2017

平成30年3月 (平成30年8月改定)

はじめに

本報告書『資源メジャー・金属部門の動向 2017』は、特に注目される“資源メジャー”の 2016 年度の 動向をまとめたものである。 いわゆる“資源メジャー”には明確な定義はないが、本報告書においては次のような事項に該当する資 源会社 5 社を選定した。 (1)鉄及び非鉄鉱物資源のうち複数鉱種にわたりグローバルに生産事業を展開している。 (2)且つそれらの世界生産において上位を占めている。 従い、単一鉱種における上位生産者やトレーディング事業のみを行う企業は対象としていない。 ・BHP ・Rio Tinto ・Vale ・Anglo American ・Glencore 2015 年は右肩下がりの資源価格下落を主因に資源メジャー各社はそろって赤字決算を記録、従い 2016 年は各社とも支出を抑制し資産売却にて財務状況の改善を狙う緊縮路線の経営であった。 上述のとおり、そもそも各社の事業領域及び注力度合いは必ずしも一様ではなかったが、斯様に身を縮 こめつつ歯を食い縛って事業の選択と集中を進めていく過程でそれぞれの戦略・方針がより明確に打ち出 されることとなった。それを整理すると以下のように言えるかと思う。 ・BHP:鉄鉱石、銅、原料炭 ・Rio Tinto:鉄鉱石、ボーキサイト、銅 ・Vale:鉄鉱石、ニッケル ・Anglo American:ダイヤモンド、PGM、銅 ・Glencore:銅、亜鉛、石炭 斯かるリストラが粛々と進められる中、資源価格は 2016 年 11 月の米国大統領選挙結果や減産及び各国 政府による環境対策の強化の影響を受け、各鉱種とも 2013 年以来の下降局面を脱し 2016 年初に上昇に転 じ、その後もその傾向の継続が見られた。筋肉質に体質改善された状況下での追い風を受け、今後の各社 の具体的な施策にこれまで以上に注目したい。 尚、本報告書の対象期間は決算期の関係上、BHP を除く 4 社は 2016 年 1~12 月、BHP のみ半期遅れの 2016 年 7 月~2017 年 6 月となる。 本報告書が鉱山事業を展開する各位の参考になり、わが国鉱業の発展にいくらかでも役立つのであれば 望外の喜びである。

平成 30 年 3 月 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 調査部 金属資源調査課 新藤 徹 新井 裕実子

※お詫びと訂正(平成 30 年 8 月) 平成 30 年 3 月発行の本報告書 P. 6 図 1-1-4「事業セグメント別 EBIT(2016 年度)」、P. 7 図 1-1-5 「事業セグメント別 EBIT のシェア(2016 年度)」、P. 23 図 1-2-3「資源メジャーの生産量【一般炭】」に 誤りがございましたので、訂正いたしました。ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

目 次

はじめに 1 .資源メジャー 5 社の動向...... 1 1 .1 資源メジャー 5 社の決算比較...... 4 売上高...... 4 利益...... 6 配当...... 10 資産及び負債...... 13 設備投資【CAPEX】について...... 14 設備投資の原資...... 14 投資【M&A】...... 15 キャッシュフロー分析...... 19 1 .2 資源メジャー大手 5 社の生産量と世界シェア...... 23 バルクミネラル...... 23 ベースメタル...... 24 レアメタル...... 26 貴金属及びダイヤモンド...... 27 その他の鉱物...... 28

2 .資源メジャー 5 社の個別動向...... 29 2 .1 BHP Billiton Ltd / BHP Billiton Plc...... 29 2 .1 .1 企業概要...... 29 2 .1 .2 個社概況...... 31 2 .1 .3 BHP Billitonの鉱種別アセット所在地...... 32 2 .1 .4 オペレーション別の生産量...... 34 2 .1 .5 主なトピックス...... 36 2 .1 .6 経営者のメッセージ...... 42 2 .2 Rio Tinto...... 46 2 .2 .1 企業概要...... 46 2 .2 .2 個社概況...... 48 2 .2 .3 Rio Tintoの鉱種別アセット所在地...... 50 2 .2 .4 オペレーション別の生産量...... 52 2 .2 .5 主なトピックス...... 54 2 .2 .6 経営者のメッセージ...... 62 2 .3 Vale...... 71 2 .3 .1 企業概要...... 71 2 .3 .2 個社概況...... 73 2 .3 .3 Valeの鉱種別アセット所在地...... 74 2 .3 .4 オペレーション別の生産量...... 76 2 .3 .5 主なトピックス...... 78 2 .4 Anglo American...... 82 2 .4 .1 企業概要...... 82 2 .4 .2 個社概況...... 84 2 .4 .3 Anglo Americanの鉱種別アセット所在地...... 86 2 .4 .4 オペレーション別の生産量...... 88 2 .4 .5 主なトピックス...... 90 2 .4 .6 経営者のメッセージ...... 95 2 .5 Glencore International...... 104 2 .5 .1 企業概要...... 104 2 .5 .2 個社概況...... 106 2 .5 .3 Glencoreの鉱種別アセット所在地...... 108 2 .5 .4 オペレーション別の生産量...... 110 2 .5 .5 主なトピックス...... 111 2 .5 .6 経営者のメッセージ...... 116 1 .資源メジャー 5 社の動向

まず各社の株価推移を見ると、程度の差はあるものの、各社いずれも2016年を通じ一 1.

動向 資 源 メ ジ ャ ー 律に右肩上がりで上昇、年初からの伸び率が最も低いRio Tintoでも30%以上、最も高い 伸びを見せたAnglo Americanに至っては一時 4 倍を超える株価を記録した。

5 500.00 社 の

450.00

400.00

350.00

300.00

250.00

200.00

150.00

100.00

50.00

2016/1/12016/2/12016/3/12016/4/12016/5/12016/6/12016/7/12016/8/12016/9/1 2017/1/12017/2/12017/3/12017/4/12017/5/12017/6/1 2016/10/12016/11/12016/12/1

Glencore BHP/ 豪 BHP/ 英 Rio Tinto/ 豪

Rio Tinto/ 英 Vale Anglo American

図 1 株価推移(2016年 1 月 1 日の株価を100として指数化)

その要因は、前年の年初よりほぼ一貫して下落を続ける資源価格への対策として取られ た減産、コスト削減、資産売却等の緊縮策にて各社とも体を絞ったところに、2016年初 に価格が反転、程度の差はあれ、主要鉱種は年間を通じ上昇、それを享受したことによ る。 図 2 の価格推移のとおり、2016年末には年初に比し最も上昇幅の大きい鉄鉱石では 2 倍強、上昇幅が最小のプラチナも 3 %強の価格上昇となった。

─ 1 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 250.00 240.00 230.00 1. 220.00 動向 資源メジャー 210.00 200.00 190.00 180.00 5社の 170.00 160.00 150.00 140.00 130.00 120.00 110.00 100.00 90.00 80.00

2016/1/12016/2/12016/3/12016/4/12016/5/12016/6/12016/7/12016/8/12016/9/1 2017/1/12017/2/12017/3/12017/4/12017/5/12017/6/1 2016/10/12016/11/12016/12/1

銅 ニッケル アルミニウム

亜鉛 鉛 金

プラチナ 豪州産一般炭 鉄鉱石(鉄分 62%)

図 2 資源価格推移(2016年 1 月 1 日の価格を100として指数化)

これまでも各社独自の歴史、内部事情、取り巻く環境等の属性により各社の特徴が見ら れていたが、斯かる厳しい時期を耐え忍び持続的に活動するため、下記のとおり各社の方 向性がより明確に打ち出され顕現した 1 年であった。見方によっては各社にとっても、余 裕があれば伸び切りがちな兵站を検証し整理するよい機会であったとも言えるのではなか ろうか。

【BHP】 自社保有の大型優良案件を推進(既存/新規の別に拘らず)

【Rio Tinto】 事業の選択と集中を戦略的に推進

【Vale】 財務体質改善を主目的とした事業/資産売却

【Anglo American】 財務体質改善を主目的とした積極的な事業/資産売却

【Glencore】 戦略的な事業/資産の入替

結果、各社の注力事業領域が明確となり、各社の経営方針にこれまで以上の違いが見ら れるため、それぞれどの様に進捗するのか今後の個々の動きが注目される。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 2 ─ 用語

紙面やグラフ等のスペースの都合により、商品名や事業名に略語を用いる場合もある。 1.

動向 資源メジャー 下記はその一覧である。

【略語一覧】 5社の

O&G...... Oil/原油、Gas/ガスのどちらか、もしくは両方

Coal...... 以下のどちらか、もしくは両方 Thermal Coal/一般炭もしくは燃料炭(発電用) Metallurgical Coal/原料炭(製鉄原料)

Mn...... Manganese/マンガン(鉱石をさす場合もある)

Al...... 以下のどれか、もしくは全て Bauxite/ボーキサイト Alumina/アルミナ Aluminium/アルミニウム(米国表記ではAluminum)

Cu...... Copper/電気銅(銅地金)もしくは銅精鉱

Zn+Pb...... Zinc/亜鉛地金及びLead/鉛(ともに精鉱を含む)

Ni...... Nickel/ニッケル及びその鉱石

PGM...... 以下の貴金属及びその他の総称 Pt :Platinum/プラチナ Pd :Palladium/パラジウム Rh :Rhodium/ロジウム

Au+Ag...... Au:Gold/金、Ag:Silver/銀

Ind.Minerals...... Industrial Minerals ホウ素、ミネラルサンドなどの工業用原料

Alloys...... ニッケル、クロム、マンガンなどの合金鉄類

Fert. Products...... Fertilizer Products 窒素、リン、カリの肥料製品等

─ 3 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 1 .1 資源メジャー 5 社の決算比較 ■売上高 (BU$) 250

200

150

5 1 100

社の決算比較- 1 資源メジャー 50

0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 

BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

出所:SPEEDA(以下、注記がない場合は同様) 図 1 - 1 - 1 企業別売上推移(2012~2016年度)

(MU$) 45,000

40,000

35,000

30,000

25,000

20,000

15,000

10,000

5,000

0 BHP RIO VALE AAL GLEN

Others Fert. Products Alloys Ind. Minerals Diamonds PGM Zn+Pb Ni Cu Al Iron Ore Uranium Coal O&G

出所:各社アニュアルレポート (注)Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの売上である。 図 1 - 1 - 2 事業セグメント別売上(2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 4 ─ 100%

90%

80%

70%

60%

50%

5 1 40% 社の決算比較- 1 資源メジャー 30%

20%

10% 

0% BHP RIO VALE AAL GLEN

Others Fert. Products Alloys Ind. Minerals Diamonds PGM Zn+Pb Ni Cu Al Iron Ore Uranium Coal O&G

出所:各社アニュアルレポート (注)Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの売上である。 図 1 - 1 - 3 事業セグメント別売上比率(2016年度)

アルミニウムのプレミアムが低迷したRio Tintoを除き各社とも前年比増を記録。中で もBHPの増加率が高いが、同社は他社と決算期が半期後ろにずれているため、より資源 価格の上昇の恩恵を享受したことが理由と考えられる。また、2016年は鉄鋼原料である 鉄鉱石及び原料炭の価格回復が顕著で、ポートフォリオの構成比率が各社の数値の違いと して反映されている。

─ 5 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ■利益 (MU$)

14,000

12,000

10,000

5 1 8,000

社の決算比較- 1 資源メジャー 6,000

4,000

 2,000

0

(2,000) BHP RIO VALE AAL GLEN

O&G Coal Uranium Iron Ore Al

Cu Ni Zn+Pb PGM Diamonds

Ind. Minerals Alloys Fert. Products Others 内訳開示なし

出所:各社アニュアルレポート (注 1 )Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの値である。 (注 2 )Valeは2016年より事業セグメントの内訳を開示せず。

図 1 - 1 - 4 事業セグメント別EBIT(2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 6 ─ 100%

80%

60%

40%

5 1 20% 社の決算比較- 1 資源メジャー 0%

-20%  -40% BHP RIO VALE AAL GLEN

O&G Coal Uranium Iron Ore Al Cu Ni Zn+Pb PGM Diamonds Ind. Minerals Alloys Fert. Products Others 内訳開示なし

出所:各社アニュアルレポート (注 1 )Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの値である。 (注 2 )EBITは負となることもあるため、絶対値の合計が100%となるよう指数化した。 (注 3 )Valeは2016年より事業セグメントの内訳を開示せず。 図 1 - 1 - 5 事業セグメント別EBITのシェア(2016年度)

35 30.8 29.3 30

25 20.4 20 14.9 15 9.7 10

4.1 3.3 5 2.3 0.6 1.0 0 BHP Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

売上高営業利益率(%) 売上高に占める支払い利息割引料の割合(%)

図 1 - 1 - 6 各社の売上高営業利益率及び金利の割合(2016年度)

─ 7 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2016年は各社そろって減損計上が前年に比し減少、特にBHPとRio Tintoは90%以上の 改善が見られ、各事業のEBIT(Earnings Before Interest and Tax/金融収支前・税前 の営業利益)がそれぞれの実力を表していると言える。そんな両社においては鉄鉱石がい ずれも50%以上と最大の貢献度を記録した。前項の売上においても鉄鉱石は両社で最大 の売上を誇る商品ながら、売上比率以上の利益貢献度を達成しており、中核事業として確 固たる地位を築き上げている。 一方、Anglo American及びGlencoreも上記 2 社程ではないが、それでも前年比70% 以上の減損計上にとどめるも、EBITに対する割合が大きく、2016年ではまだ足を引っ張 られている状況から抜け出しきれていない。Anglo Americanは豪州の原料炭鉱が対象 5 1

社の決算比較- 1 で、長期的な原料炭価格見通しの下方修正がその理由。同炭鉱はスーパーサイクル前の 資源メジャー 2000年に買収した資産で、開示されている生産コストは他社と遜色のないレベルゆえ、 ひとえに品位及びそれに伴う期待価格の差が顕現したと思われる。 Glencoreは主に石油関連と豪州の原料炭鉱でAnglo Americanと同規模の減損を計上。

 その後原料炭鉱は売却するも、石油はチャドの案件で国営石油会社との交渉が順調ではな いとの報道も見られ、油価の動向次第で再燃の余地のある緊張した状況が続く。 Valeは2016年よりEBITの事業毎の内訳を開示しなくなったため詳細は不明ながら、前 項の売上で顕著なとおり鉄鉱石の比率が飛び抜けて高いため、EBITにおいても圧倒的な 貢献度を誇ると思われる。実際、EBITは同じく鉄鉱石を中核事業とするBHP及びRio Tintoに匹敵するレベルで、そうでないAnglo American、Glencoreとは 1 桁異なる数値 を記録している。他社同様、減損は前年比90%弱まで縮小するも、ニッケルにおいて近 年、設備投資をしたばかりのところに長期価格見通しの下方修正が加わり、Anglo AmericanやGlencoreと同規模の金額を計上することとなった。 売上高当期利益率はGlencoreが極端に低い数値となっている。これは売上高にトレー ド事業分が含まれていることもあるが、トレード事業分を除いた生産部門分のみの売上高 で計算しても2.9%とそれでも 1 桁異なる値にとどまる。開示されている情報からは同社 の減価償却費が売上に比し大きいことまでは確認できるも(特に銅及び石炭)、更なる分 析のために生産部門の売上原価の具体的な数値を見たいところである。 資産売却額もGlencoreが突出しているが、そのうち、農産物事業の50%権益の売却が 3.1bUS$と 2 / 3 以上を占めている。Anglo Americanも金額規模はGlencoreの半分程度 ながら、ブラジルのニオブ・リン事業を中/洛陽モリブデン社に1.5bUS$で売却し同事業 からの撤退を決めた。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 8 ─ (MU$) 14,000

12,000 11,753

10,583 10,000

8,000 7,365 7,499

6,000 5 1

社の決算比較- 4,361 1 4,000 資源メジャー 2,933

2,000 1,512 1,881 1,174 1,460 1,009 1,268 193 186 249 0  BHP Rio Tinto Vale Anglo Glencore American

EBIT 減損 資産売却

出所:EBIT、減損はSPEEDA及びUZABASE提供資料、資産売却はSNL、各社HP、JOGMECニュースフラッシュ を基にJOGMEC試算 図 1 - 1 - 7 EBIT、資産売却額、及び減損(2016年度)

(MUS$) (%) 14,000 18.0

16.0 12,000

14.0 10,000 12.0

8,000 10.0

6,000 8.0

6.0 4,000 4.0

2,000 2.0

0 0.0 BHP Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

EBIT 百万米ドル 当期純利益 百万米ドル 売上高当期利益率 % ROA %

図 1 - 1 - 8 EBIT、当期純利益、及びROA(2016年度)

─ 9 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ■配当 (US$) (%) 3 80

70 2.5

60

2 50

1.5 40 5 1

社の決算比較- 1 資源メジャー 30 1

20

0.5

 10

0 0 BHP Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

一株当たりの配当金(左軸 /US$) EPS(左軸 /US$) 配当性向(右軸 /%)

図 1 - 1 - 9 配当金、EPS、及び配当性向(2016年度)

2016年 1 ~ 6 月期は前年の厳しい状況の延長線上且つまだ市況の回復も不十分であっ たため、Vale、Anglo American、Glencoreの 3 社が中間配当を見送った。うち、Vale とGlencoreの 2 社は2016年 7 ~12月期の期末配当で復配を果たすも、Anglo American は復配できず、 5 社中唯一、年間を通じての無配となった。 斯かる事態はここ数年来赤字を計上している同社にとっても初めてのこと。さらに同社 は、復配は早くても2017年の期末配当とこの時点で既に宣言しつつ、復配の暁には市況 低迷時でも十分な手元資金を残した上で、市況回復時の利益を享受する様な配当性向の導 入を検討したいとし、現状につき株主の理解及び協力を求めた。 中間配当と期末配当の合計である年間配当は、BHPのみ他 4 社と異なり 6 か月遅れた 決算期ゆえ、市況の回復による利益をより享受しており、唯一、前年の倍以上となる株主 還元を果たした。Glencoreも前年比30%弱の増加となる年間配当を実施、Rio Tintoを含 め、その他 3 社はいずれも前年比減となった。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 10 ─ (US$) 3

2

2

1

5 1

社の決算比較- 1 1 資源メジャー

0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 

BHP Billiton Ltd Rio Tinto plc Vale SA Anglo American plc Glencore plc

図 1 - 1 -10 配当金の推移(2012~2016年度)

4.0

3.0

2.0

1.0

0.0

-1.0

-2.0

-3.0

-4.0

-5.0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

BHP Billiton Ltd Rio Tinto plc Vale SA Anglo American plc Glencore plc

図 1 - 1 -11 EPSの推移(2012~2016年度)

─ 11 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 (%) 900.0

800.0

700.0

600.0

500.0

400.0

5 1

社の決算比較- 300.0 1 資源メジャー 200.0

100.0

0.0

 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

BHP Billiton Ltd Rio Tinto plc Vale SA Anglo American plc Glencore plc

(注)一般に、配当性向は配当金を当期純利益で除した値であることから、分母が負の場合(=当期純損失の場合) はこの値は計算されない。 図 1 - 1 -12 配当性向の推移(2012~2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 12 ─ ■資産及び負債 (MUS$) (DER%) 140,000 90

80 120,000

70 100,000 60

80,000 50 5 1

社の決算比較- 40 1 60,000 資源メジャー

30 40,000 20  20,000 10

0 0 BHP RioTinto Vale Anglo Glencore American

総資産 自己資本 有利子負債 DER

図 1 - 1 -13 総資産、自己資本、有利子負債、及びDER(2016年度)

各社ともDERの改善が見られ、特にAnglo AmericanとGlencoreにおいては前年比 30%の大幅改善を達成した。両社とも積極的な資産売却でキャッシュを創出し、債務削 減に努力した結果である。Valeは債務残高に大きな変化はなかったものの黒字転換によ る資本増で10%強の改善が見られた。 総資産はBHPが微増なるも、総じて各社とも前年比微減。売却は決定しているものの まだ完了していない肥料事業関連資産等を計上したValeのみ10%弱の増加となった。 CAPEXは、前年の厳しい決算を受け各社ともできる限り抑制、例外なくいずれも前年 比40%前後の大幅削減を記録した。 いずれの動きも各社が直面する現況下、至極真っ当で、特筆すべきサプライズも見られ ず、打ち出された方針に沿った結果であった。

─ 13 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 (注) 設備投資【CAPEX】について 生産設備は時間が経過するにつれて、機械的な劣化や技術の陳腐化が不可避的に進行す るため(資産価値の減少)、そこから生み出される生産量も漸減していく。従い、資源企 業が業界でのポジション(生産量)を維持・拡大するためには、継続的な設備投資(有形 固定資産の取得)が不可欠となる。一般的に、減価償却費程度の設備投資では生産能力の 維持にしかならず、減価償却費以上の設備投資によって生産量の拡大が初めて達成され る。逆に言えば、減価償却費を割り込むような設備投資額が長く続く場合、そうした企業 はいずれ衰退すると考えられる。 5 1

社の決算比較- 1 資源メジャー 設備投資の原資 企業活動は「設備投資が生み出したキャッシュ(単年度の営業CF)を再び設備投資に 回すことでキャッシュの規模(FCFの累計)を拡大していくサイクル」と解釈できる。

 従い、製造設備が新たに獲得したキャッシュである営業CFが設備投資の原資のベースと なる。理想的なサイクルは、既存の事業が十分な営業CFを生み出しており、当該事業の 維持に必要な設備投資(減価償却費相当)に加えて、事業の拡大に必要な新規の設備投資 (既存事業の拡大、もしくは新規事業への参入)までも負担できる状態である。逆に、営 業CFが減少すれば、既存事業の維持に必要な設備投資が優先され、事業規模の拡大への 設備投資は抑制される。

20,000

18,000

16,000

14,000

12,000

10,000

8,000

6,000

4,000

2,000

0 BHP RIO VALE AA GLEN

CAPEX 営業 CF 減価償却費

図 1 - 1 -15 CAPEXと減価償却費、営業CF(2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 14 ─ ■投資【M&A】

業界のリーダーとも言える資源メジャー各社だが、市況低迷下、2016年は財務体質改 善のための資産売却が業界メディアを賑わした。 その中には前年には見られなかった 1 bUS$を超える以下の大型案件の成約も含まれ、 各社の懐事情の改善に大きく貢献した。 (一部、入金が2017年に期を跨ぐものあり)

・Glencore:加/年金基金への農業事業の50%権益売却( 3 bUS$超) 5 1

社の決算比較- ・Vale:肥料事業における同社持分のパートナーの米/Mosaic社への売却(2.5bUS$) 1 ・Anglo American:ニオブ及びリン事業の中/洛陽欒川モリブデン(チャイナ・モリブ 資源メジャー デン)社への売却(1.5bUS$)

その後2017年に入り、Rio Tintoも豪/石炭子会社のCoal & Allied社を中/兖州煤業系  のYancoal Australia社に 3 bUS$弱での売却を発表。これら一連の大規模資産の整理は、 各社の選択と集中の対象事業領域に関する具体的な意思表示として、単なるキャッシュ創 出の手段にとどまらない、意義深い決断と捉えられよう。 また、資源でありつつ非資源事業に連なる次代のコモディティとして注目を集めた肥料 原料向けカリウム及びリン鉱石事業からValeとAnglo Americanの 2 社がそろって撤退を 決定したことは、世の中の風潮・トレンドの影響を改めて考えさせるきっかけの 1 つとな り得るのではと思う次第である。一方、Glencoreは今後の注目事業領域の 1 つとしてあ えて農業事業を挙げ、機会があれば業界再編への積極的関与までも示唆しており、事業や 商品のシフトだけでなく、事業体制や方針のシフトでの対応を表す同社の機動的な姿勢が 窺え興味深い。 (尚、上記にてGlencoreが言及する農業事業は穀物等農産物関連との理解である) 尚、事業買収CFは買収に伴う支払を意味するため、通常、負の値での表示となるが、 2016年のGlencoreによる豪/QLDの石炭関係資産であるNCA JV権益取得では受取を伴っ たため、その他案件と合算しても正の値となっている。

─ 15 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 (MU$) 5 社合計 35,000

30,000

25,000

20,000

15,000

5 1

社の決算比較- 1 10,000 資源メジャー

5,000

0  2012 2013 2014 2015 2016 -5,000

事業売却 CF 事業買収 CF 減損額

図 1 - 1 -16 事業売却CF、事業買収CF、及び減損額のメジャー 5 社合計(2012~2016年度)

(MU$) BHP Billiton 20,000

15,000

10,000

5,000

0 2012 2013 2014 2015 2016

-5,000

事業売却 CF 事業買収 CF 減損額

図 1 - 1 -17 BHPの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額推移(2012~2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 16 ─ (MU$) Rio Tinto 20,000

15,000

10,000

5 1

社の決算比較- 5,000 1 資源メジャー

0

2012 2013 2014 2015 2016 

-5,000

事業売却 CF 事業買収 CF 減損額

図 1 - 1 -18 Rio Tintoの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額推移(2012~2016年度)

(MU$) Vale 20,000

15,000

10,000

5,000

0 2012 2013 2014 2015 2016

-5,000

事業売却 CF 事業買収 CF 減損額

図 1 - 1 -19 Valeの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額推移(2012~2016年度)

─ 17 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 (MU$) Anglo American 20,000

15,000

10,000

5,000

5 1

社の決算比較- 1 0 資源メジャー

-5,000 2012 2013 2014 2015 2016  -10,000

事業売却 CF 事業買収 CF 減損額

図 1 - 1 -20 Anglo Americanの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額推移(2012~2016年度)

(MU$) Glencore 20,000

15,000

10,000

5,000

0

-5,000

2012 2013 2014 2015 2016 -10,000

事業売却 CF 事業買収 CF 減損額

図 1 - 1 -21 Glencoreの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額推移(2012~2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 18 ─ ■キャッシュフロー分析

事業活動等から生み出され、自由に分配可能な金額を意味する重要な指標であるフリー キャッシュフロー(=営業CF+投資CF)は各社とも改善が見られ、 5 社合計では前年の 倍以上に増加した。 Glencoreのみ営業CFが前年より大きく減少しており、その理由として期末である2016 年12月末時点の市況好転による正味運転資本の増加を挙げているが、同社は他社と異な りトレード事業を手広く展開しているため、同事業関連の運転資本/在庫が大きく影響し たためと考えられる。 5 1

社の決算比較- また本年において特徴的なこととして、財務CFの支出が前年に比し倍以上の増加を記 1 録したことが挙げられよう。これはひとえに各社の債務削減努力の賜物と言える。 資源メジャー 各社で経営方針は異なり、従い成長・拡大・発展に向けた活動/手段も自ずと異なろう が、ポートフォリオ中の案件推進にせよ、“ディスラプション(disruption:破壊的革

新)”の創造にせよ、それら目的実現のための具体的なアクションは投資CFに反映され  る。足元の投資CF中、事業売却CF>事業買収CFか、事業売却CF<事業買収CFでもその 金額規模は限定的と各社横並びの状況だが、どこがいつ行動を起こし始めるのか、本指標 でも追い掛けることができよう。

(MU$) 80,000

60,000

40,000

20,000

0

-20,000

-40,000

-60,000

-80,000 2012 2013 2014 2015 2016

営業 CF 減価償却費 投資 CF CAPEX 事業売却CF 事業買収 CF 財務 CF 短期借入金 長期借入金 配当金 現金等期末残高

図 1 - 1 -23 メジャー 5 社の各種CF合計(2012~2016年度)

─ 19 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 (MU$) 30,000

20,000

10,000

0

-10,000

5 1 -20,000

社の決算比較- 1 資源メジャー -30,000 2012 2013 2014 2015 2016

営業 CF 減価償却費 投資 CF CAPEX 事業売却CF 事業買収 CF 財務 CF 短期借入金  長期借入金 配当金 現金等期末残高

図 1 - 1 -24 BHPの各種CF(2012~2016年度)

(MU$) 20,000

15,000

10,000

5,000

0

-5,000

-10,000

-15,000

-20,000 2012 2013 2014 2015 2016

営業 CF 減価償却費 投資 CF CAPEX 事業売却CF 事業買収 CF 財務 CF 短期借入金 長期借入金 配当金 現金等期末残高

図 1 - 1 -25 Rio Tintoの各種CF(2012~2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 20 ─ (MU$) 20,000

15,000

10,000

5,000

0

-5,000

-10,000 5 1

社の決算比較- 1 -15,000 資源メジャー

-20,000 2012 2013 2014 2015 2016

営業 CF 減価償却費 投資 CF CAPEX  事業売却 CF 事業買収 CF 財務 CF 短期借入金 長期借入金 配当金 現金等期末残高

図 1 - 1 -26 Valeの各種CF(2012~2016年度)

(MU$) 15,000

10,000

5,000

0

-5,000

-10,000

-15,000 2012 2013 2014 2015 2016

営業 CF 減価償却費 投資 CF CAPEX 事業売却CF 事業買収 CF 財務 CF 短期借入金 長期借入金 配当金 現金等期末残高

図 1 - 1 -27 Anglo Americanの各種CF(2012~2016年度)

─ 21 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 (MU$) 15,000

10,000

5,000

0

-5,000 5 1

社の決算比較- 1 -10,000 資源メジャー

-15,000 2012 2013 2014 2015 2016

 営業 CF 減価償却費 投資 CF CAPEX 事業売却CF 事業買収 CF 財務 CF 短期借入金 長期借入金 配当金 現金等期末残高

図 1 - 1 -28 Glencoreの各種CF(2012~2016年度)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 22 ─ 1 .2 資源メジャー大手 5 社の生産量と世界シェア

●バルクミネラル

1,000 世界の生産量(16 年度)鉄鉱石 800 345 359 349 600 320 311 48 45 41 42 400 43 234 263 281 Million ton 199 209 200 170 202 230 224 228 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

VALE AAL RIO BHP BHP Billiton RIO Tinto Anglo American VALE Others

図 1 - 2 - 1 資源メジャーの生産量【鉄鉱石】 (出所:USGS MCS等より作成) 世界シェア大手 1 - 2 100 世界の生産量(16 年度)原料炭 5社の生産量と資源メジャー 9.5 11.8 9.5 6.4 9.5 75 11.2 6.9 5.8 5.1 20.9 3.5 18.7 21.2 20.9 17.7 10.7 50 12.1 11.5 11.3 12.2   Million ton 25 48.1 36.2 43.4 41.1 38.2 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN VALE BHP Billiton RIO Tinto AAL RIO BHP Anglo American VALE Glencore Others

図 1 - 2 - 2 資源メジャーの生産量【原料炭】 (出所:IEA Coal Information 2016等より作成)

300 世界の生産量(16 年度)一般炭 79.2 96.7 106.1 200 31.2 2.0 1.9 2.2 93.3 87.4 81.7 80.1 79.3 1.6 2.0 Million ton 100 73.7 20.6 23.0 21.9 73.9 69.3 70.5 66.8 18.6 17.3 34.2 29.6 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN VALE BHP Billiton RIO Tinto AAL RIO BHP Anglo American VALE Glencore Others

図 1 - 2 - 3 資源メジャーの生産量【一般炭】 (出所:IEA Coal Information 2016等より作成)

─ 23 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ●ベースメタル

5,000 世界の生産量(16 年度)銅 4,000 861 1,493 1,546 1,502 1,426 3,000 330 369 291 380 423 671 789 767 455 2,000 726 591 697 738 694 602 617 Thousand ton 1,000 1,209 1,237 1,187 1,164 998 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN VALE BHP Billiton RIO Tinto AAL RIO BHP Anglo American VALE Glencore Others

図 1 - 2 - 4 資源メジャーの生産量【銅】 (出所:USGS MCS等より作成)

2,000 世界の生産量(16 年度)亜鉛 世界シェア大手 1 - 1,500 2 5社の生産量と資源メジャー 1,060 1,000 1,399 1,387 1,445 1,094 500 Thousand ton 534 137 122 88 0 113 55   Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN BHP BHP Billiton Glencore Others

図 1 - 2 - 5 資源メジャーの生産量【亜鉛】 (出所:USGS MCS等より作成)

600 世界の生産量(16 年度)鉛 500 400 239 315 300 308 76 200 298 294 Thousand ton 100 214 188 154 4 6 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN BHP BHP Billiton Glencore Others

図 1 - 2 - 6 資源メジャーの生産量【鉛】 (出所:USGS MCS等より作成)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 24 ─ 5,000 世界の生産量(16 年度)アルミニウム 4,000

3,000 3,456 3,555 3,361 2,000 3,322 3,646

Thousand ton 1,000 1,179 1,174 843 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

RIO BHP RIO Tinto Others

図 1 - 2 - 7 資源メジャーの生産量【アルミニウム】 (出所:USGS MCS等より作成)

世界シェア大手 1 - 2 5社の生産量と資源メジャー  

─ 25 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ●レアメタル

600 世界の生産量(16 年度)ニッケル 74 500 103 98 101 115 96 400 300 208 225 239 253 271 200 57 57 65 Thousand ton 100 56 70 154 143 124 81 85 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN VALE BHP Billiton Anglo American AAL BHP VALE Glencore Others

図 1 - 2 - 8 資源メジャーの生産量【ニッケル】 (出所:USGS MCS等より作成)

40 世界の生産量(16 年度)コバルト 世界シェア大手 1 - 30 2 5社の生産量と資源メジャー 20 28.3 1.3 23.0 19.4 20.7 10 14.0 Thousand ton 5.8 0 2.3 3.5 3.7 4.5   Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN VALE VALE Glencore Others

図 1 - 2 - 9 資源メジャーの生産量【コバルト】 (出所:USGS MCS等より作成)

15 世界の生産量(16 年度)モリブデン

10

9.4 11.5 5 7.6 5.7 Thousand ton 2.8 0 1.6 1.2 0.5 1.1 1.1 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

RIO BHP BHP Billiton RIO Tinto Others

図 1 - 2 -10 資源メジャーの生産量【モリブデン】 (出所:USGS MCS等より作成)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 26 ─ 15 世界の生産量(16 年度)マンガン

10 2.4 2.4 2.4 3.3 3.3 3.3 5 Million ton 2.4 2.4 4.9 4.6 4.4 3.1 3.1 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

VALE AAL BHP Anglo American VALE Others

図 1 - 2 -11 資源メジャーの生産量【マンガン】 (出所:USGS MCS等より作成)

●貴金属及びダイヤモンド

3,000 世界の生産量(16 年度)金 世界シェア大手 1 2,000 - 992 964 421 1,017 1,027 2 5社の生産量と資源メジャー 474 321 420 1,000 164 286 96 482 105 100 113 739 108 Thousand troy oz 573 533 555 429 0 137 163 152 180 168 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16  

XTA GLEN VALE BHP Billiton RIO Tinto AAL RIO BHP Anglo American VALE Glencore Others

図 1 - 2 -12 資源メジャーの生産量【金】 (出所:USGS MCS等より作成)

100,000 世界の生産量(16 年度)銀

80,000 22,295 60,000 39,041 20,988 35,530 40,000 6,108 6,923 36,952 39,069 7,510 20,000 37,655 32,989 Thousand troy oz 26,020 5,154 6,025 10,826 0 9,038 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN RIO BHP BHP Billiton RIO Tinto Glencore Others

図 1 - 2 -13 資源メジャーの生産量【銀】 (出所:USGS MCS等より作成)

─ 27 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 3,000 世界の生産量(16 年度)プラチナ 80 90 158 148 134 145 158 154 166 2,000 182

2,379 2,380 2,337 2,382 1,000 1,870 Thousand troy oz 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

XTA GLEN VALE AAL Anglo American VALE Glencore Others

図 1 - 2 -14 資源メジャーの生産量【プラチナ】 (出所:USGS MCS等より作成)

60,000 世界の生産量(16 年度)ダイヤモンド

40,000 31,159 28,692 27,339 27,875 32,605 世界シェア大手 1 20,000 -

2 Thousand carat 13,122 16,027 13,872 17,392 17,953 5社の生産量と資源メジャー 0 972 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

AAL RIO BHP RIO Tinto Anglo American

  Others

図 1 - 2 -15 資源メジャーの生産量【ダイヤモンド】 (出所:USGS MCS等より作成)

●その他の鉱物

30,000 世界の生産量(16 年度)ウラン 8 O 3 20,000 9,760 8,105 4,907 6,342 10,000 4,090 10,571 10,368 8,954 11,343 9,517 Thousand lbs U 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

RIO BHP BHP Billiton RIO Tinto Others

図 1 - 2 -16 資源メジャーの生産量【ウラン】 (出所:World Nuclear Association HP等より作成)

(図 1 - 2 - 1 ~図 1 - 2 -16:Annual Report等をもとに株式会社クラリテ作成)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 28 ─ 2 .資源メジャー 5 社の個別動向

2 .1 BHP Billiton Ltd / BHP Billiton Plc

2 .1 .1 企業概要

設立: 2001年 本社:ロンドン(英国)・ 上場先: (前身のBHPは1885年、 メルボルン(豪州) ASX / LSE / NYSE / JSE Billitonは1860年)

決算期:6月末 CEO:Andrew Mackenzie 連結従業員数:60,644名 ( 13年5月~)

主な生産鉱種:

P t 石 石 ガ C u P b A u A g DIA F e A l Z n P d K P 炭 油 ス

N i M n M o N b C r Ti C o B U

■経営数値■ (mU$) (%) 80,000 30 (mU$) 70,000 20 30,000 60,000 10 25,000

50,000 0 20,000 - 2 40,000 -10 15,000 1 10,000 BHP Billiton -20 30,000 5,000 20,000 -30 0 10,000 -40 -5,000 0 -50 -10,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

BHP Billiton Ltd:EBIT BHP Billiton Ltd:売上高 BHP Billiton Ltd:Net Income BHP Billiton Ltd:前年度比成長率 BHP Billiton Ltd:営業 CF

図 2 - 1 - 1 BHP売上 図 2 - 1 - 2 BHP利益

─ 29 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 % 90,000 0.8 160,000 54 80,000 0.7 140,000 52 70,000 0.6 120,000 60,000 50 0.5 100,000 50,000 0.4 80,000 48 40,000 0.3 60,000 46 U$ million 30,000 U$ million 40,000 20,000 0.2 44 20,000 10,000 0.1 0 42 0 0.0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

BHP Billiton Ltd:総資産 BHP Billiton Ltd:有利子負債 BHP Billiton Ltd:自己資本 BHP Billiton Ltd:自己資本 BHP Billiton Ltd:自己資本比率 BHP Billiton Ltd:DER

図 2 - 1 - 3 BHP資産 図 2 - 1 - 4 BHP負債

% % 40 3.0 400 30 2.5 350 20 2.0 300 10 1.5 250 1.0 0 200 0.5 -10 0.0 150 -20 -0.5 100 -30 -1.0 50 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 -1.5 0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

BHP Billiton Ltd:ROE BHP Billiton Ltd:ROA BHP Billiton Ltd:潜在株式調整後 EPS BHP Billiton Ltd:EBIT 利益率 BHP Billiton Ltd:一株当たり年間配当金 BHP Billiton Ltd:Net Income 利益率 BHP Billiton Ltd:配当性向

図 2 - 1 - 5 BHP収益性 図 2 - 1 - 6 BHP配当 - 2 1 BHP Billiton

20,000 15,000 10,000 5,000 0 U$ million -5,000 -10,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

BHP Billiton Ltd:現金及び現金同等物期末残高 BHP Billiton Ltd:当期純利益 BHP Billiton Ltd:配当額-普通株

図 2 - 1 - 7 BHP内部留保

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 30 ─ 2 .1 .2 個社概況

世界最大の資源会社と自他共に認める同社だが前年の2015/2016年度は2001年の合併 後、初の赤字決算を計上。その結果を受けてAndrew Mackenzie CEOは、更なるコスト 削減等を通じた生産性の向上及び有利子負債の削減を重視することを宣言し、同社の経営 に当たった。 生産面では低操業コストの優良大型案件での生産量拡大を狙い、銅で 5 %、鉄鉱石で 4 %以上、原料炭で 3 %のそれぞれ前年度比の増産目標を年度初めに掲げた。 しかしながら、銅においては2017年 2 ~ 3 月に発生した世界最大の銅鉱山であるチリ のEscondidaにおける 1 か月以上にわたるストライキと、2016年 9 ~10月に掛けて豪州の SA州で発生した大規模停電の影響によるOlympic Damの操業停止があり、結果として前 年度比16%の減産となった。 鉄鉱石は豪/WA州のJimblebarでの鉱石処理設備の設置による能力アップ等が貢献し、 過去最高の生産量を記録、当初の目標値を達成した。一方、原料炭は豪/QLD州のPeak Downs及びSarajiにおいて過去最高の年産量を記録するも、2017年 4 月に東海岸を襲っ たサイクロン・デビーにより鉄道輸送網がダメージを受け、全体としては前年度比 6 %の 減産となった。 従い、豪州の鉄鉱石事業のキャッシュコストは前年度比 3 %の改善が見られるも、生産 が低迷したEscondida銅鉱山は前年度並み(ただしストライキの影響を控除すれば17%の 改善)、豪/QLD州の原料炭事業は前年度比 8 %のコスト増となった。 しかし、決算期間を通じた資源価格の上昇基調、特に鉄鉱石と原料炭価格の追い風を受 けて収益は大幅に改善、一昨年度を上回る好決算を記録した。 同社は今回の2016/2017年度の決算発表時に、米国の陸上石油資産は非中核資産と整理

したことを発表、その後の中核事業領域での優良案件の拡張/開発の報道(豪/Olympic - 2 1

Dam銅・ウラン鉱山の拡張、豪/South Flank鉄鉱石鉱山の開発等)と併せて解釈するに BHP Billiton つけ、「鉄鉱石」「銅」「原料炭」のとりわけ「大型案件」への優先的な取組姿勢が鮮明に わかる。

(豪ドル) (株) 28 80,000,000

26 70,000,000 60,000,000 24 50,000,000 22 40,000,000 20 30,000,000 18 20,000,000

16 10,000,000

14 0 2016 年 3 月 2016 年 4 月 2016 年 5 月 2016 年 6 月 2016 年 7 月 2016 年 8 月 2016 年 9 月 2017 年 1 月 2017 年 2 月 2017 年 3 月 2017 年 4 月 2017 年 5 月 2017 年 6 月 2017 年 7 月 2017 年 8 月 2017 年 9 月 2016 年 10 月 2016 年 11 月 2016 年 12 月

出来高(BHP Billiton Ltd) BHP Billiton Ltd

(参考)図 2 - 1 - 8 BHP Billiton株価推移

─ 31 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .1 .3 BHP Billitonの鉱種別アセット所在地

United Kingdom Production Unit

Corporate Office

Jansen Potash

Onshore US

Offshore Gulf of Mexico

- 2 1 BHP Billiton

Trinidad and Tobago Production Unit

Cerrejón

Algeria Joint Interest Unit Marketing Head Office Antamina Australia Production Unit

Newman Pampa Norte Area C Caval Ridge Escondida Olympic Dam Saraji Nickel West

Peak Downs

Global Headquarters

Mt Arthur

Australia Joint Interest Unit

BHP Billiton 銅・ニ ッ ケ ル 鉄鉱石 石炭 石 油・カ リ ウ ム 事業所

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 32 ─ United Kingdom Production Unit

Corporate Office

Jansen Potash

Onshore US

Offshore Gulf of Mexico

- 2 1 BHP Billiton

Trinidad and Tobago Production Unit

Cerrejón

Algeria Joint Interest Unit Marketing Head Office Antamina Australia Production Unit

Newman Samarco Pampa Norte Area C Caval Ridge Escondida Olympic Dam Saraji Nickel West

Peak Downs

Global Headquarters

Mt Arthur

Australia Joint Interest Unit

BHP Billiton 銅・ニ ッ ケ ル 鉄鉱石 石炭 石 油・カ リ ウ ム 事業所

─ 33 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .1 .4 オペレーション別の生産量

Mt Kt 250 1,250 14.5 5.4 166.2 184.4 124.5 10.9 27.0 202.8 200 19.0 22.5 1,000 10.6 14.2 16.1 18.7 232.6 233.1 249.6 166.3 11.0 251.4 7.5 21.5 13.4 150 8.4 65.4 750 107.7 68.5 68.6 67.4 139.7 143.5 254.3 178.5 146.4 60.1 171.3 177.1 133.8 100 48.7 500 189.9 47.0 50.0 46.8 44.7 133.4 0.8 50 1.1 250 478.1 485.7 526.8 63.7 65.9 68.3 373.1 44.6 56.9 310.3 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Newman Yarrie Area C JV Yandi JV Escondida Escondida(Sx-Ew) Antamina Jimblebar Wheelarra Samarco Pinto Valley Pampa Norte Olympic Dam

図 2 - 1 - 9 鉄鉱石 図 2 - 1 -10 銅

Kt Kt 250 150 1.0 200 1.5 2.1 100 150 71.9 66.4 52 213.4 100 186.5 50 151.6 87.5 50 56.3 57.9 60.0 55.4 3.7 5.5 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

- 2 1 BHP Billiton Cannington Antamina Cannington Antamina

図 2 - 1 -11 鉛 図 2 - 1 -12 亜鉛

Kt Kt 6,000 1,500 5,000 1,250 1,262 1,205 264 266 4,000 1,103 1,000 154 104 3,000 750 96 89 222 40 2,000 3,916 500 3,675 3,181 665 715 1,000 250 581 0 0 0 0 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Worsley Alumar Hillside Bayside Alumar Mozal

図 2 - 1 -13 アルミナ 図 2 - 1 -14 アルミニウム

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 34 ─ Kt Mt 200 50 7.2 0.5 40 7.5 0.1 150 7.0 7.1 6.6 6.6 30 7.9 100 5.7 103.3 98.9 89.9 20 33.9 33.4 31.5 50 29.3 80.7 85.1 10 22.6 50.8 44.3 33.7 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

BHP Alliance BHP Mitsui Coal Cerro Matoso Nickel West IndoMet, Haju Illawarra

図 2 - 1 -15 ニッケル 図 2 - 1 -16 原料炭

(図 2 - 1 - 9 ~図 2 - 1 -16:Annual Report等をもとに株式会社クラリテ作成)

- 2 1 BHP Billiton

─ 35 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .1 .5 主なトピックス(16年会計年度:2016年 7 月 1 日~2017年 6 月30日)

月日 鉱種 ニュース

2016年 ニッケル BHP Billiton、WA州Nickel WestのVenusニッケル鉱床の開発開 8月1日 始を決定 2016年8月1日、ニッケル価格が40%回復したことにより、BHP Billiton(BHPB)がWA州Nickel WestのVenusニッケル鉱床の開 発開始を決定したことを地元紙が報じた。 ニッケル価格は2016年2月中旬に7,595US$/tまで下落したが、 インドネシアからの未加工鉱石輸出禁止、豪州QLD州のYabuluニッ ケル製錬所の閉鎖等により、ニッケル価格が上昇に転じて現在 10,695US$/tまで回復している。ニッケル価格の回復により、 BHPBのNickel Westの収益もマイナスからプラスになるため、 BHPBは既に開発しているPerseverance鉱床から坑道を延長して Venus鉱床の開発を開始することを決定した。 Venus鉱床は2012年中頃に発見され、資源量740万t(品位:Ni 2.6%)が確認されていたが、2014年にNickel Westの事業見直し により、開発が中断されていた。BHPBにとってNickel Westは非中 核事業に位置付けられているが、直ちに同事業を終了させるよりも、 既存のインフラを利用して10年間Venus鉱床の採掘を行い、10億 A$以上が必要となるNickel Westの原状回復費用を得ることが適切 だとBHPBが判断したことを地元紙が伝えている。 (シドニー事務所 矢島太郎)

2016年 鉄鉱石 Minas Gerais州裁判所、Samarco鉄鉱石鉱山の環境ライセンスを 8月23日 停止

- 2 2016年8月22日付けメディア報道によると、Minas Gerais州裁 1

BHP Billiton 判所はSamarco鉄鉱石鉱山の環境ライセンスを停止した。ブラジル公 共検察Minas Gerais支部からの要請にもとづく措置とされる。 Samarco鉱山は今後、環境ライセンスの再取得に必要な文書の提出の ほ か、Minas Gerais 州 の COPAM(Conselho Estadual de Política Ambiental、州政府環境政策審議会)の承認を受ける必要 がある。 2015年11月の廃さいダム決壊事故に伴い停止した操業の再開をめ ざすSamarco鉱山は、操業ライセンスの再取得を進めており、6割操 業に関するライセンスについて地元政府の承認を得たものの、連邦政 府及び州政府での審査は継続中のままとなっていた。2016年7月、 BHP Billiton(50%権益)は、Samarco鉱山の操業再開に向けた ライセンスの年内取得は困難との見通しを発表していた。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 36 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 その他 BHP Billiton、CEOや上級幹部へのボーナスを削減 9月6日 2016年9月1日付けの地元紙によれば、BHP BillitonのAndrew Mackenzie CEOは自分自身への短期ボーナスを支給しないことと し、同社報酬委員会はこの申し出を承認した。これは2015年11月に 発生し19名が死亡したブラジルのSamarco鉄鉱石鉱山の尾鉱ダムの 決壊事故やコモディティ価格の下落により2015/16年度の決算で過 去最大の63.9億US$の損失を計上したことを受けた措置である。 同CEOの年間の基本給は170万US$であるが、直近の報酬報告に よれば同CEOには最大で400万US$の短期ボーナスが支払われるは ずであった。また、他の上級幹部のボーナスも減額される予定である。 2015/16年度においてBHP Billitonの株価は32%下落し、また、 通年での配当は前年度比76%減の30US¢とし、従前続けていた毎年 の配当の増額を取り止めている。 (シドニー事務所 山下宜範)

2016年 銅 SolGold社、Cascabel銅・金・銀プロジェクトを巡るBHP Billiton 10月14日 金 の提案を拒否 銀 2016年10月10日、SolGold社(本社豪ブリスベーン)は、同社 株式の10%を30百万US$で買収し、取締役会に役員を派遣する BHP Billitonグループの10月8日の提案を拒絶すると発表した。ま た、同社の進めるCascabel銅・金・銀プロジェクト(Imbabura県) に関しBHP Billitonが提示した、SolGold社の持つ85%権益のうち 70%を275百万US$で買収する案について、SolGold社取締役会 は、同社及び同社株主にとって最善の提案ではなく、Newcrest

Mining社(本社豪州メルボルン)及びカナダの投資会社Maxit - 2 Capital LP社との33百万US$の資金調達契約を優先させることを決 1 BHP Billiton 定した。SolGold社は、8月30日、Newcrest Mining社が、同社株 を10%取得することを、同社取締役会が全会一致で決定したと発表し ていた。 2016年10月13日、SolGold社は、株主総会が97%以上の賛成 でNewcrest社側提案を可決し、BHP Billiton側提案を否決した旨発 表した。 同プロジェクトは世界的な規模の銅・金ポーフィリーシステムと目 されており、現在まで土壌地化学探査25km2、IP探査及び電磁探査 23km2、ボーリング調査延べ23,700mが実施され、さらに今後12 か月にわたりボーリング調査が計画されている。同プロジェクトの14 件の鉱徴地のうち、優先的に探鉱されているAlpalaターゲットについ て、同社は2016年中に資源量に関する発表を計画している。 (リマ事務所 迫田昌敏)

─ 37 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 ニッケル BHP Billiton、WA州Nickel West事業を2032年まで延長 10月24日 2016年10月20日、BHP Billiton(BHPB)が実施するWA州 Nickel West事業のEduard Haegel代表は、当初2023年に終了す る予定だった同事業を2032年まで延長することをパースで開催され たニッケル会議(Paydirt Nickel Conference)で発表した。同代 表は今後、Mt Keith鉱山の滑石を伴うニッケル鉱床の採掘を行うこと で同鉱山のマインライフを延長する計画であることと、2011年に同 鉱山の鉱石処理施設に対して1億5,200万A$を投じて滑石を多く含む ニッケル鉱石に対応するための改良を既に施しており、5年間問題な く稼働しているため、滑石を伴う鉱石処理にも問題がないことを説明 した。また、新規の鉱山開発を行うことはコストがかかりすぎて難し いため、BHPBは既存鉱山周辺の衛星鉱床の開発に着目しており、現 在Leinster鉱山のB11鉱床の開発可能性について検討していること についても言及した。同代表は衛星鉱床を開発することで可能なら 2038年までNickel West事業を継続したいとコメントした。 BHPBは2014年5月にMt Keith鉱山、Cliffs鉱山及びLeinster 鉱山並びにKalgoorlie製錬所、Kambalda選鉱所等からなる同社の Nickel West事業の売却を発表したが売却先が見つからなかったた め、2014年11月にノンコア事業としてBHPBが引き続き実施する ことを決定した。Kalgoorlie製錬所は第三者からのニッケル鉱石供給 に大きく依存しているが、最近は第三者からのニッケル鉱石の供給量 が減少している状況である。ニッケル価格が回復していることにより、 BHPBは2016年8月に既に開発しているPerseverance鉱床から坑 道を延長してVenus鉱床の開発を開始することを決定している。

- 2 1 (シドニー事務所 矢島太郎) BHP Billiton 2016年 銅 BHP Billiton、SA州Olympic Dam鉱山が再び停電、操業が4時間 12月5日 ウラン 停止 2016 年 12 月 1 日、 地 元 各 紙 は、BHP Billiton(BHPB) の Olympic Dam銅・ウラン鉱山が再び停電に見舞われ、操業が4時間 停止したことを報じた。BHPBのAndrew Mackenzie CEOはSA州 政府が安定的な電力供給をないがしろにして再生可能エネルギーの積 極的な導入を進めていることを強く批判した。さらに、再生可能エネ ルギーだけに依存することは避けなければならないとコメントした。 Josh Frydenberg環境・エネルギー大臣は、「再生可能エネルギー への転換を急速に進めたことに対する警鐘であり、今後は安定的な電 力供給を最重要視しなければならない」とコメントしている。一方、 SA州のTom Koutsantonis首相は、「BHPBはOlympic Dam鉱山 の停電時のバックアップを自分で準備するべきである」と反論してい る。 同鉱山は2016年9月28日に発生したSA州の大停電により、9月 28日~10月13日にかけて電力の供給が停止し、BHPBは1億A$に 上る損害を被っている。BHPBは2016/17年度の年間生産目標とし て掲げた年間銅生産量20万tを維持することが可能か確認している最 中だった。 (シドニー事務所 矢島太郎)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 38 ─ 月日 鉱種 ニュース

2017年 鉄鉱石 BHP Billiton、2016年下期の鉄鉱石生産量は過去最高の1億 1月30日 銅 1,800万tを記録 2017年1月25日、豪州鉄鉱石生産第2位のBHP Billitonは 2016年7~12月半期報告書を公表した。同社の2016年下期の鉄鉱 石の生産量は1億1,800万tであり、前年同期と比べ4%増加した。同 社の半年間の鉄鉱石生産量として過去最高を記録した。2014年に操 業開始したWA州Jimblebar鉄鉱石鉱山からの生産量を増加したため と説明している。同社の2016/17年度の鉄鉱石の生産目標は2億 6,500万~2億7,500万tであり、目標量は変更しない予定である。 一方、同社の2016年下期の銅の生産量は71万2,000tにとどま り、前年同期と比べ7%減少した。同社のチリ及びペルーの鉱山の銅 生産量が低下したことなどが原因と説明している。さらに、SA州 Olympic Dam銅・ウラン鉱山は2016年9月28日から10月14日に かけて発生した大規模な停電によって操業が停止したことも影響した。 銅の生産量が低下したため、同社は同年10月に2016/17年度当初の 銅の生産目標を166万tから162万tに2%引き下げている。 (シドニー事務所 矢島太郎)

2017年 その他 BHP Billiton、2016年7~12月半期は大幅な利益増 2月27日 2017年2月21日、BHP Billitonは2016年7~12月半期報告を 発表した。半年間の基礎的利益(underlying profit)は32億400 万US$と大幅な増加となった。前年同期は56億6,900万US$の損失 を計上していた。また、同期の収益は188億US$となり、前年同期の 157億1,000万US$を20%上回った。EBITDAは98億9,600万

US$となって前年同期の59億9,400万US$を65%上回った。業績 - 2 の回復について同社は近年のコア事業への集中と生産性向上への取り 1 BHP Billiton 組みと、鉄鉱石と石炭価格の上昇が後押しした結果であると説明して いる。 同社は負債を前年の259億2,100万US$から200億5,700万 US$に23%削減し、さらに株主への配当を前年1株当たり16US¢か ら40US¢に引き上げる。同社の2016年の設備投資・探鉱費用は27 億2,700万US$にとどまったが、2017年に56億US$、2018年 度に63億US$を投じる計画である。同社は引き続き負債削減を最重 要課題とするとコメントしている。 (シドニー事務所 矢島太郎)

─ 39 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2017年 銅 BHP Billiton、2017年1~3月四半期は銅生産量が前年比44%減、 5月2日 鉄鉱石 生産目標を引き下げ 2017年4月26日、BHP Billitonは2017年1~3月四半期操業実 績を発表した。同四半期において、チリのEscondida銅鉱山のストラ イキによる操業停止の影響で銅の生産量が22万7,000tにとどまり、 前年同期の生産量より44%減少した。同社は2016/17年度の銅の生 産目標を162万tから133~136万tに引き下げた。 また、3月末に豪州QLD州に上陸したサイクロンDebbieが鉄道に 大きな被害を及ぼしたことにより、好調だった原料炭の生産が停滞し たため、同社は2016/17年度の原料炭の生産目標も4,400万tから 3,900~4,100万tに引き下げた。 WA州における鉄鉱石の生産は雨の影響を受けたが、Jimblebar鉄 鉱石鉱山に新しい鉱石破砕装置を導入したことにより、生産はほぼ順 調に推移して1億7,100万tとなり、前年同期より1%の微増となっ た。同社は2016/17年度の鉄鉱石の生産目標を2億2,800万~2億 3,700万tから2億3,100万~2億3,400万tに狭めている。今後、年 間8,000万tを生産しているYandi鉄鉱石鉱山が5~10年で枯渇する ため、同社はSouth Flank鉄鉱石鉱床の開発を進める計画である。 (シドニー事務所 矢島太郎)

2017年 その他 BHP Billitonが41百万US$の鉱業投資 6月23日 2017年6月20日、エクアドルJavier Córdova鉱業大臣は、同国 でBHP Billitonが41百万US$の鉱業投資を約束したと発表した。探 鉱対象はImbabura県の2地区で、同社子会社が今後4年間探査を行う

- 2 計画。同大臣は、この背景として、同国の鉱業税制条件、安定性、法 1 的確実性が評価されたものであると述べた。Imbabura県の2地区が具 BHP Billiton 体的にどこであるかについては、発表では明らかにされていない。 また、2017年6月18日付け地元紙は、同社が、エクアドル鉱業公 社Enami EP社がチリCODELCOとのJVで進めるLlurimagua銅プ ロジェクト(Imbabura県)への参画提案を、CODELCOに対して 行ったと報じた。 (リマ事務所 迫田昌敏)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 40 ─ 月日 鉱種 ニュース

2017年 鉄鉱石 BHP Billiton、South Flank鉄鉱石鉱山プロジェクトへの初期投資 6月28日 を決定 2017年6月26日、BHP Billitonは、WA州のPilbara地域中央部 で実施予定のSouth Flank鉄鉱石開発プロジェクトに対して1億 8,400万US$(2億4,400万A$)の初期投資を行うことを承認した と発表した。BHP Billitonはこれにより建設関連の雇用などが生み出 されるとしている。 South Flankプロジェクトは既存のMining Area C鉄鉱石鉱山を 拡張するものであり、生産量8,000万t/年(100%ベース)の Yandi鉄鉱石鉱山が2020年代初めから中盤の間にマインライフが終 了することから、South FlankプロジェクトがYandi鉱山を置き換え るものと期待している。 BHP Billiton で は 2018 年 の 中 盤 に 取 締 役 会 に お い て South Flankプロジェクトの実施を承認し、2021年に鉄鉱石の生産を開始 する目標を立てている。同社によれば、South Flankプロジェクト は、高品位の鉄鉱石を産出し、剥土比は豪州西部の同社の鉄鉱石鉱山 の平均程度である。操業の際にはMining Area C鉱山の既存のインフ ラを使用する予定である。 (シドニー事務所 山下宜範)

- 2 1 BHP Billiton

─ 41 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .1 .6 経営者のメッセージ(2017年 9 月20日発行アニュアルレポート2017)

数年にわたり熟慮を重ねた周到な取り組みの結果、BHPは強化、簡略化され、生産性が 向上

Ken MacKenzie 会長

株主の皆様へ

BHPの会長に就任し、今回執筆する機会を得たことは名誉であり光栄に思う。最初に、 取締役会を過去 7 年間にわたりけん引したJac Nasser前会長の貢献に謝意を表す。同氏 の在任中の取締役会及びグループに対する優れた貢献に感謝する。強力なリーダーシップ と賢明な助言を失うことは残念であるが、当社に残された遺産はこれからも引き継がれ る。

会長に就任後、私は過去 3 か月のほとんどの時間を世界中の株主及び利害関係者と積極的 に関わることに費やし、彼らの視点をより理解することに努めた。今後も投資家と常に積 極的に関わる予定である。

昨年取締役会に加わってから、世界各地にある当社の多くの施設を訪問する機会を得て、

- 2 現場からBHPをより理解しようと努めた。訪問先として、西オーストラリア州のPilbara 1

BHP Billiton の鉄鉱石鉱山、クイーンランド州の石炭鉱山、カナダのJansenカリウムプロジェクト、 米国の海洋及び陸上油田、チリの銅鉱山が挙げられる。これらの訪問は貴重な経験であ り、BHPが株主に対して長期にわたり価値を創造し続ける強みと可能性を新たに認識し た。

BHPの一流の資産は、商品サイクルのほぼすべての局面で多額のキャッシュを創出して いる。今後のキャッシュの配分方法が、どれだけの株主価値を創造するのかを左右する重 要な決定要因となる。取締役会は、Andrew Mackenzie最高経営責任者が2016年の初め に策定した資本配分枠組みを強く支持する。しかし、これは枠組みに過ぎず、策定以来、 取締役会と経営陣はともにその実践の強化に取り組んでおり、現在も進行中である。

取締役会は株主へのキャッシュ還元の重要性を認識している。配当政策では、各期の基礎 的帰属利益の配当性向を50%以上に設定している。取締役会は2017年度(注:2016年 7 月~2017年 6 月)の期末配当額を 1 株当たり0.43US$に決定し、同期に創出されたフリー キャッシュフローを原資とする。期末配当額の内訳は、 1 株当たりの最低支払額と追加の 0.1US$となっている。資本配分枠組みに忠実に従うことによって、透明性の高い一貫し た方法で、資本投資、株主へのキャッシュ還元及びバランスシートの強化を通じた価値創 造の均衡を保っている。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 42 ─ 取締役会はSamarcoの悲劇に重点的に取り組み続けている。2017年度に現在操業してい ない合弁事業が検証され、この一環として明らかにされた措置の多くに取り組んだ。

我々は、現在操業していない合弁事業におけるBHPの権益の管理要件を取り決める世界 基準を策定した。これらの最低限の基準には、現在操業していない合弁事業がBHPにも たらすリスクの特定・管理のための枠組みが含まれており、全社的なリスクを特定・管理 するリスク管理の枠組みに沿った内容になっている。

BHPのリスクを効果的に掌握・管理するのに必要なスキル、経験及び特性を有する、取 締役会の後継者探しには、体系的で厳格なアプローチを取っている。こうすることで、取 締役会は適切なバランスを取り、目的に適合し続けている。

今年、John Schubert氏とPat Davies氏が取締役を退いた。また、Malcolm Brinded氏 とGrant King氏が2017年の年次総会で取締役に立候補しない予定である。これらの退任 を控えた取締役全員に謝意を表するとともに、今後の幸運を祈る。

次世代取締役育成計画に沿って、2017 年 10 月 1 日 付 け で Terry Bowen 氏 と John Mogford氏が非業務執行取締役に任命された。両氏は豊富な経験を有しており、BHPの 取締役会に多大な貢献をしてくれることだろう。

数年にわたる熟慮を重ねた周到な取り組みの結果、BHPは強化、簡略化され、生産性が

向上した。Andrew Mackenzie最高経営責任者がリーダーを務める当社の経営陣は世界 - 2 1

有数のレベルにあり、私はその経営陣を支援し、すべての株主に対して長期にわたる価値 BHP Billiton を創造することを楽しみにしている。

当社のために力を尽くしていてくれることに謝意を表したい。

Ken MacKenzie 会長

─ 43 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 過去 5 年間に当社は、リターンを大幅に改善し、価値を高めるための基盤を構築

Andrew Mackenzie 最高経営責任者

株主の皆様へ

今日の課題に対応するためには、数十年及び数世代の単位で考えなければならない。 BHPは長期にわたり計画・遂行・投資する能力を有しており、これが常に競争優位性の 源泉となってきた。

過去 5 年間に当社は、リターンを大幅に改善し、価値を高めるための基盤を築いてきた。 この周到なプロセスの成果が2017年度の実績に表れていることは明らかである。

安全は常に当社の最優先事項である。痛ましいことに、過去 1 年の間に社員 1 名が2016 年10月にチリのEscondida鉱山で、もう 1 名が2017年 8 月に豪州のGoonyella Riverside 鉱山で作業中に死亡した。命を失った 2 名のご家族、ご友人及び仲間に哀悼の意を表した い。

私を含めてBHP全員にとって最も重要な仕事は、チームのメンバーが一日の終わりに無 事に帰宅できるように徹底することである。安全実績を改善し、合計記録可能傷害回数

- 2 (total recordable injury frequency)を100万労働時間当たり4.2に減少させた一方で、 1

BHP Billiton リスクに加えてBHPで働く全員の健康と安全を守るために策定されるべき重要な管理及 びリスクを社員が理解するためのサポートに新たに取り組んだ。

当社の新たな 5 年間の持続可能性実績目標は2017年 7 月 1 日からスタートした。この目 標は、利害関係者に対する持続可能性についての当社の公式声明であり、パリ協定及び国 連の持続可能な開発目標への関与とリンクしている。また、これはBHPでの働き方の中 心を占めており、我々は実績を通じて前向きな変化を生み出す決意である。

2017年度の財務及び業務実績は好調であった。すべての操業資産のフリーキャッシュフ ローはプラスで、合計126億US$となった。バランスシートの強化と株主への44億US$の 還元のためにこのキャッシュを使用した。

過去 1 年の間に多くのことを成し遂げたが、これで立ち止まるわけではない。キャッシュ フローの最大化、投資方針の厳格な適用及び価値とリターンの向上に取り組んでいる。

当社は、資本配分枠組みに従って、株主へのキャッシュ還元を含めて資本を一貫してかつ 透明性を持って配分している。

2017年度の好業績は、BHPの社員の勤勉さと情熱による成果である。この好業績は個々

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 44 ─ のチームが一丸となった時に達成できることの証左と言えよう。

最も多様なチームが、最も優れた業績を上げることを当社は理解しており、業績がこのこ とを物語っている。こうした理由から、2025年度までに男女間の雇用機会均等を達成す るという意欲的な目標を昨年の年次総会で発表したことを誇りに思っている。過去 1 年間 に大きく前進したが、まだ道のりは長い。

過年度には多くのことを、その中でもとりわけ、大胆かつ創造的に思考し、全力を引き出 すことができる人物を世界は必要としていることを学んだ。世界は大きく構想できる人物 を必要としている。BHPのような企業において、イノベーション、生産性向上及び技術 を通じて進歩するか否かは自分次第である。発言し、透明性を維持することは、当社の責 任である。

当社とともに歩む、社員、株主、サプライヤー、お客様、受け入れてくれている地域社会 に感謝を申し上げる。全世界数百万人の生活を向上させ、世界経済の成長をけん引するた めに、我々はともに働いている。

また、BHPそして私自身にとっても強さとリーダーシップの源泉であった退任されたJac Nasser前会長に対しても過去10年間の貢献に謝意を表する。同氏の並外れた遺産と功績 は今後も忘れられることはない。

BHPは新任のKen MacKenzie会長とともに将来に向けて有利な態勢にある。取締役会と - 2 1

ともに、2018年度以降も株主価値を高め、リターンを増やすことを楽しみにしている。 BHP Billiton

Andrew Mackenzie 最高経営責任者

─ 45 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .2 Rio Tinto

2 .2 .1 企業概要

設立: 1873年 本社: ロンドン(英国) 上場先: LSE / ASX / NYSE

決算期: 12月末 CEO: Jean-Sébastien 連結従業員数: 54,938名 Jacques(16年7月~)

主な生産鉱種:

Pt 石 石 ガ Fe Cu Al Zn Pb Au Ag DIA K P Pd 炭 油 ス

Ni Mn Mo Nb Cr Ti Co Li B U

■経営数値■ (mU$) (%) (mU$) 60,000 5 16,000 0 14,000 50,000 12,000 40,000 -5 10,000 -10 8,000 30,000 -15 6,000 20,000 4,000 -20 2,000 10,000 -25 0 0 -30 -2,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 -4,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Rio Tinto plc:売上高 Rio Tinto plc:EBIT Rio Tinto plc:Net Income Rio Tinto plc:前年度比成長率 Rio Tinto plc:営業 CF

図 2 - 2 - 1 Rio Tinto売上 図 2 - 2 - 2 Rio Tinto利益

% 50,000 0.7 140,000 45 45,000 0.6 120,000 44 - 2 40,000 43 2 35,000 0.5 100,000 Rio Tinto 30,000 42 0.4 80,000 25,000 41 20,000 0.3 60,000 40

U$ million 39 15,000 0.2 U$ million 40,000 10,000 38 5,000 0.1 20,000 37 0 0.0 0 36 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Rio Tinto plc:有利子負債 Rio Tinto plc:自己資本 Rio Tinto plc:総資産 Rio Tinto plc:自己資本 Rio Tinto plc:DER Rio Tinto plc:自己資本比率

図 2 - 2 - 3 Rio Tinto負債 図 2 - 2 - 4 Rio Tinto資産

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 46 ─ % 5.0 120 % % 4.0 100 20 25 3.0 15 20 80 2.0 10 15 60 10 1.0 5 40 5 0.0 20 0 0 -1.0 -5 -5 -2.0 0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 -10 -10 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 Rio Tinto plc:潜在株式調整後 EPS Rio Tinto plc: ROE Rio Tinto plc: ROA Rio Tinto plc:一株当たり年間配当金 Rio Tinto plc: EBIT 利益率 Rio Tinto plc: Net Income 利益率 Rio Tinto plc:配当性向

図 2 - 2 - 5 Rio Tinto収益性 図 2 - 2 - 6 Rio Tinto配当

14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000

U$ million 2,000 0 -2,000 -4,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Rio Tinto plc:内部留保額 Rio Tinto plc:当期純利益 Rio Tinto plc:配当額-普通株

図 2 - 2 - 7 Rio Tinto内部留保

- 2 2 Rio Tinto

─ 47 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .2 .2 個社概況

2015年は数10億US$単位の巨額の為替差損及び減損を計上したため、2012年以来の赤 字決算となった。斯かる決算結果及び取り巻く厳しい市場環境を踏まえ、同社は2016年 以降、更なるコスト削減を進めることを発表した。 その後、2016年 3 月には新CEOとしてJean-Sébastien Jacques氏の就任を発表、以降、 特に事業の選択と集中においてそれまでにも増してエッジの利いた決断が見られる様に なった。 全社員の昇給凍結、人員削減にまで踏み込んだコスト削減を進める一方、注力事業と位 置付ける「世界級」の案件、即ち、豪/WA州Pilbara地区のSilvergrass鉄鉱石プロジェ クト、モンゴルのOyu Tolgoi銅・金鉱山及び豪/QLD州のAmrunボーキサイトプロジェ クトについては積極的に資金を投入し将来の生産開始に向けて着々と準備を進めた。 同社の方針で興味深いのは、たとえ注力事業領域であっても案件毎に中核/非中核の選 別を積極的に進めている点である。銅事業におけるインドネシアのGrasberg鉱山は資産 としては「世界級」であっても、同社にとって「世界級」の事業かどうかについて疑問を 呈し、アルミニウム事業についてはバリューチェーンの中流に位置する製錬事業の内一部 からの撤退の方向性を打ち出した。 生産/販売は豪/WA州の鉄鉱石は港湾と鉄道のメンテナンスの影響を受け当初の見込み を下回ったものの前年比増、アルミニウムは当初の目標を上回っての前年比増と好調、銅 はチリ/Escondida鉱山の鉱石品位低下、インドネシア/Grasberg鉱山のストライキの影 響で前年比増ではあるが目標を10%以上下回るも、コスト削減効果に加えて期中の石炭 及び鉄鉱石価格の上昇を受け、2016年は見事Ⅴ字回復の決算を達成した。 同社は取扱商品ラインナップにホウ酸、工業塩やダイヤモンドを並べている点が他社に 比しユニークで、その延長線上であってか、セルビアでリチウム・ホウ酸塩プロジェクト を推進中である。また加/Potash Corporation of Saskatchewan(PotashCorp)と加/ Agriumの合併の際の条件としてのPotashCorpが保有するチリのリチウム企業の Sociedad Química y Minera de Chile(SQM)の株式売却時の候補先としても取り沙汰 され、他社に先駆けて推進中の豪/鉄鉱石事業における自動輸送等、独自路線の進展が今

- 2 2 後益々興味深い。 Rio Tinto

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 48 ─ (英ペンス) (株) 4,000 30,000,000

25,000,000 3,500

20,000,000 3,000 15,000,000 2,500 10,000,000

2,000 5,000,000

1,500 0 2015 年 9 月 2016 年 1 月 2016 年 2 月 2016 年 3 月 2016 年 4 月 2016 年 5 月 2016 年 6 月 2016 年 7 月 2016 年 8 月 2016 年 9 月 2017 年 1 月 2017 年 2 月 2017 年 3 月 2015 年 10 月 2015 年 11 月 2015 年 12 月 2016 年 10 月 2016 年 11 月 2016 年 12 月

出来高( Rio Tinto plc) Rio Tinto plc

(参考)図 2 - 2 - 8 Rio Tinto社の株価変動

- 2 2 Rio Tinto

─ 49 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .2 .3 Rio Tintoの鉱種別アセット所在地

Diavik

Headquarters ISAL (London) Chute-des-Passes Alma La terrière

Oyu Tolgoi Chute-à-la-Savane

Kitimat Arvida Dunkerque Jadar Bingham Canyon Iron Ore Company of Canada Kennecott Sept-Îles Grande-Baie (Alouette) Jonquière (Vandreuil)

Boron Operation Bécancour

Sohar

Grasberg Sangaredi São Luis

Energy Resource Porto Trombetas of Australia Dampier Salt Argyle

- 2 Rössing Amrun (Weipa) 2 RobeRiver Rio Tinto Gove QIT Hamersley

Queensland Escondida Pilbara Alumina Hope Downs Boyne Island Richards Bay Hail Creek Yarwun Kestrel Tomago

Headquarters HIsmelt (Melbourne)

Tiwai Point Bell Bay

Rio Tinto 銅 鉄鉱石 石炭 ダ イ ヤ モ ンド ホ ウ 素 ・リ チ ウ ム チタン ウラン 事業所 工業塩 ア ルミニウム ボ ー キ サ イト・ア ル ミ ナ

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 50 ─ Diavik

Headquarters ISAL (London) Chute-des-Passes Alma La terrière

Oyu Tolgoi Chute-à-la-Savane

Kitimat Arvida Dunkerque Jadar Bingham Canyon Iron Ore Company of Canada Kennecott Sept-Îles Grande-Baie (Alouette) Jonquière (Vandreuil)

Boron Operation Bécancour

Sohar

Grasberg Sangaredi São Luis

Energy Resource Porto Trombetas of Australia Dampier Salt Argyle

- 2 Rössing Amrun (Weipa) RobeRiver 2 Gove Rio Tinto QIT Hamersley

Queensland Escondida Pilbara Alumina Hope Downs Boyne Island Richards Bay Hail Creek Yarwun Kestrel Tomago

Headquarters HIsmelt (Melbourne)

Tiwai Point Bell Bay

Rio Tinto 銅 鉄鉱石 石炭 ダ イ ヤ モ ンド ホ ウ 素 ・リ チ ウ ム チタン ウラン 事業所 工業塩 ア ルミニウム ボ ー キ サ イト・ア ル ミ ナ

─ 51 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .2 .4 オペレーション別の生産量

Mt Kt 60,000 300 3,646 35.4 3,555 3,322 34.5 50,000 3,456 3,361 8,192 250 10.7 9,307 7,788 33.8 10.4 23.5 10,041 8,134 200 8.7 22.4 40,000 32.7 33.1 21.4 8.3 9.0 16.9 150 15.4 30,000 43,677 47,703 100 195.8 211.7 20,000 39,363 43,204 41,871 169.7 142.5 150.0 50 10,000 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Hamersley Hope Downs IOC Robe River Bauxite Alumina Aluminium

図 2 - 2 - 9 鉄鉱石 図 2 - 2 -10 アルミニウム

Kt k ounces 750 800 26.5 25.7 49.8 40.4 72.7 6.3 7.7 53.8 91.6 90.5 67.8 67.5 252.2 93.1 600 500 97.9 93.6 179.0 279.0 192.3 336.5 341.3 400 197.3 314.2 135.4 303.1 52.6 3.1 344.7 6.0 27.0 2.3 250 58.0 49.3 219.0 100.5 29.0 28.3 200 39.8 211.0 259.8 26.6 163.2 204.3 152.7 200.0 206.7 92.0 130.8 153.2 0 0 1.0 0.4 0.4 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Bingham Canyon Escondida Escondida(Sx-Ew) Barneys Canyon Bingham Canyon Escondida Grasberg JV Northparks Oyu Tolgoi Grasberg JV Northparks Oyu Tolgoi Palabora Palabora Rio Tinto Kennecott

図 2 - 2 -11 銅 図 2 - 2 -12 金

Kt k lbs U3O8

- 2 15 10,000 2 Rio Tinto 7,500 4,081 10 3,643 5,000 2,798 1,884 5 11.5 9.4 5,679 2,333 7.6 2,500 4,462 5.7 3,023 3,544 2.8 1,757 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Bingham Canyon Energy Resources Rossing

図 2 - 2 -13 モリブデン 図 2 - 2 -14 ウラン

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 52 ─ Mt Mt 15 30

25 0.5 0.3 0.4 10 3.9 4.1 20 3.3 3.2 3.6 0.2 0.6 0.4 15 5 22.5 21.5 10 20.4 18.6 7.9 7.7 7.1 7.9 8.1 17.3 5 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

RTCA RTCM RTCA(Semi Soft) RTCA RTCM US Coal

図 2 - 2 -15 原料炭 図 2 - 2 -16 一般炭

M carats 20 0.1 0.3 4.0 15 0.3 3.8 0.3 4.3 4.3 10 4.3 13.5 14.0 11.4 5 8.5 9.2

0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Argyle Diavik Murowa

図 2 - 2 -17 ダイヤモンド

(図 2 - 2 - 9 ~図 2 - 2 -17:Annual Report等をもとに株式会社クラリテ作成)

- 2 2 Rio Tinto

─ 53 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .2 .5 主なトピックス(16年会計年度:2016年 1 月 1 日~2016年12月31日)

月日 鉱種 ニュース

2016年 その他 Rio Tinto、2016年の全役職員の昇給を凍結 1月14日 2016年1月14日、地元各紙はRio TintoのSam Walsh CEOが 同社の全役職員に対して2016年の昇給を凍結することを伝えたと報 じた。 報道によると、同CEOは2016年の資源をとりまく環境が昨年より もさらに厳しくなることが見込まれるため、自社が生き残るために昇 給の凍結が必要と説明している。また、資源価格の低迷は一時的なも のではないため、新しい標準が必要となっているとして、同社の役職 員に理解を求めている。今後もコスト削減無しに成長することはあり えないとして、旅費等のコスト削減も徹底していく方針が同CEOから 伝えられた。 (シドニー事務所 矢島太郎)

2016年 その他 Rio Tinto、新CEOにJean-Sébastien Jacques氏が就任予定 3月21日 2016年3月17日、Rio Tintoは7月1日にCEOのSam Walsh氏 が引退し、7月2日に後任として現在銅及び石炭部門代表のJean- Sébastien Jacques氏(44)が新CEOに就任する予定であること を発表した。CEOの引継ぎを円滑に行うため、Jacques氏は同日付 けで副CEOに就任した。 Jacques氏は2011年10月からRio Tintoに在籍しているが、そ れ以前は、Tata Steel Groupに2007~2011年に在籍していた。 その他、資源業界に15年以上従事し、ヨーロッパ、東南アジア、イン ド、米国で過ごし、アルミニウム、ボーキサイト、鉄鋼に関わった経 歴を有する。 同氏はRio Tintoでは銅及び石炭部門で鉱山の安全性と採算を向上 させ、コスト削減を推進した経歴を有する。同氏はSam Walsh CEO と同様、コスト削減を重視しており、2012年以降20億US$のコス ト削減を実現した。さらに、同氏はモンゴルのオユトルゴイ銅鉱山の 50億US$規模の拡張工事に関し、モンゴル政府と3年間にわたって協 議を行い、認可を取得してさらに40億US$の資金調達まで実施した。 これらの成果により、同氏はRio Tinto内で高く評価され、現在のRio

- 2 2 Tintoの方針を継続して推進する最高の適任者として役員会から新 Rio Tinto CEOに推薦された。 地元各紙は、同氏がRio Tintoの現在のコスト削減を継続し、負債 の削減に取り組む保守的な経営方針を示していることを報じている。 一方、経済アナリストは同氏の過去の協議における手腕から、同氏が 企業買収を積極的に推進することを期待されていると報じている。 (シドニー事務所 矢島太郎)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 54 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 鉄鉱石 Rio Tinto、数か月内にWA州のPilbaraで170名の人員削減 3月22日 2016 年 3 月 15 日 付 け の 地 元 紙 は、Rio Tinto が、WA 州 の Pilbara地区における鉄鉱石の事業において、今後数か月のうちに約 170名の人員削減を行う予定であるとする労組関係者の発言を報じて いる。 同社のPilbara地区の労働者が加盟する西部鉱山労働者連合 (WMWA)によれば、本件は同社から通知され、同社経営陣との間で 最善の対処に向けて協議を行った。協議を通じてWMWAは、人員削減 の多くは支援業務の関係者になると理解している由。またWMWAは Rio Tintoがパースのオフィスにおいても約300名の人員削減を行う と見ている。 2016年3月初旬の地元紙は、Rio Tintoは、WA州の鉄鉱石事業に おいて、前年の800名の人員削減に続いて、さらに700名の人員削減 を行う見込みであると報じていた。同社は2015年に全世界の従業員 を8%以上削減して54,938人としている。また、2016年1月には 従業員に対して2016年には賃上げを実施しない旨を通知するととも に、出張の制限、コンサルタントやコントラクターへの支出の精査を 求めていた。 (シドニー事務所 山下宜範)

2016年 アルミ Rio Tinto、QLD州Weipaボーキサイト鉱山の従業員41名を解雇 4月25日 ニウム/ 2016年4月21日、地元メディアはRio TintoがQLD州Weipa ボーキ ボーキサイト鉱山の従業員41名を解雇したことを報じた。Rio Tinto サイト の広報担当者は、アルミニウム価格(特にアルミナ)の下落とボーキ サイト採掘を実施している他社との競合が熾烈となっていることが原 因と説明している。 現在Rio Tintoは同鉱山で約1,400名の従業員・契約職員を雇用し ている。解雇された41名の内訳は、管理職が6名、技能職6名、営業 職7名、鉱山現場職員が22名と報じられている。なお、Rio Tintoが 現在開発中のAmrunボーキサイト鉱床では従業員の削減は行われない 予定である。 (シドニー事務所 矢島太郎)

- 2 2 Rio Tinto

─ 55 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 リチウム Rio Tinto、Jadarリチウムプロジェクトを戦略的に重視、世界リチ 6月2日 ウム生産の2割を供給へ 2016年6月1日付けメディア報道によれば、ホウ酸塩を主とする工 業 用 鉱 物 を 生 産 す る Rio Tinto Minerals 最 高 責 任 者 の Dean Gehring氏は、セルビアのJadarリチウムプロジェクトについて、同 社にとって戦略的に重要なプロジェクトで自社ポートフォリオの中で も非常に魅力的な投資案件であると発言した。 同プロジェクトがリチウム生産を開始すれば世界生産の2割を占め ると同社は推計している。またこれまで同プロジェクトに7,000万 US$を投じており、2016年2月にはさらに2,000万US$を投じる と発表している。 Jadarリチウムプロジェクトは2004年にRio Tintoが鉱床を発見 しており、セルビアの首都ベオグラードから西方100kmのLoznica 地域に位置し、道路、鉄道及び河川の輸送及び電力、ガス及び通信等 のインフラに恵まれている。 (ロンドン事務所 竹下聡美)

2016年 鉄鉱石 Rio Tinto、WA州ピルバラ地域における無人鉄鉱石運搬列車の開発が 6月20日 停滞 2016年6月20日、地元メディアは、Rio TintoのWA州ピルバラ 地域における無人鉄鉱石運搬列車(AutoHaul)の開発が停滞してい ることを報じた。Rio Tintoは鉄鉱石鉱山から港をつなぐ170kmの 運搬コストを削減し、列車の運行を効率化するために、無人鉄鉱石運 搬列車の導入を決定し、5億1,800万US$を投じて開発を行ってい る。当初の計画では、2014年後期から全長2.3kmの無人列車で鉄鉱 石の輸送を開始する計画であったが、開発が予定よりも2年近く遅れ ている状態にある。 Rio Tintoは無人列車を導入すれば、列車ごとに運転士交代にかか る2時間の時間を削減することができ、より少ないエネルギーコスト で鉄鉱石を運搬することが可能となり、ライバル企業に対して10年の アドバンテージを築くことが可能になると、導入のメリットを紹介し ている。しかし、現在の無人列車の開発状況についてRio Tinto鉄鉱

- 2 石部門のAndrew Harding部門長は、機材とソフトウェアの開発にそ 2 Rio Tinto れぞれ問題が生じているとコメントしており、いつまでに解決される 予定であるかを明言していない。 鉄鉱石価格が2011年のピークから現在は約74%下落したため、無 人列車を導入しても大きな利益につながらない可能性があると、ドイ ツ銀行やCitiグループは指摘している。ピルバラ地域で鉄鉱石鉱山を 操業するBHP BillitonやFortescue Metals Groupもかつて無人列 車の導入を検討していたが、現在は急いで導入する予定はないとそれ ぞれ結論づけている。 (シドニー事務所 矢島太郎)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 56 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 鉄鉱石 Rio Tintoが組織改編を発表、Harding鉄鉱石部門長は退任 6月22日 その他 2016年6月21日、Rio Tintoは2016年7月2日から実施する組 織の改編を発表した。同日に正式にCEOに就任予定のJean- Sébastien Jacques新CEOは、今回の発表に際し、同社の戦略とし てバランスシートの強化と株主へのリターンを重視することに変わり はないが、組織の強化を図り、資産をビジネスの中心に据えて、パ フォーマンスを改善すると述べた。 生産品関連の組織は、アルミニウム部門、鉄鉱石部門、銅・ダイヤ モンド部門及びエネルギー(石炭、ウラン含む)・鉱物部門の4部門が 設置される。従前は銅・石炭部門が存在したが、銅と石炭は分離され ることとなった。この他、技術・イノベーション部門は、成長・イノ ベーション部門に改称される。 なお、今回の組織改編の発表において、同社の最重要ポストの1つ である鉄鉱石部門長の交代も併せて発表された。同社に約25年間勤務 したシニアのAndrew Harding鉄鉱石部門長は2016年7月1日付け で退任する。同氏は、2016年3月にJacques氏の新CEO任命が発 表されるまでは、現CEOのSam Walsh氏の後任としてCEOに就任す る有力候補と見られていた。 Harding氏に代わって鉄鉱石部門長に就任するのは、現在、銅・石 炭部門長代行を務めるChris Salisbury氏(49歳)である。2016 年3月まで同部門長だったJacques新CEOに仕え、同氏の「右腕」で あると地元紙は報じている。 (シドニー事務所 山下宜範)

2016年 金 Rio Tinto、PNGの銅― 金鉱山や豪州の炭鉱等の非中核的な資産を切 7月7日 銅 り離し 2016年6月30日、Rio TintoはPNGのPanguna銅― 金鉱山を運 営するBougainville Copper社(BOC社)の保有株式53.8%分を 無償でPNG政府及び同国Bougainville自治州政府(ABG)に譲渡す るため、これらの株式を信託会社に移管したと発表した。同信託会社 を通じてBOC社の17.4%分がPNG政府、36.4%分がABG政府に無 償で譲渡されることになる。同鉱山は1988年に発生した内戦におい

- 2 て武装勢力からの攻撃を受け27年以上、休眠状態となっていた。 2 また、2016年7月4日には、Rio Tintoが運営するBlair Athol Rio Tinto Coal Joint Venture(BACJV) 社 が TerraCom 社 の 子 会 社 に、 BACJV社が保有する豪州QLD州にあるBlair Athol炭鉱を1A$で売 却することに合意したことが、TerraCom社から発表された。Rio Tinto は、 豪 州 の 炭 鉱 に つ い て は、2013 年 に Clermont 炭 鉱、 2015年にBengalla炭鉱、さらに2016年1月にMount Pleasant 炭鉱の売却を発表している。 同日付けのメディア報道では、これらの動きは非中核的な資産を切 り離していくRio Tintoの戦略の一環であるとし、7月2日に就任した Jean-Sébastien Jacques新CEOの下でも継続されるとしている。 (シドニー事務所 山下宜範)

─ 57 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 鉄鉱石 Rio Tinto、Silvergrass鉄鉱石鉱山の拡張を承認 8月9日 2016 年 8 月 2 日、Rio Tinto は、WA 州 の Pilbara に お け る Silvergrass鉄鉱石鉱山の開発(拡張)の実施を承認したと発表した。 今後、3億3,800万US$を投じて同鉱山の開発を行う。同社によれ ば、この事業の内部収益率(IRR)は100%を超え、投資回収期間は 3年以内である。同社は、同鉱山は高品質かつ低コストでの成長をも たらす最も価値あるプロジェクトの1つだとしている。 地元紙によれば、Silvergrass鉱山の開発は、当初は2013年に事 業費20億US$にて実施することを承認する予定であったが、その後、 幾度か見直しが行われた。2015年に同鉱山の開発は2つに分割され、 第1フェーズは「Nammuldi Incremental Tonnesプロジェクト」 として生産が開始された。また1億4,200万US$を投じて鉱山開発と 共に運搬用の道路の建設も実施されてきた。 今回の同鉱山の開発はRio Tintoが最終的な目標とする3億6,000 万t/年の鉄鉱石の出荷に向けた重要なステップとなる。2016年末ま でにSilvergrassの第1フェーズの生産能力は1,000万t/年になるこ とが見込まれ、2017年末には第2フェーズも合わせ、生産能力は計 2,000万t/年に達することが見込まれている。 (シドニー事務所 山下宜範)

2016年 アルミ Rio Tinto、アルミニウム製錬所を売却する意向 8月30日 ニウム/ 2016年8月23日付け地元紙は、Rio Tintoがアルミニウム製錬所 ボーキ (aluminium smelter)を売却する意向であると報じている。同紙に サイト よれば、Rio Tintoが保有するアルミニウム製錬所のうち、豪州には Bell Bay(TAS州)、Boyne(QLD州)及びTomago(NSW州)の 3箇所があり、以前も売却の動きがあったが、今回は新たに就任した Jean-Sébastien Jacques CEOの下でアルミニウム製錬部門を整 理していくという強い意向が現れている。 情報筋によればRio Tintoのこれらの製錬所の売却の動きに対して、 Alcoa社は関心を示していないようである。またⅩ2 Resources社 は2015年にRio Tinto保有の炭鉱とこれらの製錬所をまとめて取得 する方向で動いていたが、価格面で折り合いがつかなかった経緯があ

- 2 る。 2 Rio Tinto なお、Rio Tintoは豪州の他にもスコットランド、オマーン、NZ及 びフランスにもアルミニウム製錬所を保有しており、これらの製錬所 も売却に出されると地元紙は報じている。 (シドニー事務所 山下宜範)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 58 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 銅 Rio Tinto、生産性向上により5年間で50億US$の利益を得ることを 11月30日 金 目標 鉄鉱石 2016年11月24日、Rio Tintoは生産性向上とコスト削減を行う アルミ ことにより、今後5年間で新たに50億US$の利益を得ることを目標と ニウム/ することを発表した。同社は現在所有する500億US$の価値に上る資 ボーキ 源プロジェクトの選別を進めていく方針である。資源プロジェクトの サイト 売却を行う一方で、同社はWA州Silvergrass鉄鉱石鉱床、QLD州 Amrunボーキサイト鉱床、モンゴルのOyu Tolgoi銅鉱床の開発に注 力していく。 同社は資源プロジェクト売却の手はじめに11月23日に100%権益 のスコットランドのLochaberアルミニウム製錬所の売却について4 億1,000万US$の金額でAlcan Aluminium UK Ltd社と合意した ことを発表している。また、2016~2017年にかけて20億US$の コスト削減を実施する計画である。同社のJean-Sébastien Jacques CEOは、「本長期戦略により、Rio Tintoは資源プロジェク トの整理を行い、ワールドクラスの資源プロジェクトに業務を集中さ せ、経営状態を強化していく」とコメントしている。 (シドニー事務所 矢島太郎)

2016年 鉄鉱石 Rio Tinto、鉄鉱石部門の約500名の人員削減を決定 11月30日 2016年11月21日、地元各紙はRio Tintoが鉄鉱石部門の約500 名の人員削減を決定したことを報じた。はじめにパース事務所の従業 員が対象とされる。Rio Tintoは世界で鉄鉱石の競争力を維持するた めに従業員の削減が必要な状況であると説明している。同社の社内分 析では、鉄鉱石の価格は2017年に再び40~50US$/tに下落すると 予想している。 同社は2016年3月以降にもピルバラ地域の鉄鉱石鉱山を対象に約 170名の人員削減を実施している。また、2016年のクリスマス期間 中にWA州ピルバラ地域のHope Downs 4鉄鉱石鉱山の操業を2週間 休止することを既に決定している。 (シドニー事務所 矢島太郎)

- 2 2 Rio Tinto

─ 59 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2017年 鉄鉱石 Rio Tinto、2016年の鉄鉱石出荷量は前年比3%増の3億2,760万t 1月30日 2017年1月17日、豪州鉄鉱石生産第1位のRio Tintoは、2016 年10~12月四半期報告書を公表した。同社の同四半期における鉄鉱 石の出荷量は8,770万tであり、前四半期と比べ8%増加した。拡張工 事を行った鉄鉱石鉱山からの生産量が増加し、生産性が改善され、天 候も安定したためと同社は説明している。 2016年の鉄鉱石出荷量は3億2,760万tとなり、2015年より3% 増加して2016年の目標とした3億2,500万~3,000万tを達成した。 同社は2016年当初の目標を3億3,000万~4,000万tとしていたが、 港湾と鉄道のメンテナンスのために出荷量が停滞したため、10月に目 標を引き下げていた。2017年の年間出荷目標は、鉄鉱石価格が下落 する予想から大幅な増産を行わず、前年と同水準の3億3,000万~ 4,000万tと設定している。 同報告書によると、同社が同四半期に生産したボーキサイトの量は 1,212万tであり、前四半期と比べ2%減少したが、前年同期と比べ 8%増加した。2016年のボーキサイトの生産量は4,770万tとなり、 2015年より9%増加して2016年の目標とした4,700万t以上を達 成した。 同社が同四半期に生産した銅の量は13万3,800万tであり、前四半 期と比べ7%増加し、前年同期と比べ20%増加した。2016年の銅の 生産量は2015年より4%増加したが52万3,300tにとどまり、 2016年の目標とした57万5,000~62万5,000tの生産量を達成で きなかった。 2016年に前年の生産量を下回った鉱種は、セミソフト炭・一般炭、 二酸化チタンスラグのみである。 (シドニー事務所 矢島太郎)

- 2 2 Rio Tinto

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 60 ─ 月日 鉱種 ニュース

2017年 銅 Rio Tinto、2016年の利益は増加、配当も予想を上回る 2月13日 鉄鉱石 2017年2月8日、Rio Tintoは2016年の年間の決算を発表した。 基礎的純利益(Underlying earnings)は51億US$であり前年比 12%増となった。また純利益は46億1,700万US$であり前年の8億 6,600万A$の赤字から黒字に転じた。 また2016年の通年での配当は1株当たり1.70US$(31億US$ 分)となった。これはRio Tintoの当初の目標であった1株当たり最低 1.10US$を上回った。地元紙によればアナリスト達の予想であった 1株当たり1.33US$も上回った。さらに同社は5億US$(6億 5,400万A$)の自社株買いを実施することも併せて発表した。 なお、同社は2016年においては13億US$分の資産売却を発表又 は完了させており、2017年においては既に24.5億US$の資産売却 を発表している(2017年1月にNSW州Hunter Valleyの炭鉱事業 を中国系のYancoal社に24.5億US$で売却することを発表)。この 結果、2013年以降、2017年2月8日までの資産売却額は77億US$ となっている。 一方で、同社は2016年は、3件の重要な成長プロジェクトに投資 したとしている。これらは豪州のWA州のSilvergrass鉄鉱石鉱山、 同じく豪州のAmrunボーキサイト鉱山及びモンゴルのOyu Tolgoiの 坑内掘りの銅鉱山の開発である。 (シドニー事務所 山下宜範)

- 2 2 Rio Tinto

─ 61 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .2 .6 経営者のメッセージ(2017年 3 月 2 日発行アニュアルレポート2016)

Jan du Plessis 会長

株主の皆様へ 厳しいマクロ経済環境に置かれ、地政学的な不透明感が増し、商品価格の変動が激しかっ たにもかかわらず、当社は2016年に好業績を達成した。

2016年の特徴として、社内外の環境の変化が挙げられる。不安定な時期に長期的な視点 を持つことは不可欠である。

2016年に戦略的優先項目に取り組み、堅調に利益とキャッシュを創出した一方で、バラ ンスシートの健全性を維持し、価値の高い成長機会を推進したことを報告できるのは喜ば しいことである。

どの景気局面でも変わらぬ強さ 2016年に当社製品の平均価格は前年比で若干下落したが、基礎的利益は2015年比12%増 の51億US$となった。しかし、主に債券の早期償還における利払いと運転資本の推移が要 因となり、営業キャッシュフローは同10%減の85億US$となった。

2016年に、当社はコスト削減計画により相当な額を削減した。グループの税引前営業費 用の改善額および探査・調査費用の削減額は2012年比で78億US$となった。

株主への還元 昨年に、価格環境の悪化と価格変動の見通しを踏まえて、もはや累進的配当政策を維持す るのは適切でないと判断した。基礎的利益と見通しを一段と反映した、より柔軟なアプ ローチによる新たな配当政策を発表した。

- 2 2 Rio Tinto 新たな配当政策では、健全なバランスシートを維持する、将来の成長のために再投資す る、株主に報いるという 3 要素のバランスを取っている。株主への合計キャッシュ還元額 はどのような景気局面でも基礎的利益の40%~60%のレンジ内になると予想される。

2017年 2 月に、2016年業績を踏まえて株主へのキャッシュ還元額を36億US$とすること を発表した。内訳は、合計配当額が31億US$、自社株買いが 5 億US$となっており、2016 年の基礎的利益の70%に相当する。

世界的な成長 5 年間にわたり世界の国内総生産(GDP)成長率が長期平均を下回った後、低金利政策 の効果が飽和状態に近づく中、現在、地政学的要因が経済成長に一段と影響を及ぼしてい る。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 62 ─ 2016年の英国と米国における政治の構造的な変換の世界経済への影響はいまだ明確でな いが、これにより世界全体で不透明感が高まったことは疑いない。

しかし、長期的な視点で捉えると、事業機会は豊富にある。向こう15年間に、過去20年 間を上回る量の銅、過去30年間とほぼ同量の鉄、過去40年間とほぼ同量のアルミニウム を世界は消費すると予想される。

一貫した戦略 外部環境の複雑さと不透明感が増していることを踏まえて、当社および業界に将来影響を 及ぼす可能性のあるマクロ経済トレンドを理解することにより一層重点を置いている。

今年、取締役会および経営陣は世界のトレンドとこれに対応するための戦略を見直した。 9 月に取締役会は10年間の長期戦略を承認した。埋蔵残存年数が長く、低コストで、拡 張性の高い資産に集中し、価値を創造するという当社の目的に変更はない。

経済的および社会的貢献 株主価値の提供が主な目的である一方で、特に不透明な時期に、受け入れてくれている国 に対する経済的および社会的貢献をより分かりやすく説明する必要があることは疑いな い。

2016年の世界の税金とロイヤルティの支払い額は40億US$で、過去 5 年間の支払い額は 320億US$を上回っている。過去 5 年間のRio Tintoの直接的な経済貢献は2,350億US$を 超え、ほぼ半分がサプライヤーへの財とサービスの支払いであった。

低炭素社会にいかに準備し、いかに貢献するかに対する株主の関心は高まっている。 2016年の年次総会での株主決議を受けて、今月に初めてとなる気候変動レポートを発表 する。同レポートでは当社の取り組みに関して情報を提供する。

- 2 取締役会および経営陣 2 Rio Tinto 過去 1 年間に、多くの取締役と経営陣の交代があった。2016 年 5 月、Richard Goodmanson氏が非業務執行取締役を退いた。また、2017年 2 月、Robert Brown氏と Anne Lauvergeon氏も2017年 5 月 4 日の年次総会で退くことを発表した。Richard Goodmanson氏、Robert Brown氏、Anne Lauvergeon氏は、長年にわたり取締役会に 多大な貢献をした。今後の幸運を祈りたい。

2017年 2 月に新たに 3 名の非業務執行取締役を任命した。2017年 2 月10日にSasol Ltdの 前最高経営責任者David Constable氏、Centrica plcの前最高経営責任者Sam Laidlaw氏 が取締役会に加わった。Royal Dutch Shell plcの最高財務責任者Simon Henry氏は2017 年 7 月 1 日付で取締役会に加わる予定である。

2016年 7 月 1 日にSam Walsh氏がRio Tintoの最高経営責任者を退いた。最高経営責任者

─ 63 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 としての 3 年半にわたる多大な貢献および変革をもたらしたリーダーシップに感謝した い。Jean-Sébastien Jacques最高経営責任者は 7 月に就任して以降、新たな時代に向け て生産性、業績、成長のテーマに取り組んでいる。就任後の 8 か月間に、同氏と新たな取 締役会はキャッシュの創出に引き続き重点的に取り組んだ一方で、資本配分とバランス シートの強化に関して厳格なアプローチを維持し、価値の高い成長の選択肢を広げた。

取締役会は2016年に、活動中の経営陣と社員に会うためにモンゴルを訪問した。この訪 問により献身的な社員に会うことができたとともに、社員の専門知識と取り組みに変わら ず大きな感銘を受けた。

規制に関して 期末の数か月に起きた出来事に言及することなしに2016年を説明することはできない。 2016年11月 9 日、外部委員の支援を受けた調査に続き、ギニアのSimandouプロジェクト に関して2011年に助言業務を提供したコンサルタントに対して合計1,050万US$の契約金 を支払ったことについて、米国、英国、豪州の規制当局に報告したことを発表した。

2016年12月 1 日、2012年の決算書に記載されているRio Tinto Coal Mozambiqueの減損 に対する調査に関連して、規制当局に協力することを確認した。

規制当局による調査結果および訴訟の可能性については明確でない。残念ながら、取締役 会が本件に関して最大限の適切な注意を払い、規制当局に最大限協力し続けていることを 保証する以外に現時点で言えることはわずかである。私の監督下で、専任の委員会を設置 し、進展を監視している。

国家への誇り、国際的な精神 昨年は変化が起き、不透明な年であったが、二国間協定、文化史と友情の共有により世界 は引き続き密接に結びついている。将来、世界が成長する上でこれらの要素が基盤とな る。

- 2 2 Rio Tinto 144年前に設立されて以来、Rio Tintoでは国への誇りおよび国際的な精神が結びついて きた。この精神は今日も生きており、事業を永続させるために利害関係者と手を取り合っ ている。同僚の取締役を代表して、勤勉な社員と株主の変わらぬ支援に対して謝意を表し たい。

Jan du Plessis 会長 2017年 3 月 1 日

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 64 ─ Jean-Sébastien Jacques 最高経営責任者

株主の皆様へ 世界有数の資産、才能ある社員を有し、短中長期にわたり株主への価値の提供に取り組ん できた偉大な企業であるRio Tintoの最高経営責任者を務める機会に恵まれたことは名誉 である。

安全を第一に優先 Rio Tintoでは安全が第一に優先される。当社の目標は明確である。全社員および契約者 を毎日一日の終わりに無事に帰宅させなければならない。

2016年に安全実績のあらゆる面が改善されたが、いまだ十分でない。

業界および当社事業で死亡事故が続いていることは非常に懸念される。これらの死亡は、 家族、友人、同僚にとって計り知れない損失である。

6 月に西オーストラリア州の鉄鉱石鉱山の 1 つで悲劇的な死亡事故が発生した。仲間 1 名 が掘削装置で作業中に押しつぶされた。この事故に対して詳細な調査を行い、このような 事故が再発しないように教訓を全社で共有した。

Alumar、Grasberg、Escondidaの当社が管理に関与していない合弁事業において、2016 年に 6 名が死亡した。当社は合弁事業のパートナーと死亡事故防止の取り組みを共有した と同時にパートナーの取り組みからも学んだ。

2016年に60を上回る施設でクリティカル・リスク管理(CRM)プログラムを展開し、 130万を超える安全認証を完了した。

- 2 CRMは、組織横断的に死亡事故を撲滅するための重要なツールである。 2 Rio Tinto

2016年の傷病損失時間(lost time injury)は低下し、傷害発生率(injury frequency rate)は過去10年間に64%減少した。

社員、契約者およびパートナーのために学び、情報を共有し続けなければならない。

当社にとって安全が第一優先であり、改善意欲は衰えるものではない。

数量よりも質を優先 2016年に目標を達成した。最も重要なのは、他社に勝る株主還元を行うという目標を達 成したことである。2017年 2 月に2016年の配当を 1 株当たり1.7US$(前年の1.1US$を大 幅に上回る)にすること、 5 億US$の自社株買いを実施することを発表した。

─ 65 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 当社は世界有数の資産から最大限のキャッシュを創出し、数量よりも質を優先した。16 億US$のコストを削減し、Oyu Tolgoi坑内掘り銅鉱山、Silvergrass、Amrunの価値の高 い 3 つのプロジェクトを進めた一方で、資本支出(2016年は合計30億US$)を引き続き 厳格に管理した。

キャッシュの創出、資本支出の管理、手持ち案件の強化に成功したことで、期末の純負債 額は前年期末比42億US$減少の96億US$となった。

商品価格が大きく変動し、地政学的な不透明感が強まる中でも、この好業績が達成され た。こうした状況は2017年にも続くと予想されるため、健全なバランスシートと回復力 のある事業基盤の維持を目標とする。

当社の世界中のチームが、 4 P(手持ち案件(portfolio)、業績(performance)、人材 (people)、パートナー(partner))に重点的に取り組んでいる。各要素に対する絶え間 ない一貫した取り組みが、どのような景気局面でも他社に勝る株主還元を行うという目標 を支えている。

世界有数の資産によって高い利益率を維持 2016年も厳しい外部環境が続いた。当社の財務計画では、様々なマクロ経済および商品 価格のシナリオに対して持ちこたえるという目標が設定されている。

2016年下半期に一部の商品価格が非常に低い水準から大幅に上昇したにもかかわらず、 平均価格は2015年よりも若干下落した。

当社は手持ち案件全般でキャッシュを最大化し、生産性を最高水準まで高めることを目標 としている。

2016年は順調に進捗し、基礎的EBITDAは135億US$となり、基礎的EBITDAマージンは

- 2 2 2015年の34%から38%に上昇した。 Rio Tinto

2016年に鉄鉱石事業の営業キャッシュフローは56億US$となり、利益率は業界最高水準 となった。グループのコスト削減額は 3 億1,500万US$に達した。

ここ数年間のPilbaraのインフラに対する投資はほぼ完了した。2016年 6 月にSilvergrass に対して 3 億3,800万US$投資することを発表した。同事業は2017年後半から鉄鉱石の生 産を開始する予定で、Pilbaraブレンドを補完する。

アルミニウム部門は、ボーキサイト、アルミナ、アルミニウムにおいて世界有数の資産を 保有しており、生産性の向上とコスト削減により2016年の財務実績は堅調であった。

二酸化炭素排出量の少ない当社のアルミニウム事業は、世界で最も有利な態勢にあるが、

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 66 ─ 昨年の価格下落は引き続き業界全般での課題となっている。

下半期に価格が下落したにもかかわらず、アルミニウム部門の全資産でフリーキャッシュ フローはプラスとなった。同部門は、営業費用を通期目標の 3 億US$に対して 4 億8,000 万US$超削減した。

銅・ダイヤモンド部門の営業キャッシュフローは 9 億8,700万US$、基礎的EBITDAマー ジンは31%となった。

エネルギー・鉱物部門は、市場の需要に対して生産を合わせたことに加えて、石炭を含む 一部の商品の価格が改善したことから、2016年のフリーキャッシュフローは13億US$と なった。

豪州の石炭の手持ち案件では、過去 4 年間に単位コストが40%低下し、原料炭価格が上 昇したことが追い風となった。

生産性の向上 当社は、どのような市況でも優れた業績を上げることを目標としている。2012年以降、 年間70億US$超のコストを削減し、2016年と2017年に20億US$のコストを削減するとい う目標に向けて順調に進捗している。

継続的な改善と効率が企業文化の一部となっている企業をけん引することが活力となって いる。鉱山から市場まで価値創造のためにあらゆる機会に取り組んでいる。

コスト削減による効果は大きいものの、生産性の向上にも努めなければならない。鉱山か ら市場までの500億US$の資産の生産性を向上させることにより、最大のリターンを創出 することが可能である。したがって、向こう 5 年間のフリーキャッシュフローを活用し、 新たに50億US$の生産性向上を達成することを目標とする。

- 2 2 Rio Tinto 技術の活用、業務の改善、固定資産・経営資源・システムの利用を通じて、全社的に生産 性を向上させる。引き続き数量ではなく質を優先し、Pilbaraブレンドなどの質の高い製 品の価格を高めるために優れた営業体制を活用する。

シンガポールの新たな優れた営業拠点は、今まで以上に多くのこの種の取り組みを手掛け ており、顧客とサプライヤーをつなぐバリューチェーンの最大化を目標とする。

将来の成長に投資 当社のバランスシートが競争優位をもたらしていることは、コスト削減と生産性向上が成 長を犠牲にしていないことを意味している。魅力的なリターンの機会がある場合には賢明 に投資する。

─ 67 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2016年に、当社の強みを補強する 3 つの魅力的な成長プロジェクトを推進した。当社の 戦略に従って、これらのプロジェクトではすべて数十年に及ぶ見通しが立っており、非常 に魅力的なリターンを提供する。

2016年 5 月にモンゴルのOyu Tolgoi坑内掘り銅鉱山の開発が始まった。

生産開始は2020年となる予定である。2027年に鉱山が十分に整備されると、銅の年間生 産量は50万トンを上回る。また同事業では大量の金( 1 t当たり平均0.35g)の副産物が見 込まれる。

新たなSilvergrass鉄鉱石鉱山でPilbaraの合計鉱山数は16になる。また、統合された施設 には、世界の顧客100社に供給するために、1,700kmの鉄道と 4 つの港湾が備わっている。

豪州のCape York半島ではAmrunボーキサイト・プロジェクトが順調に進行しており、 投資額19億US$の70%が2017年と2018年に費やされる。同プロジェクトはRio Tintoが60 年以上前に最初に発見したCape York半島における質の高いボーキサイトの信頼できる サプライヤーとしてのノウハウを基盤としている。

次世代の鉱床の発見・開発が一段と難しくなる中、引き続き探鉱を重視する。Rio Tinto は業界で最大級の探鉱計画を手掛けており、2016年には14か国で幅広い商品の探鉱に積 極的に取り組んだ。

世界級の手持ち案件 Rio Tintoの戦略では、埋蔵残存年数が長く、低コストで、拡張性の高い世界級の資産が 中心となっている。

今年、手持ち案件を強化した。同年中に13億US$を上回る資産の売却を発表または完了 し、これには12月の英国のLochaberの売却完了が含まれている。2017年 1 月に豪州の一

- 2 2 般炭事業を最大24億5,000万US$で売却することを発表した。提案条件に左右されるが、 Rio Tinto 2017年後半に完了する予定である。

2016年 6 月には組織の再編を発表した。これにより、探鉱の技術ノウハウを最大限活用 するために銅・ダイヤモンド部門が設立された。また、エネルギー・鉱物部門が設立され た。同グループは非常に価値の高い原料炭および特殊鉱物の製品群を有しており、新たな 事業機会のインキュベーターの役割を担う。

現在、鉄鉱石部門は西オーストラリア州の操業に専念している。アルミニウム部門は引き 続き、質の高いボーキサイト、アルミナおよびアルミニウム事業に集中している。

これらの製品グループを補完するのが新設の成長・イノベーション部門で、生産性の目標 の遂行、プロジェクトの専門知識の提供、新たな技術開発を担っている。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 68 ─ 目的意識を持った人材 新たな役割を担ったことで、世界各地の多くの現場を訪問し、優秀なチームと会う機会に 恵まれた。社員が、家族、地域社会、会社のために懸命に働いていることを新たに実感し た。

達成されるよりも多くのことがあることを理解している。 5 万1,000名の社員の2016年の 間の努力および2017年に向けた一段の取り組みに感謝したい。

2016年に実施されたPeople Surveyでの社員のエンゲージメントの点数は当社が望むより も低かったが、調査結果で得た洞察をリーダーシップの改善とエンゲージメント構築のた めの取り組みに活用していく。

2017年にも社員の育成に重点的に取り組み、社員の営業および技術的な専門知識の向上 を図る。これらが優れた業績のためのカギであると考える。

どのように行うかは何を行うのかと同様に重要である。誠実さとThe way we work(当 社の世界的な行動規範)が社員の行動の指針となり、Rio Tintoではこれらを遵守しなけ ればならない。

将来に向けて多様性と必須能力を育むために、広範な取り組みの一環として、2016年に 新卒者採用の重点を見直した。

当社はグローバルな組織であり、これらがすべて強みとなっている。次世代を引き付け、 操業地域の人材を会社に迎えるために、より多くのことを行わなければならない。

2016年に執行委員会メンバーの交代があった。新たなチームは、業界に関する豊富な専 門知識と世界に対する造詣の深さにより、多様で優れた視点を提供している。

- 2 パートナーシップの強化 2 Rio Tinto 昨年には記念となる業績を数多く祝った。これらは、当社の投資、取り組み、地域社会・ 政府とのパートナーシップが長期的な視点に基づいていることの証左と言えよう。

2016年に、多くの利害関係者と面談し、お客様や事業パートナーと会うために豪州、チ リ、カナダを訪問した。

ナミビアのRössingウラン鉱山と南アフリカのRichards Bay Minerals事業は開業40周年 となる。

豪州では、Pilbaraから日本への鉄鉱石の最初の出荷契約から50周年となる。

これらはすべて、当社、政府、事業パートナー、地域社会の間にパートナーシップの基盤

─ 69 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 を築いた先駆的な事業である。

2017年に、Pilbaraにおける中国のSinosteel CorporationとのChannar Mining合弁事業 が30周年を、米国のホウ酸塩事業は145周年を迎える。

操業までには、計画に数年、実施までに数十年を要する。税務、賃金、調達に関するノウ ハウは世代を超えて共有されている。

複雑さと不透明感が増す世界において、成功を続ける上でのリスクが高まり、お客様、政 府、地域社会、サプライヤーと巧みに連携することが不可欠である。当社および社員は働 き、生計を立てることが許されている地域社会において重要な違いを生み出している。

将来を見据えて Rio Tintoは確固たる地位を築いている。バランスシートは健全で、世界有数の資産を有 し、実績を重視し、有能な社員を抱えており、変化にも持ちこたえることができる。

人口増と都市化という中長期のメガトレンドが予想されるが、これに対して自信を持って いる。

先進国と新興国においてインフラが大量に不足していることと相まって、当社は業界に対 して長期的に明るい見通しを持っている。

今後、経済成長のペースまたは変化に左右されるものの、Rio Tintoは人類の進歩に不可 欠な原材料を生産し続けることを目標としており、会社設立以来このことに取り組んでき た。

2017年には、安全性とキャッシュ創出力を高め、生産性の目標を達成し、株主に高水準 の還元を行うために、できることすべてに取り組む。

- 2 2 Rio Tinto 継続的な支援と信頼に感謝の意を表する。

Jean-Sébastien Jacques 最高経営責任者 2017年 3 月 1 日

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 70 ─ 2 .3 Vale

2 .3 .1 企業概要

設立:1942年 本社:Rio de Janeiro 上場先:BOVESPA / (ブラジル) NYSE / LATIBEX / HKEx 決算期:12月末 CEO:Fabio Schvartsman 連結従業員数: 62,490名 (17年5月~)

主な生産鉱種:

P t 石 石 ガ F e C u Z n P b DIA Al P d Au Ag K P 炭 油 ス

Ni M n M o N b Cr Ti C o B U

■経営数値■ (mU$) (%) (mU$) 60,000 10 20,000 5 50,000 15,000 0 10,000 40,000 -5 5,000 -10 30,000 0 -15 20,000 -20 -5,000 -25 -10,000 10,000 -30 -15,000 0 -35 -20,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Vale SA:EBIT Vale SA:Net Income Vale SA:売上高 Vale SA:前年度比成長率 Vale SA:営業 CF

図 2 - 3 - 1 Vale売上 図 2 - 3 - 2 Vale利益

% 倍 140,000 60 80,000 1.0 70,000 0.9 120,000 50 0.8 60,000 100,000 0.7 40 50,000 80,000 0.6 30 40,000 0.5 60,000 30,000 0.4

20 U$ million U$ million 0.3 40,000 20,000 10 0.2 20,000 10,000 0.1 0 0 0 0.0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

- 2 3 Vale SA:総資産 Vale SA:自己資本 Vale SA:有利子負債残高 Vale SA:株主資本等合計 Vale Vale SA:自己資本比率 Vale SA:DER

図 2 - 3 - 3 Vale資産 図 2 - 3 - 4 Vale負債

─ 71 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 % % 40 1.5 900 1.0 800 20 0.5 700 0 0.0 600 -0.5 500 -20 -1.0 400 -40 -1.5 300 -2.0 200 -60 -2.5 100 -80 -3.0 0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Vale SA:ROE Vale SA:ROA Vale SA:一株当たり年間配当金 Vale SA:潜在株式調整後 EPS Vale SA:EBIT 利益率 Vale SA:Net Income 利益率 Vale SA:配当性向

図 2 - 3 - 5 Vale収益性 図 2 - 3 - 6 Vale配当

8,000 6,000 4,000 2,000 0 -2,000 -4,000 -6,000 U$ million -8,000 -10,000 -12,000 -14,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Vale SA:内部留保額 Vale SA:当期純利益 Vale SA:配当額-普通株

図 2 - 3 - 7 Vale内部留保

- 2 3 Vale

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 72 ─ 2 .3 .2 個社概況

2015年は全般的に低迷した資源価格による売上減及び減損の影響で、巨額の赤字決算 を計上。年末を控えた11月にはBHPとの折半出資の合弁鉄鉱石事業の伯/Samarcoで廃滓 ダムの決壊事故も発生し、同社にとっては厳しい 1 年であった。 斯かる背景の下、250億US$を超える負債を半額以下の100億US$への削減を含めた財務 改善を積極的に推進することを発表、2016年はコスト削減及び資産売却に拍車を掛けて 取り組むこととなった。 その結果、最主力事業の伯/鉄鉱石事業を除き案件毎に見直し選別を行い、前年に引き 続き豪/石炭資産のQLD州Carborough Downs炭鉱、モザンビークのMoatize原料炭鉱及 び鉄道/港湾の関連インフラ設備の一部権益、伯/Cubatãoリン鉱山を除くすべてのリン/ カリウム資産の売却を実行した(尚、その後2017年末に売却済)。 生産もおしなべて好調で、特に鉄鉱石・ニッケル・銅・コバルトは過去最高を達成、コ スト削減努力の結果に加え、鉄鉱石及び石炭価格の上昇を受けて2016年決算はⅤ字回復 を果たした。 同社は他社に比し事業領域及び地域性のポートフォリオの集中度合が高い傾向が見られ たが、上記施策を経てそれが益々強まる結果となった。17年 5 月に着任したFabio Schvartsman CEOは現状90%の鉄鉱石事業の比率を今後 2 年間で70%程度まで下げるこ とを目指すと語り、一方で未だ操業停止中の伯/Samarcoの完全子会社化の動きも報道さ れており、同社のアクションに注目したい。

(ブラジルレアル) (株) 40 160,000,000

35 140,000,000

120,000,000 30 100,000,000 25 80,000,000 20 60,000,000 15 40,000,000

10 20,000,000

5 0

- 2 2015 年 9 月 2016 年 1 月 2016 年 2 月 2016 年 3 月 2016 年 4 月 2016 年 5 月 2016 年 6 月 2016 年 7 月 2016 年 8 月 2016 年 9 月 2017 年 1 月 2017 年 2 月 2017 年 3 月

2015 年 10 月 2015 年 11 月 2015 年 12 月 2016 年 10 月 2016 年 11 月 2016 年 12 月 3 Vale

出来高(Vale SA) Vale SA

(参考)図 2 - 3 - 8 Valeの株価推移

─ 73 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .3 .3 Valeの鉱種別アセット所在地

Clydach Refinery

Voisey’s Bay

Long Harbour

Acton Refinery Birchtree

Thompson Ontario Division Sudbury

Longyu

Sohar Pelletizing Plant

Sossego Carajás Salobo Serra Norte Serra Leste Onça Puma Azul

S11D Itabira Sorowako Urucum Central Mines Corumbá Mariana Vargem Grande Morro da Mina Paraopeba Headquarters Moatize Coal Minas Itabirito Goro Mine Samarco

- 2 3 Vale

VALE 銅 鉄 鉱 石・マ ン ガ ン 石炭 リン 白金族 ニッケ ル 事業所

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 74 ─ Clydach Refinery

Voisey’s Bay

Long Harbour

Acton Refinery Birchtree

Thompson Ontario Division Sudbury

Longyu

Sohar Pelletizing Plant

Sossego Carajás Salobo Serra Norte Serra Leste Onça Puma Azul

S11D Itabira Sorowako Urucum Central Mines Corumbá Mariana Vargem Grande Morro da Mina Paraopeba Headquarters Moatize Coal Minas Itabirito Goro Mine Samarco

- 2 3 Vale

VALE 銅 鉄 鉱 石・マ ン ガ ン 石炭 リン 白金族 ニッケ ル 事業所

─ 75 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .3 .4 オペレーション別の生産量

Mt Kt 400 3,000 13.1 12.7 2.3 4.5 10.9 10.9 5.8 2,500 300 6.4 6.5 300 400 129.6 600 119.7 148.1 2,000 200 100 700 700 106.8 104.9 100 200 1,500 80.3 79.0 97.2 98.8 95.7 1,000 1,900 1,900 100 1,700 1,700 1,700 115.6 109.4 108.9 113 102.7 500 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

SE System S System N System Azul Morro da Mina Urucum MW System Samarco

図 2 - 3 - 9 鉄鉱石 図 2 - 3 -10 マンガン鉱石

Mt Mt 10 3

8 2 6 2.4 3.1 1.3 1.8 4 2.5 3.4 1.4 2.4 1 2.0 1.9 1.6 2 0.9 0.7 3.5 0.4 0.7 0.7 2.4 0.3 0.3 1.0 1.4 0.4 0.1 0.1 0 0.7 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Integra JV Issac Plains JV CD JV El Hatillo Integra JV Issac Plains JV Broadlea Moatize Broadlea Moatize

図 2 - 3 -11 原料炭 図 2 - 3 -12 一般炭

Kt Kt 300 7 15.6 17.5 6 0.1 6.4 27.6 27.6 5.9 15.1 21.7 24.1 3.6 13.1 1.9 5 0.2 200 6.0 21.4 24.4 46.7 48.0 40.9 4 0.01 0.1 3.2 46.6 47.1 2.4 61.9 63.0 49.0 3 1.1 1.4 48.3 53.0 0.1 100 26.5 0.4 24.2 24.5 26.1 2 1.0 0.9 24.8 1.3 0.8 1.2 0.7 80.4 1 0.3 0.5 0.4 65.5 69.4 64.3 54.4 0.1 0.9 0.8 0.8 0.9 0 0 0.6 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

- 2 3 Sudbury Thompson Voisey's Bay PTVI Sudbury Thompson Voisey's Bay Vale Onca Puma VNC External New Caledonia External sources

図 2 - 3 -13 ニッケル 図 2 - 3 -14 コバルト

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 76 ─ Mt Kt 300 500 8 10 21 3 10 23 400 9 1 32 11 29 32 24 2 2 122 200 1 36 33 98 300 14 79 29 3 98 42 103 93 82 200 104 113 79 110 100 62 77 119 48 100 155 176 8 92 110 65 65 98 45 50 48 0 13 0 6 1 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Salobo Sossego Sudbury Voisey's Bay Barbacena Ouro Preto Simoes Filho Thompson External Tres Valles Lubambe

図 2 - 3 -15 銅 図 2 - 3 -16 マンガン合金鉄

(図 2 - 3 - 9 ~図 2 - 3 -16:Annual Report等をもとに株式会社クラリテ作成)

- 2 3 Vale

─ 77 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .3 .5 主なトピックス(16年会計年度:2016年 1 月 1 日~2016年12月31日)

月日 鉱種 ニュース

2016年 鉄鉱石 Vale、S11D鉄鉱石プロジェクトの試験的操業段階へ移行を発表 2月22日 2016年2月18日付けメディア報道によると、17日、Valeは S11D鉄鉱石プロジェクトが試験的操業段階に移行したと発表した。 発表によると、1月末にベルトコンベア輸送システム(9.5km)が 稼働を開始したとしている。また、剥土は完了しており、試験的操業 はコミッショニング開始に向けた準備としての採掘作業も含まれると している。ベルトコンベア輸送システムは大型ダンプ輸送を代替する ものであり、従来型操業と比較して、70%のディーゼル燃料削減、 50%の温暖化ガス排出量削減の効果があるとされている。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

2016年 鉄鉱石 Samarco鉄鉱石鉱山廃さいダム決壊事故、総額約50億US$の補償で 3月4日 合意 2016年3月2日付けメディア報道によると、2015年11月に発生 したSamarco鉄鉱石鉱山(Minas Gerais州)廃さいダム決壊事故 に関して、鉱山を操業するSamarco Mineracao社(Samarco)と 出 資 者 で あ る Vale お よ び BHP Billiton は、Rousseff 大 統 領、 Minas Gerais州知事、およびEspírito Santo州の知事と、補償拠 出について合意した。これは11月下旬にブラジル政府により提起され た200億レアル(約50億US$)の補償請求訴訟を受けたもの。合意 は裁判所の承認を経て効力を有することとなる。 Samarcoは、被害を受けた地域の社会ならびに自然環境回復のため の費用として、2018年中に44億レアル、その後の3年間に毎年8~ 12億レアルを拠出する。合意ではこれら期間を含む15年間が補償期 間として設定され、この期間を通じた補償総額は200億レアルあるい はそれ以上になると見られる。合意では、Samarcoの拠出が滞った場 合、ValeおよびBHP Billitonが拠出責任を負うことが規定されてい る。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

- 2 3 Vale

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 78 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 鉄鉱石 FMG社、鉄鉱石事業に関してValeと提携 3月15日 2016年3月8日、Fortescue Metals Group(FMG)社は、鉄 鉱石最大手のValeとの提携を図るためのMOUを締結したことを発表 した。 同MOUでは、両社の鉄鉱石をブレンドして中国に販売するための JVの設立を提案している。また、ValeがFMG社の少数の株式を取得 することとしており、その割合は5~15%と見られている。 今回の提携について、地元紙は、Valeはブラジルにおける高コスト の鉱山を閉山させて、低コストのS11D拡張プロジェクト等に集中さ せるだろうとしている。また、FMG社の比較的品位の低い鉄鉱石(鉄 品位57%)が、Valeの高品位の鉄鉱石(同65%)とブレンドされる ことにより、Rio Tintoの鉄鉱石にも対抗できること、また、FMG社 の利幅も拡大するだろうと報じている。ブレンドされた鉄鉱石は年間 8,000万~1億tが中国向けに販売されると見られる。 また地元紙は、アナリストの見方として、ValeによるFMG社の株 式取得は、Valeにとって事業を多角化するという利益はあるものの、 長期的に全株式を取得していくという計画がなければ、戦略的な利益 は見出せないと述べている。Valeは多くの負債を抱えており、キャッ シュも最小限であることから、ValeがFMG社の株式取得に要する期 間は不透明であると見られている。 なお、今回の提携について、豪州の競争消費者委員会の委員長は調 査する必要があると述べた。また、アナリスト達は、中国や欧州の競 争当局の懸念も引き起こすだろうとしている。鉄鉱石の海上輸送の シェアは、2016年は、Valeが21%、FMG社が12%、Rio Tinto が24%、BHP Billitonが20%であり、これらの企業で77%を占め るとされている。 (シドニー事務所 山下宜範)

2016年 その他 Vale、2016年資本投資額を55億US$に再修正 4月7日 2016年4月6日付けメディア報道によると、Valeは、2016年の 資本投資額を55億US$に修正すると発表した。当初82億US$だっ たものを、2015年12月に62億US$に修正しており、さらなる圧縮 を図る方針。 また非コア資産の売却を進め(目標額40~55億US$)、2015年 時点で252億US$の負債額を、2017年までに100億US$程度減少 させる方針であるとしている。売却対象とされる資産は、石炭JV事 業、貴金属ストリーミング契約、鉱石運搬船、Mineração Rio do Norte S. A.社(ボーキサイト事業)、エネルギー関連事業などとされ る。化学肥料関連事業についてYara International ASA. (ノル ウェー)との間で12億US$の売却交渉が進展中との一部メディア報 - 2 道に関しては、これを否定している。 3 Vale (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

─ 79 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 鉄鉱石 Vale、2016年第1四半期の鉄鉱石生産量は77.5百万t 4月22日 2016年4月20日付けValeの発表によると、2016年第1四半期の 鉄鉱石生産量は、前年同期比0.2%増の77.5百万tであった。第1四半 期生産量としては過去最高となった。最大のCarajas鉄鉱石鉱山の生 産量は、前年同期比17.7%増の32.4百万tであった。年間生産量は生 産目標の再下限レベルとなる340~350百万tを見込むとしている。 ブラジルにおける銅鉱山の生産量は63,400t(前年同期比1.6% 増) で、 内 訳 は、Sossego 銅 鉱 山:22,300t( 同 17.6% 減)、 Salobo銅鉱山:41,100t(同16.4%増)。Sossego鉱山では実収 率が向上したが、品位の低下が大きく影響した。Salobo鉱山では 2016年3月にこれまでの最高となる月間銅生産量14,100tを達成し た。フル操業への移行は2016年下半期とされる。 Onça Pumaニッケル鉱山の生産量は、焙焼炉の不具合により、前 年同期比8.8%減の5,600tとなった。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

2016年 鉄鉱石 Samarco鉄鉱石鉱山、年内操業再開は困難の見通し 6月17日 2016年6月15、16日付けメディア報道によると、Samarco鉄鉱 石鉱山(Minas Gerais州)の年内操業再開は困難の見通し。15日に 開催された第二次従業員解雇に関する労働組合との会合において、鉱 山側は、今後従業員1,800名の解雇が実施される可能性を排除しな かった。2015年11月の廃さいダム決壊事故に伴い停止した操業の再 開をめざす鉱山は、操業ライセンスの取得を進めており、6割操業に 関するライセンスについて地元政府の承認を得てはいるが、連邦政府 および州政府での審査は継続中のままとなっている。 また、14日付け報道によると、鉱山を操業するSamarco Mineracao社(Samarco社)に50%出資するValeは、ライセンス の取得ができず操業が再開されない場合は、同社に対して財政的支援 を行わないことを表明した。なお、3月に、Samarco社ならびに出資 者であるValeおよびBHP Billitonが、連邦政府および州政府等に対 して合意した拠出総額200億レアル(あるいはそれ以上)の賠償計画 において、Samarco社の拠出が滞った場合、ValeおよびBHP Billitonが出資比率に応じて拠出責任を負うことが規定されている。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

- 2 3 Vale

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 80 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 ニッケル PT Valeが製錬所プロジェクトでパートナーを模索 11月23日 2016年11月22日付け地元メディアによると、PT Vale Indonesia Tbk(PT Vale)は、南スラウェシ州Pomalaaおよび Bahodopiにおける2件のニッケル製錬所プロジェクトについて、追 加のパートナーを探している。 PT Vale 取 締 役 社 長 Nico Kanter 氏 は 2017 年 11 月 21 日 に、 「我々の限られた資産を考慮し、PomalaaおよびBahodopiでのニッ ケル製錬所建設に参画する第三者パートナーを探している」と述べた。 同氏はまた、Pomalaaプロジェクトにおいては住友金属鉱山株式会社 と依然としてパートナーシップを継続しているが、環境影響評価およ び森林使用許可などの様々な許認可に十分な時間が確保できないため、 さらなるパートナーを探しているとのこと。 Kanter氏によると、両プロジェクトには日本、中国およびカナダな どの多くの投資家が興味を示している。 (ジャカルタ事務所 山本耕次)

2016年 リン Vale、肥料部門を米Mosaic社に売却、同社の最大株主に 12月21日 2016 年 12 月 19 日、 米 の 肥 料 メ ー カ ー 大 手 The Mosaic Company社は、Valeの肥料事業部門を総額2.5bUS$で購入するこ とを発表した。取引金額の半分に当たる1.25bUS$は現金にて支払わ れ、もう半分は株式譲渡(4,230万株相当)によって支払われる。こ の取引により、ValeはMosaic社の株式の約11%を占有することと なり、同社の最大株主となる。 Mosaic社は新たにリン酸塩4.8mtおよびカリウム500ktの生産能 力を得る。また、ペルーのMiski Mayoリン鉱山の40%の権益、加 SK州のKronauカリウムプロジェクトの全権益を得ることとなる。 Mosaic社はオプションでアルゼンチンのRio Coloradoカリウムプロ ジェクトを取引に含めることができる。ValeのCubataoでの窒素事 業およびリン酸塩事業は含まれない。この取引により、Mosaic社の 従業員数は従来の約17,000人から8,000人増加する。 北米の肥料メーカーに関しては、PotashCorp社とAgrium社も 2016年秋に合併を発表しており、業界再編の流れが加速している。 (バンクーバー事務所 杉崎真幸)

2016年 リン Bayóvarリン鉱石鉱山のVale社権益をMosaic社が買収 12月23日 2016年12月21日付け地元紙によると、Mosaic社(本社英プリ マス)がValeの肥料事業を買収したことにより、ValeがBayóvarリ ン鉱石鉱山(Piura州)に保有していた40%権益がMosaic社に移 り、あわせて75%の権益を保有することになった。残り25%の権益 は引き続き三井物産が保有している。

(リマ事務所 迫田昌敏) - 2 3 Vale

─ 81 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .4 Anglo American

- 2 4 Anglo American 2 .4 .1 企業概要

設立:1917年 本社:ロンドン(英国) 上場先:LSE / JSE

決算期:12月末 CEO:Mark Cutifani 連結従業員数:91,000名 (13年4月~)

主な生産鉱種:

Pt 石 石 ガ Fe Cu Al Zn Pb Au Ag DIA K P Pd 炭 油 ス

Ni Mn Mo Nb Cr Ti Co B U

■経営数値■ (mU$) (%) (mU$) 35,000 10 8,000 30,000 5 6,000 25,000 0 4,000 -5 2,000 20,000 -10 0 15,000 -15 -2,000 10,000 -20 -4,000 5,000 -25 -6,000 0 -30 -8,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Anglo American plc:売上高 Anglo American plc:EBIT Anglo American plc:Net Income Anglo American plc:前年度比成長率 Anglo American plc:営業 CF

図 2 - 4 - 1 Anglo American売上 図 2 - 4 - 2 Anglo American利益

% 倍 90,000 50 40,000 1.20 80,000 45 35,000 40 1.00 70,000 30,000 60,000 35 25,000 0.80 50,000 30 25 20,000 0.60 40,000 20 15,000 U$ million U$ million 30,000 15 0.40 20,000 10,000 10 0.20 10,000 5 5,000 0 0 0 0.00 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Anglo American plc:総資産 Anglo American plc:自己資本 Anglo American plc:有利子負債 Anglo American plc:自己資本 Anglo American plc:自己資本比率 Anglo American plc:DER

図 2 - 4 - 3 Anglo American資産 図 2 - 4 - 4 Anglo American負債

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 82 ─ $ % 15 2.0 10 10 1.0 9 8 5 0.0 7 - 2 0 -1.0 6 4 -5 5 Anglo American -10 -2.0 4 -15 -3.0 3 2 -20 -4.0 1 -25 -5.0 0 -30 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Anglo American plc:一株当たり年間配当金 Anglo American plc:ROE Anglo American plc:ROA Anglo American plc:潜在株式調整後 EPS Anglo American plc:EBIT 利益率 Anglo American plc:Net Income 利益率 Anglo American plc:配当性向

図 2 - 4 - 5 Anglo American収益性 図 2 - 4 - 6 Anglo American配当

12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0

U$ million -2,000 -4,000 -6,000 -8,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Anglo American plc:内部留保額 Anglo American plc:当期純利益 Anglo American plc:配当額-普通株

図 2 - 4 - 7 Anglo American内部留保

─ 83 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .4 .2 個社概況

- 2 2012年以来厳しい経営状況が続く同社だが、2015年は特に厳しい 1 年であった。価格 4 Anglo American 低迷の影響で特に銅及び鉄鉱石で大きく売上を落とし、コストを20%近く改善するも、 伯/Minas-Rio鉄鉱石鉱山等の減損計上で 4 年連続の赤字決算となった。 そこでMark Cutifani CEOは、ダイヤモンド、PGM、銅の 3 事業に集中、その他のば ら積み商品事業から撤退し資金創出のために売却を推進することを発表した。その発言ど おりその後同社は矢継ぎ早に資産売却を発表、即ち、非中核事業の豪/Callide一般炭鉱 山、豪/Foxleigh原料炭鉱山、ブラジルにおけるすべてのニオブ及びリン酸塩事業の売却 をまとめた。 同社のリストラ対象は中核事業のPGMにも及んでおり、2015 年に発表済みの Rustenburg鉱山に続き、Amandelbult鉱山の一部権益、Pandora鉱山の保有権益を売 却、2017年初には以前より売却を模索していたUnion鉱山の売却も発表した。 これらリストラ効果に加え、ダイヤモンドの販売量増及び石炭の価格上昇による売上増 と前年は巨額であった減損の計上が回避されたため、2016年は2011年以来の黒字決算を 達成した。 2016年後半より加速度的に改善している資源価格は2017年に入ってもその傾向は衰え ず、ついに同社も資産売却によるリストラの終了を宣言するに至った。これにより、今後 は成長に向けた経営にシフトチェンジしたことを印象付ける意向であろうが、果たして現 状が多岐にわたる事業の整理の末の目指した姿かという点につき、幅広い納得性を持って 受け入れられているか疑問を払拭できないところで、如何に成長戦略を提示し実行してい くのか、今後の経営手腕が注目される。

(英ペンス) (株) 1,600 80,000,000

1,400 70,000,000

60,000,000 1,200 50,000,000 1,000 40,000,000 800 30,000,000 600 20,000,000

400 10,000,000

200 0 2015 年 9 月 2016 年 1 月 2016 年 2 月 2016 年 3 月 2016 年 4 月 2016 年 5 月 2016 年 6 月 2016 年 7 月 2016 年 8 月 2016 年 9 月 2017 年 1 月 2017 年 2 月 2017 年 3 月 2015 年 10 月 2015 年 11 月 2015 年 12 月 2016 年 10 月 2016 年 11 月 2016 年 12 月

出来高(Anglo American plc) Anglo American plc

(参考)図 2 - 4 - 8 Anglo Americanの株価推移

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 84 ─ - 2 4 Anglo American

─ 85 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .4 .3 Anglo Americanの鉱種別アセット所在地

- 2 4 Anglo American

Gahcho Kué

Snap Lake

Headquarters

Trend

Victor

Cerrejón

Barro Alto

Codemin

Niquelândia Quellaveco Unki Debswana Operations Collahuasi Minas Rio GEMCO Anglo American Platinum Mogalakwena Moranbah North (Western Lim Operations) Capcoal De Beers De Beers Namibia Operations Consolidated Mines Anglo American Platinum Dawson De Beers (Eastern Lim Operations) Consolidated Mines Anglo American South Africa Mines El Soldado Kumba Sishen Samancor Richards Bay Coal Terminal TEMCO Los Bronces

Anglo American 銅 プラチナ 鉄 鉱 石・マ ン ガ ン 石炭 ダ イ ヤ モ ンド ニ オ ブ ・リ ン 酸 ニッケ ル 事業所

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 86 ─ - 2 4 Anglo American

Gahcho Kué

Snap Lake

Headquarters

Trend

Victor

Cerrejón

Barro Alto

Codemin

Niquelândia Quellaveco Unki Debswana Operations Collahuasi Minas Rio GEMCO Anglo American Platinum Mogalakwena Moranbah North (Western Lim Operations) Capcoal De Beers De Beers Namibia Operations Consolidated Mines Anglo American Platinum Dawson De Beers (Eastern Lim Operations) Consolidated Mines Anglo American South Africa Mines El Soldado Kumba Sishen Samancor Richards Bay Coal Terminal TEMCO Los Bronces

Anglo American 銅 プラチナ 鉄 鉱 石・マ ン ガ ン 石炭 ダ イ ヤ モ ンド ニ オ ブ ・リ ン 酸 ニッケ ル 事業所

─ 87 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .4 .4 オペレーション別の生産量

K troy oz Kt - 2 4 ※2015 年度よりプロジェクト別表記なしとなったため 1,500

Anglo American 5,000

4,000 14.1 18.7 17.1 1,000 111.4 104.2 14.1 3,000 11.4 70.8 116.5 468.0 436.9 437.7 354.2 2,000 4,085.2 4,055.0 4,358.9 4,116.3 3,344.3 500 419.1

1,000 444.5 470.4 455.3 506.6 282.1 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

合計 Collahuasi AAS AAN From PGM

図 2 - 4 - 9 PGM 図 2 - 4 -10 銅

Kt M carats 100 50

75 40 2.0 1.8 25.4 30 1.6 1.9 1.0 28.2 4.7 4.6 50 17.7 22.6 4.4 1.9 4.7 4.2 25.8 9.0 1.8 8.1 20 1.7 1.8 1.6 9.3 8.9 25 9.6 9.0 24.2 35.5 10 20.2 22.7 20.4 20.5 21.6 25.1 28.3 21.3 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Barro Alto Codemin Loma de Níquel From PGM Debswana Namdeb DBCM DB Can

図 2 - 4 -11 ニッケル 図 2 - 4 -12 ダイヤモンド

Mt Kt 60 4 0.7 50 9.2 16.1 0.8 0.6 1.1 1.4 3 11.6 0.4 40 8.5 12.1 10.8 12.7 30 2 3.3 3.3 3.3 3.1 3.1 20 33.7 35.5 30.9 31.4 28.4 1 10 0 0 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Sishen Kolomela Thabazimbi Minas-Rio Samancor

図 2 - 4 -13 鉄鉱石 図 2 - 4 -14 マンガン鉱石

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 88 ─ Mt Mt 30 100

75 11.5 11.0 11.2 - 2 11.1 10.7 20 0.1 1.5 4 1.4 1.7 Anglo American 50 57.1 56.6 55.8 50.3 10 19.4 21.2 20.9 53.8 16.3 17.0 25

13.0 12.5 12.3 12.3 0 0 9.5 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Aus Can S.Africa Aus S.Africa Columbia

図 2 - 4 -15 原料炭 図 2 - 4 -16 一般炭

(図 2 - 4 - 9 ~図 2 - 4 -16:Annual Report等をもとに株式会社クラリテ作成)

─ 89 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .4 .5 主なトピックス(16年会計年度:2016年 1 月 1 日~2016年12月31日)

月日 鉱種 ニュース

- 2 2016年 その他 Anglo American、ブラジル全面撤退報道に関してコメント 4 Anglo American 2月3日 2016年2月2日付けメディア報道によると、Anglo American (Anglo)の広報責任者James Wyatt-Tilby氏は、同社がブラジルの 事業資産をすべて売却し全面撤退するかもしれないとの報道に関して、 憶測は誤りであるとコメントした。また、ブラジルのニオブ・リン酸 塩事業の譲渡入札実施については決定済みであるが、保有事業資産に 関する詳細については2月中旬に検討に着手する方針であると語った。 Angloはノンコア事業の売却を進めているところであり、石炭、鉄 鉱石、ダイヤモンド、銅等の35の鉱山が売却対象とされる。ブラジル に関しては、2月中旬にCatalãoニオブ鉱山とChapadãoリン酸塩鉱 山(いずれもGoiás州)の入札を実施する予定である。1月13日、 BHP Billitonから分離したSouth32社が、Angloのブラジルニオ ブ・リン酸塩事業の買収に関心を示していると報じられた。 また、2月2日、Angloは、これらニオブ・リン酸塩鉱山に加えて、 Minas Rio鉄鉱石鉱山(Minas Gerais州)やBarro Altoニッケル 鉱山(Goiás州)、リン酸塩肥料生産を主力事業とする石油化学会社 Copebrasなどを含むブラジルの全資産売却の検討に着手しており、 ブラジルから全面撤退する可能性があると報じられた。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

2016年 銅 Anglo American、El Soldado銅鉱山の従業員150名を解雇へ 2月15日 2016年2月13日付けメディア報道によると、2月12日、Anglo Americanは、El Soldado銅鉱山の従業員の10%に相当する約150 名を解雇することを発表した。 Anglo AmericanのHennie Faul銅部門長は、「現在の市場状況に よりEl Soldado鉱山の操業継続が危ぶまれている。閉山を避けるため にいくつかの選択肢を検討し、組織構造改革プランを作成した」と 語った。同プランには、従業員解雇のほか、採掘量の縮小、選鉱処理 量の増大、請負や消耗品の管理業務における節約などが含まれる。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

2016年 その他 Anglo American、資産の集約及びバランスシート強化で生き残り戦 2月22日 略 Anglo Americanは2016年2月16日、ダイヤモンド、PGM及び 銅の世界規模のコア資産に集中するとして、バルクコモディティ及び その他鉱物資源についてはキャッシュを生み出すよう管理するか又は 売却すると発表した。 2016年の目標として、現在の資源価格下でのフリー・キャッ シュ・フローの黒字化を目指すとし、生産性改善とコスト削減により 19億US$の収益(EBIT)と、資産売却により30億から40億US$ を確保することを掲げた。また資産売却により2015年12月期に 129億US$だった純負債額を2016年12月期までに100億US$以 下にするとしている。 (ロンドン事務所 竹下聡美)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 90 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 マンガン South32社、Anglo American保有のマンガン事業の買収に向けて

2月23日 準備 - 2 4 2016年2月19日付け地元紙によれば、South32社は、Anglo Anglo American American(Anglo)が保有するマンガン事業の買収に向けて準備を 進めている。ただし、Angloが現実的な提案を受け入れることが条件 となる。 両社は、マンガン鉱山及び製錬事業を豪州及び南アフリカにまた がって共同で実施しており、South32社が60%、Angloが40%の 権益を保有している。マンガンは、Angloが負債削減のために撤退を 検討しているコモディティの1つであり、同社は今後、ダイヤモンド、 プラチナなどの消費者向けの製品に重点を置くこととしている。 地元紙は、South32社は負債が殆どない強靭なバランスシートを 持っていることから、マンガン事業を買収することが出来る財務能力 を有すると報じている。South32社及びAngloが豪州で展開するマ ン ガ ン の 事 業 は、NT 準 州 の Carpentaria 湾 岸 に お け る Groote Eylandtのマンガン鉱山及びTAS州における製錬所であるが、これら は2014/15年度においては利子及び税引き前の利益が出ているのに 対し、南アフリカの事業では利子及び税引き前の損失が生じている。 マンガンの価格の下落を受けて、先日、South32社とAngloは、 コスト削減のため、特に南アフリカの事業のリストラを行うことに合 意した。南アフリカでの生産量は23%削減し、Metalloysでは4つの 溶鉱炉のうち3つの炉しか稼動していない。なお、South32社は、 Angloが売却しようとしているニオブとリン酸塩の事業にも関心があ る と 噂 さ れ て いた。Angloは、QLD 州 にあ る 原 料 炭 の Moranbah North炭鉱及びGrosvenor炭鉱についても売却する意向である。 (シドニー事務所 山下宜範)

2016年 プラチナ Anglo American、2016年Q1生産量を発表、2016年生産見通し 4月22日 銅 に変更なし ニッケル Anglo Americanは2016年4月21日付けで2016年Q1生産量を 発表し、2016年の生産見通しについて予定通り変更がないことを発 表した。 2016年の同社のQ1生産量は、白金は前年同期比4%増の56.7万 ozで、Amandelbult鉱山、Mogalakwena鉱山及びUnki鉱山からの 増産がRustenburg鉱山の減産を一部相殺する形となった。白金の 2016年生産見通しは、230万ozから240万ozとしている。 銅の2016年Q1生産量は前年同期比15%減の146.5千tで、鉱石 の低品位化が減産に影響したとするも、2016年生産見通しは60万か ら63万tと変更がないとした。 ニッケルについては、伯Barro Altoプロジェクトが生産能力に達 し、前年同期比67%増の11.2千t、2016年生産量は4.5~4.7万t としている。 (ロンドン事務所 竹下聡美)

─ 91 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 ニオブ Anglo American、ニオブ及びリン酸塩事業をチャイナ・モリブデン

- 2 5月16日 リン 社へ売却 4 Anglo American 2016年4月28日付けリリースにおいてAnglo Americanは、ブ ラジルにおけるニオブ及びリン酸塩事業を、チャイナ・モリブデン社 (洛陽欒川モリブデン集団)に売却すると発表した。 売却価格は15億US$。取引の完了は2016年第3四半期とされる。 売 却 対 象 の Anglo American Fosfatos Brasil Limitada 社 及 び Anglo American Nióbio Brasil Limitada社が保有する資産には、 Chapadao鉱山(Goias州Catalão)とこれに付随するOuvidor選鉱 施設、Catalão及びCubatão処理施設、そしてCoqueiros鉱床及び Morro Preto鉱床が含まれる。Chapadao鉱山の2014年のニオブ 生産量は4.7千tであった。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

2016年 プラチナ Anglo American、2016年Q2生産量を発表 7月20日 銅 Anglo Americanは2016年7月20日付けで、2016年Q2生産量 ニッケル を発表した。 その他 同社CEOのMark Cutifani氏は、「白金地金生産を回復させ、 Minas-Rio鉄鉱石鉱山、Grosvenor石炭鉱山、Barro Altoニッケル 鉱山の生産拡大を通し、2016年Q1からの業績改善トレンドを今後も 積み重ねていく。また、今後も基幹市場として、ダイヤモンド、白金 に集中するとともに、高い収益性でかつ低コスト資産に焦点を当てて いく」とコメントしている。 同社の発表によれば、ダイヤモンド生産は前年同期比で19%減の 640万カラット、白金鉱山生産量は1%増の58.6万oz、白金地金生 産量は74.8万ozで、前年同期比33%増となったが、これは当時精錬 所を一時閉鎖していたことによる増加としている。銅については8% 減の14.4万t、ニッケルはBarro Alto製錬所の完工により、76%増 の1.1万tであった。 報道によれば、Anglo Americanは2016年度末までに資産売却で 50~60億US$の収益を見込んでおり、更なる30~40億US$の資 産売却が必要となる。Anglo Americanの株価は、2016年に入って から回復傾向にあり、2016年1月から170%上昇している。 (ロンドン事務所 竹下聡美)

2016年 銅 Quellaveco銅プロジェクト、初期的工事進行中 9月16日 2016 年 9 月 15 日 付 け 地 元 紙 に よ る と、Anglo American の Rubio渉外部長は、Quellaveco銅プロジェクト(Moquegua州)に ついて、アクセス道や灌漑用トンネル、余剰水用の貯水池の建設等を 行う初期工事の段階にあることを明らかにした。一方、同部長は、「未 だ投資への承認は行われていない」ため、同プロジェクトへの投資額 や鉱山建設の開始時期については未定と回答した。投資承認が実現し た場合、鉱山建設期間は4年間、マインライフは30年間で、粗鉱処理 量は127,000tpdとなる見通しも示した。 (リマ事務所 迫田昌敏)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 92 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 その他 Anglo Americanの筆頭株主PIC、南ア資産売却に反対の姿勢

10月10日 2016年10月6日付けメディア報道によれば、Anglo American - 2 4 の筆頭株主である南ア公共投資会社(Public Investment Corp.: Anglo American PIC)のCEO、Dan Matjila氏は10月4日のインタビューにて、南ア の 投 資 家 に Anglo American の 株 の 買 い 増 し を 促 し、Anglo American内での南アの影響力を強めていきたいと発言した。 Anglo Americanが2016年2月から進めている企業再編と債務削 減のためのノンコア資産売却の中には、南アのKumba鉄鉱石資産、石 炭資産も売却の対象となっていると伝えられている。これに対し同氏 は、売却には反対の姿勢を示しており、コモディティ価格がさらに回 復するまで資産を保有する方が良いと主張、さらにAnglo American が売却を進めるのならすべての南ア資産を集めた新たな生産会社の設 立を希望していると伝えている。 (ロンドン事務所 ザボロフスキ真幸)

2016年 プラチナ Northam Platinum 社、Anglo American Platinum 社 の 10月19日 Amandelbult鉱山鉱業権益一部を買収 Northam Platinum 社 は 2016 年 10 月 11 日 付 け で、Anglo American Platinum(Amplats) 社 の 子 会 社 Rustenburg Platinum Mines(RPM)社が所有するAmandelbult鉱山鉱業権益 の一部を10億ランドで買収することで合意したと発表した。 Amandelbult 鉱 山 は、Northam Platinum 社 が 所 有 す る Zondereinde鉱山西部に隣接し、Merensky鉱床とUG2鉱床を合わ せ、PGMsを約1,670万oz有する。また、同買収により Zondereinde鉱山寿命は30年に延長できるという。Amplats社は、 引き換えにZondereinde鉱山権益の一部を譲渡されることになり、売 却代金を純負債に充て、バランスシートの強化に繋げるという。 (ロンドン事務所 ザボロフスキ真幸)

2016年 銅 Anglo American、 負 債 削 減 の た め Los Bronces 銅 鉱 山 及 び 10月24日 Collahuasi銅鉱山の操業に注力 2016年10月14日付けメディア報道によると、Anglo American の現在の負債額は総額135億US$と計上されており、本年中に同社 は、資産売却により30億US$の負債返済を見込んでいる。 さらにMark Cutifani Anglo American CEOは、コスト管理、 人的資源削減及び投資最適化を進め、資産売却にもかかわらず本年の 生産量を対2012年比で12%増にすると述べており、この目標を実現 するためにLos Bronces銅鉱山及びCollahuasi銅鉱山の操業は重要 と位置付けている。 以前の報道では、Anglo AmericanがCODELCOにLos Bronces 銅鉱山を売却する可能性が示唆されていたが、Cutifani CEOは今般、 「Los Bronces銅鉱山は、Anglo Americanの事業戦略の一環とし て重要となっていることから、売却する予定はない」と否定し、その 他に、Chagres製錬所、El Soldado銅鉱山については、2016年中 のキャッシュフローの安定性を確保するため最適化計画が実施されて おり、現在まで業績は良好であると述べている。 (サンティアゴ事務所 村上尚義)

─ 93 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 プラチナ Lonmin、Anglo American Platinum の Pandora 白 金 鉱 山 権 益

- 2 11月15日 42.5%を買収 4 Anglo American 白 金 生 産 大 手 Lonmin は 2016 年 11 月 10 日 付 け で、Anglo American Platinum(Amplats) の Pandora 白 金 鉱 山 の 権 益 42.5%を買収することで合意を得たことを発表した。 Pandora 白 金 鉱 山 は、Lonmin が 50%、Amplats が 42.5%、 Northam Platinumが7.5%の権益を保有するJVであり、今回の買 収によりLonminは同鉱山の権益を92.5%に拡大することになる。ま た、Lonmin は Amplats に Limpopo 州 の Baobab 選 鉱 場 を 年 間 4,600万ランドで3年間貸与する。 Lonmin、Ben Magara CEOは、長期的な開発見込みのある、価 値ある資産を増やすというLonminの戦略に見合う買収であると伝え ており、一方Amplats、Chris Griffith CEOは、Baobabの操業権 を得ることで、Mogalakwena鉱山の更なる価値を見出し、コスト削 減に繋がると言及している。 (ロンドン事務所 ザボロフスキ真幸)

2016年 その他 Anglo American筆頭株主PIC、Anglo Americanに白金を含めた 12月6日 南ア資産スピンオフを要求 2016年12月5日付けメディア報道によると、Anglo American の 筆 頭 株 主 で あ る 南 ア 公 共 投 資 会 社(Public Investment Corporation:PIC)はAnglo Americanの南ア一般炭及び鉄鉱石資 産と共に白金資産もスピンオフさせるようにAnglo Americanに要求 していると関係筋が伝えている。 Anglo American、Mark Cutifani CEOは、白金を銅とダイヤモ ンドと共に同社の主要コモディティとして位置付けており、同社傘下 のAnglo American Platinumは世界最大の白金生産会社である。 PICは、Anglo Americanの南ア資産を集約した南ア主体の新たな生 産会社の設立を求めていると以前から伝えられているが、報道による とAnglo AmericanはPICに白金資産を除外するように説得したとも 伝えられている。 Anglo Americanはメールにて、我々は南アの一般炭及びKumba 鉄鉱石資産売却の様々な選択肢を引き続き検討していき、その中には 同資産を合わせた新たな南アの鉱山会社を設立するという可能性もあ るだろうと回答している。 (ロンドン事務所 ザボロフスキ真幸)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 94 ─ 2 .4 .6 経営者のメッセージ(2017年 4 月25日発行アニュアルレポート2016)

市況の低迷に対応し、将来に向けた態勢整備を - 2 4 Anglo American Sir John Parker 会長

今年も世界的に景気回復が遅れ、商品の平均価格が低水準にとどまる中、Anglo Americanは大幅なコスト削減と生産性向上に取り組んだ。下半期には様々な商品価格が 急上昇したことが追い風となった。これら 2 つの要素が相まって、当社は業界屈指の目覚 ましい回復を遂げた。

財務および事業業績 3 年前に鉱物商品の危機が始まって以来、Anglo Americanは26の操業資産を減らした。 しかしながら、極めて重要なことに、鉱業株が一段と低迷し、一部のヘッジファンド(一 時期当社の約20%の株式を保有)の積極的な「空売り」がこれを助長した後、2015年の 終わりから2016年の初めにかけての不遇の時期でさえも、本質価値を下回る資産を売却 しないことを決定した。

したがって、2016年上半期に当社が売却に合意した主要資産はブラジルのニオブとリン 酸塩事業のみであり、その金額は市場予想を大きく上回る15億US$となった。

しかし、下期後半には鉄鉱石および原料炭・一般炭の価格がともに大幅に上昇したことを 背景に市場のセンチメントが改善した。また、当社は手持ち案件の再編を続ける中で多く の小規模な資産を売却し、売却総額は18億US$となった。

本会計年度の株主に帰属する利益は16億US$、基礎的EBITDAは61億US$となった。投 資方針を厳格に適用し続けた結果、資本支出は40億US$から25億US$に減少した一方で、 新規の大型プロジェクトは承認されなかった。操業モデルを積極的に展開し、生産性の低 い多くの資産を売却した結果、銅換算のコスト単価が米ドルで 9 %下落、事業全般にわた り生産性が18%改善した。

純負債は129億US$から44億US$減少し85億US$となり、年末目標の100億US$を大幅に下 回り、純負債/EBITDA倍率は1.4倍となった。鉱業界では変動が激しい状態が続いてい るため、負債の水準を一段と引き下げる計画である。

当社の現金および未使用借入限度額の合計額は約160億US$で高い流動性を維持している ものの、バランスシートを立て直す必要があることから、残念ながら引き続き配当を見 送った。しかし、当社の財務状況は 1 年前よりも大幅に改善し、価格の見通しはわずかな がら明るいため、取締役会は2017年末の復配(2018年に支払い)を目標としている。復 配時は配当性向方針を適用するが、詳細はその際に決定する。

─ 95 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 資産の集中と選択 2016年 2 月に資源価格がここ最近の市況悪化の中でほぼ最低水準になった際に、ダイヤ

- 2 モンド、白金族金属(PGM)および銅に資本を集中し、石炭および鉄鉱石の資産の多く 4 Anglo American の売却を目指す意向であることを発表した。

コスト削減および生産性改善の成果が現れ始めたこと、多くの石炭とプラチナ資産に加え てニオブとリン酸塩事業の売却に成功したこと、下半期に大部分の当社商品の価格が堅調 に推移したことがすべて追い風となり、当社の財務状態は加速度的に改善した。それによ り、主要資産の更なる売却を迫られる重圧からかなり解放された。

De Beers、PGMおよび銅事業において保有するトップクラスの資産が財務的に強固で競 争力のある当社の基盤を形成していることに変わりはないが、その他の質の高い鉄鉱石、 石炭およびニッケル資産も操業実績を大幅に改善させ、当社の業績に貢献していることも 事実である。よって、当社は現在、保有資産と地域的なバランスの観点から非常に幅広い 選択肢を有していると言える。

安全および健康 Anglo Americanでは全社的に安全が最優先事項となっている。2016年の合計記録可能傷 害率(total recordable injury rate)は2015年比24%減少した。しかし、死亡件数が急 増したのは痛ましいことである。グループ全体の操業において11名が死亡した。内 7 名 は地下深い鉱山で死亡し、その内 4 名が死亡した鉱山はその後売却された。これは近年の 傾向と明らかに異なる。グループ全体で安全が重視されていたことを踏まえると、より一 層驚きであった。当社では、危機管理を一段と重視し、世界安全デー・キャンペーンなど の安全の取り組みの徹底を図っている。職場で人命が失われるのは痛ましい出来事であ り、決して受け入れられない。さらに悲しいことに、死亡事故のいくつかは回避できた可 能性が高く、現場の操業慣行が当社の厳格な安全基準に沿っていなかったため発生した。 当社はこうした慣行を変えなければならない。取締役会および経験豊富な鉱夫である Jack Thompson氏が委員長を務めるサステイナビリティ委員会は、Mark Cutifani最高 経営責任者および経営陣と連携し、この課題に取り組んでいる。

当社のサステイナビリティ委員会は、すべての重大事故および死亡事故に対する調査、事 業全般の操業リスクの評価に深く関与している。また、90の尾鉱ダムすべてに対しても 特別な注意が払われている。当社はダムの管理に自信を持っており、鉱滓ダムに対して法 律で義務付けられている要件を上回る水準で監視を行っているが、それでもなお点検・監 査・リスク保証を一段と強化している。

南アフリカの珪肺の問題を解決するための転機となる措置が講じられたのは喜ばしいこと である。2016年 3 月にAnglo American South AfricaおよびAngloGold Ashantiは、 4,400件の珪肺の個別賠償請求をすべて完全に解決することで合意に達した。この訴訟和 解の合意は、原告、その家族、当社および利害関係者の全員にとって最善であると考え る。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 96 ─ 気候変動 当社は引き続き株主を含むすべての利害関係者と協力、相談して気候変動の原因と影響に

対処している。この一環として、鉱山会社の気候変動に対する取り組みの報告(事業への - 2 4 影響をいかに管理するかを含む)を強化するために、当社の大株主を含む機関投資家によ Anglo American り2012年に設立された「Aiming for A」連合に助言を求めている。

企業文化および企業価値 Anglo Americanが操業を許されるための信頼獲得に取り組む中で、社員一人ひとりが日 常的に貢献している。

正しいことを行っているという定評を得るのに信頼は不可欠である。これには、誠実に行 動すること、同僚の権利と生計、地域社会および当社が関わる自然環境に対して配慮と敬 意を示すことが含まれる。これをサポートするために、取締役会が直接関与して行動規範 を改訂し、グループの全社員に展開している。この行動規範のみを参照すればよいよう に、当社が社員に対してどのような行動基準を期待しているかを非常に明確にしている。 行動規範は共有価値の中核を成し、Anglo Americanの高い評価を守り、前向きな変化を もたらすために何をすべきかが規定されている。

ガバナンス 模範を示して組織をけん引する取締役会の役割は、会社が緊張を強いられる困難な時期に 特に重要である。2015年後半から2016年初めに商品危機が深刻化した時期に非業務執行 取締役が経営陣と連携し、会社の舵取りをサポートした。

役員報酬 年次総会は2016年 4 月に開催されたが、株主からの支持率は以前よりも大幅に低下した。 完璧な報酬制度は存在しないものの、Anglo Americanにおいては収益性と変動報酬の関 係は比較的健全であり、当社の報酬制度は公正で、業績に基づいており、他社並みである と取締役会は考える。取締役会は株主からさらに助言を得て、次回の年次総会で改訂した 報酬制度を提案する予定である。

取締役会の構成 2016年中に、残念ながら非業務執行取締役のRay O’Rourke氏とJudy Dlamini氏が退い た。O’Rourke氏は2009年に取締役会に加わり、Laing O’Rourke社の会長兼最高経営責 任者としての職務に専念するために退いた。同氏の賢明な助言および複雑なプロジェク ト・安全・イノベーションに関する経験は当社にとって非常に貴重であった。Dlamini氏 は2014年 1 月に取締役会に加わり、南アフリカのMbekani Groupの会長の職務に専念す るために退いた。採掘を含む地域とセクター全般での同氏の豊富な経験は取締役会と委員 会に寄与し、他の取締役にとって非常に有益であった。現在、同様なスキルと経験を有す る新たな非業務執行取締役を選考中であり、近く 1 名またはそれ以上の任命を発表する予 定である。 Renè Mèdori氏の引退の決断を受けて、世界的に徹底調査した結果、Stephen Pearce氏

─ 97 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 を新たな財務最高責任者に任命した。Mèdori氏は12年間にわたり当グループにおいて専 門的業務を担った。同氏の貢献に感謝するとともに、今後の成功を願う所存である。

- 2 Pearce氏は豪州のFortescue Metals Groupからの移籍となり、 1 月末に当社に加わり、 4 Anglo American 4 月の年次総会でMèdori氏の後を引き継ぐ予定である。一部のプロジェクトの移行と集 中の過程において継続性を維持するために、Mèdori氏は年末まで在籍する予定である。

会長職の継承 2017年 2 月に、私は取締役会が会長の後任を探す時期であることを指名委員会に伝えた。 会長を 8 年にわたり務め、Anglo Americanが鉱物商品危機の後、確固たる地位を築くの を目の当たりにしてきた。このように偉大な企業で会長を務める機会を得たことに感謝の 意を表するとともに、非常に優れた取締役会と世界一流の経営陣に後継を託す所存であ る。

感謝の言葉 最も困難な数年間に賢明な助言をし、支援してくれた取締役メンバーを有難く思う。ま た、鉱業界が危機に直面する中、当社の基盤を強化するために取締役が費やした多大な時 間と献身に感謝する。取締役会を代表して、様々な形で会社の価値を高めたMark Cutifani最高経営責任者および経営陣にも感謝したい。Anglo Americanが創立100周年 を迎える今年、困難な時期において大幅な事業再編が求められる中、貢献してくれている 全社員に感謝の意を表する。

Sir John Parker 会長

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 98 ─ 断固とした措置により財務基盤を強化

Mark Cutifani - 2 4 最高経営責任者 Anglo American

資源価格が依然として軟調にあるにもかかわらず、フリーキャッシュフローを創出し、手 持ち案件に一段と磨きをかけるために当社は事業全般にわたり措置を講じた。その結果、 将来の基盤作りに必要となる財務状況の大幅な強化に成功した。

キャッシュフローを持続的に改善し、バランスシートを強化するために、当社は2016年 に、操業、コスト、資本および手持ち案件に関して将来を見据えて幅広い措置を講じた。 その結果、純負債を目標の100億US$を大幅に下回る85億US$(前年比34%減)に減らす ことができた。

2016年下半期には多くの当社商品の価格が回復し、特に原料炭価格は第 4 四半期に高騰 した。一方、通期の当社商品の年間平均価格は前年を若干下回る状態が続き、2015年の 終わりと同程度の価格下落を連想させる。

このような環境下で、営業費用の削減と生産性の向上に引き続き注力した結果、帰属フ リーキャッシュフローは35億US$増加した。また、基礎的EBITDAは前年比25%増の61 億US$となり、基礎的EBITDAマージンは同 5 %上昇の26%となった。株主に帰属する 利益は2015年には56億US$の損失であったが、16億US$に増加した。2012年から2015年 の間に銅換算の生産性が20%改善したのに続き、2016年もさらに生産性が18%改善した。

ニオブとリン酸塩事業を15億US$で売却したことがバランスシート改善目標の達成に一段 と寄与し、複数の石炭とプラチナ資産を売却したのと合わせ、2016年の売却総額は18億 US$となった。

社員の職場での安全を維持することが、常に当社の絶対的な優先事項である。2016年に 記録可能傷害率を24%減少させたが、死亡事故は増加した。残念ながら同年に11名の社 員が命を失い、ほとんどが安全を最優先すべきリスク分野での過ちによるものである。当 社は重大な傷害を 1 つたりとも見過ごさず、これら重要なリスク分野に集中的に取り組 む。損害をゼロにするという目標を達成可能であるという意を強くし、その達成のために 全社員と取り組んでいる。

環境面に関しては、作業計画の改善およびリスク評価の強化により、事故件数がさらに減 少したことは疑いなく、2013年比85%減となった。

事業実績 市場の外部的な影響に関係なく、資産ベースをフル活用するために、卓越したオペレー ションの基盤作りが必須であることを機会があるたびに述べている。それだけでなく、市

─ 99 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 況が悪化するあるいは変動が激しくなると、職務規律のニーズが高まることを力説した。 それは、資産の長期的な価値を保全しつつ、最適なキャッシュフローの実現に向けて操業

- 2 するためである。 4 Anglo American 手持ち案件の質を高め、操業モデルの実践を通じて資産レベルで事業実績を向上するため に措置を講じたことで、業績は大幅に改善した。

2016年の合計生産量は、2012年に比べ資産が 3 分の 1 減少したにもかかわらず 8 %増加 し、銅換算のコスト単価は31%低下した。この 4 年間で生産性は41%向上する結果と なった。このことは、当社が事業運営方法を抜本的に改善したこと、および手持ち案件の 質を高めたことを最も明確に示している。Los Broncesでの降雪とストライキ、プラチナ 製錬所の停止などの逆風にもかかわらず、15億US$のコスト削減と生産量の増加を実現し た。

2017年にはさらに10億US$のコスト削減と生産量の増加を目標としており、内75%は既 に見込みが立っている。

手持ち案件の再編 手持ち案件の再編は順調に進捗しており、保有資産数は2013年の68から2016年末には42 に減少した。

2016年の資産売却額は18億US$であった。その大部分が、2016年 9 月に完了したブラジ ルのニオブとリン酸塩事業のChina Molybdenum Co. Ltd.への売却(15億US$)による ものである。

今年は豪州のCallide炭鉱とFoxleigh炭鉱、南アフリカのExxaroの権益9.7%の売却も完 了した。また11月には規制当局の承認を得た後に、南アフリカのRustenburgプラチナ事 業のSibanye社への売却を完了させた。

株主に対する更なるリターンを創出するには資本を効果的に投じる必要があるため、手持 ち案件の強化に引き続き取り組む所存である。

新たなAnglo American 市場を主導する立場を築くため、当社は手持ち案件の質の高さおよび一部の商品分野にお いてはそれらの資産の組み合わせに基づいて事業戦略を策定している。これらの資産の価 値は、グループが提供するマーケティング、技術およびその他の付加価値を生む中核とな るプロセスを通じて一段と高められる。

De Beers、PGMおよび銅の各事業における資産の質の高さが、各市場における当社の地 位を支えているとともに、どのような景気局面および商品市況でもAnglo Americanが持 ちこたえ、競争優位を保つ基盤となっている。また、鉄鉱石、石炭に加えてニッケルの世

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 100 ─ 界有数の資産の業績も貢献する。各資産と商品群のリターンを高めるために、当社は事業 機会を追求し続ける。

- 2 4 2016年から2017年にかけて、多くの資産売却の完了または発表を通じて、手持ち案件全 Anglo American 体の質を高め続けてきた。これらの資産には、南アフリカのRustenburgとUnionのプラ チナ事業、豪州の比較的小規模な石炭資産が含まれている。

また、2015年後半の資源価格の急落を踏まえ、財務状況を強化する必要性より、ブラジ ルのニオブとリン酸塩事業の売却を決定した。多くの売却先を検討し、条件を競合させた 結果、China Molybdenumに売却することで合意し、合意金額は市場予想を大きく上 回った。

財務状況を一段と強化するために、2016年を通じて売却過程にあった多数の主要な資産 に対し強い関心表明を受けたが、厳格な価値基準を忠実に守り、取引しないことを選択し た。現在は債務削減を目的とした資産の売却は必要なく、当然ながら手持ち案件の価値向 上に取り組み続けていく。よって、豪州のMoranbahとGrosvenorの世界有数の原料炭資 産およびブラジルの大幅に質が改善されたニッケル資産を保有している。これにより、 キャッシュとリターンを創出するために最適な操業が行われると同時に、価値の保全・向 上の両方のために資本が配分される。

南アフリカでは輸出用一般炭および鉄鉱石の権益のあらゆる選択肢の検討を継続してい る。これらの事業の質の高さと業績の好調さを認識しており、すべての株主のため価値の 最適化に徹底的に取り組んでいる。最近の改善状況および継続的に改善が行われているこ とを踏まえて、これらの資産の保有に発展余地があることに変わりない。

我々は大きく進展しているが、近年の教訓を活かすことが重要である。当社商品の長期見 通しに自信があるものの、バランスシートは短中期的に予想される価格変動に持ちこたえ られなければならない。2017年の優先事項は、生産性を一段と高めるとともに、2017年 末に復配し、投資適格の格付けを取り戻すために、資本とコストの規律を守ることであ る。

2017年には資本支出を25億US$で維持し、事業継続資金を12億US$に増やす。資本は優先 順位に基づいて配分し、資産の長期的な価値が維持されるよう考慮する。銅事業を中心に 魅力的な資産を既に多数保有している。資本構成全般および足元のマクロ経済環境を踏ま えて、これらの資産を適切に発展させ、評価し続ける。

当社の手持ち案件は、規模、技術およびマーケティングのノウハウ、賦存資源の組み合わ せにより魅力と競争力を備えたバランスの取れた事業で構成されており、長期的に大きく 発展する可能性を秘めている。

─ 101 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 将来のパートナー 地元の地域社会との良好な関係を構築・維持することが優先事項であることに変わりな

- 2 い。地域社会の課題に関する当社の厳格な経営基準であるSocial Wayの改訂版の発表に 4 Anglo American 向けて順調に進捗している。2016年に初めて重大な遵守違反を完全になくすことに成功 し、重大でない遵守違反はほぼ半減した。全社の遵守率は84%(2015年は66%)に達し た。

2016年に革新的かつ低コストのSMSによる地域社会調査が試験的に実施され、結果は良 好であった。同調査により、利害関係者との質の高い関わり、地域社会と取引する際の公 正感、特に苦情の対処、ネガティブな影響の管理、当社の操業によるメリットの普及が、 事業を展開する地域社会に対して重要であることが浮き彫りになった。また、同調査によ り、地域社会のセンチメントや懸念に関するフィードバックをほぼリアルタイムで提供で きるようになり、現場が現地の優先事項に対応するのに大きく役立っている。また、利害 関係者との関わりの新たなチャネルを構築するのに、同調査の結果は現地のソーシャルメ ディア活動とともに貢献している。2017年にも優先順位の高い現場でSMS調査を継続的 に実施する予定である。

多くの操業において革新的な経済発展モデルを継続的に実践した。同モデルはバリュー・ チェーンとスキルを活用し、現地調達、企業の発展、スキルに基づいた社員のボランティ ア活動に注目するものである。当社の取り組みが米州開発銀行の支援を受けているのは大 変光栄なことである。南米全域で供給業者と企業の発展プログラムを強化するために、同 行は200万US$を共同出資している。また、南アフリカのLimpopoで革新的な空間開発計 画手法を試験的に実施した。これにより、短期的な経済発展の機会が幅広く明らかとな り、現在、政府やその他の利害関係者と協議中である。

地域社会レベルの当社の取り組みは、国や国際レベルの幅広い利害関係者により継続的に 伝えられている。持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)、収益の透明 性、鉱業界の道徳的なバリュー・チェーンなどのテーマに関して、政府、宗教団体、 NGOとの対話を進展させ続けている。

2016 年に、鉱業界と宗教団体のリーダー間の関わりが発展し、Mining and Faith Reflections Initiativeとして正式なものとなった。この取り組みを支援するために、独立 した事務局が設立され、ザンビアとペルーで新たな対話がなされた。協議が最も進んでい る南アフリカでは、2016年には宗教団体と鉱業界との協力によりいかに採掘区域に有意 義な利益をもたらすことができるかが健康と経済発展を中心に模索された。これらの取り 組みによる最初の成果が2017年に現れるのを非常に期待している。

見通し 2016年には、予想外の経済および政治環境により、資産の質、バランスシートの健全性、 卓越したオペレーションおよび全体的な回復力がいかに重要であるか認識させられた。ま た、今後も多くの当社商品の価格変動が続くと予想される。しかし、長年にわたり資本投

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 102 ─ 資は低水準で、業界全体がおおむね慎重な姿勢を取ってきたため、供給全般が抑えられて いる。また、財政刺激策と景気抑制策を通じて、中国が経済のバランスを模索する中、需

要は増加している。このため商品のファンダメンタルズは健全である。世界の消費量とミ - 2 4 ドルクラスの人口はかなり速いペースで増えており、生産開始が近いものが多い当社商品 Anglo American に対する需要は根強い。

感謝の言葉 Anglo Americanは創業100周年を迎えるが、グループ管理委員会の同僚を代表し、社内 のすべての人間に対し、大きな変化があり市場の変動の激しかった時期によく働いてくれ たことと支援してくれたことに感謝したい。また、広範で多様な利害関係者に対して、そ の理解と支援に感謝の意を表する。

2016年に断固たる措置を講じ、全社員がこれに取り組んだ結果、現在、事業は堅調で、 バランスシートは強化され、コスト構造は世界有数の競争力を有し、資産は比類なく分散 されている。当社の戦略的方向性は明確であり、事業運営を通じていかに持続可能な価値 を生んでいくのかを理解している意欲的なチームが育成されている。

12年にわたり在職した後、引退に向けた準備を怠らないRène Mèdori財務最高責任者の 統率力と賢明な助言に感謝したい。Stephen Pearce氏は 4 月の年次総会で後任として取 締役会に加わる予定であり、同氏が幅広い財務と業務のリーダーシップの経験を活かして くれることを期待している。

また、Sir John Parker会長にも様々な面での助言とリーダーシップに対して感謝した い。経営陣を代表して、2017年中に会長を退く決断に敬意を表する。最後に、Anglo Americanの将来の基盤を築き続ける中で、より強固な地位を確立するために断行した改 革を揺らぐことなく支持してくれた取締役会メンバー全員に感謝したい。

Mark Cutifani 最高経営責任者

─ 103 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .5 Glencore International

2 .5 .1 企業概要

設立:1974年 本社:Baar(スイス) 上場先:LSE / HKEx

決算期:12月末 CEO:Ivan Glasenberg 連結従業員数:156,468名 (02年2月~)

主な生産鉱種:

- 2 Pt 石 石 ガ Fe Cu Al Zn Pb Au Ag DIA K P 5 Pd 炭 油 ス Glencore

Ni Mn Mo Nb Cr Ti Co B U

■経営数値■ (mU$) (%) (mU$) 250,000 20 15,000 15 200,000 10 10,000 5 150,000 5,000 0 -5 100,000 0 -10 50,000 -15 -5,000 -20 0 -25 -10,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Glencore plc:EBIT Glencore plc:Net Income Glencore plc:売上高 Glencore plc:前年度比成長率 Glencore plc:営業 CF

図 2 - 5 - 1 Glencore売上 図 2 - 5 - 2 Glencore利益

180,000 40 60,000 2.0 160,000 35 1.8 50,000 1.6 140,000 30 120,000 40,000 1.4 25 1.2 100,000 20 30,000 1.0 80,000 15 0.8 U$ million $U million 60,000 20,000 0.6 40,000 10 10,000 0.4 20,000 5 0.2 0 0 0 0.0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Glencore plc:総資産 Glencore plc:自己資本 Glencore plc:有利子負債 Glencore plc:自己資本 Glencore plc:自己資本比率 Glencore plc:DER

図 2 - 5 - 3 Glencore資産 図 2 - 5 - 4 Glencore負債

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 104 ─ % 0.4 200 10.0 3.0 180 5.0 2.0 0.2 160 1.0 140 0.0 0.0 0.0 120 -5.0 -1.0 -0.2 100 -2.0 80 -10.0 -0.4 -3.0 60 -15.0 -4.0 -0.6 40 -20.0 -5.0 20 -0.8 0 -25.0 -6.0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Glencore plc:潜在株式調整後 EPS Glencore plc:ROE Glencore plc:ROA Glencore plc:一株当たり年間配当金

- 2 Glencore plc:売上高税引前利益率 Glencore plcv配当性向 5 Glencore 図 2 - 5 - 5 Glencore収益性 図 2 - 5 - 6 Glencore配当

4,000 2,000 0 -2,000 -4,000

U$ million -6,000 -8,000 -10,000 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

Glencore plc:内部留保額 Glencore plc:当期純利益 Glencore plc:配当額-普通株

図 2 - 5 - 7 Glencore内部留保

─ 105 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .5 .2 個社概況

2015年はご多分に洩れず低迷する資源価格の影響で上期に赤字に転落、他社に比し高 い 1 倍を超える負債倍率が懸念され、同年 9 月には債務削減計画を発表、その実行に向け た動きが加速された。 その結果、2016年に農業事業の一部権益や豪/NSW州の石炭輸送用鉄道事業等の売却を 実行、当初の目標の40~50億US$のキャッシュ創出を達成した。これにより、同社は債務 削減計画の終了を宣言するが、売却案件に固定資産のみならず、金・銀のストリーミング も含むところにトレード事業と生産部門を両輪とするビジネスモデルの同社の特色が垣間

- 2 5 見られる様で興味深い。 Glencore 生産は前年の加/Sudbury製錬所のメンテナンスによる操業停止で溜まっていた在庫を 処理したことにより前年比増となったニッケルを除き、市況低迷を受けて減産を実行した 亜鉛、DRコンゴ/Katangaでの建設工事に伴う操業停止があった銅等、前年比減となっ た。 2016年の決算は上述の事業売却収益及びコスト削減効果に加え、前年は石油事業関連 の巨額減損を計上していた反動もあり、黒字回復を果たした。 取り巻く環境の厳しさが増している近年、他社がそろって事業の選択と集中を唱える 中、同社は一貫してビジネスモデル及び取扱商品の多岐にわたる幅広さを強みと主張、そ の後、アフリカの銅・コバルト資産や豪州の一般炭資産を買い増しており、他社とは一線 を画した独自の価値観に基づく地位作りが益々進行している様に見受けられる。

(英ペンス) (株) 350 600,000,000

300 500,000,000

250 400,000,000

200 300,000,000

150 200,000,000

100 100,000,000

50 0 2015 年 9 月 2016 年 1 月 2016 年 2 月 2016 年 3 月 2016 年 4 月 2016 年 5 月 2016 年 6 月 2016 年 7 月 2016 年 8 月 2016 年 9 月 2017 年 1 月 2017 年 2 月 2017 年 3 月 2015 年 10 月 2015 年 11 月 2015 年 12 月 2016 年 10 月 2016 年 11 月 2016 年 12 月

出来高(Glencore plc) Glencore plc

(参考)図 2 - 5 - 8 Glencoreの株価推移

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 106 ─ - 2 5 Glencore

─ 107 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .5 .3 Glencoreの鉱種別アセット所在地

- 2 5 Glencore Nikkelverk Smelter

Kazzinc(Zn,Pb,Ag) Ferromanganese Plants

Raglan(Ni,Cu) Kidd(Zn,Cu) Nordenham Smelter Bracemac-Mcload Horne Smelter(Cu,Recycling) (Zn,Pb)

Brunswick Smelting Headquarters

Sudbury(Ni,Co,Cu,PGM) San Juan CCR refinery de Nieva Arnao East Providing Recycling (Cu,Au,Ag,PGM) Hinojedo San Jose Recycling Zinc Plant (Cu,Au,Ag,PGM)

Perkoa Sherwin Alumina Plant

Pasar Smelter

Cerrejon

Portvesme Smelter La Jagua (Zn,Pb) Calenturitas

Penang Recycling McArthur River Antamina(Cu,Zn) (Cu,Au,Ag,PGM) (Zn,Pb) Tintaya Iscaycruz(Zn,Pb) Katanga(Cu,Co) Antapaccay Los Quenuales Mutanda(Cu,Co) Coroccohuayco Mount Isa Lady Loretta(Zn,Pb) (Cu,Ag,Zn,Pb) Sinchi Wayra Mopani Lomas Bayas South Africa George Fisher(Zn,Pb) Sable Ferrochrome Plants Ernest Henry Collahuasi (Cu,Au) Altonorte Rosh Pinah Koniambo Shanduka Alumbrera Aguilar Murrin Murrin(Ni,Co) Goedgevonden Puntiaqui Palpala Smelter Townsville Refinery AR Zinc Smelter Tweefontein El Pachón Impunzi Australian coal assets Cobar

Australian coal assets

GLENCORE 銅 石炭 ア ルミナ ニッケ ル 鉛 亜鉛 合金鉄 リサイクル 事業所

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 108 ─ - 2 5 Glencore Nikkelverk Smelter

Kazzinc(Zn,Pb,Ag) Ferromanganese Plants

Raglan(Ni,Cu) Kidd(Zn,Cu) Nordenham Smelter Bracemac-Mcload Horne Smelter(Cu,Recycling) (Zn,Pb)

Brunswick Smelting Headquarters

Sudbury(Ni,Co,Cu,PGM) San Juan CCR refinery de Nieva Arnao East Providing Recycling (Cu,Au,Ag,PGM) Hinojedo San Jose Recycling Zinc Plant (Cu,Au,Ag,PGM)

Perkoa Sherwin Alumina Plant

Pasar Smelter

Cerrejon

Portvesme Smelter La Jagua (Zn,Pb) Calenturitas

Penang Recycling McArthur River Antamina(Cu,Zn) (Cu,Au,Ag,PGM) (Zn,Pb) Tintaya Iscaycruz(Zn,Pb) Katanga(Cu,Co) Antapaccay Los Quenuales Mutanda(Cu,Co) Coroccohuayco Mount Isa Lady Loretta(Zn,Pb) (Cu,Ag,Zn,Pb) Sinchi Wayra Mopani Lomas Bayas South Africa George Fisher(Zn,Pb) Sable Ferrochrome Plants Ernest Henry Collahuasi (Cu,Au) Altonorte Rosh Pinah Koniambo Shanduka Alumbrera Aguilar Murrin Murrin(Ni,Co) Goedgevonden Puntiaqui Palpala Smelter Townsville Refinery AR Zinc Smelter Tweefontein El Pachón Impunzi Australian coal assets Cobar

Australian coal assets

GLENCORE 銅 石炭 ア ルミナ ニッケ ル 鉛 亜鉛 合金鉄 リサイクル 事業所

─ 109 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .5 .4 オペレーション別の生産量

Kt

1,600 Others 104.0 105.7 96.7 Cobar 49.6 45.6 50.8 101.3 2.8 Henry, Townsville 209.5 53.9 197.3 205.6 Mount Isa, Ernest 1,200 11.4 205.1 148.7 11.8 8.1 Punitaqui 167.1 7.0 34.1 151.2 202.1 66.6 Antapaccay 142.7 74.2 219.9 102.6 71.1 51.8 109.6 61.8 Lomas Bayas 800 73.3 116.4 80.0 149.5 131.8 81.9 Alumbrera 135.7 207.0 145.5 Antamina 195.6 200.4 - 2 150.8 Collahuasi 109.9 92.1 5 400 124.1 111.8 222.9 Mopani Glencore 99.0 41.1 150.6 197.1 216.1 Mutanda 87.0 213.3 Katanga 93.0 136.2 158.0 113.7 0 49.6 50.9 46.8 51.9 53.9 Kazzinc Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

図 2 - 5 - 9 銅

Kt Kt 1,800 400

300 564.2 421.2 71.6 65.4 40.2 1,200 486 454.4 100.3 64.8 79.3 45.8 46.2 53 147.8 87.9 71.2 351.3 200 40.4 42.1 272.7 202.1 203.3 224.3 66.8 600 200.2 167.8 170.2 163 143.3 390.4 405.1 437.3 478.2 100 153.1 288.2 227.3 216.2 199.3 193.4 187.6 41.5 44 0 0 26.8 29.8 25.7 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

Kazzinc Mt. Isa McArthur River Kazzinc Mt. Isa McArthur River Others Antamina Others

図 2 - 5 -10 亜鉛 図 2 - 5 -11 鉛

Kt Kt 150 30 1.0 2.8 25 0.8 13.6 0.8 100 4.1 20 0.1 2.8 11.7 1.4 12.6 9.1 0.7 2.7 15.2 9.4 35.3 2.6 15 0.4 36.4 37.5 0.6 35.9 24.5 33.4 2.4 16.5 50 10 13.7 14.4 66.2 8.5 42.2 47.6 51.9 49.6 5 2.8 2.9 0 0 2.1 2.3 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16 Y12 Y13 Y14 Y15 Y16

INO Murrin Murrin Falcondo Katanga Mutanda Murrin Murrin Koniambo Others INO Others

図 2 - 5 -12 ニッケル 図 2 - 5 -13 コバルト

(図 2 - 5 - 8 ~図 2 - 5 -12:Annual Report等をもとに株式会社クラリテ作成)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 110 ─ 2 .5 .5 主なトピックス(16年会計年度:2016年 1 月 1 日~2016年12月末)

月日 鉱種 ニュース

2016年 金 Glencore社、Antapaccay鉱山でのストリーミング契約で5億US$ 2月10日 銀 を調達 2016年2月10日、資源大手のGlencore社と加Franco-Nevada Corporation(Franco-Nevada社)は、Glencore社が保有するペ ルーのAntapaccay鉱山で副産物として生産される金及び銀に関して 長期ストリーミング契約を締結したと発表した。 本契約に基づき、Franco-Nevada社は2016年2月末までに5億 US$ の 前 払 い 金 を 支 払 う。Glencore 社 は、 銅 1,000t に つ き 金 - 2 100ozと銀4,700ozを供給し、累計供給量が金で630,000oz(約 5 Glencore 19.6t)、銀で10百万oz(約311t)を超過した後は、それぞれ金及 び銀の生産量の30%を供給する。 Glencore社は2015年9月に発表した債務削減計画を進めており、 その一環として、2015年11月にも加Silver Wheaton社との間で ペルーのAntamina鉱山で生産される銀に関する9億US$のストリー ミング契約を締結している。近年は、金属価格の低迷の影響で資金繰 りが厳しくなる中で、ストリーミング契約により資金調達を行う事例 が増えており、Silver Wheaton社やFranco-Nevada社のようにス トリーミング契約による資金供与を専門又は主力業務として行う企業 が台頭している。 (バンクーバー事務所 山路法宏)

─ 111 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 銅 Glencore、NSW州のCobar銅鉱山を売却予定、WA州のニッケル鉱 3月7日 ニッケル 山はレビューを継続 2016年3月2日付けの地元紙の報道によれば、GlencoreのIvan Glasenberg CEOは、2016年中に40~50億US$の資産を売却す るという目標の達成に自信を示した。この中には豪州のNSW州にある Cobar銅鉱山も含まれており、チリのLomas Bayas銅鉱山と共に、 入札を経て2016年6月期に売却する予定である。 WA州のMurrin Murrinニッケル鉱山については、従前はニッケル 価格の低迷が続けば閉山することとしていたが、同CEOによれば、同

- 2 5 鉱山は現在のニッケル価格の下でもコスト低減によりブレークイーブ Glencore ン以上と健闘しており、今後、キャッシュがマイナスにならないか等 のレビューを継続すると述べた。 また、同CEOは亜鉛の市場については中国の輸入が年々増加してお り良くなっていると述べた。同社は、豪州においてはNT準州の McArthur River鉱山、QLD州Mount Isa周辺の鉱山群などの亜鉛・ 鉛鉱山を持っている。同CEOによれば、石炭、銅及び亜鉛への支出を 削減して生産も削減することとしており、このうち銅の生産は年間30 万tの削減を予定している。 豪州の石炭事業については、鉄道及び港湾とのtake or payの契約 により実際の利用とは関係なく料金を支払うことになるため、炭鉱の 操業を続けているが、一部の炭鉱については閉山させたいとの意向が あることを認めた。 Glencoreは2015年に49.6億US$の純損失を計上し、前年の23 億US$の純利益から赤字に転落した。純負債は2015年6月時点では 300億US$であったところ、2015年末は259億US$、今後は 2016年末に170~180億US$、2017年末には150億US$にま で負債を削減する目標を掲げている。 (シドニー事務所 山下宜範)

2016年 銅 Glencore、KOV露天採掘鉱山の地盤崩落事故、従業員7名死亡と断 3月21日 コバルト 定 Glencoreは、子会社のKatanga Mining社がDRコンゴに保有す るKOV露天採掘鉱山で2016年3月8日に起きた地盤崩落事故につい て、これまで3名の従業員の遺体を発見したが、行方不明となってい た残り4名については、10日間もの間あらゆる手段を用いて救出活動 を行ったものの発見することはできなかったとして、生存の可能性は ないとの声明を2016年3月17日に出し、従業員の家族に対して深い 哀悼の意を表した。 Katanga Mining社は引き続き関係当局と協力し、当該事故の原因 究明に当たるとしている。 (ロンドン事務所 竹下聡美)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 112 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 銅 チリ:Glencore、Lomas Bayas銅鉱山の売却先決定を先送り 4月4日 2016年4月1日付けメディア報道によると、Glencoreは、 Lomas Bayas銅鉱山の売却先決定を先送りすることを決定した。数 社が買収に関心を示していたが、提案額が低いことがその理由。各社 から提案された買収額は、約5~6億US$と伝えられている。 Glencoreは、最低売却価格を示していない。世界的なコンサルタン ト会社は、Lomas Bayas鉱山の資産価値は、11~15億US$と見積 もっている。 市場関係者は、Glencoreは、Lomas Bayas鉱山の売却を望むな

- 2 ら、買収額にあまり期待すべきではないと述べている。業界筋には、 5 Glencore 売却先送りの決定はGlencoreの財務状況の好転の影響があるとの分 析もある。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

2016年 その他 Glencore、農業ビジネス40%株式を25億US$でカナダ年金運用機 4月6日 関に売却 Glencoreは2016年4月6日、カナダ年金基金投資委員会 (Canada Pension Plan Investment Board, CPPIB) に 対 し、 Glencore Agricultural Products社の株式40%を25億US$で売 却すると発表した。 本契約は関係当局の承認を経て2016年下期には完了する予定で、 Glencoreはこの資金を負債減額に充当するとしている。Glencore Agricultural Products社は、垂直統合型事業を行っており、既存ア セットのほか、200もの倉庫施設、31の加工施設及び23もの港湾施 設からなるロジスティクスのアセットも有している。 2015年12月末期決算では、EBIT525百万US$、総資産額とし て102億US$を計上している。同契約では4年後にGlencoreが追加 で20%株式をCPPIBに売却できること、また本契約締結後の8年間は IPOの際には両者が第一先買権を有することが規定されている。 CPPIB側は、長期的視野を有する投資家にとって農業ビジネスへの投 資は非常にフィットするとコメントしている。 (ロンドン事務所 竹下聡美)

2016年 鉄鉱石 Glencore、鉄鉱石生産企業Atlas Iron社の筆頭株主に 5月16日 2016年5月9日、地元メディアは鉄鉱石生産企業Atlas Iron社が2 億6,700万US$の負債を削減するために、債権者に対して負債の約 半分にあたる1億3,200万US$を新たに発行した大量の株式と交換し たことにより、GlencoreがAtlas Iron社の8.47%の株式を所有する 筆頭株主になったことを報じた。Commonwealth銀行がGlencore に次いで6.36%の株式を所有する第2株主となった。 Glencoreは鉄鉱石のマーケティングのみを2008年から行ってお り、以前からAtlas Iron社が生産する鉄鉱石のうち年間1,500万tを 買い取っていたが、鉄鉱石の生産は行っていなかった。 (シドニー事務所 矢島太郎)

─ 113 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 月日 鉱種 ニュース

2016年 銅 Bajo de la Alumbrera銅鉱山、2017年末閉山予定 5月27日 2016年5月26日付けメディア報道によると、Bajo de la Alumbrera 銅 鉱 山(Catamarca 州、Glencore 50%、Goldcorp 社37.5%、Yamana Gold社12.5%)は、2017年末に閉山を予定 しており、閉山に伴う1,900人の従業員解雇のために、20億ペソ (143百万US$)を準備する必要があるとされる。 Goldcorp社が2016年2月に公表した2015年年次報告書では、 同鉱山での採掘は2017年前半に停止され、その後、管理メンテナン ス段階に移行する見込みとされている。同鉱山の2015年生産量は、

- 2 5 銅:61.8 千 t、 金:6.1t。2016 年 第 1 四 半 期 の 生 産 量 は、 銅: Glencore 20.1千t、金:2.1tであった。 (サンティアゴ事務所 山本邦仁)

2016年 錫 政府、Glencoreの収用問題仲裁申し立てに対応 8月26日 アンチモ 2016年8月22日付け地元メディアによると、Glencore(本社ス ン イス)が、7月19日に行った、同社の資産だったVinto錫・アンチモ 銀 ン製錬所とColquiri銀・錫・亜鉛鉱山の収用についての仲裁申し立て 亜鉛 に対し、8月18日、政府側は応ずる意向を示した。 8月21日、地元メディアのインタビューに答える形で、Hector Arce検事総長が、申し立てに反論できるだけの(同社の)違法性を示 す証拠を提示できると語った。さらに、同総長は、今後、3名の委員 からなる仲裁委員会を設置し、双方から1名ずつの委員が任命された 後、30日以内に委員長が任命されるだろうと述べた。 (リマ事務所 迫田昌敏)

2016年 銅 Evolution社、Glencoreから銅― 金鉱山の一部権益取得、産出され 8月30日 金 る金は全量取得 銀 2016年8月24日、Glencoreは、QLD州のErnest Henry銅― 金 鉱山の権益のうち30%分をEvolution Mining社に売却することにつ いて合意したと発表した。売却額は8億8,000万A$。この合意に基づ きEvolution社はErnest Henry鉱山で生産される金の全量及び銅・ 銀の30%分を取得する権利を持つ。なおEvolution社が取得する銅・ 銀についてはGlencoreが市場価格にて買い戻す予定。Glencoreは今 回の合意は同社の債務削減の計画の一環であるとしている。 Evolution社は、豪州第2位の産金企業であり、近年はCowal金鉱 山などの資産買収を行ってきている。地元紙によれば、今回の合意に より同社の金の生産量に新たに80,000~85,000oz/年(2.49~ 2.64t/年)が追加されることになる。Evolution社は4億100万A$ の増資の途上にあり、今後5億A$の融資も得る予定である。他方、 Glencoreは、近年、Ernest Henry鉱山において6億A$をかけて坑 内部分の精査をしてきたところであり、現在、マインライフは11年と なっている。 しかし、同鉱山及び周辺の探鉱に関しては近年支出を減らしてきて おり、Evolution社の参入により今後は探鉱を促進させると見られる。 (シドニー事務所 山下宜範)

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 114 ─ 月日 鉱種 ニュース

2016年 亜鉛 Glencore、Mt Isa鉱山の一部Black Star亜鉛鉱山が鉱石枯渇によ 10月31日 鉛 り操業停止 2016年10月31日、地元各紙はGlencoreのQLD州Mt Isa鉱山の 一部であるBlack Star亜鉛鉱山が鉱石の枯渇により、操業を停止した ことを報じた。同鉱山は2004年から操業を開始し、4,000万tの鉱 石採掘を行い、175万tの亜鉛、約100万tの鉛を生産した。当初のマ インライフは8年間とされていた。Glencoreは3年前から従業員を他 の鉱山に再配置するなどして同鉱山の従業員数を徐々に減らしていた。 同社の豪州亜鉛部門のGreg Ashe代表は、「過去に坑内採掘が行わ

- 2 れ、坑道が残されたまま放置されていた同鉱山を最新の技術を用いて 5 Glencore 鉱石採掘を継続した本鉱山の従業員を誇りに思う」とコメントしてい る。 (シドニー事務所 矢島太郎)

2016年 亜鉛 Nyrstar社、GlencoreにCotonga鉱山を売却 12月16日 鉛 2016 年 12 月 14 日、Nyrstar 社( 本 社 ス イ ス) は、 ペ ル ー の 銀 Cotonga 鉱 山(Ancash 州) 及 び カ ナ ダ Quebec 州 の 複 数 鉱 区 を Glencoreの子会社に対し、合計26百万US$で売却することで合意し たことを明らかにした。このうち、Cotonga鉱山の売却額は21百万 US$にのぼる。正式な売却完了は2017年上半期となる見通しとなっ ている。 同鉱山は、2015年に、亜鉛12千t、鉛900t、銀481千oz(約 15t)を生産した。Nyrstar社の進める、鉱山事業を処分し、金属加 工に注力する計画の一環と見られる。同社は、ペルーにCoricancha 金鉱山(Lima州)を保有しているが、採掘を中断している。 (リマ事務所 迫田昌敏)

─ 115 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 2 .5 .6 経営者のメッセージ(2017年 3 月 2 日発行アニュアルレポート2016)

Ivan Glasenberg 最高経営責任者

株主に対して長期にわたり持続可能なリターンを創出 ・負債削減計画が完了:年末までの正味資金調達額は326億US$、期末の純負債額は155億 US$ ・弾力性に富んだトレード事業と質の高い産業資産に支えられ、潤沢なフリーキャッシュ

- 2 5 フローを創出 Glencore ・資本配分により株主への利益還元を最大化:トレード事業がどのような局面でも安定的 に予測可能なキャッシュフローを創出できることから、定額で10億US$を分配 ・成熟しつつある市場のニーズの変化に対応した適切な商品構成:中長期のサイクルにあ る商品を低コストで供給、また低コストでの十分な量の潜在生産能力に加え、著しいレ バレッジ効果により主要商品のファンダメンタルズの改善を導出

市況の改善 2016年は不安定な状況での幕開けとなったが、過去 5 年間、他の資産に比し低迷してい た市況商品はついに反転し始めた。このような環境下で、鉱業セクターは著しい上昇を見 せ、FTSE 100インデックスが17%の上昇であるところ、SXPP basic resourcesイン デックスは 1 年間に約70%も上昇した。

中国の商品需要の持続性に関して懐疑的な見方が広がっていたことから、再び拡大しよう という同国の意欲と能力は市場にとって若干の驚きであった。その後、他の地域での景気 回復が市場を一段と後押しした。

今後に関しては、世界各地の政治イベントにより、高インフレ及び背景となる商品価格上 昇の影響を受けたり下支えとなる金利上昇が期待される。

また、様々な地域で財政景気刺激策が実施される可能性が高まっていることから、商品に 対する実需とセンチメントは改善すると予想される。

堅調な財務業績 当社の2016年の堅調な財務業績(調整後EBITDAは2015年比18%増加の103億US$)は、 手持ち案件の質及び幅広く分散されたトレード事業の弾力性を反映している。

2016年のトレード事業の調整後EBITは2015年比14%増の28億US$となり、2016年第 4 四 半期の予想レンジの上限27億US$を上回った。これには、下半期に 3 事業すべての業績が 好調であったことが寄与した。競争力のある調達金利、安定したコストベース、低水準の 設備投資額に下支えされ、自己資本に対する高水準のキャッシュ・リターンが安定的に生 み出されている。

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 116 ─ 2016年の終わりにGlencore Agricultureの持分の50%を売却したことを踏まえて、2017 年のトレード事業の調整後EBITガイダンスを22~25億US$のレンジ(2016年12月の21~ 24億US$の見通しを上方修正)とし、同様に売却を勘案して、長期ガイダンスを22億~ 32億US$に引き下げた。

当社の生産部門は低価格という課題に対処し、コスト構造及び主要商品の利益率を改善し た。2016年の生産部門の調整後EBITDAは2015年比約22%増の73億US$となった。これ には下半期の商品価格の改善が寄与したが、大部分がコスト削減と操業の改善によるもの である。2009年以降、380億US$超が生産部門に投資され、それらはおおむねコスト優位

- 2 性、規模、多角化及び選択肢の面で第 1 級の資産で、非常に有利な位置を占めている。 5 Glencore

負債削減計画の実施 財務レバレッジを大幅に低下させ、バランスシートを強化するために2015年 9 月に開始 された負債削減計画は完了した。2016年末の正味資金調達額は326億US$、純負債額は 155億US$となり、目標と同水準もしくは超過して達成した。デット・カバレッジ・レシ オは、最近引き下げられた目標水準をすでに大幅に下回っている。

負債削減には、売却計画が非常に成功したことが寄与している。2015年 9 月以降の売却 額は62億US$で、2016年の売却案件は以下の通りである。 ・Antapaccayの銀のストリーミング: 5 億US$ ・Glencore Agricultureの持分50%:31億US$ ・Ernest Henryの30%及び金のストリーミング: 6 億7,000万US$ ・Hunter Valley石炭運搬鉄道事業(GRail): 8 億4,000万US$ これら売却により、わずか 1 年半で正味資金調達額を147億US$削減した。

負債削減計画と資本構成・信用回復の成功により、現在、信用市場で十分に理解かつ評価 されるようになり、調達金利とデフォルト・スワップは「正常な」水準に戻った。以前に 説明したように、どのような市況の局面でも有利子負債/EBITDA倍率を最大 2 倍(従 来は 3 倍未満)にすることを目標にしている。このギアリング・レシオの引き下げは、リ スクを大幅に軽減し、将来に柔軟性と安定性をもたらすことを意図している。Baa/BBB の信用格付けを確保・維持するための取り組みは順調に進捗している。

株主価値の最大化を目的とした資本配分 当社は2016年12月に 1 年間の中断を経て株主への配当を再開することを発表した。まず 通期及び中間決算に沿って、年次総会での株主の承認の元、2017年に10億US$を株主に 還元する予定である。

2016年12月に発表した様に、2017年のキャッシュフロー実績を踏まえて、10億US$の定 額部分と産業資産が創出するフリーキャッシュフローの最低25%の変動部分で構成され る新たな配当方針を2018年より開始する。この構成ではその時点の市況と見通しが考慮 され、通期業績の発表とともに毎年確定される。

─ 117 ─ 資源メジャー・金属部門の動向調査2017 将来のニーズに見合った適切な商品構成 通常、すべての商品の価値が同等であるわけではなく、当社は適切な商品を保有している と考える。Glencoreの手持ち案件は多様で、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、一般炭な どの中長期のサイクルの商品の低コストのポジションで構成されており、現在及び今後の 商品需要のニーズの変化に確実に適合している。

当社は供給に対して非常に規律正しく取り組んでいる。このことは、長期的な価値を守 り、市場の調整を促すために、2015年から2016年に石炭、銅、原油、亜鉛の複数の鉱山 で減産を実施したことから明らかである。当社は必要に応じて再開可能な低コストの潜在

- 2 5 生産能力を有しており、主要商品のファンダメンタルズの改善に寄与する著しいレバレッ Glencore ジ効果を保有している。

Glencoreは商品のバリュー・チェーンにおいて存在感を示しており、長期にわたって優 れた株主価値を創造可能な独自な地位を築いている。

持続可能な成長に向けて取り組みを統合 2016年に当社の資産で、 8 件の事故により16名が死亡したことを報告するのは非常に残 念なことである。人命の損失は受け入れられるものではない。組織全体で業務上の死亡、 傷害及び職業病を撲滅するという目標に向けてより一層の努力を続けていく所存である。 現場の問題を解決し、あらゆるレベルの振る舞いを変えていくことで、全資産で健康と安 全の強化に取り組んでいる。

当社は、すべての事業に対する監督責任及び、我々が事業を展開する地元地域に対する責 務を認識している。2016年に持続可能性チームが水資源管理と健康戦略の改訂版、及び 気候変動が当社の事業に及ぼす影響に関するレポートを発表した。

将来を見据えて 過去 1 年半にGlencoreは厳しい環境に置かれた。景気悪化の局面でもキャッシュを創出 し、状況に応じた圧倒的かつ迅速な対応が可能であり、その意欲があることは、当社の強 みである。重要な教訓を学びかつ、対策を講じ、Glencoreはすべての利害関係者に価値 を創造できる極めて有利な地位を確実にしている。

Ivan Glasenberg 最高経営責任者

資源メジャー・金属部門の動向調査2017 ─ 118 ─