Taxonomic study on the genus Heterocapsa (Peridiniales, Dinophyceae) 有 殻 渦 鞭 毛 藻Heterocapsa属 の 分 類 学 的 研 究 Mitsunori Iwataki Department of Aquatic Bioscience, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo March, 2002 CONTENTS Abstract (in Japanese) i Introduction 1 CHAPTER 1 Historical background of taxonomy of the genus Heterocapsa 1-1 Taxonomic position 4 1-2 General features 5 1-3 History of taxonomic study 6 1-4 Rarely cited species 13 1-5 Definition of the genus 16 1-6 Taxonomic problems of the genus 17 1-7 Objectives of the present study 18 CHAPTER 2 Materials and methods 2-1 Localities 20 2-2 Collection, isolation and culture 20 2-3 Light microscopy 25 2-4 Fluorescence microscopy 25 2-5 Scanning electron microscopy 26 2-6 Transmission electron microscopy 26 2-6-1 Thin sections 26 2-6-2 Whole mount preparations 27 2-7 Molecular phylogeny based on SSU rRNA gene and ITS region sequence data 27 CHAPTER 3 Morphology, ultrastructure and taxonomic descriptions 3-1 Characteristics of the genus Heterocapsa and its emendation 34 3-1-1 Light microscopy 35 3-1-2 Thecal plate arrangement 37 3-1-3 Pyrenoid 39 3-1-4 Body scale 41 3-2 Descriptions of each species 43 3-2-1 Heterocapsa arctica Horiguchi 44 3-2-2 Heterocapsa circularisquama Horiguchi 47 3-2-3 Heterocapsa illdefina (Herman & Sweeny) Morrill & Loeblich III 50 3-2-4 Heterocapsa niei (Loeblich III) Merrill & Loeblich III 53 3-2-5 Heterocapsa pygmaea Loeblich III, Schmidt & Shelley 56 3-2-6 Heterocapsa rotundata (Lohmann) Hansen 59 3-2-7 Heterocapsa triquetra (Ehrenberg) Stein 63 3-2-8 Heterocapsa lanceolata Iwataki & Fukuyo ms. 67 3-2-9 Heterocapsa horiguchii Iwataki, Takayama & Matsuoka ms. 69 3-2-10 Heterocapsa ovata Iwataki & Fukuyo ms. 72 3-2-11 Heterocapsa pseudotriquetra Iwataki, Hansen & Fukuyo ms. 75 3-2-12 Heterocapsa orientalis Iwataki & Fukuyo ms. 78 3-2-13 Heterocapsa minima Pomroy 81 3-2-14 Heterocapsa pacifica Kofoid 83 CHAPTER 4 Molecular phylogeny 4-1 Phylogenetic position of Heterocapsa among dinoflagellates 85 4-2 Phylogenetic relationships among species of Heterocapsa 88 CHAPTER 5 General discussion 5-1 Taxonomy and phylogeny of the genus Heterocapsa 92 5-1-1 Taxonomic and phylogenetic position of the genus 92 5-1-2 Taxonomy and interspecific relationship of Heterocapsa 94 5-1-3 Evolutionary relationships of morphological characters 96 5-2 Taxonomic characteristics of Heterocapsa 98 5-2-1 Thecal plates 99 5-2-2 Cell size and shape 101 5-2-3 Nucleus and pyrenoid 102 5-2-4 Tubular invaginations into pyrenoid matrix 106 5-2-5 Body scale 107 5-3 Conclusions 112 Bibliography 114 Acknowledgements 129 Plates 1-39 ABSTRACT (in Japanese) 渦鞭 毛藻類は沿岸域 において 比較 的出現 頻度 の高い藻群であ り、生態 的 ・形態的に多様 な種 を含 む とともに、麻痺 性貝毒や下痢性 貝毒そ して魚毒の原 因種 と しても知 られてい る。近年で は有殻渦鞭毛藻Heterocapsa circularisquamaが 、西 日本沿岸域にお いて赤潮に よる二枚貝の大量 驚 死を引 き起 こす ことが知 られ、 有害 プランク トンの一種 と して注 目されてい る。 有殻渦鞭毛藻Heterocapsa属 は沿岸性 の小型種か らな る藻群で、 渦鞭毛藻 としては特徴 的な 細胞 鱗片 を持つ ことが知 られてい る。 同属は有殻類であ るが、 多 くの種 の鎧板 は極めて薄 いた め外 見上無殻類 とも酷似 してお り、光 学顕微鏡下 におけ る同定 が困難 であ る。 また近年の二枚 貝大量発死 に対 して同種の 出現 や分布 の把握や被 害対策研 究も行 われて きてい るが、 同定 の困 難 さに加えH.circularisquama類 似種 も確 認されて きている。 本研究 は、1)日 本 沿岸 に出現 する未 同定 のHeterocapsaの 記載 を行 うこと、2)本 属構成種 の包括的な形態比較 を行 うことで共有形 質を示 し、本属の特徴 を明確にする こと、3)そ れ ぞれ の形態比較 か ら派生形質 を示 し、種 レベル の分類形質を明らかにす ることを 目的 として行 った。 研 究には世界 各地か ら採集 した84のHeterosa属 藻類の単 藻培養株 と固定 試料 を供 した。 形態観 察には、 ノマル スキー 型微 分干渉顕微鏡に よる細胞 外形 とサ イズ、細 胞 内にお ける核 と ピ レノイ ドの位置 の観察、蛍光顕微鏡 を用いた鎧 板配列の観 察 を行 った。透過 型電子顕微鏡 を 用 いた細胞 内微細構 造の観 察 には超薄切 片を、細胞鱗片 の微細構 造にはホール マ ウン ト試料 を 用いた。そ してSSU rRNA遺 伝子の塩 基配列を用いた系統解析に よ り渦鞭毛藻 中のHeterocapsa 属 の系統 的位置 を推定 し、さ らにITS1、5.8SrRNA、ITS2、 と周辺 の 一部を含む領域(ITS領 域) を用 いた分子系統解 析 によ りHeterocapsa属 内の系統 関係 の解 明 を試みた。 最終的に形態形 質 と分子系統解析 の結果 を照 らし合 わせ ることで、属 内における各形態形 質 の進化 を想定 し、分 類形 質 としての評価 を行 った。 これ まで のHeterocapsa属 の分 類 とそ の 問題点 Heterocapsa属 はStein(1883)に よ り上殻 のみ に鎧 板 をもつ藻群 と して設 立され た。 最初 に Glenodinium triquetrumを 新組 み合 わせH. triquetraと して提唱 したため、 同種が タイプ種 となつ てい る。 この属 の基準 は下殻 にも鎧板 を持つ ことが知 られ る現在で は適用 す ることはで きない が、H. rtiquetraは 世界各地の沿岸域における普遍種であ り、その特徴的な細胞外形か ら現存 す る同 種 がH. triquetraで あ る こ とは 一般 的 に受 け入 れ られて い る。1977年 に 同 種 か ら細 胞 鱗 片 が 発 見 さ れ 、1981年 に はH. triquetraの 全 鎧板 配 列 が表 され た 。 そ して 同種 と似 た鎧 板 配 列 と 細 胞 鱗 片 を持 つCachonina illdefinaとC. nieiが 同属 に移 され 、 共 通 の鎧 板 枚 数 と細 胞 鱗 片 を持 i つ渦鞭 毛藻がHeterocapsaと 認識されるよ うになった。さ らに近年では、細胞外形、鎧板 配列 、 ピ レノイ ドの内部構造の他に細胞鱗片 の微細構造 を示す ことでH. rotundataやH. circlarisquama が記載 されてお り、細胞鱗 片の形 態の違 いも種 レベルの分類形 質 と して認識 され るようになっ ている。 このよ うな分類学 的経緯 によ り、Heterocapsa属 はタイプ種H.triquetraと 共通 の鎧板枚数 と 細 胞鱗片 を持つ有殻渦 鞭毛 藻の一群 と見 なされてい る。 しか し同属 に対す る包括的 な分類研究 はな く、種 レベルでは様 々な研究 者が各 自の分類基準 によ り同属 に種 を帰属 させて きた ため 、 各種 が どの形態形 質に よ り他種 と識別 され るのか は明確で ない。例 えば、有用 な種 レベルの分 類形 質 と して期待 され てい る細胞 鱗片 の微細 構造に関 して もHeterocapsa全 種 では観察 されて はお らず、比較 が困難 な状 況 とな って いた。 形 態観察 と分子系統解析 の結果 形態観察 の結果、全 ての種は基本的に同一の鎧板枚数、ピレノイ ド、細胞鱗片 を持 っていた。 これ らの形 態形 質 中、 ピレノイ ドと核 の位置、 ピ レノイ ド内の管状陥入の有無、細胞鱗片 の微 細 構 造 等 に違 いが見 られ、 これ らを組 み合 わせ ることで試料 中か ら7既 知種H. arctica、H. circularisquama, H. illdefina, H. niei, H. pygmaea, H. rotundata, H. triquetra, そ して明 らかに 既 記 載 種 と 異 な る 形 態 形 質 を 持 つ5つ の 形 態 型 が 識 別 さ れ た 。 こ れ ら5新 種 を 、H. lanceolata、 H. horiguchii、H. ovata、H. pseudotriquetra、H . orientalisと し て 記 載 し た 。 SSU rRNA分 子 系 統 解 析 の 結 果 、Heterocapsa属 は 単 系 統 群 を 形 成 し た 。 し か し ど の 外 群 と も 類縁が示されることはな く、同属の姉妹群は明らかにできなかった 。ITS領 域 を 用 い た 系 統 解 析 も 同 様 にHeterocapsa属 の 単 系 統 性 が 示 さ れ 、 本 属 が 自 然 分 類 群 で あ る こ と が 支 持 さ れ た 。 属内でそれぞれの種は他種 と混ざり合 うことはなく 、 今 回 提 唱 し た5新 種 も 含 め た 各 種 は 遺 伝 的にも分化していることが示された。そして構成種は3つ のクレー ド 、 す な わ ちH. horiguchii とH. ovata(ク レ ー ド1)、H. PseudotriquetraとH. triquetra(ク レ ー ド2) 、H. arcticaとH. lanceolata とH. rotundata(ク レ ー ド3)を 形 成 し 、H. circularisquama 、H. illdejina、H. pygmaeaは そ れ ぞ れ独立 して分枝 していた。 各 分 類 形 質 の 評 価 (1)細 胞 外形 Heterocapsa属 の細 胞 外 形 はそ れ ぞれ の 種 ご とに 安定 して お り、 楕 円形 、 球 形 、 菱 形 、 そ して 上 殻 が 大 きい種 の4つ に大 別 す る こ とが で き る。 こ の う ち菱形 と上 殻 の大 きいH. triqu etraとH. lanceolataは 後 角 を持 つ こ とか ら、 そ の他 の 上 殻 の大 きな種 で あ るH. arcticaとH . rotundataを 含 め た これ らは細 胞 外形 の み に よ り識 別 され た 。 しか も上 殻 の 大 きな3種 は系 統 樹 に お い て も ii ク レー ド3を 形成 す ることで類縁性 を示 してお り、 この形 質は保 存性 が高 く属 内で も一度 だけ 獲得 してい ることがわか った。逆に楕円形 と球形の細胞外形 は他 のクレー ド内に混在 してお り 、 細胞 幅は進化 的にも複数 回の変化 を経 てきた比較 的変わ りや すい形 質であ ることが分かった 。 (2)金宣木反配 列 属 内 にお け る外 部 形 態 の 多様 性 に か か わ らず 、 全 種 はPo , cp, 5', 3a, 7", 6c, 5s, 5'", 2""と 表 さ れ る共通の鎧板枚数を持っていた。また配列においても前縦溝板が上殻に深 く入 り込み 、 上 殻 中 央付近で第一頂板 と接する特徴的な配列も全種にみられた 。鎧板配列は属内でほぼ共通 してお り鍾 を識別 す る こ とは で きな か った 。 唯一 の 種 間 で の違 いは 、 背 面観 にお し、てH. triquetraの 第 一 前挿 間板 は3枚 の 前 帯板 と接 す るが 、 他 種 で は2枚 の み の 点 で あ っ た。 (3)細 胞 内にお けるピ レノイ ドの位 置 と管状 陥入の有無 Heterocapsaの 細胞核 は球形か楕 円形 であ り、球形の場合 には上殻か下殻の どち らかに偏 つて 存在 していた。核が 上殻 にあ る場合 には ピレノイ ドは核の下部 に 、下殻 にある ときには ピレノ イ ドは上部 にあ るという位 置関係 がみ とめ られ、 これは種 内で安定 してい た。楕 円形 の核 の場 合 には、核 は細胞 内で ピレノイ ドとほ ぼ同 じ高 さに並ぶ ために位置 関係 を把 握する ことはで き なか った。以上 の ように球形 の核 を持 つ種 に限 り、核 とピ レノイ ドの位置関係 が種 の識別形 質 とな りうることが分か った。系統的に もそれぞれのタイ プは同 じクレー ドに含 まれ ることか ら 、 この形 質は進化 的に も安定 した形 質であ ることが示唆された 。 また、 ピ レノイ ド基質 中の多数 の管状 陥入は約半数の種 に存在 し 、種識別の ための形態形質 と して使用 することがで きた。 しか しク レー ド1と3に は管状陥入 を持 つ種 と持 たない種が含 まれ てお り、 これ らの ピレノイ ド構造 の 多様性は必 ず しも系統 を反映 して いる とは限 らない形 質 であ ることが 示唆 され た。この形 質は比較的細 胞サイズの大 きい種に偏 って存在す ることか ら、 細胞 が大型化 するに伴 い細胞 内輸送 の効率 を高めるために属 内のそれ ぞれの系統 で獲得 し た(も しくは細胞 の小型化 に ともない平行的に失われた)形 質なのか も しれない 。 (4)細 胞 鱗 片 細 胞鱗片 は三部か らな る放射 相称の基盤 と、土部 の立体的 な骨組み でで きた装飾構造 で構成 されて いる。 この構造は 全てのHeterocapsaに 共通 した形 質であ り 、他 の渦鞭毛藻に限 らずプ ラシノ藻やハ プ ト藻の鱗片 とも識別 される形態形質 と考 えることがで きる 。また、鱗片 の直径、 基盤 の形態 、肋線 や柱 の数が種間で異 なってお り 、 これ ら微細構造 を比較 するこ とで各種 を識 別す るこ とがで きた。H.
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