27cm/R0.32cm)、右尿管粘膜肥厚あり(0.21cm)、膀胱壁 肥厚認めず。